2021年の米対内直接投資残高は1割増、日本が3年連続で首位

2022年8月16日

米国商務省は7月21日、2021年末の米国の対内直接投資残高が前年比11.3%増の4兆9,775億ドルになったことを発表した。外国からの直接投資残高は、前年末に比べ5,061億ドル拡大した。国別では、前年に続き日本が最大の投資元となっており、輸送機器、化学、卸売り、金融・保険など日本の主要な投資先業種において、投資残高の堅調な増加がみられた。

投資元上位5カ国では、日本が前年比408億ドル増の7,210億ドルで首位となり、次いでドイツ(1,080億ドル増、6,365億ドル)、カナダ(352億ドル増、6,073億ドル)、英国(1,020億ドル増、5,652億ドル)、アイルランド(529億ドル増、3,530億ドル)の順となった(図参照)(注1)。前年からの残高増加幅は、ドイツが最も大きかった。上位5カ国では、前年3位のドイツがカナダを抜いて2位に浮上したほか、フランスに代わりアイルランドが5位に順位を上げるなどの変動がみられた。日本(1位)と英国(4位)の順位は変わらなかった。日本は2019年以降、3年連続で米国にとって最大の投資元となっている(注2)。

図:米国の対内直接投資残高推移(UBOベース)
日本は、前年408億ドル増の7,210億ドル。次いで、ドイツは6,365億ドル。カナダは6,073億ドル、英国は5,652億ドル、アイルランドは3,530億ドル。

注:投資主体を最終的に所有またはコントロールしている事業体(最終的な実質所有者(UBO:Ultimate Beneficial Owner))が所在する国を基準とした集計値。
出所:米商務省経済分析局統計(BEA)から作成

他方、業種別では、全体の42.4%を占める製造業の中で最大の投資先である化学の残高が前年比898億ドル増の8,212億ドルに拡大した(表1参照)。その他の製造業では、化学に次ぐコンピュータ・電子製品が429億ドル増の2,168億ドル、輸送機械が137億ドル増の1,795億ドルとそれぞれ増加した。一方、非製造業においては、最大の金融・保険業における投資残高が372億ドル増の6,206億ドル、これに次いで多い卸売業が343億ドル増の4,833億ドル、情報産業が932億ドル増の2,811億ドル、専門サービスが164億ドル増の2,216億ドルなどとなっている。2021年には全業種のうち情報産業における投資残高の増加幅が最も大きかった。

表1:業種別対内直接投資残高(単位:100万ドル)(△はマイナス値)
業種 2019年 2020年 2021年 構成比(%) 前年比(%) 前年差
合計 4,398,763 4,471,403 4,977,492 100.0 11.3 506,089
階層レベル2の項目製造業 1,826,805 1,874,665 2,108,607 42.4 12.5 233,942
階層レベル3の項目食品 113,025 113,185 115,444 2.3 2.0 2,259
階層レベル3の項目化学 747,054 731,439 821,223 16.5 12.3 89,784
階層レベル3の項目金属 80,650 84,565 91,979 1.8 8.8 7,414
階層レベル3の項目一般機械 79,526 94,399 104,112 2.1 10.3 9,713
階層レベル3の項目コンピュータ・電子製品 150,910 173,930 216,792 4.4 24.6 42,862
階層レベル3の項目電気機械・部品 62,449 80,805 112,688 2.3 39.5 31,883
階層レベル3の項目輸送機械 159,570 165,830 179,529 3.6 8.3 13,699
階層レベル3の項目その他製造業 433,619 430,512 466,839 9.4 8.4 36,327
階層レベル2の項目卸売業 422,295 449,058 483,308 9.7 7.6 34,250
階層レベル2の項目小売業 138,140 141,825 153,843 3.1 8.5 12,018
階層レベル2の項目情報産業 204,950 187,959 281,124 5.6 49.6 93,165
階層レベル2の項目預金取扱機関 212,575 217,385 208,154 4.2 △4.2 △9,231
階層レベル2の項目金融(預金取扱機関を除く)・保険 537,905 583,325 620,552 12.5 6.4 37,227
階層レベル2の項目不動産・リース 162,759 169,117 208,443 4.2 23.3 39,326
階層レベル2の項目専門サービス 199,377 205,291 221,644 4.5 8.0 16,353
階層レベル2の項目その他産業 693,958 642,779 691,816 13.9 7.6 49,037

