2022年の新車販売台数は前年比3%増、EVは90.4%増(オーストラリア)

2023年9月29日

オーストラリアの2022年の新車販売台数は、新型コロナウイルスの影響によるサプライチェーンの途絶や配送の遅れの発生にもかかわらず、2021年同様、100万台を超えた。電気自動車(EV)も前年比で約90%増加した。新車販売台数に占めるEVの割合は、2021年の1.95%から2022年は3.81%となり、2023年6月時点では8.4%まで上がった。2022年後半には、新型コロナウイルス禍からの経済回復により消費が活発化する中、連邦政府、州政府とも、EV化推進の独自の戦略と支援策を発表し、実行に移している。

2022年の新車販売台数は前年比3%増

オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)によると、2022年の新車販売台数は、前年比3.0%増の108万1,429台だった(表1参照)。タイプ別にみると、乗用車は前年比8.4%減と落ち込んだが、近年人気の高いスポーツ用多目的車(SUV)は8.1%増と好調だった。総販売台数に占めるSUVの割合は53.1%と半数を占め、2021年(50.6%)から2.5ポイント上昇した。

表1:オーストラリアにおける新車販売台数(単位:台、%)(△はマイナス値)
タイプ 2020年 2021年 2022年 前年比
台数 増減率
乗用車 222,103 221,556 203,056 △ 18,500 △ 8.4
SUV 454,701 531,700 574,632 42,932 8.1
その他自動車 240,164 296,575 303,741 7,166 2.4
合計 916,968 1,049,831 1,081,429 31,598 3.0

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)

メーカー別にみると、トヨタが前年比3.3%増の23万1,050台で、過去3年で最高となった。新車販売台数に占める同社の割合は21.4%と、引き続き1位だった(表2参照)。2位のマツダは販売台数を落としたが(前年比5.3%減、9万5,718台、シェア8.9%)、3位の韓国の起亜(15.3%増、7万8,330台、7.2%)、4位の三菱自動車(13.7%増、7万6,991台、7.1%)が大きく販売台数を伸ばし、前年3位だった韓国の現代自動車(0.6%増、7万3,345台、6.8%)を追い抜いた。販売台数を最も伸ばしたのは、中国の上海汽車傘下のMGモーター(27.1%増、4万9,582台)で、スバル、いすゞUTEを抜き、7位に躍り出た。

表2:メーカー別新車販売台数(上位10社)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 企業名 2020年 2021年 2022年 前年比
台数 増減率
1 トヨタ 204,801 223,642 231,050 7,408 3.3
2 マツダ 85,640 101,119 95,718 △ 5,401 △ 5.3
3 起亜 56,076 67,964 78,330 10,366 15.3
4 三菱自動車 58,335 67,732 76,991 9,259 13.7
5 現代自動車 64,807 72,872 73,345 473 0.6
6 フォード 59,601 71,380 66,628 △ 4,752 △ 6.7
7 MGモーター 15,253 39,025 49,582 10,557 27.1
8 スバル 31,501 37,015 36,036 △ 979 △ 2.6
9 いすゞUTE 35,735 35,323 △ 412 △ 1.2
10 フォルクスワーゲン 39,266 40,770 30,946 △ 9,824 △ 24.1

出所: FCAI

モデル別では、トヨタのピックアップトラック「ハイラックス」が6万4,391台(前年比22.0%増)で、前年に続き最多だった(表3参照)。トヨタではこのほか「RAV4」「カローラ」「ランドクルーザー」がいずれも前年実績を割り込んだ。RAV4は3位を維持したが、カローラは前年の4位から6位に、ランドクルーザーは5位から7位に順位を下げた。三菱自動車の「トライトン」(ピックアップトラック)は前年比42.7%増(2万7,436台)と大きく販売台数を伸ばし、前年の9位から4位にランクを上げた。上位10モデルのうち7つが日本のメーカーで、メーカー別(表2)でも10社中5社が日本企業だった。

