ポストコロナのジンバブエ市場の可能性と展望
農業やサービス業に可能性、経済特区の開発進む

2022年6月22日

ジンバブエ最大の「第62回ジンバブエ国際貿易展(ZITF)」が4月25日から30日まで開催された(2022年5月24日付ビジネス短信参照)。2023年に大統領選挙を控えるエマーソン・ムナンガグワ大統領は、29日に展示会場で行った演説で「ジンバブエ経済は安定から成長へと移行して」おり、「産業界は新しい革新的な戦略を構築することが求められる」と述べた。また、新型コロナウイルス感染拡大後に高騰した物価と自国通貨の下落について、「政府は現在、物価と為替レートの課題解決に注力している」とした上で、「ジンバブエと再び関わりを持った外国企業や国々を歓迎したい」と述べた。

ジンバブエは南部アフリカに位置し、人口は1,465万人。世界銀行の調査によると、インフレ率は2020年7月の838%から2021年12月には60.7%に減速した。2020年の同国の経済成長率はマイナス6.2%だったが、農業部門などの回復により、2021年は5.8%と推定されている。一方で、1人当たりGDPは1,214ドル(2020年)と低く、外貨不足については抜本的な解決は見通せていない。ほかのアフリカ諸国に比べると、国内市場はまだ小さく、日本の外務省が行った「2020年海外進出日系企業拠点数調査」によると、同国に拠点を構える日系企業は2社のみだ。こうした中、市場の成長に向け、同国政府がどのような策を講じ、市場を拡大させていくのかが注目される。

ジェトロはZITFの会場で、今後のジンバブエ市場の可能性と展望について、ジンバブエ投資開発庁(ZIDA)長官兼ZITF会長のブシサ・モイ氏と、ジンバブエ貿易促進庁(ZimTrade)最高経営責任者(CEO)のアラン・マジュール氏にインタビューを行った(2022年4月26、27日)。


ZIDA長官のブシサ・モイ氏(同庁提供)

以下、モイ氏へのインタビュー。

サービス業に投資機会、ジンバブエは地理的に他国へのゲートウエーになり得る

質問:
アフリカ各国が外国企業の投資を誘致しているが、ジンバブエ市場の優位性は。
答え:
答え:ジンバブエの国内市場は小さく、内需の観点からは、投資家にとってあまり魅力的でない。しかし、ジンバブエはアフリカ地域、特に南部アフリカ地域へのゲートウエーとなり得る地理的優位性を有している。また、政府は経済特区(SEZ)の建設を推進し、関心を持つ投資家にとってもウィンウィンのプラットフォームを提供するとことができる。ジンバブエは、アフリカ諸国とさまざまな地域貿易協定を結んでおり、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)協定が本格的に稼働すれば、アフリカ諸国がマーケットになり得る。
SEZについては、目的別に国内の多くの都市で建設している最中だ。例えば、ZIDAはシンガポールのエンタープライズ・シンガポール(SCE、政府の対外ビジネス振興機関)と協力関係にある。SEZを通じて大規模な生産設備を有する企業への投資を促進する計画を検討中だ。このSEZでは、関税の引き下げや就労ビザの発給など、投資家にさまざまなインセンティブを与え、円滑に事業運営が開始できるよう支援する予定だ。ブラワヨ市内の中心地では現在、イムブミラ工業地帯が建設中で、今後9~24カ月くらい先をめどに入居が可能だ。
質問:
日本企業が投資を検討する場合、どのような産業に可能性があるか。
答え:
サービス業は潜在的な投資機会があると考える。ジンバブエの人口の約60%は35歳以下と若く、比較的高い教育水準だ。そのため、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)やコールセンターなどのサービス産業が育つ可能性を秘めている。また、観光地として有名なビクトリア・フォールズには証券取引所が設立され、ビジネスセクターとしての活動が活発化している。

