車載電池メーカーが海外生産を加速(韓国)
材料・原料確保を期し垂直統合を推進

2022年8月12日

電気自動車(EV)は目下、世界的に市場の急成長が見込まれている。この状況の中で、韓国メーカーはEV向け車載電池の海外生産拡大を積極化している。さらに、車載電池の生産に必要な材料や原料の安定確保に向けても、取り組みに積極的だ。

では、韓国の車載電池メーカーなどはどう海外展開しているのか。その動向について探っていきたい。

海外生産能力の増強を急ぐ

最近の世界のEV市場の拡大を受けて、韓国の車載電池業界は海外展開を活発化させている。まず、直接投資統計でそれを確かめてみよう(図1)。韓国の蓄電池製造業の対外直接投資額は、2017年まで比較的低い水準で推移してきた。しかし、投資額は2018年に一気に拡大、2019年以降も右肩上がりで推移している。直近の2021年は17億5,513万ドルに達した。これは、当年中に韓国製造業が投じた対外直接投資額全体の9.7%に当たる。車載電池は今や、韓国メーカーが海外展開を積極的に進める主要業種の一角を占めているといえよう。

図1:韓国・蓄電池製造業の対外直接投資の推移(実行ベース)
韓国の蓄電池製造業の対外直接投資額は2017年まで低調だったが、2018年以降、急拡大している。各年の投資額は、2017年7,536万ドル、2018年8億2,747万ドル、2019年11億9,190万ドル、2020年15憶7,341万ドル、2021年17億5,513万ドルだった。

注1:本統計はフローの直接投資を示すもので、「申告ベース」「実行ベース」の2つの基準で公表されている。ここでは、実際に送金が行われた「実行ベース」を用いた。
注2:統計値は過去に遡及(そきゅう)して修正されることがある点に留意が必要。
出所:韓国輸出入銀行

事例からも、韓国の車載電池メーカーの活発な海外進出が確認できる。韓国の車載電池メーカーは、LGエナジーソリューション、SKオン、サムスンSDIの3社だ(注1)。海外での車載電池生産の主軸になっているのは、前2社だ。バイデン政権下でEVシフトが鮮明になった米国を中心に、生産規模を拡大させている(表1)。進出形態は、単独出資だけでなく、顧客自動車メーカーとの合弁で生産拠点を設ける動きも活発だ。

表1:韓国企業の車載電池生産拠点一覧(計画を含む)
会社名 国名 地域名 生産能力 備考
LGエナジーソリューション 韓国 忠清北道清州市 22GWh(2025年まで)
中国 江蘇省南京市 110GWh(2025年まで)
インドネシア 西ジャワ州カラワン県 10GWh(2024年稼働予定) 現代自動車グループと合弁
カナダ オンタリオ州ウィンザー 45GWh、段階的に増強(2024年稼働予定) ステランティスとの合弁
米国 ミシガン州ホランド 40GWh、段階的に増強
アリゾナ州クイーンクリーク 11GWh(2024年稼働予定) 注参照
オハイオ州ローズタウン 35GWh+α GMとの合弁(第1工場)
テネシー州スプリングヒル 35GWh+α(2023年稼働予定) GMとの合弁(第2工場)
ミシガン州ランシング 50GWh(2025年稼働予定) GMとの合弁(第3工場)
ポーランド ウロツワフ 100GWh(2025年まで)
SKオン 韓国 忠清南道瑞山市 5GWh
中国 江蘇省常州市 7GWh 北京汽車集団、北京電子控股との合弁
広東省恵州市 10GWh 恵州億緯●能(●=金へんに里)との合弁
江蘇省塩城市 60GWh(第1工場27GWh。第2工場33GWh、2024年稼働予定) 第1工場は恵州億●集能との合弁(●=金へんに里)、第2工場は独資
米国 ケンタッキー州グレンデール 86GWh(2025年稼働予定) フォードとの合弁(工場2カ所)
テネシー州スタントン 43GWh(2025年稼働予定) フォードとの合弁
ジョージア州コマース 21.5GWh(第1工場9.8GWh。第2工場11.7GWh、2023年稼働予定)
ハンガリー コマーロム 17.5GWh(第1工場7.5GWh。第2工場10GWh、2022年稼働予定)
イバンチャ 30GWh(2024年稼働予定)
トルコ アンカラ近郊 30~45GWh(2025年稼働予定) フォード、コチとの合弁
サムスンSDI 韓国 蔚山市 9GWh
中国 陝西省西安市 8GWh
米国 インディアナ州コーコモー 23GWh、将来的に40GWh(2025年稼働予定) ステランティスと合弁
ハンガリー ゲッド 50GWh(2025年まで)

