オランダの乗用車販売は2024年に小幅な増加、EVが着実に浸透

2025年8月18日

2024年のオランダでの乗用車新車登録台数は、前年比3.2%増の38万1,626台となり、2020年から2022年までの3年連続の減少を経て、2年連続で販売台数が増加した。しかし、販売台数は2019年の新型コロナ禍前の水準である44万5,218台を依然として大幅に下回っている(図1参照)。一方、オランダの自動車の電気化は着実に進んでおり、バッテリー式電気自動車(BEV)の販売台数は16.0%増加し13万2,185台、ハイブリッド車〔プラグインハイブリッド車(PHEV)を含む〕も16.9%増加の16万243台となった。これらは、オランダの自動車販売全体の76.6%を占める(図2、3参照)。

2024年の乗用車新車販売は2年連続で増加

オランダ自転車・自動車工業会(RAI)によれば、2024年の乗用車新車登録台数は前年比3.2%増の38万1,626台だった。

図1:乗用車新車登録台数の推移

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)(2025年4月30日発表資料)

2024年の増加分1万1,992台のほぼすべては、2024年12月の販売による。この月には3万7,087台の車が登録され、2023年12月(2万6,439台)に比べて1万648台(40.3%)増加した。この理由は、個人用電気自動車(EV)に対する補助金制度「SEPP(Electric Passenger Car Subsidy Scheme for Individuals)」が2024年12月末に廃止されたためだ。
2025年については、RAIとオランダ自転車・自動車商業組合(BOVAG)は2024年10月時点において、新車販売が安定化し、36万7,000台の新車(乗用車)が登録されると予測。BEVの市場シェアは、SEPPの廃止と、特に個人所有者におけるEVの税制優遇措置に関する不確実性により、当時の2024年シェアの予測値である約33%のレベルで2025年も安定化する可能性が高いとした(2024年6月19日付地域・分析レポート参照)。

BOVAG会長のベルト・デ・クローン氏は次のように述べている。「不確実性が続く中、2024年にEVが市場ポジションを強化できたことは励みになる。欧州の二酸化炭素(CO2)排出基準が批判を受けており(2025年4月7日付ビジネス短信参照)、オランダはEVに関する長期的なビジョンを欠いている中、2025年までに一貫した方針を打ち出すことは、成長を維持し、気候目標を達成可能な範囲内に保つために不可欠だ」

2024年の乗用車新車登録台数の燃料別内訳をみると、ハイブリッド車のシェアが42.0%と最も多く、次いでBEVが34.6%、ガソリン車が21.8%だった(図2参照)。過去6年間の新車登録の推移をみても、ガソリン車とディーゼル車は顕著にシェアを減らしている(図3参照)。

図2:2024年新規に登録された乗用車の燃料別登録台数とシェア(%)
ハイブリッド16万243台42%、BEV13万2,185台34.6%、ガソリン8万3,245台21.8%、ディーゼル3,765台1%、液化石油ガス(LPG)2,188台0.6%。

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

図3:新規に登録された乗用車の燃料別シェアの推移
2019年、ガソリン71%、ディーゼル7.3%、液化石油ガス(LPG)0.1%、ハイブリッド7.6%、BEV13.8%。2020年、ガソリン57.7%、ディーゼル3.6%、液化石油ガス(LPG)0.5%、ハイブリッド17.6%、BEV20.5%。2021年、ガソリン45.6%、ディーゼル2.1%、液化石油ガス(LPG)0.7%、ハイブリッド31.8%、BEV19.8%。2022年、ガソリン 38.3%、ディーゼル1.5%、液化石油ガス(LPG)0.7%、ハイブリッド36.0%、BEV23.5%。2023年、ガソリン30.4%、ディーゼル1.1%、液化石油ガス(LPG) 0.6%、ハイブリッド37.1%、BEV30.8%。2024年、ガソリン21.8%、ディーゼル1 %、液化石油ガス(LPG)0.6 %、ハイブリッド42%、BEV 34.6%。

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)(2025年4月11日発表資料)

