中国とドイツの貿易は2022年に減少、首脳間交流の下今後の動向に注目

2023年7月7日

ジェトロがグローバル・トレード・アトラスを基に、2022年の中国の対ドイツ貿易(ドルベース)をまとめたところ、中国からの輸出額は前年比0.8%増の1,162億1,201万ドルと、6年連続で増加し過去最高を記録した(図参照)。ただし、伸び率は前年の32.5%から大きく縮小した。輸入額は過去最高の2021年より7.2%減の1,114億2,237万ドルで、2019年以来3年ぶりに減少した。

これにより、2022年の対ドイツ貿易額は3.2%減の2,276億3,439万ドルと微減となった。両国間の貿易額は2021年までは5年連続で増加しており、同年に過去最高を更新していた。新型コロナウイルス禍で世界各国の生産活動が影響を受ける一方、影響が相対的に小さかった中国では、内需に加え外需も取り込む形で、同年の実質GDP成長率が前年比8.4%となったことなどが背景にある。しかし、2022年は、中国各地で感染力の強いオミクロン株の感染が拡大し、それに伴う局地的な封鎖管理の長期化もあり、操業停止や物流の停滞が深刻化したことなどの影響を受けたとみられる。

図:近年の中国とドイツの貿易額の推移
2022年の中国からの輸出額は前年比0.8%増の1,162億1,201万ドルと、6年連続で増加し過去最高を記録。ただし伸び率は、前年の32.5%から大きく縮小し微増にとどまった。輸入額は過去最高の2021年より7.2%減の1,114億2,237万ドルで、2019年以来3年ぶりに減少。これにより、2022年の中国の対ドイツ貿易額は3.2%減の2,276億3,439万ドルと微減となった。両国間の貿易額は2021年までは5年連続で増加しており、同年に過去最高を更新していた。

出所:グローバル・トレード・アトラス(原典は中国税関統計)を基にジェトロ作成

なお、中国の2022年の貿易相手先(国・地域)、輸出先、輸入先として、ドイツはそれぞれ7位(構成比3.6%)、8位(3.2%)、8位(4.1%)となっている。参考に貿易相手先の上位6位までをみると、米国(構成比12.0%)、韓国(5.8%)、日本(5.7%)、台湾(5.1%)、香港(4.9%)、ベトナム(3.7%)の順となっており、欧州の中ではドイツが最大の貿易相手先であることが分かる。

また、「中国商務年鑑2022」によると、2021年末までの外商直接投資額(実行ベース)では、ドイツからの投資額は全体の1.5%を占める381億ドルで9位となり、中国にとって欧州の中で最大の投資元となっている。参考に上位8位までをみると、香港(54.7%)、英領バージン諸島(6.9%)、日本(4.7%)、シンガポール(4.6%)、米国(3.5%)、韓国(3.4%)、台湾(2.7%)、ケイマン諸島(1.9%)となった。

輸出:自動データ処理機械や電話機などが前年比2桁減、蓄電池は2.1倍

2022年の中国の対ドイツ輸出について、HSコード4桁ベースで金額順上位10品目をみると、品目によって増減の傾向が大きく分かれた(表1参照)。

2位の「蓄電池」(8507)は前年比2.1倍の79億8,554万ドル、4位の「ダイオード、トランジスターその他これらに類する半導体デバイス、光電性半導体デバイス(光電池を含む)」(8541)は67.3%増の30億8,032万ドルとなった。「蓄電池」はその96.7%を占めるリチウムイオン蓄電池(850760)が2.2倍と急増した。ドイツ自動車メーカーが電気自動車(EV)などの普及を強力に推進するなかで(2022年7月28日付地域・分析レポート参照)、中国からそのバッテリーにも使用される同品目の輸出が急増している。「ダイオード、トランジスターその他これらに類する半導体デバイス、光電性半導体デバイス(光電池を含む)」は、光電池(モジュールまたはパネルにしてあるもの、854143)が56%を占めており(注1)、ドイツにおける発電電力量に占める太陽光の割合が2022年に10.9%に達したとされるなかで(2022年12月26日付ビジネス短信参照)、中国企業の製品もその構成比拡大に貢献したと考えられる。