注1:LGエナジーソリューションのアリゾナ州拠点について、韓国各メディアは2022年6月下旬、建設計画が保留になったとの観測記事を報道した。それに対し、LGエナジーソリューションは「北米地域の物価上昇への対応策について顧客企業と議論中で、需要や事業性評価の要因で再検討しているわけではない」「生産能力を拡大する必要がある状況には変わりはない」としている(「聯合ニュース」2022年7月27日付)。
注2:生産能力欄の「GWh」は、ギガワット時。
出所:各種韓国メディアなどから作成

ここで、各社の生産拠点設置の動きを確認してみる。

  • LGエナジーソリューション(車載電池で韓国最大手)
    欧州では、ポーランドで2016年から車載電池工場を運営しており、その生産能力を増強中だ。製品は、アウディ、BMW、フィアット、フォード、ポルシェ、フォルクスワーゲンなどに供給している。
    北米での生産規模増強は、他の地域に増して大幅だ。現時点では、単独出資の車載電池工場を運営している。これに加えて、ゼネラルモーターズ(GM)との合弁で3カ所、カナダではステランティスとの合弁で、それぞれ車載電池工場を建設中だ。さらに、単独出資で工場建設計画も進めている。
    アジアでは、中国とインドネシアだ。中国では、江蘇省南京市に2工場を有する。第1工場は中国国内メーカー向け、2021年5月に竣工した第2工場は欧州向け輸出拠点の位置づけとなっている。さらに、南京市の生産拠点を拡張する構想を2021年末に発表した。インドネシアでは、現代自動車グループと接半出資して合弁会社を設立し、車載電池工場を建設中だ。製品は現代自動車がインドネシアで生産するEVに搭載する予定だ(2021年9月3日付地域・分析レポート参照)。
  • SKオン
    フォードとの連携などで、海外生産拠点を大幅に拡張中だ。
    欧州では、ハンガリーの生産規模を拡張している。2022年3月には近隣のトルコで、フォードと地場大手財閥のコチとの合弁で、車載電池工場を建設すると発表した。製品は主に欧州のフォードグループの完成車工場に供給する予定だ。
    米国では、ジョージア州で第1工場の稼働を始めた。加えて、第2工場を建設している。さらに、フォードと合弁でケンタッキー州とテネシー州で工場を建設している。生産能力はフォードとの合弁工場の方が圧倒的に大きい。 中国では、江蘇省の常州市と塩城市、広東省恵州市に車載電池工場を有している。このうち、塩城市では2024年稼働開始目標で第2工場を建設中だ。
  • サムスンSDI
    ハンガリー拠点を中心に、生産能力を増強しているものの、前述の2社に比べ、海外生産拠点の拡張に慎重だった。
    しかし、2022年5月、米国でステランティスとの合弁で、同社として初の米国工場を建設すると発表し、海外生産拠点の本格的な増強に踏み出した。製品は、米国、メキシコ、カナダにあるステランティスの各工場に供給する予定だ。

こうした韓国メーカーの海外生産拠点の構築により、特に欧米市場で韓国勢の存在感が高まった。これに関連して、産業通商資源部では、世界3大車載電池市場(米国、EU、中国)での韓国メーカーの位置づけについて、次のように整理している(2022年1月12日付発表)。

  • 米国市場では、2025年までに建設予定とされる大型の車載電池工場建設計画が13カ所ある。そのうち、11カ所が韓国メーカー関連のプロジェクト。
  • EUの車載電池生産能力のうち、韓国系企業が占める割合は64.2%。2021年1~11月のEUの車載電池市場では、71.4%。
  • 中国市場では、地場企業が80%以上のシェア。韓国系企業のシェアは、10%前後にとどまる。

最大のライバルの中国の車載電池メーカーは、国内に巨大なEV市場を抱えている。対照的に、韓国メーカーは国内EV・車載電池市場の規模が限定的だ。それだけに、成長の機会を欧米市場に求め、総力を挙げているといえよう。