出所:米商務省経済分析局統計(BEA)から作成

卸売業、金融・保険、輸送機械などで日本からの投資残高が増加

2021年末時点における日本からの直接投資残高の内訳をみると、全体の約5割を占める製造業では、輸送機械の投資残高が前年比37億ドル増の651億ドル(構成比9.0%)に拡大した(表2参照)。同業種においては、2021年にトヨタ自動車による国内生産拠点の新設や強化の動きが続いた。同社は、12月に12億9,000万ドルを投じ北米初のEV(電気自動車)用バッテリー工場をノースカロライナ州に建設、将来的に年間120万台分の電池を供給する計画を発表したほか(2021年12月7日付ビジネス短信参照)、同年中にはウェストバージニア州のエンジン工場への2億1,000万ドルの投資(2月)、インディアナ州の工場への8億ドルの投資(4月)、ケンタッキー州の工場への4億6,000万ドルの投資(10月)などを明らかにした。ケンタッキー州の工場においては、2023年から水素トラック用燃料電池モジュール生産を開始する(2021年8月27日付ビジネス短信参照)。このほか、同社の関係では、ソフトウェアを中心にモビリティ開発を担う子会社のウーブン・プラネット・ホールディングスが7月に米国配車サービス・リフト(Lyft)の自動運転部門レベル5( Level 5)を5億5,000万ドルで買収した(注3)。

日本からの投資残高が業種別で最大の化学は、30億ドル増の1,569億ドル(構成比21.8%)となった。同業界においては、富士フイルムが3月にバイオ医薬品の大型製造拠点をノースカロライナ州に建設することを発表した。投資額は20億ドルで、2025年春までの稼働を予定している(2021年3月23日付ビジネス短信参照)。また、JSRが10月に米半導体材料メーカーのインプリアを約4億2,100万ドルで完全子会社化するなどの動きもみられた。

輸送機器、化学以外の製造業種では、コンピュータ・電子製品における投資残高が前年比16億ドル増の382億ドル(構成比5.3%)となった。同分野では、パナソニックが9月にサプライチェーン・ソフトウエア世界大手のブルーヨンダーの株式を70億8,000万ドルで追加取得し、同社の買収を完了している。

表2:日本からの業種別対内直接投資残高(UBOベース)(単位:100万ドル)(△はマイナス値)
業種 2019年 2020年 2021年 構成比(%) 前年比(%) 前年差
合計 663,176 680,278 721,035 100.0 6.0 40,757
階層レベル2の項目製造業 324,466 333,807 351,192 48.7 5.2 17,385
階層レベル3の項目食品 5,335 5,642 5,792 0.8 2.7 150
階層レベル3の項目化学 149,459 153,941 156,903 21.8 1.9 2,962
階層レベル3の項目金属 9,125 9,476 11,252 1.6 18.7 1,776
階層レベル3の項目一般機械 18,137 19,317 20,401 2.8 5.6 1,084
階層レベル3の項目コンピュータ・電子製品 31,036 36,597 38,233 5.3 4.5 1,636
階層レベル3の項目電気機械・部品 2,685 2,425 2,668 0.4 10.0 243
階層レベル3の項目輸送機械 65,176 61,482 65,146 9.0 6.0 3,664
階層レベル3の項目その他製造業 43,512 44,927 50,797 7.0 13.1 5,870
階層レベル2の項目卸売業 107,670 114,856 124,587 17.3 8.5 9,731
階層レベル2の項目小売業 11,810 11,576 13,436 1.9 16.1 1,860
階層レベル2の項目情報産業 30,101 10,971 10,759 1.5 △ 1.9 △ 212
階層レベル2の項目預金取扱機関 30,204 30,395 32,546 4.5 7.1 2,151
階層レベル2の項目金融(預金取扱機関を除く)・保険 95,978 113,023 117,538 16.3 4.0 4,515
階層レベル2の項目不動産・リース 26,857 28,070 30,539 4.2 8.8 2,469
階層レベル2の項目専門サービス 14,324 14,649 14,572 2.0 △ 0.5 △ 77
階層レベル2の項目その他産業 21,765 22,931 25,864 3.6 12.8 2,933

