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2040年までのエネルギー政策案を提示、石炭発電の割合低減(ポーランド)

2019年1月23日

電源構成の8割を石炭に依存しているポーランドは、2040年までのエネルギー政策案の中で、2030年に石炭が発電に占める割合を60%まで削減することや、総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を21%まで引き上げ、原発の稼働開始など5つの指標と、その実現のための8つの施策を提示した。1月15日までパブリックコメントを受け付けた後、法案作成の議論が開始される。エネルギー政策案の概要について紹介する。

石炭発電に大きく依存、政府は電気料金高騰へ対策

ポーランドには多くの炭鉱があり、電源構成(発電量ベース)の8割を石炭に依存している。ポーランド中央統計局(GUS)によると、2016年の家庭における1人当たりエネルギー消費構成においても、32.5%が無煙炭由来のエネルギーとなっており、EU平均(2.7%)と比べて非常に高い(表参照)。

表:家庭における1人当たりエネルギー消費構成(2016年) (単位:%)
種別 EU平均 ポーランド
天然ガス 36.9 17.6
電気 24.4 12.6
15.2 13.5
燃料油 8.4 0.4
地域熱 7.8 19.7
無煙炭 2.7 32.5
LPG 2.0 2.6
その他 2.5 1.2
出所:
ポーランド中央統計局(GUS)、ユーロスタット

ポーランドでは、石炭価格と二酸化炭素排出権価格の上昇を背景に電気料金が高騰し、電力卸売取引所(TGE)で取り引きされる平均電力価格(年間契約)は、2018年11月時点で前年同期比約65%増となっている。電気料金の高騰への対策として政府は2018年12月末、物品税法などを改正し、2019年の同料金を2018年の水準に維持することを決定した。電力にかかる物品税を1メガワット時(MWh)当たり20ズロチ(約580円、1ズロチ=約29円)から5ズロチへ引き下げ、送配電料を2018年12月31日時点の水準に、最終消費者向けの電気料金(電力購入契約価格)を2018年6月30日時点の水準に、それぞれ収めることなどを定めている(2019年1月21日付ビジネス短信参照)。

石炭発電の割合を6割まで下げ、原発稼働へ

エネルギー省は2018年11月23日、2040年までのポーランドのエネルギー政策をまとめた計画文書(以下、エネルギー政策案)を公開した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。2019年1月15日までパブリックコメントを受け付け、その後、法案作成の議論が開始される。

今回のエネルギー政策案は、経済競争力強化やエネルギー効率改善、環境負荷軽減などを実現しつつ、国家のエネルギー安全保障を確保するために、2040年までエネルギーの転換をどのように行っていくべきかの案を示したもの。具体的には、以下のような5つの指標が提示されている。

  • 2030年に石炭が発電に占める割合を60%まで削減する(現在約80%)
  • 2030年に総最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を21%まで引き上げる(2016年:11%)
  • 2033年に原子力発電を開始する(現在0基)
  • 2030年までにエネルギー効率を23%改善する(2007年時点の予測比)
  • 2030年までに二酸化炭素排出量を30%削減する(1990年比)

これらの目標達成のために、以下8つの施策が提示されている。

  1. エネルギー資源(無煙炭、褐炭、天然ガス、原油、バイオマス・非農業系廃棄物など)の最適使用
  2. 発電および送電系統インフラの拡張(従来の火力発電以外による電力需要増加への対処、安定した配電、エネルギー貯蔵技術の開発など)
  3. ガスおよび石油供給元の多様化、ガス・原油などの液体燃料流通のためのインフラの拡張[「ノーザン・ゲート」ガスパイプラインの建設(2022年完了予定)、近隣諸国(スロバキア、リトアニア、チェコ、ウクライナ)との相互連結性の拡張など]
  4. エネルギー市場の発展(電力購入時の比較ツールの普及や、2026年までに80%の家庭にスマートメーター設置などによる電力消費者への啓発活動など)
  5. 原子力発電施設の稼働(最初の原発は2033年、その後2043年までにさらに5基の導入など)
  6. 再生可能エネルギー源(バイオマス、バイオガス、地熱、ヒートポンプなど)の活用によるヒートエンジニアリング(heat engineering)・冷却分野の再生可能エネルギーの割合の増加(年1.0~1.3ポイント)、太陽光や洋上風力発電などの活用による発電分野の再生可能エネルギーの割合の増加など)。
    陸上風力に比べ洋上風力が、風速が速いため、発電に際しより多くの力を使用することができ、(建設に係る近隣住民などとの)社会的な問題もないことから、今後は洋上風力をエネルギー源として重視していく方向性を提示。
  7. ヒートエンジニアリングおよびコージェネレーションの開発[地方自治体によるエネルギー計画策定の促進、ヒートマップ(エネルギー供給・消費状況などを色で表現した分布図)作成用のデータ収集システム構築、各家庭において固形燃料以外の燃料(天然ガス、再生可能エネルギーなど)を使用するためのインセンティブ設定など]。
  8. エネルギー効率改善[エネルギー効率認証(注)システムの効率的な運用確保および2030年以降の制度継続、住宅の熱システム改良のためのプログラム開始など]

同エネルギー政策案の英訳版はジェトロ・ワルシャワ事務所(E-mail:pow-info@jetro.go.jp)に連絡を。


注:
通称「ホワイト認証」と呼ばれる。企業・組織が計画したエネルギー効率を改善するプロジェクトに対し、追加の資金を受領することができる仕組み。エネルギー効率に関する監査を行い、申請が通過した後、エネルギー規制局(URE)長によって発行される。当該プロジェクトによって節約されるエネルギーは、年平均で石油10トン相当以上でなければならない。
執筆者紹介
ジェトロ・ワルシャワ事務所
深谷 薫(ふかや かおる)
2015年4月、ジェトロ入構。海外調査部欧州ロシアCIS課を経て、2018年7月から現職。

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