サプライチェーンの強化も課題

車載電池は幾つもの材料から構成される。主要材料は、正極材、負極材、セパレーター、電解液の4つだ。それら材料を生産する上で必要になる原料と、その供給企業についてまとめてみた(図2参照)。原料は、リチウム、ニッケル、コバルトといった天然資源を中心に、産出地が世界的に偏在しているものも少なくない。 世界の車載電池市場が急速に立ち上がる中、各社ともサプライチェーン(供給網)の強化を急いでいる。EVメーカーにとって、車載電池の安定確保が重要課題だ。車載電池メーカーは、材料を安定確保しなければならない。さらに、車載電池メーカー、材料メーカーのいずれにとっても、原料の安定確保が重要課題になっている。 このような中、韓国の車載電池メーカーは、海外での車載電池生産拠点構築と同時に、垂直統合化に向けて動いている。具体的には、(1)海外の車載電池生産拠点の近くに材料生産拠点を構築する、(2)企業買収や長期供給契約締結によって原料を確保する、といった動きを活発化させている。特定の車載電池メーカーの系列に属さない、いわば「独立系」の材料メーカーも原料の安定確保に動いている。

図2:車載電池を取り巻く業界構造
韓国の車載電池メーカーは、LGエナジーソリューション、SKオン、サムスンSDIの3社。 車載電池の4大材料は、正極材(LG化学、ポスコケミカルなど)、負極材(ポスコケミカル、日進マテリアルズなど)、セパレータ(SKアイイーテクノロジーなど)、電解液(エンケムなど)。 さらに、これら材料を製造するためには、コバルト、ニッケル、水酸化リチウム、黒鉛などの原料が必要。