出所:米商務省経済分析局統計(BEA)から作成

他方、非製造業においては、卸売業の投資残高が前年比97億ドル増の1,246億ドル(構成比17.3%)に拡大した。同分野においては、5月にセブン&アイ・ホールディングスの米子会社が、米石油精製会社マラソン・ペトロリアムから同社が主にスピードウェイ(Speedway)ブランドで運営するコンビニエンスストア事業および燃料小売事業を210億ドルで取得した。同案件は、2021年の日本企業による最大の米国企業買収と位置付けられる(表3)。

表3:日本企業による対米クロスボーダーM&A上位10件(2021年)
実施年月
(完了ベース)
買収企業 被買収企業 金額
(100万ドル)
買収後出資比率(%)
企業名 業種 企業名 業種
2021年5月 7-Eleven Inc 食料品販売 Speedway LLC その他の小売り 21,000 100.0
2021年7月 Hitachi Global Digital Holdings Corp ソフトウエア GlobalLogic Worldwide Holdings Inc ソフトウエア 9,600 100.0
2021年9月 パナソニック株式会社 電子・電気機器 Blue Yonder Group Inc ソフトウエア 7,100 100.0
2021年8月 Funimation Global Group LLC 映画 Ellation Inc ビジネスサービス 1,175 100.0
2021年11月 三菱HCキャピタル株式会社 ノンバンク CAI International Inc ビジネスサービス 1,103 100.0
2021年4月 Woven Planet Holdings Inc 輸送機器 Lyft Inc(自動運転部門レベル5) 運輸 550 100.0
2021年12月 Fortress Investment Group LLC 投資会社、証券業、信託 Colony Capital LLC-OED Portfolio 不動産賃貸、仲介業 535 100.0
2021年10月 JSR株式会社 化学製品関連 Inpria Corp 一般機械 514 100.0
2021年12月 Nomura Research Institute Holdings America Inc ビジネスサービス Convergence Technologies Inc ビジネスサービス 462 100.0
2021年9月 Daiwa House USA Holdings Inc 建設 CastleRock Communities LP 建設 402 80.0

注1:買収企業の国籍は最終的な親会社の国籍。
注2:1回の取引金額によるランキング。
出所:Refinitiveから作成

また、金融・保険業における投資残高も、前年比45億ドル増の1,175億ドル(構成比16.3%)に増加した。同業界では、三菱HCキャピタルが11月に米大手海上コンテナリース企業のCAIを11億ドルで買収、完全子会社化したほか、ソフトバンクグループの関連企業による米国企業への大型出資が続いた。

非製造分野における上記以外の対米投資大型案件としては、日立製作所の米子会社によるデジタル・エンジニアリングサービス企業グローバルロジックの買収(7月、96億ドル)、ソニーグループのFunimation Global GroupによるAT&T のアニメ配信事業「Crunchyroll(クランチロール)」の運営会社Ellation Holdings買収(8月、11億7,500万ドル)などが実行された。

コロナ禍やサプライチェーンの混乱などにもかかわらず、日本をはじめとする主要国からの対米直接投資残高は着実に拡大した。2022年に入り、ウクライナ危機が供給混乱に拍車をかけ、インフレ高進により原材料や人件費など生産コストが上昇する中、他国からの投資拡大のモメンタムは継続するのか、今後の対米投資の動向が注目される。


注1:
これら5カ国で米国の対内直接投資残高全体の57.9%を占める。内訳は日本14.5%、ドイツ12.8%、カナダ12.2%、英国11.4%、アイルランド7.1%。
注2:
日本にとっても米国は同一基準でデータ遡及可能な2014年以降、継続して最大の投資先となっており、日本の対外直接投資残高(2021年末)の33.3%を米国が占めている。
注3:
対米外国投資委員会(CFIUS)による審査完了を受けて7月20日に買収完了を公表。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 次長
米山 洋(よねやま ひろし)
1997年、ジェトロ入構。ジェトロ北海道、ジェトロ・マニラ事務所、海外調査部国際経済課長などを経て、2020年9月から現職。共著『ジェトロ世界貿易投資報告総論編 各年版』『南進する中国とASEANへの影響』『ASEAN経済共同体』『FTAガイドブック2014』『分業するアジア』(ジェトロ)など。

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