新車登録台数に回復傾向、代替燃料車が好調(ポーランド)

2022年10月11日

2021年、ポーランド国内の乗用車生産台数は5万8,800台(前年比7.2%減)、乗用車新車登録台数は44万6,647台(4.3%増)だった。新車登録台数をメーカー・ブランド別にみると、トヨタが7万4,512台(21.5%増)で2年連続の1位。また、環境に優しい代替燃料自動車の登録が増加している。そうした中で、電動車の普及促進のため、公共充電施設の拡充が求められている。

新車登録は回復傾向ながら、生産は5年連続で低迷

2021年のポーランド国内の乗用車生産台数は、25万8,800台(前年比7.2%減)。5年連続で減少した。一方、ポーランド自動車工業会(PZPM)によると、乗用車新車登録台数は44万6,647台(4.3%増)。2020年は新型コロナ禍の影響を甚大に受け落ち込んでいて(2021年7月6日付地域・分析レポート参照)、そこからは回復傾向を示したことになる。しかし、引き続いての新型コロナ禍、サプライチェーン断絶、世界的な半導体不足などのため、新車登録台数が過去最高だった2019年比では16.8%減だった。なお、乗用車登録者の内訳をみると、法人向けが6.4%増の33万1,028台。これに対し、個人向けは1.4%減の11万5,619台だった。

また、欧州自動車工業会(ACEA)の統計によると、ポーランドはEU加盟国の中で乗用車市場規模として5番目に当たる(注1)。

乗用車新車登録台数をメーカー・ブランド別にみると(表1参照)、トヨタが7万4,512台(前年比21.5%増)で首位。シュコダの4万5,065台(20.0%減)を2年連続で抑えた。3位はフォルクスワーゲン(VW)で、3万4,420台(7.5%減)だった。韓国の自動車メーカーも好調。起亜は3万2,323台(34.1%増)になり4位を維持した。シェアは前年の5.6%から7.2%に拡大し、VWの7.7%を追い上げている。2020年に9位だった現代は2万6,838台(45.8%増)で、5位になった。一方、ルノーは1万6,838台(19.9%減)、フィアットは9,079台(27.7%減)と、大きく減少した。日系の自動車メーカーをみると、日産は前年の17位から18位に順位を下げた。対照的に、スズキは19位から15位に順位を上げ、マツダもトップ20位入りすることができた。

表1:ポーランドの乗用車新車登録台数(メーカー・ブランド別)(単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 メーカー・ブランド 2020年 2021年
台数 シェア 前年比
1 トヨタ 61,331 74,512 16.7 21.5
2 シュコダ 56,332 45,065 10.1 △ 20.0
3 フォルクスワーゲン 37,203 34,420 7.7 △ 7.5
4 起亜 24,112 32,323 7.2 34.1
5 現代 18,404 26,838 6.0 45.8
6 BMW 18,303 23,980 5.4 31.0
7 メルセデス・ベンツ 20,280 20,017 4.5 △ 1.3
8 ダチア 20,934 19,897 4.5 △ 5.0
9 フォード 19,064 19,109 4.3 0.2
10 アウディ 15,600 18,973 4.2 21.6
11 ルノー 21,024 16,838 3.8 △ 19.9
12 オペル 14,908 14,862 3.3 △ 0.3
13 ボルボ 10,925 11,014 2.5 0.8
14 プジョー 11,744 10,637 2.4 △ 9.4
15 スズキ 7,171 10,316 2.3 43.9
16 フィアット 12,564 9,079 2.0 △ 27.7
17 セアト 9,217 8,375 1.9 △ 9.1
18 日産 9,065 7,709 1.7 △ 15.0
19 シトロエン 8,082 7,678 1.7 △ 5.0
20 マツダ 4,973 7,376 1.7 48.3
その他 27,111 27,629 6.2 1.9
合計 428,347 446,647 100.0 4.3

出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成

高級車市場は一般乗用車市場に比べ、2020年に続き安定していた。一般乗用車の登録台数は前年比1.5%増にとどまったものの、プレミアムブランドの登録台数は17.2%増になった。プレミアムブランドの中では、首位がBMW(31%増)。伸び幅が大きかったのは、5位に入ったレクサス(38%増)と9位のランドローバー(34%増)だった。

メーカー・モデル別にみると(表2参照)、トヨタのモデルに人気が高いものが多い。カローラ(1位)、ヤリス(2位)、RAV4(5位)、C-HR(7位)、アイゴ(13位)の5モデル合計で、シェアが14.4%に及んだ。一方、2020年に1位だったシュコダのオクタビア(前年比29.7%減)は、順位が3位に落ちた。また、フィアットのティーポも7位から19位(40.6%減)に、ルノーのクリオが8位から15位(35.2%減)に、それぞれ落ち込んだ。

