米国アリゾナ州で初の水産品試食商談会を開催
地方から米国新興市場へ
2025年12月5日
ジェトロは10月20日、米国アリゾナ州フェニックスで、愛媛、青森、宮城、福井、島根県産の水産品・水産加工品に関する試食商談会を開催した。半導体産業で急成長する同州において、ジェトロとして農林水産物・食品分野では初の商談会となった。
商談会には、日本から水産品を取り扱う17社・団体が参加。タイ、ブリ、サバ、出汁(だし)、塩などを出品し、90人のディストリビューターやシェフなどと商談した。
今回の商談会は、現地渡航者(7社・団体)との対面での商談に加え、日本からのオンライン参加者(10社)によるハイブリッド形式で実施され、60件を超える活発な商談が行われた。参加企業からは、次のようなコメントがあった。
- アリゾナ州は未知の市場であったが、新たな可能性を感じた。現地の食文化を直接知ることで、提案すべき商品が明確になった。(現地渡航者)
- これまでの商談会では、シェフから高評価を得ても仲介者が不在で商談が進まないことが多かったが、今回は同じ会場内にディストリビューターがいたことで、商談が前進した。(現地渡航者)
- 自社だけではリーチできないバイヤーに出会えたし、現地に行かずとも、試食を提供しながら商談ができる貴重な機会だった。商品を気に入ってくれた米国のディストリビューターの支店から日本の本社に連絡してもらい、既に話が進んでいる。(オンライン参加者)
- 興味を持ってくれた企業と直接話せたことで、評価ポイントを具体的に把握できたのは大きい。(オンライン参加者)



アリゾナの食品バイヤーから聞こえた声
来場したバイヤーからは「(レストランの)料理人の数が限られているため、開けたらすぐ食べられるような利便性の高い商品が求められている」「閉鎖的で新しいものを受け入れづらい州民性があるので、どういう切り口で新しいものを入れていくかが重要」「メニュー提案や、(日本の小売価格ではなく)レストランでの販売価格やディストリビューターへの売値などの参考価格があるとより良い」といった声が聞かれた。
来場バイヤー63人(注)に実施したアンケートでは、「日本製品に関する新しい情報を普段どのように見つけるか」という質問に対し、63.3%の回答者が「ディストリビューター経由での情報収集」と回答した。「日本の食材を扱う際の課題や懸念」については、46.7%の回答者が「流通」、33.3%が「価格」と回答し、バイヤーにとっての情報収集や流通においても、ディストリビューターの果たす役割の重要性が伺えた。
「レストランで人気のあるメニュー、またはお気に入りの日本食」としては、50%が寿司(すし)・刺し身系、15.6%がラーメンと回答。「近い将来に試してみたい日本製品またはスパイス」としては、「かんきつ(ゆず・だいだい)」(18.9%)、「抹茶・お茶」(13.5%)、「香辛料・スパイス」(10.8%)、「魚介・海産物」(10.8%)が上位に上がった。本商談会で日本食品を試食して最も魅力を感じた点および最も重視している点としては、いずれも8割以上が味と回答した。

看板(ジェトロ撮影)

半導体産業で急成長するアリゾナへ日本の水産品を
アリゾナ州は、台湾積体電路製造(TSMC)、インテル、アムコー・テクノロジーをはじめ多くの半導体関連企業が拠点設立や投資拡大を進めており、米国内でも半導体産業の一大集積地として注目を集めている。10月7~9日には、北米最大の半導体関連の展示会「SEMICON WEST」が初めてサンフランシスコを離れて同州にて開催された。出展者数は1,500社以上(前年比45%増)、登録者数は約3万5,000〜4万人に達し、過去18年間で最大規模となった(2025年10月20日付ビジネス短信参照)。また、来年1月には台北―フェニックス間の直行便開設も予定されている(2024年5月13日付地域・分析レポート参照)。半導体産業を中心に国内外からビジネス客の往来が増えることで、食の多様性もより求められることになるとみられる。今回の商談会では、一部の来場バイヤーからは景気の後退を懸念する声も聞かれたが、同州の食品市場が今後伸びていくと見込む声が大半を占めた。
来場バイヤーアンケートでは、96.6%が「将来同様のイベントに参加したい」と回答し、79.3%が「今回の商談会で新たにラインアップに追加することが決定した商品がある」と答えた。アリゾナ州のバイヤーから日本の水産品や水産加工品に対する高い関心が示されており、半導体産業で急成長する同州の食品市場にもポテンシャルが感じられた。
- 注:
- アンケートに回答したバイヤーの内訳は、48.4%がレストラン、32.3%がディストリビューター、12.9%が小売り、6.4%がマーケティング担当だった。
- 執筆者紹介
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ジェトロ愛媛
数実 奈々(かずみ なな) - 2021年、ジェトロ入構。ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外展開支援部フロンティア開拓課、ジェトロ・アクラ事務所を経て現職。




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