2020年の乗用車新規登録台数は前年比22.9%減(ポーランド)
代替燃料自動車は49.5%増で、過去最大
2021年7月6日
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、2020年のポーランドの乗用車新規登録台数は急減した。同様に、国内生産も新型コロナ禍の直撃を受けた。一方、代替燃料自動車は急増しシェアを伸ばした。2021年は、電気自動車(EV)市場がさらに急速に発展すると見込まれる。
2020年の新規登録台数は前年比22.9%減、メーカー別ではトヨタが首位に
ポーランド自動車工業会(PZPM)が2021年1月5日に発表したところによると、2020年の乗用車新規登録台数は42万8,347台。前年比22.9%減だった(表1参照)。法人・個人向け販売はそれぞれ28%減の31万1,056台、28%減の11万7,291台となった。PZPMは2020年の新規登録台数の推移について、第2四半期(4~6月)は新型コロナウイルス感染拡大の影響で前年同期比46.7%減と大きく減少したと指摘。一方で、欧州排ガス基準Euro 6d-ISC-FCM(注)の導入で2021年1月から不適合モデルが販売できなくなるため、同モデルを売り切ろうと第4四半期(10~12月)に販売が促進された。その結果、減少幅が6.7%減に抑制されたと評価した。
メーカー別にみると、トヨタが首位になった。11年続けて登録台数ランキングで1位となっていたシュコダを追い越したかたちだ。2019年4位のオペルは、前年比55.9%減。シェアが前年の6.1%から2.6ポイント減少して3.5%(12位)に落ち込んだ。起亜は、ダチア、フォードなどを抜き返し4位に返り咲いた。対照的に、2019年に前年比24.6%増を記録したマツダは、上位20位に入れなかった。上位20位のうち、登録台数が前年から増加したのは11位のアウディ(13.2%増)だけだ。他メーカーは全て前年を下回った。なお、高級車市場は一般乗用車市場に比べ安定している。プレミアムブランドの新規登録台数は4.6%減にとどまった。
順位 | メーカー |
2019年 台数 |
2020年 | ||
---|---|---|---|---|---|
台数 | シェア | 前年比 | |||
1 | トヨタ | 62,771 | 61,331 | 14.3 | △2.3 |
2 | シュコダ | 68,646 | 56,332 | 13.2 | △17.9 |
3 | フォルクスワーゲン | 53,845 | 37,203 | 8.7 | △30.9 |
4 | 起亜 | 29,389 | 24,112 | 5.6 | △18.0 |
5 | ルノー | 27,581 | 21,024 | 4.9 | △23.8 |
6 | ダチア | 30,877 | 20,934 | 4.9 | △32.2 |
7 | メルセデス・ベンツ | 21,755 | 20,280 | 4.7 | △6.8 |
8 | フォード | 30,132 | 19,064 | 4.5 | △36.7 |
9 | 現代 | 24,378 | 18,404 | 4.3 | △24.5 |
10 | BMW | 20,708 | 18,303 | 4.3 | △11.6 |
11 | アウディ | 13,777 | 15,600 | 3.6 | 13.2 |
12 | オペル | 33,806 | 14,908 | 3.5 | △55.9 |
13 | フィアット | 14,800 | 12,564 | 2.9 | △15.1 |
14 | プジョー | 15,465 | 11,744 | 2.7 | △24.1 |
15 | ボルボ | 10,975 | 10,925 | 2.6 | △0.5 |
16 | セアト | 12,433 | 9,217 | 2.2 | △25.9 |
17 | 日産 | 11,423 | 9,065 | 2.1 | △20.6 |
18 | シトロエン | 11,887 | 8,082 | 1.9 | △32.0 |
19 | スズキ | 11,140 | 7,171 | 1.7 | △35.6 |
20 | ホンダ | 7,724 | 6,127 | 1.4 | △20.7 |
— | その他 | 42,086 | 25,957 | 6.1 | △38.3 |
計 | 555,598 | 428,347 | 100.0 | △22.9 |
出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)資料からジェトロ作成
欧州自動車工業会(ACEA)のデータで、EU加盟国と英国、計28カ国での乗用車新規登録台数上位6~10位を比較する(図1参照)。ポーランドは2019年にベルギーを追い抜き、28カ国の中で6番目の乗用車(新車)市場になった。しかし、2020年には抜き返され7位に。わずか約3,000台の僅差だった。
(EU加盟国および英国の28カ国のうち上位6~10位を抜粋)

出所:欧州自動車工業会(ACEA)資料からジェトロ作成
SUVの人気が上昇
新規登録台数上位20のモデルをみると(表2参照)、引き続きシュコダのオクタビアが首位で、トヨタのカローラが2位を獲得した。前年比では、それぞれ8.4%減、11.1%減だった。トヨタのヤリス(3位)、RAV4(6位)、C-HR(9位)、アイゴ(20位)と、シュコダのスカーラ(17位)、カミック(18位)は前年から増加。一方で、他モデルは前年を割り込んだ。日系自動車メーカーでは、トヨタ以外に日産のキャシュカイ(19位、31.1%減)だけが上位20位以内に入った。
順位 | メーカー |
2019年 台数 |