表2:ポーランドの乗用車新車登録台数(ブランド・モデル別) (単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
順位 メーカー・モデル 2020年 2021年
台数 シェア 前年比
1 トヨタ・カローラ 17,508 22,095 4.9 26.2
2 トヨタ・ヤリス 15,378 14,479 3.2 △ 5.8
3 シュコダ・オクタビア 18,668 13,116 2.9 △ 29.7
4 ダチア・ダスター 11,565 12,460 2.8 7.7
5 トヨタ・RAV4 9,587 10,992 2.5 14.7
6 シュコダ・ファビア 12,135 10,605 2.4 △ 12.6
7 トヨタ・C-HR 8,271 9,662 2.2 16.8
8 現代・ツーソン 6,424 9,585 2.1 49.2
9 現代I30 3,891 7,793 1.7 100.3
10 騎亜Sportage 4,508 7,658 1.7 69.9
11 騎亜・シード 6,024 7,607 1.7 26.3
12 フォルクスワーゲンT-Roc 4,761 7,489 1.7 57.3
13 トヨタ・アイゴ 4,819 7,000 1.6 45.3
14 フォルクスワーゲン・ティグアン 6,720 5,921 1.3 △ 11.9
15 ルノー・クリオ 8,615 5,579 1.2 △ 35.2
16 フォルクスワーゲン・ゴルフ 7,340 5,417 1.2 △ 26.2
17 シュコダ・スペルブ 6,428 5,357 1.2 △ 16.7
18 ダチア・サンデロ 4,578 5,209 1.2 13.8
19 フィアット・ティーポ 8,744 5,192 1.2 △ 40.6
20 フォード・フォーカス 6,594 5,080 1.1 △ 23.0
その他 255,789 268,351 60.1 4.9
合計 428,347 446,647 100.0 4.3

出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成

代替燃料自動車が引き続き大幅な伸び

燃料種別にみると(表3参照)、ガソリン車は23万7,478台(前年比10.5%減)とかなりの落ち込みだった。ディーゼル車も5万7,005台(28.0%減)と、同様に大幅な減少。その結果、ガソリン車とディーゼル車を合わせたシェアも、前年は約8割から、65.9%に下がった。

一方、代替燃料自動車はいずれも大きく伸びた。マイルドハイブリッド車(MHEV、注2)は6万4,294台(前年比2.2倍)、ハイブリッド車(HEV)5万7,882台(57.3%増)、プラグインハイブリッド車(PHEV)9,265台(2.1倍)、バッテリー式電気自動車(BEV)7,090台(92.7%増)は、いずれも大幅に登録台数を伸ばした。また2021年は、燃料電池車(FCEV)がポーランドで初めて登録された年でもある。登録されたFCEVのブランドは、トヨタのミライ(56台)と現代のネッソ(18台)だった。

代替燃料自動車の中で最も多いのはMHEVだ。もっとも、充電式の自動車(PHEV、BEV)も伸び率が高い。PHEVとBEVの合計台数は、前年比で約2倍、2019年比では約4倍。大幅な伸びが続いている。

表3:燃料種別の乗用車登録台数 (単位:台、%)(△はマイナス値、-は値なし)
燃料種別 2020年 2021年
台数 シェア 台数 シェア 前年比
ガソリン車 265,300 61.9 237,478 53.2 △ 10.5
ディーゼル車 79,200 18.5 57,005 12.8 △ 28.0
代替燃料自動車 83,803 19.6 152,160 34.1 81.6
階層レベル2の項目MHEV 29,463 6.9 64,294 14.4 118.2
階層レベル2の項目HEV 36,788 8.6 57,882 13.0 57.3
階層レベル2の項目PHEV 4,499 1.1 9,265 2.1 105.9
階層レベル2の項目BEV 3,679 0.9 7,090 1.6 92.7
階層レベル2の項目FCEV 0 0.0 74 0.0
階層レベル2の項目その他 9,374 2.1 13,555 3.0 44.6

注:2020年のガソリン車、ディーゼル車の台数は概数。
出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)からジェトロ作成

公共のEV充電施設拡充や制度整備も進む

代替燃料自動車の普及に伴い、公共EV充電施設の拡充が課題になっている。ポーランド代替燃料自動車協会(PSPA)によると、国内の公共充電ステーションは、2020年末に1,364カ所(充電器は合計2,641基)、2021年末1,932カ所(同3,784基)だった。このように、公共充電ステーション数は前年比41.6%増という勢いで増加している。それでもPSPAは、迅速な拡充ができていないと批判する。加えて、公共ステーションの41%が国内の主要15都市に集中していることも課題だ。この点に関してPSPAは「充電器へのアクセスが代替燃料自動車の普及に影響している」と指摘。実際に、PHEVとBEVの登録台数の半数以上が、人口30万人以上の都市に集中している。

一方で、ポーランドでも、代替燃料車の普及を後押しする制度が着実に整備されつつある。例えば2021年12月には、エレクトロモビリティー・代替燃料法などを一括して改正する法律が成立した。改正の目的は、エレクトロモビリティーの普及と交通部門のゼロエミッション化・低エミッション化促進だ。主に、(1)集合住宅にEV充電設備を設置するよう促進する、(2)小規模自治体でも「クリーン交通ゾーン」を導入できるようにする(注3)、ことなどが規定された。またこの改正とは別に、2021年には、BEVなどのゼロエミッション車購入助成制度(「マイEV」プログラム)や、充電インフラの拡充を促進するプログラムなどが導入された。

こうした動きに関し、PSPAも、ポーランドでのエレクトロモビリティー発展に必要な環境(法整備と補助金)が、以前に比べ充実したと評価。そのため、「2022年は半導体不足などの懸念はあるものの、EV市場はさらに拡大していく」と見込んでいる。


注1:
ACEAの統計で、2021年の乗用車新車登録台数をEU加盟国別に確認した結果。
注2:
MHEVは、電力によるアシストにより燃費や二酸化炭素(CO2)排出量を効率化した自動車。電力単体での駆動はできない。
注3:
クリーン交通ゾーンは、従来、人口10万人以上の自治体だけが導入可能だった。
執筆者紹介
ジェトロ・ワルシャワ事務所
ニーナ・ルッベ
2017年からジェトロ・ワルシャワ事務所に勤務。