商用車〔車両総重量が3,500キログラム(kg)未満のバン〕の新車登録台数は、2024年に急増し、2023年の6万9,295台から87.9%増の13万207台に達した。BOVAGによると、この増加は2つの要因に起因する。第1に、商用配送車両に対するBPM(購入税)の免除が2025年1月1日に終了したためだ。平均的なディーゼルバンはおよそ1万5,000ユーロの価格上昇(一部報道によると)が発生する。第2に、2025年1月以降からオランダの主要都市で複数のゼロエミッション・ゾーン(注)が導入され、高排出のバンやトラックの通行が制限されるためだ。BOVAGとRAIは、2024年の異例の高販売台数により、2025年は3,500kg未満の商用車の販売台数が急減すると予測。3,500kg以上の商用車の販売台数は、2023年の1万6,529台から2024年に1万9,574台へと18.4%増加した。

2024年の中古車の販売台数は204万7,720台に増加し、新型コロナ禍で販売台数が増えた2020年を超える台数となった。

なお、2025年1月1日時点の保有台数の燃料別シェアを見ると、ガソリン車74.0%、ディーゼル車7.3%、ハイブリッド車11.5%、BEV6.1%の順になっている(図4、5参照)。

図4:2025年1月1日時点の自動車保有台数の燃料別シェア
ガソリン74%、ハイブリッド11.5% 、ディーゼル7.3% 、BEV6.1% 、液化石油ガス(LPG)1.0% 、圧縮天然ガス(CNG)・液化天然ガス(LNG)0.1% 、バイオ燃料0%、水素 0%。

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

図5:燃料別乗用車保有台数の推移(各年1月1日時点)
台数は1,000台以下を四捨五入。2019年、ガソリン699万6,000台、ディーゼル133万5,000台、液化石油ガス(LPG)11万9,000台、ハイブリッド27万9,000台、BEV4万5,000台、圧縮天然ガス (CNG)・液化天然ガス(LNG)1万台、バイオ燃料 3,000台。2020年、ガソリン715万台、ディーゼル124万9,000台、液化石油ガス(LPG)11万台、ハイブリッド30万8,000台、BEV10万8,000台、圧縮天然ガス (CNG)・液化天然ガス(LNG)1万台、バイオ燃料4,000台。2021年、ガソリン724万7,000台、ディーゼル112万8,000台、液化石油ガス(LPG)10万4,000台、ハイブリッド37万3,000台、BEV18万3,000台、圧縮天然ガス (CNG)・液化天然ガス(LNG)1万台、バイオ燃料4,000台。2022年、ガソリン726万4,000台、ディーゼル101万3,000台、液化石油ガス(LPG)9万9,000台、ハイブリッド50万台、BEV25万3,000台、圧縮天然ガス (CNG)・液化天然ガス(LNG)9,000台、バイオ燃料4,000台、水素1,000台。2023年、ガソリン722万5,000台、ディーゼル90万6,000台、液化石油ガス(LPG)9万8,000台、ハイブリッド65万台、BEV34万1,000台、圧縮天然ガス (CNG)・液化天然ガス(LNG)9,000台、バイオ燃料4,000台、水素1,000台。2024年、ガソリン719万8,000台、ディーゼル79万5,000台、液化石油ガス(LPG)9万7,000台、ハイブリッド84万9,000台、BEV46万2,000台、圧縮天然ガス (CNG)・液化天然ガス(LNG)8,000台、バイオ燃料4,000台、水素1,000台。2025年、ガソリン712万1,000万台、ディーゼル70万1,000台、液化石油ガス(LPG)9万4,000台、ハイブリッド110万6,000台、BEV58万7,000台、圧縮天然ガス (CNG)・液化天然ガス(LNG)7,000台、バイオ燃料4,000台、水素1,000台。

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

起亜が2024年にトップブランドの座を奪還

2024年において、起亜がオランダで最も売れているブランドとなり(販売台数3万4,881台、市場シェア9.1%)、5位に後退したフォルクスワーゲン(VW)から首位の座を奪還した。2位のボルボ(89.7%増)と4位のテスラ(54.8%増)は、大幅な増加を示した(表1参照)。

