輸入要件の確認で広がる台湾向け日本産ドライペットフード輸出の可能性
「2026 TAIPEI PETS SHOW」を踏まえた現地報告
2026年10月15日
台湾におけるペット関連市場は拡大傾向にあり、日本産ペットフードへの関心も高まっている。これまで日本産ペットフードでは、主にウェットフードやおやつ類が輸出の中心であった一方、牛由来成分を含むドライフードは、輸入要件への対応が参入上の制約となってきた。しかし、ペットフード協会が台湾当局に現行条件を確認した結果、従来必要と考えられていた原料牛の月齢証明は、現行の輸入検疫条件では求められていないとの見解が示された。一方、畜肉成分を含む製品には製造施設の登録や検疫証明などが必要で、参入障壁は残る。本稿では、台湾市場と展示会での反応を紹介し、日本産ドライフードの輸出可能性と実務上の課題を整理する。
日本は台湾のペットフード輸入市場で第5位
台湾は日本産ペットフードの主要な輸出先の一つであり、2025年の輸出額は約31億3,000万円となった。輸出先別では韓国に次ぐ2位の市場だ(図参照)。台湾ではペットの家族化を背景に、プレミアム商品や機能性商品の需要が拡大している。ペットフードの市場規模はAgriculture and Agri-Food Canada(AAFC)によると、2024年の10億8,000万ドルから2029年には13億8,000万ドルへ拡大すると予測されており、ペットの健康やウェルネスへの関心の高まりが市場成長を支えている(注1)。
また、台湾の犬猫向けペットフード市場の約70%を輸入品が占めており、高品質な海外製品に対する需要も高いとの米国農務省(USDA)の分析がある (注2)。こうした市場環境は、日本産製品が持つ「高品質」「安全・安心」といった強みを生かしやすい条件を備えている。
一方、貿易データベースGlobal Trade Atlasによると、台湾のペットフード輸入市場ではタイや米国が主要供給国となっており、日本は輸入額ベースで5位の供給国だ(表参照)。日本産製品は一定の存在感を有しているものの、市場シェアの拡大余地は依然として大きい。
注:HS230910〔犬または猫用の飼料(小売り用)〕。
出所:財務省貿易統計からジェトロ作成
| 順位 | 国・地域 | 輸入額(億円) | シェア(%) |
|---|---|---|---|
| 1 | タイ | 156.4 | 35.4 |
| 2 | 米国 | 78.9 | 17.9 |
| 3 | 韓国 | 47.7 | 10.8 |
| 4 | カナダ | 40.8 | 9.2 |
| 5 | 日本 | 32 | 7.2 |
注:HS230910〔犬または猫用の飼料(小売り用)〕。
出所:Global Trade Atlas
「2026 TAIPEI PETS SHOW」にジャパンブースを設置
2026年7月3~6日に台北市で開催された台湾最大規模のペット見本市「2026 TAIPEI PETS SHOW」では、ナチュラル原料や無添加、機能性を訴求する製品が数多く展示されていた。同見本市の出展企業からは、原材料や機能性に関する質問が多く寄せられたとの声が聞かれたほか、会場ではこうした商品を展示するブースに来場者が継続的に訪れ、複数の商品を比較しながら説明を求める様子もみられた。

ジェトロが設置したジャパンブースには日本から14社1団体が出展し、各社が日本産ペットフードの特徴や魅力を紹介した。来場者からは「日本に行った際によく購入している」「複数の日本メーカーの商品を比較できてよかった」といった声が聞かれ、日本産ペットフードに対する認知度の高さに加え、購入経験を持つ消費者も多くみられた。

また、台湾市場で類似品が少ない商品には、来場者から高い関心が寄せられた。日本産原料を活用したジビエ系ペットフードや、サツマイモなどを使用した植物由来スナックには多くの引き合いがみられた。出展企業からは「ジビエという名称のインパクトに加え、嗜好(しこう)性の高さが評価された」との声も聞かれ、日本企業が独自性を発揮できる商品カテゴリーとして注目された。
