中国からの輸入依存高まる
ロシア産業用ロボット活用の現状(1)

2026年2月20日

ロシアは近年、西側諸国から経済制裁を受ける中で、産業分野での他国への技術依存を排除し、「技術主権」を確立するための取り組みを一層強化している。その実現手段の1つとして挙げられるのが、人手不足の解消につながるロボット導入の拡大だ。本稿では、産業用ロボット市場の現状を概観する。

製造分野でのロボット化の進展

国内では深刻な労働力不足が製造業の生産能力向上を阻む主な障害となっている。アントン・コチャコフ労働・社会保障相は2030年の製造業における労働力不足が80万人程度にのぼると見積もる(「インターファクス通信」2024年6月12日)。国家目標「技術的リーダーシップ」では、2030年までに製造業の粗付加価値額(注1)を2022年比で少なくとも40%引き上げることが掲げられており、その達成に向けた主要な施策として「ロボット密度」の向上が位置付けられている。ロボット密度は、製造業労働者1万人当たりの産業用ロボット稼働台数を指す。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2024年5月7日、ロシアをロボット密度の指標で世界上位25カ国に押し上げることを目指す大統領令に署名した。しかし現時点では、ロシアは依然として他国に大きく後れを取っている。ロシア連邦国家統計局の試算では、2025年5月時点で他国とのロボットの導入状況を比較した「国・地域別ロボット密度ランキング順位」では43位にとどまっている(表1参照)(注2)

2024年のロシアのロボット密度は29台となり、前年の19台と比べて増加した。ロシアの監査・アドバイザリーファームのKEPT(旧KPMG)によれば、楽観的なシナリオでは2025年中に40台へ上昇すると見込まれている。ロシア政府の試算では目標とするロボット密度の世界上位25位以内の達成には145台が必要としているのに対し、KEPTは別の試算に基づき「194台を超えるロボット密度を確保する必要がある」と指摘している。同社の保守的なシナリオによると、ロシアが実際にこの水準に達する可能性は高くない。

表1:国・地域別ロボット密度ランキング (単位:1万人当たり、台)

注:ロシアの数値はロシア連邦国家統計局が発表した2025年5月時点の数値、他はKEPTが2025年12月28日に発表した「産業用ロボット市場2025」。
順位 国・地域名 ロボット
密度
1 韓国 1,220
2 シンガポール 818
3 中国 567
4 ドイツ 449
5 日本 446
6 スウェーデン 377
7 デンマーク 329
8 スロベニア 315
9 米国 307
10 台湾 302
11 スイス 294
12 オランダ 293
13 オーストリア 272
14 カナダ 241
15 イタリア 237
16 ベルギーおよびルクセンブルク 232
17 チェコ 216
18 スロバキア 210
19 フランス 195
20 スペイン 183
21 フィンランド 183
22 ハンガリー 172
23 ノルウェー 128
24 英国 104
25 ポルトガル 102
43 ロシア 29

注:ロシアの数値はロシア連邦国家統計局が発表した2025年5月時点の数値、他はKEPTが2025年12月28日に発表した「産業用ロボット市場2025」。
出所: KEPT, ロシア連邦国家統計局からジェトロ作成

ロシア連邦国家統計局によると、2024年時点のロシアの産業用ロボットの稼働台数は2万864台。産業用ロボットの導入が特に進んでいる地域として、製造業が集積するモスクワ州、サンクトペテルブルク市のほか、乗用車最大手のアフトワズを抱えるサマラ州、モスクワ市、そして地場トラック組み立て大手カマズを擁するタタルスタン共和国が挙げられる。アフトワズの工場では1,300台以上の産業用ロボットが稼働しており、これはロシア国内の自動車工場の中で最多となっている。カマズでは、生産工程の自動化が着実に進展している。同社のロボット密度は60台に達しており、ロシアの製造業の中では屈指の水準とされる。

表2:産業用ロボットの導入が進む主要な連邦構成体と稼働中のロボット台数(単位:台数、%)
地域 2023年 2024年 シェア 伸び率
モスクワ州 1,101 1,904 9.1 72.9
サンクトペテルブルク市 1,347 1,869 9.0 38.8
サマラ州 1,285 1,713 8.2 33.3
モスクワ市 602 1,488 7.1 2.5倍
タタルスタン共和国 919 1,385 6.6 50.7
ロシア全体(その他含む) 12,841 20,864 100.0 62.5