このほかでは、「トランスフォーマー、スタティックコンバーターおよびインダクター」(8504)や「診断用または理化学用の試薬および診断用または理化学用の調製試薬など」(3822)もそれぞれ39.1%増、11.9倍と増加が目立った。

その一方で、輸出品目全体の9.0%を占めており、1位であるノートパソコンなどの「自動データ処理機械」(8471)が12.4%減の104億7,874万ドル、3位のスマートフォンなどの「電話機およびその他の機器」(8517)が32.1%減の31億3,167万ドルと減少した。ともに、新型コロナ感染拡大初期の2020年、2021年の輸出額が例年より高い水準であったことから、その反動減が考えられる。

表1:2022年の中国の対ドイツ輸出額(HSコード4桁で上位10位品目順)(△はマイナス値)
金額順 HS
コード
品目 金額(1,000ドル) 前年比伸び率(%) 寄与度
(ポイント)
構成比(%)
2020年 2021年 2022年
1 8471 自動データ処理機械 8,928,705 11,959,770 10,478,739 △ 12.4 △ 1.3 9.0
2 8507 蓄電池 1,617,141 3,716,286 7,985,540 114.9 3.7 6.9
3 8517 電話機およびその他の機器 4,916,071 4,610,237 3,131,673 △ 32.1 △ 1.3 2.7
4 8541 ダイオード、トランジスターその他これらに類する半導体デバイス、光電性半導体デバイス(光電池を含む) 1,374,248 1,841,006 3,080,318 67.3 1.1 2.7
5 8504 トランスフォーマー、スタティックコンバーターおよびインダクター 1,328,449 1,838,740 2,557,738 39.1 0.6 2.2
6 8708 自動車の部分品および附属品 1,646,526 2,482,872 2,474,348 △ 0.3 △ 0.0 2.1
7 9405 照明器具およびその部分品 1,896,638 2,526,823 2,208,641 △ 12.6 △ 0.3 1.9
8 3822 診断用または理化学用の試薬および診断用または理化学用の調製試薬など 34,027 131,150 1,560,315 1,089.7 1.2 1.3
9 9503 三輪車、その他車輪付き玩具、人形、縮尺模型およびパズルなど 1,141,392 1,654,137 1,514,819 △ 8.4 △ 0.1 1.3
10 8516 家庭用電熱機器(電子レンジ、オーブンレンジおよびヘアドライヤーなど) 1,248,253 1,760,869 1,492,868 △ 15.2 △ 0.2 1.3
合計額 87,008,257 115,252,184 116,212,013 0.8 0.8 100.0

出所: グローバル・トレード・アトラス(原典は中国税関統計)を基にジェトロ作成

輸入:乗用自動車は微増、自動車の部分品は2桁減

2022年の中国の対ドイツ輸入について、HSコード4桁ベースで上位10品目をみると、1位の「乗用自動車その他の自動車」(8703)が6.0%増の172億2,536万ドルとなった(表2参照、注2)。「乗用自動車その他の自動車」のうち、シリンダー容積が1,500立方センチメートルを超え3,000立方センチメートル以下のもの(870323)が87.5%を占めており、排気量の大きな自動車がメインであることがうかがえる。網易の輸入車人気ランキング(2022年10月版)によると、1位にメルセデス・ベンツ「GLE」、5位にメルセデス・ベンツ「Sクラス」、6位にアウディ「Q7」、7位にポルシェ「カイエン」、8位にBMW「7シリーズ」、9位にフォルクスワーゲン(VW)「トゥアレグ」と、上位10位以内にドイツ車が6つランクインした。ちなみに、同年の中国の「乗用自動車その他の自動車」の輸入における国・地域別順位(金額ベース)では、ドイツが1位(構成比33.0%)、日本が2位(18.6%)、米国が3位(18.1%)となっており、ドイツの存在感が際立った。

このほか、9位の「集積回路」(8542)が8.6%増の19億6,356万ドル、10位の「物理分析用または化学分析用の機器など」(9027)が8.8%増の18億7,614万ドルとなった。

その一方で、その他の7品目は軒並み減少した。2位の「自動車の部分品および付属品」(8708)は、13.8%減の83億1,385万ドルとなり、寄与度はマイナス1.1ポイントと影響が目立った。15%増となっていた前年からの反動減が一因として考えられる。