一方、多くの出展企業が共通の課題として挙げたのが、価格競争力だ。展示会ではロイヤルカナンやヒルズなどの欧米ブランドに加え、台湾企業も価格競争力や独自商品を武器に市場開拓を進めており、市場競争の激しさがうかがえた。現地事業者からは、日本産製品について、品質やデザインは高く評価されている一方、価格面では必ずしも優位性が高いとはいえないとの指摘も聞かれた。輸送費や保管費などを反映すると日本国内より割高となるため、機能性や原材料、製法といった付加価値をどのように訴求するかが市場開拓のカギになると考えられる。
なお、ある出展企業によると、来場者から寄せられた問い合わせの約8割がドライフード関連であったという。同社ブースでの反応からは、日本産ドライフードへの関心の高さがうかがわれた。一方、これまで日本企業によるドライフードの市場展開は進んでいなかった。その背景には、台湾の輸入規制への対応上の課題があった。
ドライフードだけが「空白地帯」だった理由
台湾向け日本産ペットフードのうち、ウェットフードやおやつ類が輸出の中心となってきた一方、ドライフードは輸出が難しいと業界では認識されてきた。その要因の一つが、台湾の牛海綿状脳症(BSE)(注3)対策に関する輸入規制だ。一般社団法人ペットフード協会
によると、2016年時点で台湾農業部
は、日本産の牛由来成分について「Feed Ban(注4)が有効実施された後に生まれた牛に由来すること」を求めていた(「2016年時点の輸入検疫条件」(中国語)
(639.0KB))。このため、業界では、原料となる牛の月齢や出生履歴を確認できる証明体制が必要と理解されていた(注5)。
日本国内では、牛肉を原料または材料として製造・加工・調理した製品や、舌、ひき肉、くず肉などは牛トレーサビリティー制度の対象外とされており、個体識別番号による管理が求められていない(注6)。多くのドライフードで使用される牛肉粉などの原料もこれに近い性質を持つことから、個体単位の月齢を証明する仕組みは一般的ではなく、該当製品の輸出は事実上困難であった。
ペットフード協会による輸入要件の確認がもたらした変化
こうした状況に変化をもたらしたのが、一般社団法人ペットフード協会による台湾農業当局(現・農業部)への確認だ。同協会は、2016年時点の資料に記載されていた「Feed Banが有効実施された後に生まれた牛に由来すること」との要件が、現行の輸入検疫条件には見当たらないことに着目した(注7)。そこで、農林水産省を通じて、現行の輸入検疫条件で牛由来原料に関する月齢の証明が必要かどうかを照会した。その結果、台湾側からは「検疫条件に定めていないことは求めていない」との回答が示された。
このことから、現在公表されている輸入検疫条件には、過去に示されていたFeed Ban実施後の出生要件に相当する記載は確認されておらず、少なくとも現行の輸入検疫条件上、原料となる牛の月齢の証明は求められていないと理解されている。
輸入要件確認後に広がる日本産ドライフードの可能性
これにより、日本企業がこれまで輸出困難と考えていたドライフード製品を、台湾市場へ投入できる可能性が高まっている。台湾ではプレミアムペットフード市場の拡大が続いており、日本産製品への認知度や信頼性も既に形成されていることから、輸入要件に関する従来の認識があらためられたことによる効果は、既存市場の置き換えにとどまらず、新たな需要創出につながることが期待される。また、既にウェットフードやおやつでブランド認知を獲得している日本企業にとっては、商品ラインアップをドライフードへ拡大することで、顧客単価の向上や販売チャネルの拡大を図る機会となる。
輸入要件確認後も残る高い参入障壁
一方で、牛成分を含む畜肉成分入りペットフードの台湾向け輸出には依然として高いハードルが残る。その代表例が「製造施設の登録制度」だ(注8)。台湾向けに輸出する場合、事業者は製造施設情報や製品情報、原材料リストなどを整理し、農林水産省を通じて台湾農業部へ申請する必要がある。
製造施設の登録では、原材料の管理体制や製造工程、交差汚染防止措置(注9)などについて詳細な説明が求められる。特に牛由来原料を取り扱う場合は、BSE対策や製造管理体制についても確認を受ける必要があり、企業には相応の準備負担が生じる。また、申請に当たっては、農林水産省による内容確認および台湾当局による審査ならびに現地調査を経る必要があり、輸出開始までに年単位の期間を要することが想定される。2026年8月時点で、台湾当局の登録を受けた日本国内の犬猫用ペットフード製造施設は9施設