表1:2024年のブランド別新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー名 2023年 2024年 シェア 前年比
1 起亜 33,506 34,881 9.1 4.1
2 ボルボ 16,351 31,017 8.1 89.7
3 Toyota 25,580 30,881 8.1 20.7
4 Tesla 19,383 30,010 7.9 54.8
5 Volkswagen 34,944 26,964 7.1 △ 22.8
6 シュコダ 20,463 21,401 5.6 4.6
7 BWM 20,527 21,347 5.6 4.0
8 Hyundai 18,762 19,328 5.1 3.0
9 ルノー 20,378 18,801 4.9 △ 7.7
10 プジョー 19,394 15,835 4.1 △ 18.4
合計(その他含む) 369,634 381,626 100.0 3.2

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

モデル別では、テスラ「モデルY」(1万9,058台、市場シェア:5.0%)が、2位の起亜「ニーロ」(1万914台、2.9%)、3位のボルボ「EX30」(1万802台、2.8%)を大きく引き離して、首位を継続した(表2参照)。

表2:2024年(1-12月)のモデル別新車登録台数(単位:台、%)
メーカー モデル 台数 シェア
テスラ モデルY 19,058 5.0
起亜 ニーロ 10,914 2.9
ボルボ EX30 10,802 2.8
テスラ モデル3 10,702 2.8
起亜 ピカント 8,370 2.2
合計(その他含む) 381,626 100.0

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)(2025年1月発表)

日本ブランドの新車登録台数は前年比9.1%増加の5万7,658台で、オランダの新車登録台数全体に占める日本車のシェアは15.1%と、2023年と比較して0.8ポイント増加した(表3参照)。トヨタ、スズキ、三菱自動車、ホンダ、レクサスは2桁以上の成長率で好調であった一方、マツダ、日産、スバルの販売台数は大幅に減少した。

表3:日本ブランド別新車登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 メーカー名 2023年 2024年 シェア 前年比
3 トヨタ 25,580 30,881 8.1 20.7
15 スズキ 6,882 8,427 2.2 22.4
17 マツダ 8,563 6,684 1.8 △ 21.9
20 日産 7,235 5,348 1.4 △ 26.1
22 三菱 3,080 4,085 1.1 32.6
33 ホンダ 872 1,101 0.3 26.3
34 レクサス 532 1,068 0.3 100.8
48 スバル 91 64 0.0 △ 29.7
合計 52,835 57,658 15.1 9.1

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

BEV販売増加が鈍化し、PHEVが普及

BEVの販売台数は、2024年に16.0%増加して13万2,185台となったが、2023年の前年比55.6%増と比較すると増加は鈍化した。ハイブリッド車の販売台数は、2024年に16.9%増加し16万243台(図6参照)となった。内訳は、マイルドハイブリッド車(MEV)が10.8%増加して5万5,113台、 ハイブリッド電気自動車(HEV)は12.0%増加して5万2,777台、人気が高まっているPHEVの販売台数は30.1%増の5万2,350台だった。

図6:EV新規登録台数の推移
2019年、BEV61,547台、ハイブリッド33,741台、EV合計95,288台。2020年、BEV72,859台、ハイブリッド62,474台、EV合計135,333台。2021年、BEV63,658台、ハイブリッド102,529台、EV合計166,187台。2022年、BEV73,250台、ハイブリッド112,393台、EV合計185,643台。2023年、BEV113,981台、ハイブリッド137,152台、EV合計251,133台。2024年、BEV132,185台、ハイブリッド160,243台、EV合計292,428台。

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

EVの保有台数は2024年に131万台超となり、2025年1月時点では約170万台だった(図7参照)。

図7:EV保有台数の推移(各年1月1日時点)
2019年、BEV45,066台、 ハイブリッド255,994台、EV合計301,060台。2020年、BEV107,221台、 ハイブリッド278,832台、EV合計386,553台。2021年、BEV183,143台、 ハイブリッド307,591台、EV合計490,734台。2022年、BEV252,635台、 ハイブリッド373,488台、EV合計626,123台。2023年、BEV340,583台、 ハイブリッド499,656台、EV合計840,239台。2024年、BEV462,307台、 ハイブリッド650,144台、EV合計1,112,451台。2025年、BEV587,185台、 ハイブリッド1,150,604台、EV合計1,692,789台。