出所:各種資料から作成

ここで、韓国の主要企業グループ別に海外生産拠点展開や、サプライチェーン強化の動きをまとめてみる。

  • LGグループ
    1. LG化学
      LG化学が、2030年までに車載電池材料分野の売上高を21兆ウォン(約2兆1,000億円、1ウォン=約0.1円)に拡大するという目標を設定している。これは、現時点での実績の12倍以上に当たる。事業規模拡大のため、積極的に投資しているところだ。
      正極材については、2022年初めに国内の新工場建設に着手した。直近では、2022年7月に米国で正極材工場建設を検討する意向を明らかにした。その狙いについて韓国各メディアは、(1)米国政府や顧客の車載電池サプライチェーン強化要請への対応、(2)後発メーカーの攻勢を受けているLGエナジーソリューション製車載電池シェア低下への対応、などを挙げた。
      セパレーターでは、2021年10月に東レのハンガリー子会社に出資することで東レと合意した。東レのプレスリリース(2021年10月27日付)によると、出資比率は当面は50:50だが、将来的には東レが持ち分のうち20%をLG化学に有償譲渡する予定だ。すなわち、最終的にはLG化学主導で合弁会社を運営していくことになる。
    2. LGエナジーソリューション
      目下、原料確保に注力している。2021年8月に、オーストラリアの車載電池原材料企業とニッケル・コバルト混合水酸化物の長期供給契約を締結した。翌9月には、ニッケルの安定長期先確保の目的で、上海格派●鈷材料(●=金へんに臬)の有償増資に応じる契約を締結した。
      同社はさらに、2022年4月、インドネシア政府と連携して現地に車載電池サプライチェーンを構築すると発表した。これは、原料の確保から車載電池セル生産に至るまで一貫した供給網を目指すというものだ。LGグループのほか、正極材や負極材を手掛けるポスコ、現地国営ニッケル鉱山企業のアネカ・タンバン、国営持ち株会社インドネシア・バッテリー・コーポレーション、中国コバルト大手の浙江華友鈷業がコンソーシアムを組む。
  • SKグループ
    世界的なセパレーターメーカーのSKアイイーテクノロジー(SKIET)が生産能力増強に積極的だ。同社は中国とポーランドを軸に、海外生産拠点を構築している。中国では現地セパレーター市場の拡大を見越し、生産能力を増強している。2021年4月には江蘇省常州市のセパレーター第2工場の一部で、商業生産を開始した。ポーランドでは、2021年10月に欧州初のセパレーター生産拠点を新設、2022年7月に工場増設のために現地法人で増資している。
    銅箔(どうはく)生産のSKネクシリスは、2021年3月にマレーシアでの銅箔工場建設決定を皮切りに、ポーランドや米国でも銅箔工場建設計画を発表した。韓国国内の生産増力拡大と合わせ、世界トップの銅箔メーカーとして、ポジションを固めることを目標としている。
    さらに、SKオンは2022年7月、正極材メーカーのエコプロビーエムとともに、正極材工場建設の投資意向書をフォードと交わした。
  • ポスコグループ
    原料確保へ積極的に動くのは、「独立系」の車載電池材料メーカーも同様だ。その代表格がポスコグループと言える。同グループは鉄鋼中心の事業構造を多角化すべく、各種事業の育成に努めている。車載電池材事業の強化は、その一環だ。
    2022年7月には、車載電池材料事業の売上高を2030年に41兆ウォンに拡大するという目標を提示した。現時点で1兆ウォン台にとどまることからすると、野心的な目標と評価される。そのうち正極材について、ポスコケミカルが2022年5月、GMとの合弁でカナダに年産3万トン規模のニッケル正極材工場を建設すると発表した。韓国、中国に次ぐ3カ国目の生産拠点になる。製品はLGエナジーソリューションとGMの米国車載電池合弁会社に供給する。韓国国内工場の増強と合わせ、供給責任を果たしていく考えも示された。
    またポスコグループは、世界各地で素材確保に動いている。例えば水酸化リチウムについては、アルゼンチンの塩湖でリチウム採掘権を買収したり、オーストラリアの鉱山に出資したりしている。ニッケルについては、オーストラリアのニッケル鉱山・精錬企業に出資した。黒鉛では、ポスコ(注2)が2021年1月、タンザニアに黒鉛鉱山を保有するオーストラリア企業への出資を発表した。ポスコケミカルも、中国の関連企業に出資した(表2参照)。
表2:韓国企業の海外における車載電池材料生産・原料確保の動き(2021年1月~22年7月)
年・月 企業名 進出先 総投資額 概要
2021年
1月
ポスコ オーストラリア 750万ドル タンザニア・マヘンゲ黒鉛鉱山を保有するオーストラリアの鉱山会社ブラック・ロック・マイニングの株式15%を取得。同鉱山の負極材向け黒鉛の永久購入権の確保が目的。
3月 SKネクシリス マレーシア 7,000億ウォン 2023年の本格稼働に向け、生産能力年産5万トンの銅箔工場をサバ州に建設。同社初の海外銅箔工場。現地の電力の低廉な価格、供給安定性を評価。今後、欧州、米国でも銅箔工場建設を進め、2025年に世界シェアトップを目指す。
4月 SKアイイーテクノロジー 中国 江蘇省常州市のセパレータ第2工場の一部で商業生産を開始。中国国内のセパレータ市場拡大を見込んだ生産能力増強。
5月 LG化学 中国 400億ウォン 銅箔製造の九江徳福科技に出資。LG化学の車載電池材料事業強化の一環。九江徳福科技のコスト競争力、技術力を評価。
ポスコ オーストラリア 2億4,000万ドル ニッケル鉱山・精錬のレーブンソープの株式30%を取得。これにより年間3万2,000トンのニッケルを確保。