また、4位の「その他の航空機並びに宇宙飛行体および打ち上げ用ロケット」(8802)も25.6%減の26億3,338万ドルとなり、寄与度がマイナス0.8ポイントだった。さらに、7位の「血液、ワクチンなど」(3002)も39.2%減の20億3,206万ドルで、寄与度がマイナス1.1ポイントとなった。

「その他の航空機並びに宇宙飛行体および打ち上げ用ロケット」については、飛行機その他の航空機(880240、注3)が99.6%を占めるが、近年の新型コロナの感染拡大の影響を受け、航空機需要が低迷していたことが考えられる。国家統計局のデータベースを基に、近年の民間航空旅客輸送量(延べ)をみると、2018年、2019年は6億人を超えていたが、2020年、2021年は4億人台で、2022年は2億5,171万人となった。航空機の発注から納品までは数年かかるとされるが、新型コロナ感染が散発したなかで、中国の航空会社の航空機購入に向けた機運がなかなか高まらなかったとみられる。

なお、2022年7月1日には、中国の3大航空会社の中国国際航空、中国南方航空、中国東方航空が、欧州の航空機製造大手エアバスの旅客機「A320NEO」をそれぞれ96機、96機、100機購入する契約を結んだと発表。また、同年11月4日には、航空関連器材の集中購買を手掛ける中国航空器材集団(CASC)が同じくエアバスと、航空機140機の大型購入契約を結んだと発表した。中国航空器材集団(CASC)は、後述するショルツ首相の訪中期間の契約であったことを強調した。

表2:2022年の中国の対ドイツ輸入額(HSコード4桁で上位10位品目順) (△はマイナス値)
金額順 HS
コード
品目 金額(1,000ドル) 前年比伸び率(%) 寄与度
(ポイント)
構成比(%)
2020年 2021年 2022年
1 8703 乗用自動車その他の自動車 13,499,690 16,256,021 17,225,362 6.0 0.8 15.5
2 8708 自動車の部分品および附属品 8,386,141 9,641,620 8,313,851 △ 13.8 △ 1.1 7.5
3 3004 医薬品 5,294,060 5,661,558 5,311,183 △ 6.2 △ 0.3 4.8
4 8802 その他の航空機(ヘリコプター等)並びに宇宙飛行体(人工衛星等)および打上げ用ロケット 2,857,581 3,538,192 2,633,378 △ 25.6 △ 0.8 2.4
5 8479 機械類(固有の機能を有するものに限るも) 2,217,434 2,269,916 2,097,291 △ 7.6 △ 0.1 1.9
6 8481 コック、弁 1,939,430 2,438,421 2,093,070 △ 14.2 △ 0.3 1.9
7 3002 血液、ワクチンなど 3,431,542 3,340,028 2,032,064 △ 39.2 △ 1.1 1.8
8 9031 測定用・検査用の機器および輪郭投影機 1,935,014 2,119,568 1,977,668 △ 6.7 △ 0.1 1.8
9 8542 集積回路 1,265,104 1,808,335 1,963,557 8.6 0.1 1.8
10 9027 物理分析用または化学分析用の機器、測定用または検査用の機器など 1,591,161 1,724,182 1,876,140 8.8 0.1 1.7
合計額 105,278,585 120,018,793 111,422,373 △ 7.2 △ 7.2 100.0

出所: グローバル・トレード・アトラス(原典は中国税関統計)を基にジェトロ作成

両国首脳の相互訪問、ドイツ代表企業との交流を実施

中国がドイツ(注4)との国交を1972年に樹立してから、2022年は50年の節目の年であった。ドイツのオラフ・ショルツ首相は就任後初めて訪中し、同年11月4日に、習近平国家主席と会談した。

習国家主席は、同年が両国国交樹立50周年であることに言及し、両国間の実務協力の絶え間ない深化で、貿易が大幅な拡大し、双方の経済・社会の発展に貢献したことを評価した。そして、伝統的な分野に加えて、新エネルギー、人工知能(AI)、デジタル化など新しい分野での協力を活発化させるとした。ショルツ首相は、習氏の3期目入りを決定した中国共産党第20回全国代表大会(第20回党大会)開催後に初めて訪中した欧州の首脳であり、中国にとってドイツが非常に重要な位置付けにあることがわかる。