表3:モデル別新車販売台数(上位10モデル) (単位:台、%)(△はマイナス値)
順位 モデル名 2020年 2021年 2022年 前年比
台数 増減率
1 ハイラックス(トヨタ) 45,176 52,801 64,391 11,590 22.0
2 レンジャー(フォード) 40,973 50,279 47,479 △ 2,800 △ 5.6
3 RAV4(トヨタ) 38,537 35,751 34,845 △ 906 △ 2.5
4 トライトン(三菱) 18,136 19,232 27,436 8,204 42.7
5 CX-5(マツダ) 21,979 24,968 27,062 2,094 8.4
6 カローラ(トヨタ) 25,882 28,768 25,284 △ 3,484 △ 12.1
7 ランドクルーザー(トヨタ) 25,142 26,633 24,542 △ 2,091 △ 7.9
8 ディーマックス(いすゞ) 15,062 25,117 24,336 △ 781 △ 3.1
9 ZS(MG) 5,494 18,423 22,466 4,043 21.9
10 i30(現代) 20,734 25,575 21,166 △ 4,409 △ 17.2

出所:オーストラリア連邦自動車産業会議所(FCAI)

2022年のEV販売台数は過去最高を記録

オーストラリア電気自動車販売協会(EVC)が2023年7月に発表した年次報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(6.97MB)によると、2022年のEV販売台数(新車)は前年比90.4%増の3万9,353台だった(表4参照)。過去2年間(2020~2022年)で5.7倍に急増した。EVの販売急増を牽引するのがバッテリー式電気自動車(BEV)だ。2022年のBEV販売台数は前年比93.2%増の3万3,416台と全体の84.9%を占め、前年に続いて大きく伸びた(2021年は3.3倍)。プライグインハイブリッド車(PHEV)は前年比76.1%増の5,937台だった。2023年もEV販売台数は勢いを増しており、6月末までの半年間で4万6,624台と、2022年の実績を既に超えた。このうち、BEVは4万3,092台で、EV販売台数に占める割合は9割を超えた(92.4%)。PHEVは3,532台だった。内燃機関搭載車を含む全新車販売台数に占めるEVの割合は、2021年の1.95%から2022年は3.81%に拡大し、2023年(6月末時点)は8.4%を占めた。

表4:オーストラリアにおけるEV販売台数(単位:台、%)
項目 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
(6月末まで)
2022年の対2021年比
台数 増減率
BEV 1,053 5,292 5,215 17,293 33,416 43,092 16,123 93.2
PHEV 1,163 1,426 1,685 3,372 5,937 3,532 2,565 76.1
合計 2,216 6,718 6,900 20,665 39,353 46,624 18,688 90.4

出所: EVC

EVCによると、2022年の1年間で最も販売台数が多かったモデルトップ3は、1位が米国・テスラの「モデル3」(1万877台)、2位が同社「モデルY」(8,717台)、3位が中国・BYDの「ATTO 3」(2,113台)で、これら3モデルだけでEV全販売台数の55.1%を占めた。日本メーカーでトップ20入りしたのは、9位の三菱自動車「エクリプス クロス」(926台、シェア2.3%)のみだった。

また、2023年6月末時点で、オーストラリア国内で販売されているEVは27メーカーで、91モデルが投入されている。そのうち、59モデルがBEV、32モデルがPHEVとなっている。日本のメーカーでは、レクサス「ux300e」(BEV)、マツダ「MX-30 Electric」(BEV)、三菱自動車「アウトランダー」(PHEV)、日産自動車「リーフ」(BEV)などが販売されている。今後は、トヨタ「bZ4X」(BEV)、スバル「ソルテラ」(BEV)も販売される見込みだ。価格は前述の59モデルのうち、人気の車種(モデルトップ5)は4万オーストラリア・ドル(約376万円、豪ドル、1豪ドル=約94円)から7万豪ドルとなっており、メーカー販売価格が4万豪ドル以下のモデルはBYDの「Dynamic」とMGの「51 Excite」の2つしかない。

EV普及のためには、充電インフラを各地域に整備することが不可欠だ。国内では公共充電設備や設置場所の数が増加している。2022年末時点で全国2,392カ所に4,943基が設置されており、過去3年間で約2倍に増加した。設置場所のうち約80%が普通充電用、約15%が急速充電用、約4%が超急速充電用だ。EVCによると、EVの需要増加に向けて、今後さらなる整備が必要とされる。特に地方では、長距離走行に備えた充電ができるよう整備することや、都市では、家に充電器を設置できない住民向けの充電用設備などが必要とされている。