SKネクシリス ポーランド 9,000億ウォン 年産5万トン規模の銅箔工場を建設。2024年の完成を目指す。
6月 ロッテアルミニウム ハンガリー 1,100億ウォン 年産1万8,000トン規模の正極材工場を建設。
9月 ポスコケミカル 中国 負極材原料の黒鉛の安定的確保を目的に、球形化黒鉛原料企業の青島重石の株式13%を取得。
LGエナジーソリューション 中国 350億ウォン ニッケルなどを生産する上海格派●鈷材料(●=金へんに臬)と株式4.8%を取得する契約を締結。株式取得とともに、2023年から6年間、ニッケル2万トンを調達できる契約を締結。
10月 SKアイイーテクノロジー ポーランド 欧州初の生産拠点として、第1工場を竣工。なお、同社はポーランド生産拠点の拡張を進めている。2023年には、第2工場が本格稼働予定。第3・第4工場も着工済み。
LG化学 ハンガリー 3億7,500万ドル 東レ100%出資のセパレータフィルム製造・販売会社に出資し、両社の折半出資とする。製品はLGグループの欧米拠点向けに供給する。将来的には東レの持分20%をLG化学に有償譲渡し、LG化学主体で現地法人を運営する。
11月 SKオン 中国 25億3,000万ドル 中国で4カ所目となる車載電池セル工場の建設を決定。製品は中国国内市場に供給予定。
ポスコケミカル 中国 261億ウォン 人造黒鉛負極材生産の内蒙古斯諾新材料科技の株式15%の取得を決定。人造黒鉛負極材需要急増に対応するための生産拠点確保、韓国車載電池企業への独占販売権確保が目的。
ソルース尖端素材(旧斗山ソリュース) カナダ 年産6万トン規模の銅箔工場建設のための用地を取得。早ければ2024年に銅箔生産へ。北米市場の拡大に対応する目的。
12月 ポスコホールディングス アルゼンチン 8億3,000万ドル オンブレムエルト塩湖の開発事業への投資を決定。年産2万5,000トン規模の水酸化リチウム工場を着工。2024年上半期竣工を目指す。今後、追加投資により2028年に生産規模を最大10万トンに拡大する計画。
2022年
1月
日進マテリアルズ マレーシア 6,000億ウォン 車載電池市場拡大に合わせ、マレーシアの銅箔工場の生産能力を年産4万トンから9万トンに引き上げる。
エンケム ポーランド 2億4,000万ズロチ リチウム塩生産のための新工場建設、電解液の生産能力拡大を発表。主要顧客のLGエナジーソリューションのポーランド工場生産拡大に対応する目的。
2月 コスモ新素材 中国 山東省の現地法人への追加出資を決定。中国市場の拡大を受け、正極材材料の生産規模を拡大する狙い。
3月 エンケム インドネシア インドネシアで電解液工場建設へ。年内に着工、2023年稼働開始を目指す。製品は現代自動車グループ・LGエナジーソリューションのインドネシア車載電池工場に供給予定。
4月 東和エレクトロライト ハンガリー 500億ウォン 同社として欧州初の電解液工場(年産2万トン)を完工。欧州の車載電池市場の開拓を目指す。
ロッテケミカル 米国 2億ドル
(両社合計)
次世代車載電池のコア素材のリチウム金属負極材などを開発するスタートアップ企業・ソエレクトと合弁会社設立の覚書を締結。2025年までにリチウム金属負極材工場を建設する。
5月 コスモ新素材 米国 テキサス州のリチウム鉱山開発プロジェクトのコンソーシアム(企業連合)に参加。
SKネクシリス 米国 年内に銅箔工場着工を目標にしていると発表。
日進マテリアルズ スペイン 5,000億ウォン 同社の欧州初の銅箔工場を建設。生産能力は年産2万5,000トン、2024年下半期に完工予定。欧州車載電池市場の開拓を目指す。進出先のカタルーニャ州は、現地政府の支援を含め、ポーランド、ハンガリーなどよりもコスト競争力があると判断した。
ポスコケミカル カナダ 3億2,700万ドル
(両社合計)
GMとの合弁でケベック州に年産3万トン規模のニッケル正極材工場を建設することを決定。2024年下半期完工予定。原料・投資コスト・インフラ・環境などを考慮し、進出地を選定。製品は、GMとLGエナジーソリューションの車載電池合弁企業に供給する。
7月 SKアイイーテクノロジー ポーランド 1,054億ウォン ポーランド工場増設のために現地子会社を増資。
LG化学 米国 110億ドル以上 2025年までに正極材生産拠点を構築する計画を発表。さらに、GMと正極材供給のための包括的合意書を締結。
SKオン、エコプロビーエム 北米 1兆ウォン
(3社計)
両社は正極材工場建設の投資意向書をフォードと締結。2023年下半期着工予定。投資金額・建設地は検討中。製品はSKオンとフォードの車載電池合弁会社に供給する。
ロッテケミカル、ロッテアルミニウム 米国 3,300億ウォン 両社の合弁でカンザス州に正極箔生産拠点を建設すると発表。生産規模は年産3万6,000トンで、2025年上半期完工予定。

注1:企業名は原則的に発表当時とする。
注2:為替レートは、1ウォン=0.1円、1ズロチ=28.5円。
出所:各種韓国メディア、各社プレスリリースから作成


注1:
ここで示した3社のうち、LGエナジーソリューションは、2020年12月にLG化学から分社した企業。SKオンは、2021年10月にSKイノベーションから分社した企業。
注2:
ポスコ・グループの中核企業としてのポスコ(製鋼)のこと。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部 主査
百本 和弘(もももと かずひろ)
2003年、民間企業勤務を経てジェトロ入構。2007年7月~2011年3月、ジェトロ・ソウル事務所次長。現在ジェトロ海外調査部主査として韓国経済・通商政策・企業動向などをウォッチ。