2022年の乗用車新規登録台数は前年比6.0%減で低迷(ポーランド)

2023年10月4日

乗用車生産台数、新規登録台数ともに低迷

ポーランド国内の2022年の乗用車生産台数は前年比で約2.2%減少し、25万5,100台となった。6年連続で前年比減となり、2017年の51万4,700台からほぼ半減した。

また、ポーランド自動車工業会(PZPM)によると、2022年のポーランドの乗用車新規登録台数は前年比6.0%減の41万9,749台だった。乗用車新規登録台数は2013年以降、前年比で増加傾向が続き、2019年の55万5,598台がピークだった。2020年は新型コロナウイルス感染拡大、2022年はウクライナ戦争の影響や、半導体など自動車部品の不足などを背景に、過去10年間で2回(2020年、2022年)のみ前年比で減少した。また、自動車市場調査会社サマルによると、2022年はポーランドの乗用車価格が前年比で平均14.9%上昇した。それが、同年の新規登録台数の落ち込みにつながったと推測できる。

なお、乗用車の全新規登録台数の71.0%を占める法人向けは前年比9.9%減の29万8,176台となった。これに対し、個人向けは5.1%増の12万1,573台だった。

トヨタが首位で、市場シェアを拡大

メーカー・ブランド別にみると(表1参照)、トヨタが7万3,862台で、前年比0.9%減となったものの、3年連続で首位を維持した。シュコダは4万2,067台(前年比6.7%減)で2位にとどまったが、トヨタに1位を奪われて以降、市場シェアの差は拡大している。韓国のメーカーは引き続き好調で、3位の起亜は3万3,714台(4.3%増)で、4位のフォルクスワーゲン(VW)(3万814台、10.5%減)を抜き返し、初めてトップ3位入りを果たした。現代は2万6,887台(0.2%増)で5位を維持した。

表1:ポーランドの乗用車新規登録台数(メーカー・ブランド別)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 メーカー・ブランド 2021年 2022年
台数 シェア 前年比
1 トヨタ 74,512 73,862 17.6 △ 0.9
2 シュコダ 45,065 42,067 10.0 △ 6.7
3 起亜 32,323 33,714 8.0 4.3
4 フォルクスワーゲン(VW) 34,420 30,814 7.3 △ 10.5
5 現代 26,838 26,887 6.4 0.2
6 BMW 23,981 23,806 5.7 △ 0.7
7 メルセデス・ベンツ 20,016 21,356 5.1 6.7
8 ダチア 19,897 20,718 4.9 4.1
9 アウディ 18,973 19,323 4.6 1.8
10 フォード 19,109 16,426 3.9 △ 14.0
11 ルノー 16,838 14,559 3.5 △ 13.5
12 ボルボ 11,014 10,947 2.6 △ 0.6
13 プジョー 10,637 9,794 2.3 △ 7.9
14 オペル 14,862 9,343 2.2 △ 37.1
15 マツダ 7,376 7,255 1.7 △ 1.6
16 フィアット 9,079 6,443 1.5 △ 29.0
17 シトロエン 7,678 6,127 1.5 △ 20.2
18 日産 7,709 6,028 1.4 △ 21.8
19 レクサス 6,154 5,657 1.3 △ 8.1
20 スズキ 10,316 5,149 1.2 △ 50.1
その他 29,850 29,474 7.0 △ 1.3
合計 446,647 419,749 100.0 △ 6.0

出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成

トップ20位で10%以上のシェアを持つのはトヨタ(17.6%)とシュコダ(10.0%)のみで、5%以上のシェアを持つメーカー・ブランドは7社あるが、市場が細分化されている。

20位以内の日系メーカーの市場シェアは合計23.2%だった。1位のトヨタを除くと、マツダが20位から15位に順位を上げ、レクサスがトップ20位入りを果たすことができた。一方、スズキが50.1%減と大幅に減少し、15位から20位に順位を下げた。日産は18位を維持した。