連邦政府、EV普及に向け燃費基準の策定目指す

前述のとおり、オーストラリアの新車販売台数に占めるEVの割合は年々増加しているものの、欧州や中国と比較するとまだ低い。また、国内排出の19%を占める運輸部門の温室効果ガス(GHG)排出量を削減するため、連邦政府はより環境に優しいEVの普及を目指し、2023年4月に同国初の「国家EV戦略」を発表した(2023年5月10日付ビジネス短信参照)。連邦政府は同戦略の下、普通自動車(新車)の燃費基準(注1)を新たに策定し、2023年末までに公表する予定だ。2023年4月から5月にかけて実施された燃費基準のパブリックコメント募集には、個人や団体から約1,200件のコメントが提出された。連邦政府は、大多数が燃費基準の導入を支持するものだったと発表した。

EV購入支援策の導入

連邦政府はEV購入を促進するために、支援策を次々と打ち出している。税制面では、2022年7月からEVに関わる免税措置を導入している。具体的には、EV〔新車かつ高級車にかかる奢侈(しゃし)自動車税(Luxury Car Tax)の課税対象外の車種〕を対象に、フリンジベネフィット税(FBT、注2)の免税制度を導入した。企業や団体などの社用車のEVへの切り替えを促進する狙いだ。EVCによると、企業は一般的に社用車を購入後3~4年で売却するため、中古市場に比較的新しい手頃な価格の中古EVが数年後に出回る可能性があり一般消費者にも今後メリットがあると分析している。さらに、連邦政府はEVに対する輸入関税5%についても撤廃した(詳細はオーストラリア国境警備隊資料参照PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.37MB))。これにより、EUや英国など、オーストラリアが自由貿易協定(FTA)を締結していない国からでも奢侈自動車税の対象車以外のEVの輸入関税はゼロとなった。また、連邦政府機関のクリーンエネルギー金融公社(CEFC)はノンバンクを通じて、9万豪ドル以下の新車EVの購入者に対して、金利を1%割り引く「グリーンカー・ローン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を提供している。

州政府の普及策は首都特別地域がリード

州政府も独自にEV普及の政策を打ち出している。EVCによると、普通自動車に関するEV普及の取り組みが最も進んでいるのが、首都特別地域、ニュー・サウスウェールズ州で、次いでクイーンズランド州、南オーストラリア州の順と分析している。中でも首都特別地域は、2022年7月に打ち出した「ゼロエミッション車戦略2022-2030」で、2030年までに普通自動車(light vehicles)の新車販売のうち80%をゼロエミッション車にしたり、2035年から内燃機関搭載車を段階的に廃止するとの目標を掲げている。この目標は、EUや米国などの政策と肩を並べるものとなっている。ほかにも、公共充電施設を2022年時点の38基から、2025年までに少なくとも180基まで拡大することや、2030年までにタクシーやライドシェア車といった商用車の内燃機関搭載車の導入を禁止するとしている。

クイーンズランド州は、2022年3月に「ゼロエミッション車戦略2022-2032」を打ち出し、2030年までに乗用車(passenger vehicles)の新車販売の50%をゼロエミッション車に、2036年までに100%まで引き上げる目標を掲げている。2023年に入って購入支援策を拡充し、年間所得が18万豪ドル以下の購入者に対して、これまでは3,000豪ドルの還付を行っていたが、7月から6,000豪ドルへと2倍に引き上げた。


注1:
燃費基準の適用対象は、普通自動車(車両総重量3.5トンまでの乗用車と貨物車)の新車とされ、1キロメートル当たり二酸化炭素(CO2)排出量について、ある一定の基準を満たさない自動車の国内販売はできなくなる。
注2:
雇用主が従業員に支給するベネフィットに対して、雇用主が支払う税金(詳細はジェトロの調査レポート「オーストラリアにおける企業設立および税務等に関するガイド【2023年改訂版】」参照)。EVの免税対象は、BEV、水素燃料電池車、プラグインハイブリッド車。詳細はオーストラリア国税局(ATO)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますウェブサイトを参照。
執筆者紹介
ジェトロ・シドニー事務所
青島 春枝(あおしま はるえ)
2022年6月からジェトロ・シドニー事務所勤務(経済産業省より出向) 。