製品のハイテク化、日本製品の需要も高い

質問:
今後、ジンバブエ市場で日本製品のニーズはあるか。
答え:
ジンバブエの経済成長はこれからで、さまざまな分野でハイテクな産業機械が必要とされている。日本のハイレベルな技術や製品はそのニーズにマッチする。特に、小規模ながら国内市場向けに大量生産を行っている製造業では、生産量の拡大に課題がある。今後は生産性を高めるために、製造から製品管理までの機械化・自動化が求められ、中・小規模の産業で再編成が進められる。ただし、大規模でハイスペックな機械化ではなく、一部ラインのみ機械化されるような動きが予測される。ハイスペック製品のための高い投資コストは見合わないため、顧客に合わせたスペックの調整が必要だ。
質問:
前述を踏まえ、今後どのような産業から機械化が進んでいくか。
答え:
どの産業も効率化を求められているが、特に農業や食品加工で、機械化が求められている。今後10年から20年の間に、これらの分野で大きな変化があると考えている。

以下、ジンバブエ貿易促進庁CEOのマジュール氏へのインタビュー。

新型コロナ禍で経済に打撃

質問:
新型コロナウイルス禍によって、ジンバブエの経済はどのような変化があったか。
答え:
ジンバブエはマクロ経済で問題を幾つか抱えていたが、新型コロナ禍によって状況がさらに悪化した。特に通貨の不安定さは、国民のみならず、多くの企業のビジネス活動に今もなお支障を与えている。政府は通貨環境を安定させるためにさまざまな努力をしており、投資家に対する支援も積極的に行っている。

農業や食品製造分野に可能性も、規制の違いが障壁に

質問:
日本企業がジンバブエ投資を検討する場合、どのような産業に可能性があるか。
答え:
農業や食品製造業は可能性がある。昨今の気候変動を考えると、ジンバブエの農家は効率的に、年間を通じて農業を行えるような農業機械や灌漑技術を求めている。ただ、コストは多くかけられないのが現実だ。農業セクターが安定すれば、国内の食料価格の高騰を抑えることができる。
質問:
日本とジンバブエ間のビジネスでは、どこに難しさがあるか?
答え:
規制の違いに難しさを感じる。例えば、ジンバブエ国内で紅茶の製造・販売で有名なタガンダ・ティー・カンパニーはアボカドも生産しており、日本のバイヤーから引き合いがあって交渉中だ。しかし、日本への青果物の輸出は厳しい検疫や、衛生管理などの条件があるため、非常にハードルが高く、なかなかビジネスにつながらない。また、外貨不足が続いており、企業によっては輸入したい製品があったとしても、外貨払いの決済が難しいという課題がある。

マクロ経済に課題も、潜在的な可能性秘めるジンバブエ市場

質問:
日本企業へのコメントはあるか。
答え:
ジンバブエは、通貨をはじめとするマクロ的な問題を抱えている。課題解決のために政府も直接投資を後押ししており、通貨改革も進んでいる。興味のある外国人投資家は、外貨で取引が可能なビトリア・フォールズ証券取引所を通して投資も可能だ。アフリカ市場へのビジネスを検討する際、ぜひジンバブエも視野に入れてもらいたい。

インフレや外貨不足、課題も山積み

両氏によると、ジンバブエ市場には課題も多い。インフレ経済、外貨不足、ビジネス環境が発展途上であることなど、日本企業がビジネスをする上ではまだハードルは高い。大手自動車メーカーが先んじて販路開拓に取り組んでいるが、新車市場のマーケットはまだ小さい。価格が高く、高品質な日本製品を購入できる所得層も限定的だ。日本企業とジンバブエ企業がウィンウィンでビジネスをするにはまだ時間がかかると思われるが、ジンバブエ政府が今後どのようなかじ取りをし、マーケットを成長させていくか、今後も注視したい。

執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
トラスト・ムブトゥンガイ
ジンバブエ出身。2011年から、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所勤務。主に南部アフリカの経済・産業調査に従事。
執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
堀内 千浪(ほりうち ちなみ)
2014年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ浜松などを経て、2021年8月から現職。

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