ポップカルチャーイベント「Comic Con Africa」を開催(南ア)
若者層を中心にアニメ・ゲームファンが集結

2023年12月11日

南アフリカ共和国(南ア)で「Comic Con Africa」が開催された。会場はヨハネスブルク市内のコンベンションセンター、2023年9月22日から25日にかけての企画だった。

南アでのコミコンは、2018年に始まった。例年、ケープタウンとヨハネスブルクの2都市で開催されてきた。今年は4日間で入場者数が7万人超、300社以上の出展社を集めた。BtoC向けの漫画や映像作品やゲームなど、コンテンツ関連のブースが並んだ。イベントの様子はジェトロ・ヨハネスブルク事務所の動画(インスタグラム)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

来場者は若年層が半分以上

会場を回ると、アニメやゲーム好き若者層の熱気で満ちていた。その熱量には圧倒されるほどだ。来場者を年齢層別にみると、25歳~34歳が最大だった(全体の37.4%)。これに18歳~24歳(同34.0%)を合わせると、若年層が来場者の過半を占める。35歳~44歳(同17.0%)も一定数来場しており、一定の購買力のある層が集い、大人も楽しめるイベントだったことがわかる。18歳未満は3.8%に留まった。

会場には、コスプレショーや物販ブースのあるメインホールのほか、アーティストの作品が並ぶホールやゲームホールが設けられた。ゲームホールでは、任天堂とトヨタが大規模ブースを出展。トヨタは、スポンサーとしても名を連ねている。

会場の様子(ジェトロ撮影)


アニメ「イニシャルD」のトヨタ展示車
(ジェトロ撮影)

グッズ購入やゲーム体験のできる任天堂ブース
(ジェトロ撮影)

日本のコンテンツをPR

ジェトロはメインホール内の「Otaku Town」(注1)に、Japan Street(注2)の広報ブースを出展した。コンテンツ分野の市場拡大を期し、新たなバイヤー発掘のためライセンス商談会を実施。またBtoC向けにはアニメの視聴方法などに関し気軽に参加できる形でアンケートを実施した。

さらに、日本食(餅、すし、ラーメン)の試食ワークショップを開催。そのため、ジェトロのマッチング事業に参画している事業者Wemacoのバイヤー、ダニー・リー氏を招いた。南アでは一般的に、日本食へのなじみが薄い。ただし、アニメを見て食材や製品の名前は知っているという来場者が少なくなかった。多くは実物に興味津々の様子で、「実際に食ベられてうれしい」というコメントもあった。Wemacoの小売店「market kokoro」の物販ブースでは、ワークショップ後に日本食を買い求める来場者もいた。概ね盛況だったと言えるだろう。


Otaku Townエリア(ジェトロ撮影)

ジェトロブース内での参加型アンケート
(ジェトロ撮影)

出展者にとっても満足度の高いイベントに

主催者が実施したアンケートによると、「コミコンを楽しんだか」の設問に、75.9%の来場者が「はい(Positive)」と回答。「2024年も出展するか」には、90%を超える出展者が「可能性が高い(Likely)」と答えた(注3)。来場者にも出展者にも、満足度の高いイベントだったと言えそうだ。

2023年10月6日付地域・分析レポートでも取り上げた「ホビーアイランド」も、大型ブースを設けて出展。同社は今回、展示および即売会を行った。製品ラインナップは、過去の売れ行きをベースにマーベル作品と日本のアニメフィギア、半々ずつとした。同社のフランキー・チョウ氏に尋ねたところ、「売れ行きは過去最高を突破するかもしれないほどの勢いだった。特に『ワンピース』『鬼滅の刃』の人気が高いことがあらためて分かった」とのこと。「日ごろリーチできないアニメファンにも製品を知ってもらえる機会として、非常によいマーケティングの場となった」と締めくくった。

日本企業の出展事例もある。例えば任天堂は、ゲーム体験コーナーとゲーム機、ソフトや関連グッズを購入できる物販コーナーを設置した。ブース担当者に話を聞いたところ、南アで最も人気が高い同社のゲームは「ゼルダの伝説」シリーズ。そのほかに、ポケモンやマリオシリーズも人気という。任天堂のゲーム機は、一部のショッピングモールの店舗などで販売されてはいる。しかし、日本での販売価格の約1.5倍程度と高価なため、なかなか手が出せないのが実情だ。この点、担当者は「コミコンでゲームを体験しファンになってもらえると、親世代も巻き込んで顧客層の拡大が見込める」との感触を示した。また、市場に非正規品が多く出回っているという実態もある。「消費者に正規品のクオリティーがいかに高いものか知ってもらう良い機会になった」とも語った。

かわいい系のグッズを展開したのが「Sparkle Cotton Dream」だ。そのブースでは、「僕のヒーローアカデミア」グッズが好調だった。好きなアニメキャラクターグッズでデコレーションしたバッグは、学生への売れ筋になっているという。

当該分野の当地市場規模は、まだ限定的だ。また、認知度の高い日本の作品も限られている。しかし、人気作品が先陣をきって日本アニメ・ゲームのファンを開拓しているのも事実だ。今後、ビジネスチャンスが拡大する市場に発展することも、期待できるだろう。


ホビーアイランド(ジェトロ撮影)

Sparkle Cotton Dreamのブース(ジェトロ撮影)

注1:
日本文化を広報するエリア。在南ア日本大使館や日本語教室などが出展した。
注2:
ジェトロの海外バイヤー専用オンラインカタログ。映像、音楽、ゲーム、ライセンスビジネスなど、コンテンツ関連で500件以上登録されている。
注3:
「コミコンを楽しんだか」の選択肢は、PositiveMixedNegativeで構成された。また「2024年も出展するか」は、LikelyNot likely
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
堀内 千浪(ほりうち ちなみ)
2014年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ浜松などを経て、2021年8月から現職。