GJ州メーサナで地方版バイブラント・グジャラートを初開催(インド)

2025年11月10日

インド西部グジャラート(GJ)州メーサナ市近郊のガンパット大学で、10月9~13日にかけて、投資誘致イベント「バイブラント・グジャラート・リージョナル・カンファレンス(VGRC)」および「バイブラント・グジャラート・リージョナル・エキシビション(VGRE)」が開催された。GJ州政府は、インド最大級の投資誘致イベントとして定着している「バイブラント・グジャラート・グローバル・サミット(VGGS)」を地方で再現することを目的に、州内4都市で地方版を開催する方針を決定しており(2025年9月3日付ビジネス短信参照)、今回のイベントはその第1弾となる。

地域振興を通じて「メーク・イン・インディア」を実現

開催地メーサナ市は、アーメダバード市の北北東約80キロに位置するGJ州北部の中心都市だ。同地域では農業・酪農、食品加工などの産業が盛んなほか、パキスタンとの国境沿いに広がる塩性湿地のそばに位置するチャランカ村には設備容量700メガワットを超える巨大ソーラーパークがあり、再生可能エネルギー分野の投資も活発だ。スズキ(四輪)やホンダ(二輪)といった自動車産業が集積するマンダル・ベチャラジ地域からも近い。

日本はパートナーカントリーとしてVGRCに参加し、10月9日の開会式にはブペンドラ・パテルGJ州首相やアシュウィニ・バイシュナウ鉄道兼通信兼電子情報技術相のほか、小野啓一駐インド日本大使が出席した。小野大使はグジャラーティー語と英語を交えてあいさつし、日本が協力を強化していく分野として、(1)自動車をはじめとする製造業、(2)半導体、(3)バイオガスなどの再生可能エネルギー、(4)地域間交流・人材交流を挙げた。パテル州首相はVGRCの目的について、「GJ州内の各地域で生産された製品を強化することで『自立したインド』(注)というビジョンを実現し、地域レベルでの産業投資促進により『メーク・イン・インディア、メーク・フォー・ザ・ワールド』というモディ首相のスローガンを具体化するものだ」と述べ、開会式を締めくくった。


VGREの様子(ジェトロ撮影)

ジェトロはジャパンパビリオンを設置

ジェトロは協力機関として、VGREにジャパンパビリオンを設置するとともに、ジャパンセッションを開催した。ジャパンパビリオンには日本企業・日系企業7社に加え、2024年12月にGJ州と友好協定を締結した静岡県(2024年12月26日付ビジネス短信参照)が出展し、それぞれの製品・サービスや取り組みを積極的にPRした。参加企業からは、「地方都市での開催にもかかわらず来場者が多く、具体的な成果が期待できる」「次回以降もぜひ参加したい」といった前向きなコメントが寄せられた。日本以外では、韓国のKOTRA(大韓貿易投資振興公社)やベトナム政府も国別ブースを設置した。


ジャパンパビリオンの様子(ジェトロ撮影)

10月9日に開催したジャパンセッションでは、静岡県や出展企業によるプレゼンテーションのほか、スズキ・モーター・グジャラート(SMG)の投資が地域社会にもたらした影響について、インド経営大学院アーメダバード校(IIMA)のビシュワナート・ピンガリ教授とアナンド農村経営研究所(IRMA)のヒップ・ナタン教授がそれぞれ報告を行った。IIMAの調査によると、2014年のSMG設立以降、サプライヤーの投資・操業による波及効果も含め、2兆2,900億ルピー(約3兆8,900億円、1ルピー=約1.7円)の直接・間接的経済効果があったという。さらに、IRMAがアーメダバード県、メーサナ県、シュレンドラナガル県の村を対象に実施した調査では、SMGの投資により、健康面で77%、教育面で67%、資産・収入面で21%、生計面で77%、生活水準面で87%の住民がポジティブな影響を受けたとされる。SMGが立地するマンダル・ベチャラジ地域は、従来は産業発展の遅れた地域だったが、日本企業による大規模投資を契機に自動車産業のハブへと成長し、地域開発のモデルケースとなっている。

覚書の締結は1,212件、投資総額3.24兆ルピーに

GJ州政府の発表によると、今回のVGRCでは1,212件の覚書(MoU)が締結され、投資総額は3兆2,400億ルピー)に上った。これには、国営火力発電公社(NTPC)子会社による再生可能エネルギー分野の投資や、インド国鉄による鉄道インフラ整備計画も含まれている。日本企業では、みずほ銀行がGJ州エレクトロニクス・ミッション(GSEM)との間で、半導体分野における日本企業の投資促進支援に向けた覚書を締結した。

VGRCは、今後も地域ごとの産業に焦点を当て、2026年1月8~9日に西部ラージコート、4月9~10日に南部スーラト、6月10~11日に中央バドーダラでの開催が予定されている(表参照)。なお、当初2026年1月に予定されていたVGGSは、2027年に州都ガンディナガルで開催される見通しだ。また、今回の会期中には、ソーラーパークや、スズキやホンダを含む有力企業の生産拠点、周辺観光地への視察ツアーも併催された。視察ツアーは次回以降も実施予定であり、VGREへの出展と併せて日本企業にとってGJ州各地での新たなビジネスチャンスを探る契機となるだろう。

表:地方版バイブラント・グジャラートの開催予定
場所 日程 テーマ
ラージコート 2026年1月8~9日 セラミック、エンジニアリング、港湾・ロジスティクス、漁業、観光、化学・石油化学、農産物・食品加工、鉱物
スーラト 2026年4月9~10日 化学・石油化学、テキスタイル、宝石・ジュエリー、観光、農産物・食品加工、電子システム設計・製造
バドーダラ 2026年6月10~11日 機器・機械(電気機器および半導体を含む)、教育・訓練、IT・ITeS、バイオテクノロジー・バイオ医薬品、航空宇宙・防衛、フィンテック、化学・石油化学、製薬、テキスタイル・アパレル、観光、自動車・自動車部品、重要鉱物

出所:GJ州資料


注1:
インドのナレンドラ・モディ首相が、2020年5月12日の演説で初めて打ち出した経済構想。経済、インフラ、テクノロジー主導のシステム、世界最大の民主主義国インドの強みの人口、需要喚起の5つの柱で成り立つ(2020年5月14日付ビジネス短信参照)。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所長
吉田 雄(よしだ ゆう)
2005年、ジェトロ入構。本部、ジェトロ徳島、ジャカルタ事務所、ジェトロ茨城などを経て、2024年5月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所
飯田 覚(いいだ さとる)
2015年、ジェトロ入構。農林水産食品部、ジェトロ三重を経て、2021年10月から現職。