2022年州知事選の注目州をみる(米国)

2021年12月16日

ジョー・バイデン米国大統領の支持率が低迷(注1)。民主党にとっては厳しい状況が続く。中間選挙の前哨戦となったのが2021年11月のバージニア州の知事選挙だ。この選挙で、当初有利とみられた民主党候補のテリー・マコーリフ氏が、共和党候補グレン・ヤンキン氏に敗れた(注2)。一方で、同日行われたニュージャージー州知事選挙では、現職のフィル・マーフィー知事(民主党)が勝利こそした。しかし、その差は極めて僅かに過ぎなかった。

2022年の11月の中間選挙に向けて、民主党は巻き返しを図る必要がある。中間選挙投開票日には、36州で州知事選が行われる。現職知事の所属政党をみると民主党知事は16州、共和党知事は20州だ。本稿では、人口最多の4州および接戦が予想される州を中心に状況をみる。

カリフォルニア、ニューヨークは民主党が優勢

全米で人口の上位1~4位を占める州と言えば、カリフォルニア、テキサス、フロリダ、ニューヨークだ(注3)。その各州で、2022年に州知事選挙が行われる。民主党知事が現職のカリフォルニア、ニューヨークでは、民主党候補が優勢だ。

カリフォルニア州では、2021年9月に現職ギャビン・ニュ―サム知事(民主党)の解職について是非を問う住民投票(リコール選挙)があった。その結果、61.9%が「解職すべきでない」に投票。同知事の続投が決定した。この結果を踏まえ、ニュ―サム氏の再選が有力視されている(表参照)。なお、この住民投票では、後任候補5人についても投票された。そこでは、ラリー・エルダー氏(共和党、保守系トークラジオホスト)が他の候補者を引き離し最多得票率(48.4%)だった。もっとも、同氏の知事選立候補はまだ発表されてない。

ニューヨーク州では8月、アンドリュー・クオモ前知事が辞任。その後、当時副知事のキャシー・ホークル氏が州知事に就任した(2021年8月25日付ビジネス短信参照)。ホークル知事は、州知事選挙への立候補を表明済みだ。トム・スオッジ氏(連邦下院議員)、ジュマーン・ウィリアムズ氏(市政監督官)などが民主党候補だ。ニューヨーク市長のビル・デブラシオ氏も立候補がありうる。女性で黒人の州司法長官のレティシア・ジェームズ氏も出馬を表明していたが、12月に取り下げた(注4)。

共和党側の候補者としては、リー・ゼルディン氏(連邦下院議員)、アンドリュー・ジュリアーニ氏(トランプ前政権下でホワイトハウス補佐官、注5)、ロブ・アストリーノ氏(ウエストチェスター郡前行政長官)、マイク・カーペナリ氏(ルイス郡保安官)らがいる。

表:2022年州知事選挙で、民主党・共和党候補の当選確度が高いあるいは優勢と予想される州
所属政党 州名 現職知事 再出馬 当選
確実
現職党
優勢
民主党 カリフォルニア ギャビン・ニュ―サム
コロラド ジェアド・ポリス
コネチカット ネッド・ラモント
ハワイ デビッド・イゲ ×
イリノイ J.B. プリッツカー
ミネソタ ティム・ワルツ
ニューメキシコ ミシェル・ルーハン・グリシャム
ニューヨーク キャシー・ホークル
オレゴン ケート・ブラウン ×
ロードアイランド ダニエル・マッキー ×
共和党 アラスカ マイク・ダンレビ
アラバマ ケイ・アイビー
アーカンソー アサ・ハッチンソン ×
アイダホ ブラッド・リトル
アイオワ キム・レイノルズ
ネブラスカ ピート・リケッツ ×
ニューハンプシャー クリス・スヌヌ
オハイオ マイク・デワイン
オクラホマ ケビン・スティット
サウスカロライナ ヘンリー・マクマスター
サウスダコタ クリスティ・ノーム
テネシー ビル・リー
テキサス グレッグ・アボット
バーモント フィル・スコット
ワイオミング マーク・ゴードン

