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ポーランド、2040年までのエネルギー政策の改定案を提示
陸上風力を大幅に引き上げへ

2020年3月11日

ポーランドのエネルギー省は2019年11月8日、エネルギー政策案(PEP2040)(2019年1月23日付地域・分析レポート参照)の改定案(PEP2040改定)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提示した。これは、2018年11月23日に発表された案に対して寄せられていたパブリックコメントや公開協議の内容を反映させたもの。

クシシュトフ・トゥホジェフスキ・エネルギー相(当時)は、「優先事項は、ポーランドのエネルギー部門の変革と成長を維持し、また人々と経済にとって安全な方法で実行されること」と述べた。改定案の中では、2033年運転開始目標とした原子力を含め、各電源別の再生可能エネルギーの導入予測値が下方修正されているものの、陸上風力の導入予測値が大幅に引き上げられた。2018年のエネルギー政策案と改定案を比較しながら、改定されたエネルギー政策案の概要を紹介する。

陸上風力削減案の撤回、9.5ギガワット程度維持へ

改定案では、エネルギー政策の目標は、エネルギーの安全保障であり、経済の競争力を確保しながら、エネルギー効率を上げることで環境への影響を減らし、自国のエネルギー資源を最適に使用することとし、5つの指標を示している。改定案での5つの指標は以下の通り。

  • 2030年に石炭が発電電力量に占める割合を56〜60%まで削減
  • 2030年に総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を21〜23%まで引き上げ
  • 2033年に原子力発電を開始(現在所有なし)
  • 2030年までに二酸化炭素排出量を30%削減(1990年比)
  • 2030年までにエネルギー効率を23%向上(2007年時点の予測比)

2018年のエネルギー政策案からの変更点は、2030年に石炭が発電電力量に占める割合の引き下げ予測値が60%から56〜60%まで下方修正され、総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合が21%から21〜23%へと上方修正された。そのほか、2033年に原子力発電を開始、2030年までに二酸化炭素排出量を30%削減(1990年比)、2030年までにエネルギー効率を23%向上(2007年時点の予測比)といった予測は変更されていない。

2040年の各電源種別の設備容量予測を比較すると、大幅に変更されたのは陸上風力である。2018年のエネルギー政策案では2030年に6.0ギガワットから2040年に0.8ギガワットへと段階的に削減する計画であったが、改定案では2030年に9.6ギガワットに達し、2040年には9.8ギガワットとわずかに増加する予測を掲げている。その他の再生可能エネルギーでは、2040年を比較すると太陽光は20.5%減、洋上風力は22.5%減とそれぞれ予測値を下方修正した。2033年を稼働目標とする原子力についても、2040年で30.4%減と下方修正した。また、天然ガスは31.5%減となったものの、石炭では15.4%増となった(図1参照)。

ポーランドは、天然ガスの国内消費の多くをロシア、ドイツ、チェコなどからの輸入に大きく依存している。エネルギーセキュリティーを強化するため、供給元の多角化も進めているが、天然ガスへの依存度を上げられない中で、自国で採掘できる石炭の依存度を減らすことは容易ではないことがうかがえる。

図1:PEP2040(2018年11月)とPEP2040改訂(2019年11月)との
電源別予測値の比較
太陽光:2030年PEP2040 10,200[MW]、PEP2040改訂 7,270[MW]、2040年PEP2040 20,200[MW]、PEP2040改訂 16,062[MW]。 陸上風力:2030年PEP2040 6,000[MW]、PEP2040改訂 9,601[MW]、2040年PEP2040 800[MW]、PEP2040改訂 9,761[MW]。 洋上風力:2030年PEP2040 4,600[MW]、PEP2040改訂 3,815[MW]、2040年PEP2040 10,300[MW]、PEP2040改訂 7,985[MW]。 石炭:2030年PEP2040 25,430[MW]、PEP2040改訂 25,130[MW]、2040年PEP2040 13,485[MW]、PEP2040改訂 15,564[MW]。 天然ガス:2030年PEP2040 6,900[MW]、PEP2040改訂 6,271[MW]、2040年PEP2040 12,445[MW]、PEP2040改訂 8,521[MW]。 原子力:2030年PEP2040 2,800[MW]、PEP2040改訂 2,600[MW]、2040年PEP2040 5,600[MW]、PEP2040改訂 3,900[MW]。

出所:ポーランド・エネルギー省

再生可能エネルギーの割合はEU目標に達せず

改定案では、総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー割合は、2020年に15%、2030年に23%を予測している。そのうち、電力部門では太陽光および洋上風力の導入拡大により急速に伸び、2020年に22.1%、2030年に31.8%、2040年に39.7%と予測する一方、冷暖房、運輸部門は技術的課題や規制などから緩やかな伸びを予測している(図2参照)。EUの「2030年の気候とエネルギーの枠組み」の目標値は、2030年の総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合32%以上としており、改定案でのポーランド予測値23%は、EUの目標値には達していない。さらにエネルギー省(当時)は、23%の達成にはEUからの資金面での支援が重要としている。EUの「2030年の気候とエネルギーの枠組み」の主な目標を次に示す。