出所:ロシア連邦国家統計局

ロボット化が進展も、主に中国からの輸入に依存

2024年の産業用ロボット稼働台数は前年と比べ8,023台増加した(表2参照)。同ロボットの国内生産台数は公表されていないものの、アントン・アリハノフ産業商務相によれば、2025年には約1,000台の国産ロボットが製造された(「インターファクス通信」2025年10月25日)。

しかし、国内生産だけでは需要を賄えず、ロボットの多くは依然として輸入に頼っている。KEPTによれば、国内の産業用ロボットの設置台数は、国家目標のロボット密度を達成するためには12万3,000台に引き上げる必要がある。2024年の設置台数である2万864台と比較して、追加で必要となる約10万台のうち、5万台は国内で生産可能だが、残りの5万台は輸入に依存せざるを得ないという。そのため、今後も中国からの調達が続くとみられる。

ロシアの産業用ロボットの調達先を見ると、2022年までに主要な供給国だったドイツは、2023年以降、ロシア向け輸出を完全に停止した。一方で、中国はロシアへのロボット輸出を2024年に2021年比で19倍に増やしている(表3参照)。ジェトロのヒアリング調査でもドイツ製ロボットを使う地場企業の中には、中国製への切り替えを検討するケースがみられた。

ロシア大手IT企業ヤンデックスのロボティクス部門である「ヤンデックス・ロボティクス」および地場テック企業ツィフラ・グループによる共同アンケート調査では、製造現場で使用されているロボットの製造国(複数選択可)で最も多かったのは中国(52%)で、全体の過半を占めた。次いでロシア(41%)と国内メーカーの一定の存在感も確認された。ドイツは22%と、引き続き主要な選択肢として位置付けられている(「ベドモスチ」2025年12月25日)。

表3:ロシアによる産業用ロボットの輸入 (単位:1,000ドル、%)(△はマイナス値) 注:2022年以降は輸出国側のミラー統計。
輸出国・地域 2021年  2022年  2023年  2024年 伸び率
(2024年/2023年)
伸び率
(2024年/2021年)
中国  2,854 23,999 45,095 54,536 20.9 19.1倍
インド 176 0 26 894 34.4倍 5.1倍
台湾 195 670 1,186 537 △54.7 2.8倍
トルコ 1,344 2,943 1,138 430 △62.2 △68.0
デンマーク 2,934 0 235 15 △93.6 △99.5
カザフスタン 90 383 2 △99.5
イスラエル 137 457 1 △99.8
ドイツ 13,645 11,320 0 0

注:2022年以降は輸出国側のミラー統計。
出所:TradeMAPからジェトロ作成

ロシアによるウクライナ侵攻以前、ロシアでは独クーカ、スイスABB、日本のファナックが産業用ロボット市場をリードしていた。このうち2022年以降、一時はロシア市場に残りビジネスを継続していたクーカは、2024年にロシア事業を現地経営陣に移管。同社は2017年に中国の家電メーカー美的集団(Midea Group)に買収されており、現在は中国系企業の傘下にあるが、ドイツ製ロボットとして扱われている。ABBは既にロシア現地法人の持ち分の100%をロシア企業に譲渡し、市場から正式に撤退した。ファナックは自社のサイトでロシア向けの全ての製品の出荷停止を発表した。

国内で製造される産業用ロボットの部品などの国内調達率は製品により10%から95%と幅が大きいものの、国産化が進んでいない部材については引き続き中国からの供給に頼る状況が続いている。代替が最も難しいのは、マニピュレーター型ロボットの中核部品。加えて、2025年7月にエカテリンブルクで開催された産業博覧会 「イノプロム」の枠内で開催されたロボット化に関するセッションの場に登壇したある専門家は、減速機、磁気式リングエンコーダー、タッチパネル、小型PC、ネオジム磁石、ベアリングといった部品を挙げた。現在その多くは中国から輸入されているという。ロボット化システムのインテグレーターであるテクノレッドで研究開発部門を率いるアルトゥール・ハリコフ氏は、「ロシア国内で自社ロボットを製造するには、依然として部品が十分にそろっていない」と指摘している(「フランク・メディア」2025年12月25日)。

このように、深刻な労働力不足を背景に産業用ロボットの導入が不可避となっているロシアだが、実際の産業分野でのロボット化の動きは遅々としている。また、ロボットの国内生産は依然として不十分で、ロボット調達の多くを中国に依存する状況が強まっている。


注1:
ロシアの定義では粗付加価値額は、企業が生産活動によって新たに生み出した価値を示す指標。本文に戻る
注2:
国際ロボット連盟(IFR)が公表するロシア関連データは制限されている。ロシアでは2024年以降国家統計局が情報を整備している。 本文に戻る
執筆者紹介
ジェトロ調査部欧州課