コロナ禍で日本アニメファン増、グッズにも関心(南アフリカ共和国)

2023年10月6日

日本のポップカルチャーの中でも、特にアニメは世界中で人気を集めている。南アフリカ共和国(以下、南ア)も例外ではなく、ここ数年で人気が高まっている。ポップカルチャー好きが集まる世界的なイベントの1つに「Comic Con」があるが、ヨハネスブルクでは「Comic Con Africa 2023」(以下、コミコン)が9月22~25日の4日間開催された。

日本アニメの人気の高まりを受け、ジェトロは日本のコンテンツ産業に関わる企業を対象に、9月4~20日までアフリカ・キャラクタービジネス・オンライン商談会(注1)を実施した。また、2023年のコミコンでは、ジェトロが初めて広報ブースを出展した。

本稿では、日本のキャラクタービジネスに関心の高い南ア企業にインタビューを行い、日本のコンテンツビジネスの可能性について聞いた(取材日:2023年8月1日)。

第1回は、アニメなどのフィギュアを販売する「ホビーアイランド」の最高経営責任者(CEO)のフランキー・チョウ氏、ジャッキー・チョウ氏に聞いた。同社は「Bandai spirits」のグループ会社である日本のフィギュアブランド「魂ネイションズ」の総代理店だ。


フランキー氏(右)とジャッキー氏
(ジェトロ撮影)

ヨハネスブルク市内にあるホビーアイランド社内の
製品展示スペース(ジェトロ撮影)
質問:
貴社が日本アニメのフィギュアを販売するまでの経緯は。
答え:
2005年に香港から南アに来て、2008年に会社を設立した。2010年に香港のフィギュアブランド「ホットトイズ」、続いて米国の「サイドショー」の製品のディストリビューターになった。当時の取り扱いフィギュアはアメリカン・コミックスのキャラクターがメインだったが、私が幼いころからガンダムが好きだったこともあり、南アで正規ルートで日本アニメのフィギュアを販売することができないかと考えた。2010年に初めてバンダイにコンタクトしたが、コミュニケーションの問題もあり、契約締結まで時間を要した。2016年から正式に「魂ネイションズ」のフィギュアを販売する権利を取得した。販売可能範囲はアフリカのため、南アのみならず、モーリシャスやほかの国にも顧客がいる。
質問:
日本アニメのフィギュアの売れ行きは。
答え:
2017年からフィギュア全体の売り上げが右肩上がりで伸びている。日本アニメのフィギュアは新型コロナウイルス禍の期間中から問い合わせが増え、2022年のコミコンでは非常に大きな反響があった。コミコンには以前から出展しているが、私たちの予想を超え、会期3日目には在庫がほぼなくなった。箱や付属品のない展示用の品でもよいから譲ってほしいという声もあり、私たちの予想をはるかに超えていた。
質問:
人気の理由は何だと思うか。顧客層は。
答え:
新型コロナ感染拡大前は、フィギュアというと、マーベル(注2)など欧米のものが人気だった。また、主な顧客は高所得層の成人だった。しかし、新型コロナで在宅が多くなった子供たちが家でアニメを見る機会が増え、子供にまで購買層が広がったと思う。私たちのオンラインショップでは、新型コロナ禍でも売り上げは増加傾向にあった。
質問:
どのようなアニメのフィギアが人気か。
答え:
王道は「ドラゴンボール」「ワンピース」「ナルト」だが、最近は「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」も人気だ。どのタイトルも、性別を問わず、子供から成人まで幅広い層にリーチしている。女性向けのアニメだと「セーラームーン」も人気がある。
質問:
ビジネスでの課題は。
答え:
正式なライセンスを取得せず、違法にフィギュアを輸入・販売している業者がいる。私たちの取り扱う製品と比べ、安価で細部のクオリティーは低く、さらに売り切り販売だ。私たちは、正式なディストリビューターとしてビジネスを展開し、製品に何かあった場合のアフターケアにも力を入れている。フィギュア製品を長く展示、愛用する顧客が多いので、消費者のニーズに応えるためにも、アフターケアは非常に重要だと感じている。
質問:
今後の展望は。
答え:
9月に開催されたコミコンでの販売は重要な機会なので、「魂ネイションズ」の在庫確保や準備を進めてきた。通常はオンラインの受注販売でフィギアを販売しているが、そのスタイルも継続しつつ、より消費者にリーチできるよう、将来的にはヨハネスブルクに小売店をオープンすることを検討している。日本のフィギュアの人気の高まりを受け、陳列商品の約80%を「魂ネイションズ」の商品にする構想だ。
質問:
南アで日本アニメのフィギュアは今後も人気だろうか。
答え:
市場拡大には、まずはアニメ好きが増えることがカギだ。アニメ好き人口は確実に増えると考えているが、高止まりする可能性もある。南アでは、ネットフリックスなどのストリーミングサービスを通してアニメを視聴する人が少なくなく、そのような人たちが私たちの顧客になる。しかし、そのようなサービスの月額費用を払える家庭は限られている(注3)ので、どこかで限界はくると思う。もちろん、違法アップロードでアニメを視聴する人たちもいるが、そのような人たちは私たちの顧客ではない。以前は南アの国営TVで「ドラゴンボール」や「ガンダム」が放映されていたが、今はない。今後、南ア人が日本のアニメに触れる機会が増えれば、アニメ好きも増える可能性がある。

注1:
日本のキャラクターIP、またはキャラクターグッズの海外展開に関する交渉権などを有した日本企業と、南アフリカ共和国の企業をオンラインでマッチングする事業。募集は終了。
注2:
ディズニー傘下の米国の映画・TV番組制作会社。「スパイダーマン」や「アベンジャーズ」シリーズで有名。
注3:
ネットフリックスの南アでの最安プランは月額49ランド(約380円、1ランド=約7.75円、2023年9月3日現在)。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
堀内 千浪(ほりうち ちなみ)
2014年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ浜松などを経て、2021年8月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
新田 直子(にった なおこ)
2022年からジェトロ・ヨハネスブルク事務所勤務。2023年から執筆業務に従事。