注:「×」は任期切れの後、規定に基づき再出馬ができないことを意味する。
出所:270toWin

テキサス、フロリダでは共和党が有利

テキサス州では、これまでのところ、グレッグ・アボット知事(共和党現職)の再選が有力とみられている。

一方で、民主党では、ベト・オルーク氏が2021年11月、州知事選立候補を発表した。同氏は、2018年の上院選挙で接戦の末に敗れたことで名を上げた(注6)。その後、2020年大統領選挙の民主党候補として立候補したことでも知られる。もっとも、その際、銃規制に厳しい姿勢を示していた。そのような姿勢が同州では反発を招くとみる向きもある。12月のキニピアク大学の世論調査(注7)によると、アボット氏の支持率が52%。オルーク氏(37%)を15ポイント上回った。同調査では、メキシコとの国境問題や経済など全ての項目にわたって、アボット氏への期待度がオルーク氏を上回った。

フロリダ州では、共和党現職のロン・デサンティス知事が2021年11月に再立候補を発表した。同氏は、バイデン政権の新型コロナウイルス対策(マスク着用義務)や移民政策に反対。州内の支持を固めている。そのため、民主党が流れを変えるのは難しいとみられている。なお、ドナルド・トランプ前大統領が2024年の大統領選に立候補しない場合、共和党候補として有力視されている存在でもある。

一方で民主党の主な候補者は、チャーリー・クリスト氏(元・同州知事、現・連邦下院議員)、ニッキー・フリード氏(同州農業委員)、アネット・タッデオ氏(同州議会上院議員)らだ。

現職共和党で接戦が予想される州も

  • ジョージア州
    2018年の州知事選挙では、民主党のステイシー・エイブラムス氏(元・州下院議員)が共和党のブライアン・ケンプ氏と大接戦。全米の注目を集めた。ケンプ氏に僅差で敗北したエイブラムス氏は2021年12月1日、2022年州知事選挙に向け再立候補を表明した。
    その後の2020年大統領選において、同州ではバイデン候補が僅差の勝利だった。その結果を覆すことにケンプ知事が同意しなかったことから、トランプ前大統領はケンプ氏を攻撃。対抗馬として、トランプ氏は2020年の上院選挙の決選投票で敗れたデビッド・パーデュー前上院議員(共和党)を擁立している。トランプ氏が支援することでパーデュー氏が注目され、ケンプ氏との共和党予備選が注目される。
  • アリゾナ州
    規定により、現職ダグ・デュシー知事(共和党)が2022年に再立候補できない。他方で、冒頭で言及したバージニア州知事選では、ヤンキン氏(共和党)がトランプ氏との適度な距離感を保って勝利した。その結果を受けて、デュシー知事は、(幅広い層に対応するため)その戦略を見習うべきと提案している。同州は、共和党の牙城とみなされていたが、2020年大統領選挙ではバイデン氏が勝利しており、共和党が議席を守りたい州である。
    現時点での民主党候補者としては、カティ・ホッブス氏(州務長官)、マルコ・ロペス氏(元ノガレス市長)が挙げられる。もう一方の共和党候補者としては、トランプ氏が擁立するカリ・レーク氏(元テレビ・キャスター)、マット・サーモン氏(元・連邦下院議員)らだ。各党予備選挙を想定した世論調査(注8)では、民主党でホッブス氏、共和党でレーク氏がリードしている。