にとどまっており、制度への対応は依然として参入障壁となっている。
輸入要件の確認により、これまで輸出が難しいと考えられていた牛肉粉などを使用するドライフードについても、輸出拡大の可能性が広がった。今後は先行企業による輸出事例や輸出実績の蓄積が進むことで、日本産ペットフード、とりわけドライフードの対台湾輸出拡大が期待される。ジェトロは、商談機会の提供に加え、工場登録や輸出手続きに関する情報提供や相談対応を通じて、事業者の円滑な輸出参入を支援していく。
- 参考
-
台湾では2025年5月、食用の日本産牛肉について、月齢30カ月以下とする輸入制限が撤廃され、月齢の制限なく輸出できるようになった。これは食品衛生を所管する衛生福利部食品薬物管理署(TFDA)による食用牛肉の規制緩和であり、農業部が所管するペットフードの輸入検疫条件とは異なる(農林水産省報道発表資料「台湾向け牛肉の月齢制限撤廃について
」、ジェトロ2025年5月26日付ビジネス短信「台湾、日本産牛肉の月齢30カ月以下の輸入制限を解除」)。
- 注1:
-
Agriculture and Agri-Food Canada(AAFC)「Sector Trend Analysis – Pet Food in Taiwan
」を参照。 - 注2:
-
米国農務省(USDA)「Unleashing Opportunities in Taiwan's Booming Pet Food Market
(577KB)」を参照。 - 注3:
-
牛の脳や神経組織に異常が生じる疾病。世界各国ではBSEの拡大防止のため、牛由来原料や飼料に関する規制が導入されている。
- 注4:
-
牛や羊など反すう動物由来の原料を、同じ反すう動物向けの飼料に給与することを禁止する措置の通称。BSEのまん延防止を目的として各国で導入された規制の一つ。
- 注5:
-
牛由来原料について、原料となった牛の月齢(年齢)を証明する書類。BSE対策の一環として求められ、生産履歴や個体識別情報に基づき対象牛の月齢を確認する。
- 注6:
-
牛トレーサビリティー制度は「特定牛肉」(枝肉、部分肉、精肉)を対象とし、牛肉を原料または材料として製造・加工・調理した製品(コンビーフなど)や、舌、ひき肉、くず肉などは対象外とされている(農林水産省、過去の相談事例
)。 - 注7:
-
2026年8月時点での台湾における犬猫食品の輸入検疫条件は下記のとおり。
犬猫食品の輸入検疫条件(中国語)
(121.72KB)/ 犬猫食品の輸入検疫条件
(45.03KB) - 注8:
-
台湾向けに畜肉成分を含むペットフードを輸出する事業者が、製造施設の情報や管理体制などを農林水産省を通じて台湾当局に申請し、登録を受ける制度。台湾農業部動植物防疫検疫署(APHIA)「Quarantine Requirements for the Importation of Dog and Cat Food
(41.9KB)」を参照。 - 注9:
-
製造工程において、原材料を通じた製品のウイルスや細菌などによる汚染を防ぐための管理措置。原料の動線分離、機器の洗浄手順、記録管理などが含まれる。
- 執筆者紹介
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ジェトロ農林水産食品部商流構築課
栢沼 泰佑(かやぬま たいすけ) - 2025年、ジェトロ入構。現在、酒類、菓子、ペットフードなどの加工食品分野を担当し、業界団体や関係機関と連携しながら、海外バイヤー招聘事業、海外商談会、展示会出展支援、セミナーの企画・運営等を通じて、日本産農林水産物・食品の輸出促進事業に従事。
- 執筆者紹介
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ジェトロ農林水産食品部戦略企画課
酒井 颯汰(さかい そうた) - 2025年、ジェトロ入構。現在、戦略企画課に所属し、農林水産省補助事業の管理・調整業務を担当。





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