なお、車のタイプ別にみると、スポーツ用多目的車(SUV)やクロスオーバーの市場シェアが前年比で拡大した一方、セダンのシェアは縮小した。

メーカー・モデル別にみると(表2参照)、トヨタの5車種がトップ10位に入り、合わせて14.7%の市場シェアとなった。トヨタの「ヤリスクロス」は新型コンパクトSUVとして人気が上昇しており、前年比の8倍と最も販売台数が伸びた。一方、シュコダの「ファビア」(前年比27.7%減、順位は前年から6つ低下)、フォルクスワーゲン(VW)の「ティグアン」(17.0%減、順位は前年から4つ低下)の新規登録台数が大きく減少した。

表2:ポーランドの乗用車新規登録台数(メーカー・モデル別) (単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 メーカー・モデル 2021年 2022年
台数 シェア 前年比
1 トヨタ・カローラ 22,095 21,371 5.1 △ 3.3
2 トヨタ・ヤリス 14,479 12,478 3 △ 13.8
3 起亜・スポーテージ 7,658 11,176 2.7 45.9
4 ダチア・ダスター 12,460 10,958 2.6 △ 12.1
5 シュコダ・オクタビア 13,116 10,893 2.6 △ 16.9
6 トヨタ・RAV4 10,992 10,580 2.5 △ 3.7
7 現代・ツーソン 9,589 9,197 2.2 △ 4.1
8 現代・I30 7,793 9,142 2.2 17.3
9 トヨタ・ヤリスクロス 1,117 9,033 2.2 708.7
10 トヨタ・C-HR 9,662 8,018 1.9 △ 17.0
11 フォルクスワーゲン・T-Roc 7,489 7,755 1.8 3.6
12 シュコダ・ファビア 10,605 7,670 1.8 △ 27.7
13 起亜・シード 7,607 7,177 1.7 △ 5.7
14 ダチア・サンデロ 5,209 6,049 1.4 16.1
15 シュコダ・カミック 4,831 5,675 1.4 17.5
16 シュコダ・スペルブ 5,357 5,403 1.3 0.9
17 ボルボ・XC60 4,209 5,365 1.3 27.5
18 フォルクスワーゲン・ティグアン 5,921 4,912 1.2 △ 17.0
19 起亜・Xシード 4,118 4,442 1.1 7.9
20 シュコダ・コディアック 3,281 4,365 1 33
その他 279,059 248,090 59.1 △ 11.1
合計 446,647 419,749 100 △ 6.0

出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成

プレミアムブランドが好調

なお、一般乗用車の登録台数は前年比8.9%減に転じたものの、高級車と言われるプレミアムブランドは強く、5.2%増となった。KPMGは2023年2月6日付の記事で、プレミアムブランド市場の成長の要因は主に個人客であると分析している。前述のメーカー・ブランド別新規登録台数トップ20位のうち、プレミアムブランドは計5ブランド(BMW、メルセデス・ベンツ、アウディ、ボルボ、レクサス)で、市場の約20%弱を占めた。そのうち、7位のメルセデス・ベンツはトップ20位の中で最大の成長を記録し、前年比6.7%増となった。

代替燃料自動車の普及が進む

新規登録台数を燃料種別にみると(表3参照)、ガソリン車とディーゼル車はそれぞれ前年比12.5%減の20万3,100台と、14.7%減の4万6,500台となった。それらの市場シェアは低下傾向で推移しているものの、前年比では減少ペースがわずかに緩和し、合計で6割弱を占めた。

一方、代替燃料自動車は6.2%増の17万200台だった。そのうち、マイルドハイブリッド車(MHEV)は1.3%減の7万1,331台、LPG(液化石油ガス)自動車は9.4%減の1万2,246台、燃料電池車(FCEV)は44.6%減の41台と減少した。他方、ハイブリッド車(HEV)は12.9%増の6万5,617台、バッテリー式電気自動車(BEV)は59.2%増の1万1,293台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は5.8%増の9,664台といずれとも登録台数を伸ばし、代替燃料自動車の増加に貢献した。

