2021年の乗用車新車登録台数、半導体不足が響いて微増(フランス)
2022年8月29日
フランスの2021年の乗用車新車登録台数は前年比0.5%増の165万9,003台だった。電気自動車(EV)の乗用車登録台数は前年比46.2%増の16万2,106台、プラグインハイブリッド車(PHEV)は前年比89%増の14 万 1,787 台と大幅な拡大が続いた。
新車販売減の背景に、半導体不足による生産台数の縮小
フランス自動車工業会(フランス語)(98KB)によると、2021年の国内の乗用車新車登録台数は、新型コロナウイルス感染拡大で大幅減を記録した2020年とほぼ横並びの165万9,003台となり、新型コロナ危機前の2019年の水準(221万4,279台)には戻らなかった。2020年は新型コロナ危機に対応した移動制限措置などから需要が縮小した(2021年8月11日付地域・分析レポート参照)が、自動車業界専門のコンサル会社AAAdata(フランス語)
によると、2021年は半導体不足が販売減につながった。
ステランティスや、ルノー、トヨタなどフランスに工場を持つ主な自動車メーカーは、半導体やプラスチック、鉄鋼など素材不足が深刻化し、減産や工場の一時稼働停止を余儀なくされた。欧州自動車工業会の発表(1.22MB)によると、2021年のフランスの国内乗用車生産台数は85万4,089台で、新型コロナ危機の影響で激減した2020年(86万9,856台)からさらに1.8%減少した。2019年の生産台数は159万636台だった。
乗用車新車登録台数をメーカー・ブランド別にみると(表参照)、ルノー・グループはルノーが前年比14.5%減の26万8,951台と縮小が続く一方、グループ傘下のルーマニア・ダチアは28.9%増の12万5,204台と増加に転じた。
ステランティスの主要ブランドは、プジョーが前年比5.3%減の28万5,929台、シトロエンが0.5%減の16万1,883台、フィアットが5.8%減の3万9,914台と、それぞれ縮小した。
外国勢で最大シェアを持つドイツのフォルクスワーゲンは前年比7.7%増の10万5,298台、同グループ傘下のシュコダが1.8%増の3万399台と前年を上回ったが、いずれも2019年の水準(前者14万9,105台、後者3万6,498台)に届かなかった。高級車ブランドでは、メルセデス・ベンツが3.4%減の5万789台と縮小が続いたが、アウディは10.4%増の5万83台、BMWは1.1%増の4万5,968台と増加に転じた。
日本勢では、トヨタが7.2%増の9万6,170台、スズキが16.6%増の2万2,907台と増加に転じた。一方、日産は19.9%減の2万6.414台で減少が続いた。
韓国勢は、現代が30.8%増の4万5,241台と好調で、2019年の3万9,970台を上回った。起亜は13.2%増の4万4,215台だった。
メーカー・ブランド | 登録台数 | 前年比 |
---|---|---|
プジョー | 285,929 | △ 5.3 |
ルノー | 268,951 | △ 14.5 |
シトロエン | 161,883 | △ 0.5 |
ダチア | 125,204 | 28.9 |
フォルクスワーゲン | 105,298 | 7.7 |
トヨタ | 96,170 | 7.2 |
メルセデス | 50,789 | △ 3.4 |
アウディ | 50,083 | 10.4 |
BMW | 45,968 | 1.1 |
現代 | 45,241 | 30.8 |
起亜 | 44,215 | 13.2 |
フォード | 43,777 | △ 20.7 |
フィアット | 39,914 | △ 5.8 |
オペル | 37,393 | △ 14.6 |
合計(その他を含む) | 1,659,003 | 0.5 |
出所:フランス自動車工業会
ディーゼル車の新車登録台数は前年比30.7%減の34万9,478台となり、乗用車新車登録台数に占める割合は21%と、前年(31%)から10ポイント低下した。
小型商用車(車載量5トン未満)の新車登録台数は前年比7.5%増の43万2,631台、大型トラック(車載量5トン以上)は4万4,138台で前年から5.8%増加した。
乗用車の新車登録台数が低迷する一方、2021 年の中古車販売市場は前年比8.0%増の601万6,321台で、2019年の579万612台を上回った。新車の供給量が縮小し、納期が長期化する中、需要が中古車市場へ流れたものとみられる。
EV、PHEVの販売増続く
業界紙「オートモビル・プロープル」の集計(フランス語)によると、2021 年の電気自動車(EV)の乗用車新車登録台数は16万2,106台と、前年(11万899台)を約5万1,000台上回った。内訳をみると、首位のテスラ「モデル3」が2万4,911台で前年の6,477台から急増する一方、前年までトップだったルノー「ゾエ」は2万3,573台と、前年(3万7,409台)から約1万4,000台減少した。3位はプジョー「E-208」の1万 7,858台で、ダチアが2021年末に投入した「スプリング」は1万1,386台と4位に躍進した。
欧州電気自動車協会フランス支部(AVERE France、フランス語)によると、プラグインハイブリッド車(PHEV)の新車登録台数(商用車を含む)は前年比89%増の14万1,787台と大幅増を記録した。プジョー「3008」は1万7,002台と最多だった。これに、ルノーの「キャプチャー」8,489台、シトロエンの「C5AC」7,108 台と続いた。 燃料電池水素観測所(FCHO、注)によると、2021年の燃料電池自動車の新車登録台数は62台で前年の211台から急減した。
AVERE Franceによると、公共の充電ステーションの数は2021年12月末時点で5万3,667カ所と、前年の3万2,736カ所から64%増となった。政府が経済復興策に盛り込んだEV用高速充電設備導入支援制度(導入費用の最大40%を助成金として支給)が設備設置を加速する役割を果たした。
乗用車の輸出入台数は減少
フランス税関の統計によると、乗用車(HS コード 8703)の輸出台数は前年比11.0%増の116万2,069 台だった。ドイツ向けが12.2%減の19万9,932台、ベルギーが2.4%減の14万9,305台と落ち込む一方、イタリア向けは17.2%増の13万7,848台、スペインは11.2%増の10万5475台と増加に転じた。日本向けは47.1%減の5,542台だった。
輸入台数は前年比1.5%減の188万3,592台だった。最大輸入相手国のスペインは40万8,500台と前年を5.1%下回った。2位のドイツは前年比4.2%減の20 万1,875台となり、欧州の主な自動車メーカーが生産拠点を構えるトルコ(5.5%減)、スロバキア(8.6%減)、チェコ(3.1%減)も縮小が続いた。一方、モロッコからの輸入は23.9%増の16万704台と急増し、危機前の2019年の水準を超えた。アジアからは日本が6万3,237台と前年から1.1%減る一方、韓国は41.6%増の6万8,792台、中国は6万210台と前年から2.6倍となった。
- 注:
- 「Fuel Cells & Hydrogen Observatory(FCHO)」は、欧州委員会や産業界などが構成する「欧州燃料電池水素共同実施機構(FCH-JU)」が主導する、データなど関連情報を提供する組織。

- 執筆者紹介
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ジェトロ・パリ事務所
山﨑 あき(やまさき あき) -
2000年よりジェトロ・パリ事務所勤務。
フランスの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。