また、ショルツ首相は同日に、李克強首相(当時)と両国の経済界代表との共同で会見し、代表からのさらなる両国経済貿易協力の深化に関する提案を聞き、交流を行った。30社近くの両国企業家が出席した。ショルツ首相のこの訪中には、ドイツの代表的な企業が同行した。BASF、ワッカー・ケミー、BMW、フォルクスワーゲン(VW)、メルク、バイエル、ビオンテック、ドイツ銀行、GeoClimaDesign、シーメンス、HIPP、アディダスの12社の経営幹部で、100社余りからの申し込みがあり、最終的に12社が選定された、と報じられている(2022年11月6日付「21世紀経済報道」)。

さらに、中国の李強首相は、2023年3月に首相に就任して初の外国訪問として、6月18日から23日までの日程でドイツとフランスを訪問した。李首相は、6月19日にフランク=バルター・シュタインマイヤー大統領と会見したほか、6月20日にショルツ首相と共同議長を務めて第7回中独政府間協議を行った。このほか19日には、ドイツ経済界代表と懇談、交流した。ドイツ企業のシーメンス、フォルクスワーゲン(VW)、メルセデス・ベンツ、BMW、シェフラーグループ、BASF、コベストロ、ワッカー・ケミー、メルク、SAP、アリアンツなどの責任者が出席した。この他に、国家発展改革委員会の鄭柵潔主任もドイツを訪問、6月19日から21日にかけて、国家発展改革委員会はフォルクスワーゲン(VW)、BASF、BMW、メルセデス・ベンツ、エアバスとそれぞれMOU(覚書)を締結した。例えば、フォルクスワーゲン(VW)とは、新エネルギー車の研究開発・イノベーションおよび応用推進、自動車産業の電動化・スマート化の推進、省エネ・低排出およびグリーン・低炭素の推進に共同で取り組むとした。両国首脳および経済界代表がこのように交流したことは、2023年の両国貿易を占う上でも明るい材料といえよう。

ただし、ドイツ連邦政府は6月14日に国家安全保障戦略を策定したが、中国については、パートナーであり、競争相手であり、体制上のライバルとした上で、既存のルールに基づく国際秩序を中国が再構築しようとしていることや、経済的強制力の行使などについて触れつつ、競争相手とライバルの要素が近年、強まっているとした(2023年6月22日付ビジネス短信参照)。ドイツでも、このように経済安全保障の意識が高まる中で、中国ビジネスに慎重になる企業、アジアビジネスにおける中国一辺倒のスタンスを変えようとする企業もあるとされる。

また、OECDは6月7日の「世界経済見通し」で、2023年の中国、ドイツの経済成長率(実質GDP成長率)をそれぞれ5.4%、0.0%と予測した。それぞれの2022年の実績が3.0%、1.9%であったことを考えると、中国は改善、ドイツは悪化という状況だ。ただし、中国は改善となるものの、2022年はオミクロン株の感染拡大の影響を色濃く受けて、成長率が近年の中で低い水準であったことを考慮する必要がある。すなわち、比較対象となる前年のベースが低い中での5.4%の成長率見通しである。また、OECDは2022年および2023年の世界の経済成長率はそれぞれ3.3%、2.7%と見通した。

両国間の貿易は、両国の経済成長や世界的な景気の影響を色濃く受けるが、2023年への影響は見通しにくい状況だ。中国海関(税関)総署は6月7日に、2023年1~5月の中国の対ドイツ輸出額が前年同期比8.3%減の432億290万ドル、輸入額が3.9%減の445億6,150万ドルと発表した。2023年は厳しいスタートとなっている。


注1:
854143の「光電池(モジュールまたはパネルにしてあるもの)」はHSコード改正(HS2022)により新設された品目のため、前年比伸び率は記載せず。
注2:
数量をみると、前年比4.3%減となっている。
注3:
自重が1万5,000キロを超えるもの
注4:
旧西ドイツとの国交樹立年。
執筆者紹介
ジェトロ調査部中国北アジア課 課長代理
宗金 建志(むねかね けんじ)
1999年、ジェトロ入構。海外調査部中国北アジアチーム、ジェトロ岡山、ジェトロ北京、海外調査部中国北アジア課、ジェトロ北京を経て、2018年8月より現職。