2020年 | ||
---|---|---|---|---|---|
台数 | シェア | 前年比 | |||
1 | シュコダ・オクタビア | 20,375 | 18,668 | 4.4 | △8.4 |
2 | トヨタ・カローラ | 19,699 | 17,508 | 4.1 | △11.1 |
3 | トヨタ・ヤリス | 14,069 | 15,378 | 3.6 | 9.3 |
4 | シュコダ・ファビア | 17,096 | 12,135 | 2.8 | △29.0 |
5 | ダチア・ダスター | 15,342 | 11,565 | 2.7 | △24.6 |
6 | トヨタ・RAV4 | 6,897 | 9,587 | 2.2 | 39.0 |
7 | フィアット・ティーポ | 9,384 | 8,744 | 2.0 | △6.8 |
8 | ルノー・クリオ | 8,675 | 8,615 | 2.0 | △0.7 |
9 | トヨタ・C-HR | 7,637 | 8,271 | 1.9 | 8.3 |
10 | フォルクスワーゲン・ゴルフ | 12,808 | 7,340 | 1.7 | △42.7 |
11 | フォルクスワーゲン・ティグアン | 8,395 | 6,720 | 1.6 | △20.0 |
12 | フォード・フォーカス | 8,390 | 6,594 | 1.5 | △21.4 |
13 | シュコダ・スペルブ | 7,667 | 6,428 | 1.5 | △16.2 |
14 | 現代・ツーソン | 7,944 | 6,423 | 1.5 | △19.1 |
15 | 騎亜・シード | 7,027 | 6,024 | 1.4 | △14.3 |
16 | フォルクスワーゲン・パサート | 7,008 | 5,727 | 1.3 | △18.3 |
17 | シュコダ・スカーラ | 3,514 | 5,343 | 1.2 | 52.1 |
18 | シュコダ・カミック | 1,339 | 5,252 | 1.2 | 292.2 |
19 | 日産・キャシュカイ | 7,341 | 5,059 | 1.2 | △31.1 |
20 | トヨタ・アイゴ | 4,443 | 4,819 | 1.1 | 8.5 |
— | その他 | 360,548 | 252,147 | 58.9 | △30.1 |
計 | 555,598 | 428,347 | 100.0 | △22.9 |
出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)資料からジェトロ作成
サマル(自動車市場に関するポーランドの研究所)によると、カテゴリー別シェアではスポーツ用多目的車(SUV)が2年連続で首位。2020年11月末時点で、市場の41.1%を占めた。一方、長年にわたって単独首位だったハッチバック型は28.7%まで減少した。もっとも、3位のワゴン型(14.8%)とは13.9ポイント差がある。当分の間2位が続くとみられている。
EV市場規模の拡大に注目
2020年のポーランドの代替燃料自動車市場は、新型コロナ禍にもかかわらず、過去最大の増加幅を記録した。
新規登録台数を燃料種別にみると(図2参照)、ガソリン車とディーゼル車はそれぞれ前年比31.6%減、26.9%減だった。ただし、そのシェアは依然として合計で約8割を占めた。対して代替燃料自動車は、49.5%増を記録してシェア18.5%となった。そのうち、ハイブリッド車(HEV)が14.5%を占め、引き続き最も人気がある。プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)と電気自動車(BEV)のシェアはいまだ低い。しかし、その新規登録台数(合計8,099台、前年比3倍)は急増しており、増加率も新規登録台数に占める割合も過去最大になった。今後、EUで低排出ガス車として主流になると予想されるPHEVとBEVは、2020年末までの累積登録台数が1万8,875台で、市場規模は他のEU加盟国に比べまだ小さい。一方で、ヤクブ・ファリシPZPM会長は「これから年を追うごとにさらに拡大することが期待できる」としている。

出所:ポーランド自動車工業会(PZPM)資料からジェトロ作成
なお、2020年末時点で、ポーランド国内に公共のEV充電器は2,641台ある。そのうち67%が普通充電器、33%が急速充電器だ。
2021年には、ポーランドのエレクトロモビリティー法改正、EV充電器用電力を対象とする特例電気料金(Eタリフ)およびEV購入補助金が導入される見込みだ。EV市場はさらに急速に発展すると予想さきる。
乗用車生産に新型コロナウイルス感染拡大が影響
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年はポーランド国内の自動車工場で生産が一時中断された。PZPMが2021年1月27日に発表したところ、2020年のポーランド国内の乗用車生産台数は前年比30.5%減の27万8,900台だった。
- 注:
- EU域内では、2015年9月から欧州排ガス基準Euro6が導入されている。2021年1月から導入のEuro 6d-ISC-FCMは、これまでのEuro6をさらに厳格化したもの。1月からはこの基準に適合しない乗用車は販売できない。そのため、自動車メーカー各社は同基準に適合するモデルを発売、またPHEVやBEVの販売を強化するとともに、基準に適合しない旧モデルが値引きされた。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・ワルシャワ事務所
ニーナ・ルッベ - 2017年からジェトロ・ワルシャワ事務所に勤務。