  • 温室効果ガス排出を少なくても40%削減(1990年比)
  • 再生可能エネルギーの少なくても32%のシェア
  • エネルギー効率の少なくても32.5%の改善
図2:各部門の再生可能エネルギー消費量と総最終エネルギー消費に占める
再生可能エネルギー割合の予測
 2020年総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合、ポーランド15%、EU目標20%、2030年総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合、ポーランド23%、EU目標32%。

注:左軸の単位「ktoe」は、石油換算1,000トンのエネルギー量を意味する。
出所:ポーランド・エネルギー省および欧州委員会

改定案の電源別発電電力量の構成比をみると、石炭は2020年の69.3%から2030年年に56.2%、2040年に27.9%と、今後20年で割合を半分以下に削減する。年々、発電電力量も増加することを予想しているが、主に再生可能エネルギー、原子力および天然ガスへ代替する目標を掲げている。再生可能エネルギーでは陸上風力と洋上風力の導入が大きく、2020年の22.1%(39.0テラワット時)から2030年に31.6%(63.6テラワット時)、2040年に39.5%(89.2テラワット時)と導入を拡大する。また、2033年から原子力が導入され、2035年に9.6%(20.4テラワット時)、2040年に13.6%(30.6テラワット時)を占める(図3参照)。

図3:電源別発電電力量の予測構成比
2020年、石炭69.3%、再生可能エネルギー22.1%、2030年、石炭56.2%、再生可能エネルギー31.6%、2040年、石炭27.9%、再生可能エネルギー39.5%。

出所:ポーランド・エネルギー省

今後予想される二酸化炭素排出量は、1990年比で2030年に29%削減し2億6,800万トンへ、2040年には45%削減し2億90万トンとし、改定案の内容を実施しない場合と比較して、2040年では、8,000万トン以上の二酸化炭素を削減できると予想している(表参照)。

表:PEP2040で予想される二酸化炭素排出量(単位:100万t、%)(△はマイナス値)
1990年 2030年 2040年
CO2排出量 CO2排出量 1990年比 CO2排出量 1990年比
377 268 △29% 209 △45%

出所:ポーランド・エネルギー省

2018年のEU各国の1人当たりの二酸化炭素排出量を比較すると、ポーランドは8.0トンとEU平均5.5トンより排出量が多く、チェコ、フィンランド、アイルランド、ドイツとほぼ同水準に位置している(図4参照)。

図4:EU 28カ国の1人当たりの二酸化炭素排出量(2018年)
エストニア12.9[t/人]、ルクセンブルク12.2[t/人]、デンマーク11.6[t/人]、オランダ8.5[t/人]、ポーランド8.0[t/人]、チェコ8.0[t/人]、フィンランド7.9[t/人]、アイルランド7.8[t/人]、ドイツ7.7[t/人]、リトアニア6.7[t/人]、キプロス6.6[t/人]、ベルギー6.5[t/人]、マルタ6.0[t/人]、スロベニア5.9[t/人]、ブルガリア5.9[t/人]、スロバキア5.6[t/人]、EU28 5.5[t/人]、ギリシャ5.5[t/人]、オーストリア5.3[t/人]、スペイン4.6[t/人]、イギリス4.5[t/人]、ポルトガル4.3[t/人]、スウェーデン4.3[t/人]、イタリア4.2[t/人]、ラトビア4.0[t/人]、ハンガリー3.8[t/人]、ルーマニア3.4[t/人]、フランス3.3[t/人]、クロアチア3.1[t/人]。

出所:ユーロスタット

欧州グリーン・ニューディールで重要視されるポーランド

2019年12月に欧州委員会が公表した、2050年までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す「欧州グリーン・ディール」(2019年12月12日付ビジネス短信参照)では、当初反対していた他の2カ国、チェコおよびハンガリーは賛成したものの、ポーランドは最後まで反対の意向を示した。報道によるとマテウシュ・モラビエツキ首相は「ポーランドは独自のペースで気候中立性を達成する」としている。また、「2070年にはゼロエミッションの目標を達成できる見込み」との考えを示した。

欧州委員会が2020年1月15日に提案した、「欧州グリーン・ディール」の資金提供メカニズム(2020年1月21日付ビジネス短信参照)では、「公正な移行基金」の枠組みの下、EU資金から新たに75億ユーロが拠出される。各国への割り当て方法は、産業からの温室効果ガス排出量の数値が特に高い地域での温室効果ガス排出量、同産業での雇用、石炭・炭鉱の採掘における雇用などが考慮される。ポーランドは単一の加盟国の上限である20億ユーロが割り当てられ、次いでドイツが8億8,000万ユーロ、ルーマニアが7億6,000万ユーロ、チェコが5億8,000万ユーロの試算となった。


変更履歴
タイトルに誤解を招くところがありましたので、以下の通り修正しました。(3月 16日)
【修正前】ポーランド、2040年までのエネルギー政策を改定
【修正後】ポーランド、2040年までのエネルギー政策の改定案を提示
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課
宮口 祐貴(みやぐち ゆうき)
2012年東北電力入社。2019年7月からジェトロに出向し、海外調査部欧州ロシアCIS課勤務。

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