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日本式ものづくり学校(JIM)開校(インド)
モディ首相出身地で目指す「メイク・イン・グジャラート」「スキル・インディア」

2020年1月22日

インド西部のグジャラート(GJ)州には、大塚製薬工場の子会社の大塚製薬インドがある。大塚製薬工場は2019年11月に日本、インド両政府で取り組みを進める「日本式ものづくり学校(JIM)」の認定を経済産業省から受け、大塚製薬インドの工場で1期20人程度の研修生を約1年かけて育成するプログラムを開始した。大塚製薬インドの﨑山基行最高経営責任者(CEO)にJIM設立の経緯やカリキュラム、今後のインドでの事業展開について聞いた(2019年12月18日)。

質問:
JIM設立の経緯は。
答え:
大塚製薬工場は2013年7月にインドの輸液事業会社から事業の譲渡を受け、合弁会社を設立して事業を展開してきた。2018年3月には共同設立会社間で株式譲渡契約を締結し、譲渡が完了すれば、大塚製薬インドは大塚製薬工場の完全子会社となる。これにより生産管理だけでなく、事業運営なども当社側で担うようになった。これまでは新入社員に対してはオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)として、製造工程マネジメントや品質管理、安全対策、データインテグリティー(注)などに関する研修を実施してきたものの、より包括的な研修プログラムとして設計し直し、実施する必要性を感じていた。
そうした中、海外産業人材育成協会(AOTS)から2019年7月にJIM開校の提案を受け、社内や関係者との協議を重ね、同年11月に開校することとなった。GJ州では、スズキと豊田通商がJIMを実施している。豊田通商にヒアリングしたところ、同社では地元学生などに対する日本式の労働倫理や技能を直接指導し、製造現場の中核人材の育成を目指しているが(2018年10月23日付ビジネス短信参照)、当社では事業基盤強化を念頭に置いた人材育成のためのJIMを立ち上げることとした。
表:「日本式ものづくり学校(JIM)」参画企業
No 企業名 学校名 所在地 開校
時期
学生数/
学年数
1 スズキ Maruti Suzuki JIM グジャラート州
メーサナ
2017年8月 420人
1年または2年コース
2 トヨタ自動車 Toyota Technical Training Institute カルナタカ州
バンガロール
2017年8月 64人
3年コース
3 ダイキン工業 Daikin Japanese Institute of Manufacturing Excellence ラジャスタン州
ニムラナ
2017年8月 31人
2年コース
4 ヤマハ発動機 YAMAHA MOTOR NTTF
Training Center (YNTC)
タミル・ナドゥ州
チェンナイ
2017年7月 40人
4年コース
5 日立建機 TaTa Hitachi JIM カルナタカ州
ダールワール
2017年11月 30人
3年コース
6 アーレスティ Ahresty Japan-India Institute for Manufacturing ハリヤナ州
バワル
2018年7月 43人
1年コース
7 豊田通商 Toyota Tsusho NTTF Training Centre グジャラート州
マンダル
2018年9月 35人
3年コース
8 テルモ TPLJIM ケララ州
トリバンドラム
2018年12月 50人
1.5年コース
9 スリシティ(日本企業7社合同) SriCity Japanese Companies JIM アンドラプラデシュ州
スリシティ
2019年4月 20人
1年コース
10 スズキ Maruti Suzuki JIM ハリヤナ州
グルグラム
2019年8月 420人
1年または2年コース
11 ベルソニカ Bellsonica JIM ハリヤナ州
マネサール
2019年6月 44人
3年コース
12 大塚製薬工場 Otsuka JIM グジャラート州
アーメダバード
2019年11月 20人
1年コース

出所:経済産業省ウェブサイトを基に作成

質問:
研修生の能力の底上げを図るための工夫は。
答え:
製造や品質管理、環境、技術、設備など将来の各部署における中核人材の育成を目指し、人材を選考した。要件をクリアした25人で2019年11月15日からJIM第1期を開始した。講師は当社社員が務め、OJTなどの経験豊富なトレーナーによる最新の事例を取り入れた安全対策講座や、研修生同士のグループワークを交えながら研修している。私も研修に参加したが、当社講師による工夫が凝らされた研修の中で、研修生も積極的に発言し、常に活発な意見交換が行われていた。また、日本本社から技術者の招聘(しょうへい)も予定しており、より高いレベルの知識・技術教育を実施する予定だ。一方、AOTSが実施している「トレーナーズ・トレーニング」の活用など、講師の教える技術の向上にも今後取り組みたい。JIMに取り組む日系企業12社は製造業が多く、医療・製薬業界は当社を含め2社のみであり(表参照)、同業他社がインドでJIMを実施する上での1つのモデルケースともなれるよう、研修カリキュラムの見直しをしながら、より良い教育プログラムを実践できればと考えている。

研修を受けるJIM1期生(11月29日、同社提供)

研修を受けるJIM1期生(12月11日、同社提供)
質問:
今後のインドでの事業展開は。
答え:
今回のJIM開校は20年先を見据えた投資という側面もある。大塚製薬インドの工場には現在、約450人の従業員がいるが、医薬関連企業での業務経験を有する中途採用者も多い。大塚グループの企業理念である「Otsuka-people creating new products for better health worldwide」(世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する)の浸透を図る一方、JIMを通じて当社の価値観や考え方、体系的な知識の早期習得を目指し、研修で学んだことを現場で生かす機会を提供することで、より責任感のある中核人材が育つことを期待している。また、現在、女性従業員の雇用は限定的だが、今後増やしていきたい。全社でダイバーシティーの推進を行っており、インドでも多様なバックグラウンドを持った社員を採用することで、多様化する顧客ニーズの把握や企業価値の向上を実現したい。他方、インドはキャリアアップのための転職が一般的で、JIM修了生が転職する可能性は十分にあるため、モチベーションが十分維持できる仕組みも合わせて構築していきたい。
インドの製薬市場は年率12%以上で成長しており、2025年には1,000億ドル規模となる見込みだ。中でもGJ州は、製薬関連企業が集積してインド全体の売上高の約33%を占め、製薬関連機械の生産ではインド全体の約40%、医薬品輸出では同約28%を占める。大塚製薬工場は日本の輸液市場で過半のシェアを占めるリーディングカンパニーであり、そのノウハウや技術をインドでも十分活用できるよう、この機会に人材育成の仕組みを強化していきたい。そして、大塚グループの革新的な医薬品がインドの医療や人々の健康に寄与できるよう事業展開を加速していきたい。今後も両国政府関係機関や地元大学などの教育機関とも連携を図りながら、JIMによる教育プログラムを軌道に乗せ、当社事業の拡大のみならず、モディ首相の掲げる「メイク・イン・グジャラート」や「スキル・インディア」への貢献を目指したい。

大塚製薬インドの﨑山CEO(12月18日、ジェトロ撮影)

注:
データが完全で一貫性があり、正確であること。
執筆者紹介
ジェトロ・アーメダバード事務所
丸崎 健仁(まるさき けんじ)
2010年、ジェトロ入構。ジェトロ・チェンナイ事務所で実務研修(2014年~2015年)、ビジネス展開支援部、企画部海外地域戦略班(南西アジア)を経て、2018年3月よりジェトロ・アーメダバード事務所勤務。

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