コンゴ共和国、投資環境の整備に尽力、日本企業の投資を歓迎
国際協力・官民連携推進相に聞く

2023年10月31日

コンゴ共和国は、南大西洋に港を持ち、アフリカ大陸中央部の一角を占める。かつてコンゴ王国として栄えたが、ポルトガル、ベルギー、フランスによって分割された後、フランス領から独立した歴史がある。同国は石油資源に恵まれているが、国の安定した発展に向けて経済の多角化を急ぎ、投資誘致を積極的に進めている。

ジェトロは、コンゴ共和国のデニス・クリステル・サス・ンゲソ(Denis Christel Sassou Nguesso)国際協力・官民連携推進相(ドゥニ・サス・ンゲソ大統領の子息)の来日の機会を捉え、同国のビジネス環境やビジネス機会を中心に、アフリカを取り巻く国際情勢についても聞いた(取材日:2023年10月11日)。


インタビューに答えるデニス・クリステル・サス・ンゲソ大臣(ジェトロ撮影)
質問:
今回の訪日目的は。
答え:
コンゴ共和国は、既に多くの面で日本の協力を得ているが、2国間関係のいっそうの発展のために、これまでの協力関係について状況を整理するため今回来日した。日本との技術協力協定の交渉を行っているが、これを最終化する目的もあった。日本とコンゴ共和国でプロジェクトを実施するにあたり、法的な枠組み、合同のコミッションを設立しプロジェクトの進捗を見ていく必要がある。こうしたことを踏まえ、日本のハイレベルな関係者と関係を持つことが今回の来日の目的だ。
質問:
今回が初訪日だが、日本の印象は。
答え:
来日前から日本に対してポジティブなイメージを持っており、来日後もポジティブな印象のままだ。日本はG7の1カ国でもあり、非常にポテンシャルを感じる国でもある。今回はとりわけ、両国間の経済面での協力を改善させたいと考えている。アフリカ中部では、日本は閉じられた国というイメージも少なからずあるが、そうではなく日本には様々な可能性に開かれた国であるということを、アフリカ中部の他の国へ訴えていきたい。
質問:
貴国の投資機会を紹介するブックレット「CONGO Land of Opportunities(別添資料参照)PDFファイル(4.62MB)」では、農業、林業、観光業、インフラ整備、鉱業(マイニング)、石油と天然ガスの分野にビジネス機会を紹介している。このうち、特に日本企業に期待する分野は何か。
答え:
日本企業に進出してほしいのは、ブックレットに載っているすべてのセクターだ。このブックレットには、コンゴ共和国のポテンシャルについてすべてが網羅されている。農業、林業、観光業、インフラ整備、マイニング、石油と天然ガスの分野など、多くのセクターにビジネスチャンスがある。日本の民間企業に是非、コンゴ共和国でビジネスをスタートしていただきたい。コンゴ共和国と日本の関係は閉じられた関係にあるというイメージがあるが、日本企業の参入を通じてそうではない、とコンゴ共和国の人に示したい。いずれにしても、コンゴ共和国は日本企業に対してオープンである。多くの投資を期待している。
今日はここに来る前に、現在コンゴ共和国で保険と農業の分野や、ポワントノワール(Pointe-Noire)というコンゴ共和国西部の港湾都市で衛生や道路分野で活動を進めている、日本の国際協力事業の関連機関と協議を行った。また、昨日は日本の技術を海外に展開する役割を持つ国際機関と協議を行った。我々の「国家開発計画(PND)2022-2026PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(4.79MB)」が重点項目として掲げる、デジタルの分野で事業を進めていきたいと考えており、日本の技術も活用したい。コンゴ共和国の実情や必要としているものを、日本企業の皆様へ伝えていきたい。
質問:
貴国への投資におけるインセンティブのうち代表的なものは。
答え:
ビジネス環境の改善に努め、コンゴ共和国のポテンシャルが魅力的に映るように尽力している。これから行う措置としては、越境貿易を支援するためのワンストップ窓口の設立がある。また、税制面での優遇では、セクターごとの税制優遇などのインセンティブを考えている。加えて、投資した企業の資産が保護されるように法律を整備したい。
私がトップを務めている省は、国際協力省と官民連携推進省がある。官民連携が表立って省になっている政府は少ないと思うが、これは2022年12月にコンゴ共和国で官民連携推進(PPP)法が可決されたことによる。PPP法により、コンゴ共和国に投資する企業の保護が強化される。
質問:
「国家開発計画(PND)2022-2026」では、2026年に非石油部門のGDP成長率10.7%、投資額のGDP比37.6%、失業率は6.5%、貧困率の14%低減などの目標値が設定されているが、昨今の世界情勢を踏まえてこうした目標の達成は可能か。
答え:
PNDを立案・採択した時期は、資源価格や穀物価格の高騰などの不安定な要因がない時期だったが、掲げられている目標に関しては、実現へ向けて進んでいきたい。万が一、達成できなかったとしても、その要因を分析し、説明を尽くしていくつもりだ。
質問:
西アフリカの幾つかの国や、8月末には貴国と国境を接するガボンでも軍によるクーデターが発生したが、アフリカで発生したクーデターに関する大臣の見解は。
答え:
企業がある国に進出するというのは、資本をそこに拠出することなので、その国が投資先として安全かどうかを確認するのは当然のことだ。わが国は政治的にも安定しており、治安も良好だ。日本企業にはそのあたりも確認していただきき、ためらいなくコンゴ共和国へ投資してほしい。
確かに2、3年前からアフリカでクーデターが起きているが、コンゴ共和国は当事国ではないため、クーデターについて分析する状況にはない。いずれにせよ言えることは、アフリカ連合(AU)とその加盟国は、クーデター後の民政移行がスムーズになされるように、そして早期に憲法政治が回復することを支援していく。
質問:
国際社会では、アフリカ諸国を含むいわゆるグローバルサウスの発言力が高まっているが、大臣の受け止めは。
答え:
国際社会におけるアフリカのリーダーシップはますます強まっている。アフリカはもともと自分たちが与えられるべき位置を求めているに過ぎない。我々はかなり以前から国連の安全保障理事会(安保理)の改革を求めてきた。世界の情勢を見る限り、世界経済はアフリカへ向かっており、アフリカが安保理の一角を占めるのは当然だ。世界において期待される経済成長率が最も高いのはアフリカであり、北側の多くの国がアフリカに活路を見いだしている。AUはアフリカのポテンシャルに気付いているし、地理的にも非常に有利な場所にあるということも認識している。その1つに、アフリカ大陸自由貿易圏(African Continental Free Trade Area: AfCFTA)がある。これは、域内の人口約13億人、GDPの総計は約3兆4,000億ドルに上る世界で最も大きい自由貿易圏となる(2023年5月11日付地域・分析レポート参照)。AfCFTAだけでも大きなメリットになるだろう。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課長
松村 亮(まつむら まこと)
1993年、ジェトロ入構。展示部、ジェトロ名古屋、ジェトロ・ダルエスサラーム事務所、企画部、輸出促進部、ジェトロ・上海事務所、ジェトロ大分、アジア経済研究所勤務などを経て、2023年5月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中東アフリカ課
吉川 菜穂(よしかわ なほ)
2023年、ジェトロ入構。中東アフリカ課でアフリカ関係の調査を担当。