オーストラリア、EV普及に向けて初の国家戦略を発表

(オーストラリア)

シドニー発

2023年05月10日

オーストラリア連邦政府のクリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相とキャサリン・キング・インフラ・交通・地方開発・地方政府相は4月19日 、同国初の国家EV戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。連邦政府は戦略の目的について、温室効果ガス(GHG)排出削減を実現するためにEV(電気自動車)の普及を目指し、より手頃で環境に優しい車を購入する選択肢を増やし国民の生活の質の改善を目指すとしている。また、戦略の3つの目標として、(1)手頃な価格で入手しやすいEVを増やすこと、(2)急速なEV普及に耐えうるシステム、インフラの構築、(3)EVに対する需要喚起、を挙げた。

また、同戦略の一環として、新車の燃費基準を新たに策定・導入すると発表した。インフラ・交通・地方開発・通信・芸術省(注)は5月31日までパブリックコメントPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を受け付けており、2023年末までに同基準を策定する予定だ。燃費基準の適用対象は普通自動車(車両総重量3.5トンまでの乗用車と貨物車)の新車とされ、1キロメートル当たり二酸化炭素(CO2)排出量の基準を満たさない自動車の国内販売はできなくなる。策定の背景として、連邦政府は「自動車メーカーは燃費基準のある国へEVなど環境に優しい車の供給を優先させる。オーストラリアには同基準がないため、結果としてEVの供給が後回しされ、車の購入時の選択肢が限定されている。先進国で基準をもたないのは、ロシアとオーストラリアだけだ」と説明した。なお、2022年のオーストラリアの新車販売台数に占めるEVの比率は3.8%で、中国29%、欧州21%、米国8%などと比較して低い(2023年4月28日記事参照)。

キング・インフラ相は、4月19日付の公共放送ABCのインタビューで、「燃費基準策定は、EVの量や種類を増やすことが目的で、SUV車(ガソリン車)やディーゼル車などの使用をやめさせるということではない。オーストラリアのすべての消費者が欲しい車を選択できるようにする」と説明した。

(注)キング大臣は、省の一部〔インフラ・交通・地方開発(Infrastructure, Trasport, Regional Development )〕を担当し、通信、芸術(Communications、Arts)はそれぞれ別の担当大臣がいる。

(青島春枝)

(オーストラリア)

ビジネス短信 240f18df8e06a0a8