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)

RAIによると、2024年に最も販売されたBEVは前年と同様にテスラの「モデルY」で1万9,058台、BEV市場でのシェアは14.4%だった(表4参照)

表4:2024年のモデル別BEV新車登録台数(単位:台、%)
モデル名 台数 BEV市場での
シェア
テスラ モデルY 19,058 14.4
ボルボ EX30 10,802 8.2
テスラ モデル3 10,702 8.1
起亜 ニーロ 5,402 4.1
ボルボ XC40 4,873 3.7

出所:オランダ自転車・自動車工業会(RAI)(2025年1月1日発表)

着実に拡大する充電ポイント

充電インフラについては、2024年12月時点で合計 99万5,350の充電ポイントがあり、うち急速充電ポイントの数は5,741ポイントであった。

図8:充電ポイント数の推移(各年末)
2019年、民間153,671基、公共・半公共49,746基、充電ポイント数204,445。2020年、民間211,428基、公共・半公共62,176基、充電ポイント数275,299。2021年、民間297,972基、公共・半公共82,514基、充電ポイント数382,714。 2022年、民間345,757基、公共・半公共111,218基、充電ポイント数460,046。2023年、民間588,990基、公共・半公共140,864基、充電ポイント数734,152。 2024年、民間811,646基、公共・半公共177,963基、充電ポイント数995,350。

出所:オランダ企業庁

ゼロエミッション車を奨励する政府の政策

2023年の総選挙後、自由党(PVV)、自由民主人民党(VVD)、新社会契約党(NSC)、農民市民運動(BBB)の4党は、2024年5月に連立政権を樹立することで合意し、EV購入支援の継続などを盛り込んだ連立枠組み合意(メインライン合意)が提示された。その結果、SEPPは2024年12月末で終了したものの、BEVに対する自動車税(MRB)の減免は継続された(2024年までは免税、2025年は75%の減税、2026年から2029年までは25%の減税、その後は減税なし)。

2025年4月25日に、ロバート・ティーマン・インフラ・水管理相は、EV購入を刺激するための次の追加の政策措置を含む書簡を下院に提出した。

  1. 前述のBEVに対するMRBの減税を2026~2028年は25%から30%に拡大、2029年は現状の25%を維持。
  2. 企業が従業員に内燃機関搭載の社用車を支給することを阻止するための新たな財政措置の導入。

現行の基本的なルールでは、社用車の私的利用が年間500キロメートル(km)を超える場合、内燃機関搭載車は車両定価の22%、EVは17%を課税所得とみなし、従業員は所得税を支払う。本書簡では、2027年以降、内燃機関搭載車の場合のみ、現行ルールに基づく従業員への課税に加えて、企業にも車両の定価の22%のうち52%を支払うことを課す措置を提案した。企業の従業員への内燃機関搭載の社用車の提供に大きな企業負担が課せられることになる。社用車としてはEVが唯一の合理的な選択肢となるようにする目的だ。

しかし、前述の政策措置が実施される前に、オランダ政府はスホーフ政権が、2025年6月3日に崩壊したため、オランダのEV政策がどうなるかは2025年10月29日の総選挙の結果次第となる。


注:
オランダの地方自治体は2025年1月1日から、市内にトラックとバンを対象としたゼロエミッション・ゾーンを導入することができる。同ゾーン内ではゼロエミッションのトラックとバン以外の通行を禁止することができる。ただし、一部の車種については2030年までの経過措置や免除がある。2025年1月1日以前に登録された高排出量のバンとトラックのみが、2030年までの経過措置や免除の対象となる 。
執筆者紹介
ジェトロ・アムステルダム事務所長
奥井 浩平(おくい こうへい)
2001年、ジェトロ入構。金沢貿易情報センター、シカゴ事務所、対日投資部、岡山事務所長、ECビジネス課長、スタートアップ支援課主幹などを経て、2024年12月から現職。