民主党現職知事州で軒並み接戦予想

州知事が民主党のカンザス、ミシガン、ネバダ、ウィスコンシン、ペンシルベニアの各州では、共和党が奪還をうかがう状態だ。これらの州では、接戦が予想される。

  • カンザス州
    民主党のローラ・ケリー知事に対抗して、共和党からデレク・シュミット氏(州司法長官)が立候補する。同州で争点の1つとなっているのが中絶権だ。2022年8月には、中絶権を除外する州憲法修正案に関して投票が実施される予定だ。その結果が試金石になるだろう。
  • ミシガン州
    民主党のグレッチェン・ホイットマー知事に対抗する共和党候補は、ジェームズ・クレイグ氏(前デトロイト警察署長)が最有力とみられている。また、チューダー・ディクソン氏(保守系メディアパーソナリティ)も、2021年5月に立候補表明した。
  • ウィスコンシン州
    民主党のトニー・エバーズ知事が再選を狙う。共和党候補としては、レベッカ・クリーフィッシュ氏(前副知事)が有力とされている。また、トランプ氏はショーン・ダフィ氏(元連邦下院議員)の立候補を後押ししている。
  • ネバダ州
    民主党のスティーブン・シソラック知事が立候補予定だ。共和党の主な候補者は、ディーン・ヘラー氏(前連邦上院議員)、ジョー・ロンバルド氏(クラーク郡保安官)だ。冒頭のバージニア州の例もあり、同州でも中間選挙で共和党に有利との楽観的な見方も出てきた。しかし、その人口構成は近年急速に多様化。州人口に占める白人の構成比は50%を割っている。この点で、バージニア州と状況が違う(注9)と指摘する声もある。
  • ペンシルベニア州
    民主党の現職、トム・ウルフ知事が規定により再立候補できない。民主党からは、ジョシュ・シャピロ氏(州司法長官)が2021年10月に立候補を表明した。片や共和党側は、ルー・バレッタ氏(元連邦下院議員)、ビル・マクスウェイン氏(前連邦検事)、ダグ・マストリアーノ氏(州上院議会議員)ら多数の党候補が見込まれるが、12月に元連邦下院議員のメリッサ・ハート氏が立候補を表明し、同州初の女性知事を目指す。

2022年の州知事選挙の勝敗は、2024年大統領選挙を有利に進めるための布石になる。本稿で取り上げた注目州で、民主・共和両党の攻防が続く。


注1:
選挙情報サイト、リアルクリアポリティクスのバイデン大統領の全米平均支持率は、10月1日45.2%、11月1日43.0%、12月1日42.2%。
注2:
2021年11月4日付ビジネス短信参照
注3:
出所は米国勢調査局(2021年10月14日付地域・分析レポート参照)。
注4:
レティシア・ジェームズ氏は、ドナルド・トランプ前大統領の一族が経営するトランプ・オーガナイゼーションへの民事詐欺の調査や全米ライフル協会(NRA)に対する訴訟などに関する調査を、州司法長官として継続したい意向を示した。 
注5:
アンドリュー・ジュリアーニ氏は、元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニ氏の子息でもある。
注6:
テキサス州では、長期にわたって上院選で民主党が当選できていない。そのような中で、共和党現職テッド・クルーズ候補を向こうに回して僅差に迫ったことは画期的という見方も多い。
注7:
実施時期は、2021年12月2~6日。対象者は、テキサス州有権者1,224人(2021年12月9日付ビジネス短信参照)。
注8:
OHプレディクティブ・インサイツ実施。実施時期は、2021年11月1~8日。対象者は、アリゾナ州有権者713人。
調査結果は、民主党ホッブス氏42%、ロペス氏8%。共和党レーク氏28%、サーモン氏11%。
注9:
2020年の米国勢調査では、人種・民族の多様性を示すダイバーシティー指数は、バージニア州60.5、ネバダ州68.8。白人の人口構成比は、バージニア州61.2%、ネバダ州48.2%。

変更履歴
表に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2022年1月18日)
(誤)コロンビア
(正)コロラド
表に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2021年12月28日)
共和党 ブラッド・リトル知事の州名
(誤)インディアナ
(正)アイダホ
執筆者紹介
海外調査部米州課 課長代理
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。米国の移民政策に関する調査・情報提供を行っている。

ご質問・お問い合わせ