表3:燃料車別の登録台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
燃料種別 2021年 2022年
台数 シェア 台数 シェア 前年比
ガソリン車 232,000 51.9 203,100 48.4 △ 12.5
ディーゼル車 54,500 12.2 46,500 11.1 △ 14.7
代替燃料自動車 160,200 35.9 170,200 40.5 6.2
階層レベル2の項目MHEV 72,257 16.2 71,331 17.0 △ 1.3
階層レベル2の項目HEV 58,097 13.0 65,617 15.6 12.9
階層レベル2の項目LPG 13,522 3.0 12,246 2.9 △ 9.4
階層レベル2の項目BEV 7,092 1.6 11,293 2.7 59.2
階層レベル2の項目PHEV 9,138 2.0 9,664 2.3 5.8
階層レベル2の項目FCEV 74 0.0 41 0.0 △ 44.6

注:ガソリン車、ディーゼル車、代替燃料自動車の台数は概数。
出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成

代替燃料自動車のうち、前年から最大の成長を見せたBEV市場の拡大には、2021年にポーランド政府が導入した、BEVなどのゼロエミッション車購入助成制度(「マイEV」プログラム)が一役買っていると考えられる。また、ポーランド代替燃料自動車協会(PSPA)によると、ポーランド市場に参入しているBEVのモデル数は急増しており、2022年には前年比38%増の108車種を記録したが、そのうち83車種が乗用車、25車種がバンだった。BEVの人気車をモデル別にみると、首位となったテスラ「モデル3」に次いで、2位はフォード「マスタング・マッハE」、3位は日産「リーフ」、4位は起亜「EV6」、5位はシュコダ「エニヤックiV」と続いた。なお、ポーランドのエレクトロモビリティ市場では、法人所有車の存在感が増しており、2022年のBEV(乗用車)の新規登録台数のうち約78%が法人による登録で、その割合は2020~2021年よりも拡大した。レンタル事業者は約39%を占めた。

充電インフラ整備の不足が課題

EV市場の拡大に伴い、公共EV充電インフラ設備も増えている。PSPAによると、2022年末時点でポーランド国内に2,565カ所の公共充電ステーションと5,016基の充電器があった。公共充電ステーションは前年比で633カ所増加した。公共充電ステーションのうち41%が公共駐車場、17%がショッピングセンター、16%がホテル、11%がガソリンスタンドに設置されている。また、71%が普通充電器、29%が急速充電器だ。ただし、公共充電ステーションの44%が国内の主要15都市に集中しており、その配置分布の偏りは代替燃料自動車の普及を妨げているとみられる。実際に2022年11月末時点で、BEVとPHEV の登録台数の約46%が、人口30万人以上の都市に集中している。

PSPAは、2022年にはポーランドで例年より多くの充電インフラが設置されたものの、2023年7月に成立した、EUの代替燃料インフラ規則(AFIR)(2023年8月2日付ビジネス短信参照)で提示された設置目標を達成するには不十分だと指摘する。PSPAの2022年11月15日付の分析記事によると、同規則によってポーランドの公共EV充電インフラの設置容量は、2035年までに最大34倍に増加させる必要がある。PSPAは、ポーランドのインフラ整備は多くの制度的障壁によって制限されており、早急な法改正がなければ実現は不可能であることと、今後数年間のポーランドのインフラ整備は、主に行政の対応にかかっていることを指摘している。また、適切な数の充電ステーションがない限り、ポーランドの自動車市場の電動化が大規模に進むことは不可能だとしている。

執筆者紹介
ジェトロ・ワルシャワ事務所
ニーナ・ルッベ
2017年からジェトロ・ワルシャワ事務所に勤務。
執筆者紹介
ジェトロ・ワルシャワ事務所
マルタ・ゴロンカ
2022年からジェトロ・ワルシャワ事務所で勤務。ウクライナ経済やポーランドのエネルギー分野に関する調査などを担当。