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ドイツ自動車産業、2019年は出荷台数が増加も今後の市場環境に警戒感

2020年3月25日

2019年のドイツ自動車メーカー大手3社による乗用車出荷台数は、スポーツ用多目的車(SUV)の好調などを背景に、各社とも増加した。一方、世界的な経済減速による厳しい市場環境に加え、新型コロナウイルス拡大の影響から危機感が増している。

2019年の販売・出荷台数では引き続き好調を維持

ダイムラー・グループの2019年の乗用車の世界出荷台数(スマートを除く)は、233万9,562台と前年比で1.3%増加し、9年連続で過去最高を更新した(表1参照)。国・地域別にみると、アジア大洋州は3.7%増の97万7,922台と好調だった。特に、2015年から同社にとって最大の市場である中国は、69万3,443台で6.2%増加した。一方、欧州は93万7,881台と0.4%の増加、米国では31万6,094台と前年と同水準にとどまった。

表1:ダイムラー・グループの出荷台数(2019年)(単位:台、%)(△はマイナス値)
国・地域 販売台数 前年比
欧州 937,881 0.4
階層レベル2の項目ドイツ 318,353 4.8
アジア大洋州 977,922 3.7
階層レベル2の項目中国 693,443 6
NAFTA 372,144 △1.6
階層レベル2の項目米国 316,094 0.0
全世界 2,339,562 1.3

注:スマートを含まない。
出所:ダイムラーウェブサイト

BMWグループの乗用車の世界出荷台数は、252万307台と前年比で1.2%増加し、ダイムラーと同じく9年連続で出荷台数の記録を更新した(表2参照)。国・地域別にみると、欧州地域では、ドイツが前年より3.8%増加したものの、地域全体では108万1,563台と1.5%減少した。アジアでの販売は好調を維持し、5.6%増の92万3,999台だった。特に中国は72万3,680台と、13.1%増加するなど、著しく伸びた。米州は45万7,932台となり、0.4%の微増にとどまった。このうち、米国は36万918台で1.8%増加した。

表2:BMWグループの自動車販売台数(2019年)(単位:台、%)(△はマイナス値)

国・地域別(BMW、MINI)
国・地域 販売台数 前年比
欧州 1,081,563 △1.5
階層レベル2の項目ドイツ 331,370 3.8
アジア 923,999 5.6
階層レベル2の項目中国 723,680 13.1
米州 457,932 0.4
階層レベル2の項目米国 360,918 1.8
全世界(注1) 2,520,307 1.2
ブランド別
ブランド名 販売台数 前年比
BMW 2,168,516 2.0
MINI 346,639 △4.1
BMW電気自動車部門(BMW elektrifiziert)(注2) 145,815 2.2
ロールスロイス 5,152 25.4
BMW二輪車部門(BMW Motorrad) 175,162 5.8

注1:BMW,MINI、ロールスロイスの合計。
注2:BMWi/BMWiperfomance/MINI Electric。
出所:BMWウェブサイト

フォルクスワーゲン(VW)の乗用車の世界出荷台数は、1,097万4,600台と前年比で1.3%増加した(表3参照)。国・地域別にみると、欧州は455万2,800台で3.9%増加した。うち、ドイツ国内は6.2%増となるなど、好調だった。一方、中・東欧地域は1.1%増と低水準の伸びにとどまった。アジア大洋州での出荷台数は、同地域の出荷台数の大半を占める中国での出荷台数が0.6%増加し、423万3,600台だったものの、地域全体では振るわず、453万100台で0.4%減と減少した。北米でも、米国が65万4,200台と2.5%増加したものの、地域全体では0.5%の減少に転じた。南米では、60万8,600台と3.2%増加した。特にブラジルの出荷台数が17.1%増加し、好調だった。ブランド別にみると、VWブランド(0.5%増)やアウディ(1.8%増)、セアト(10.9%増)が前年比で増加した一方、シュコダは0.9%減と減少に転じた。

表3:VWグループの自動車出荷台数(2019年) (単位:台、%)(△はマイナス値)

国・地域別
国・地域 出荷台数 前年比
欧州 4,552,800 3.9
階層レベル2の項目西欧 3,747,000 4.6
階層レベル3の項目ドイツ 1,364,000 6.2
階層レベル2の項目中・東欧 805,800 1.1
階層レベル3の項目ロシア 233,600 1.6
アジア大洋州 4,530,100 △0.4
階層レベル2の項目中国 4,233,600 0.6
北米 951,500 △0.5
階層レベル2の項目米国 654,200 2.5
南米 608,600 3.2
階層レベル2の項目ブラジル 470,400 17.1
全世界 10,974,600 1.3
ブランド別
ブランド名 出荷台数 前年比
VW 6,278,300 0.5
アウディ 1,845,600 1.8
シュコダ 1,242,800 △0.9
セアト 574,100 10.9
ポルシェ 280,800 9.6

出所:VWウェブサイト

SUVやオフロード人気が成長を下支え

ドイツ3大自動車メーカーの出荷台数を支える要素として、スポーツ用多目的車(SUV)およびオフロード車の人気が挙げられる。二酸化炭素(CO2)排出量が多いSUVやオフロード車は、気候に悪影響を及ぼすとの指摘もある一方、ドイツ連邦自動車局(KBA)によると、2019年にはこれら車種の新規登録台数合計が初めて100万台を超え、全体の31.2%を占めるなど、多くの消費者に受け入れられている(表4参照)。特に2019年のSUVのシェアは21.1%を占めるなど、2014年時点の9.8%から大きく拡大した。中でも、VWは2015年から、SUV車種を積極的に投入してきた。同社の2019年12月16日付プレスリリースによれば、同社の乗用車出荷台数に占めるSUVの割合は25%で上昇傾向にあるとのこと。今後も北米や南米、中国でのSUVの販売拡大により、この割合は2025年までに50%まで拡大すると見込む。世界初の電動コンパクトSUVモデルである「ID.4」の投入を2020年に予定するなど、2025年までに30以上のSUVモデルを投入するとしている。

表4:セグメント別乗用車新規登録台数(単位: 台、%)
項目 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア 台数 シェア
小型乗用車 457,633 15.1 468,588 14.6 486,293 14.5 499,300 14.5 498,532 14.5 485,891 13.5
コンパクトカー 801,441 26.4 848,108 26.5 845,755 25.2 802,999 23.3 755,498 22.0 737,985 20.5
ミドルクラス 380,263 12.5 423,746 13.2 427,495 12.8 410,546 11.9 374,611 10.9 371,300 10.3
スポーツ用多目的車(SUV) 296,714 9.8 340,097 10.6 425,803 12.7 521,660 15.2 630,005 18.3 762,490 21.1
オフロード車 232,230 7.6 259,325 8.1 289,465 8.6 298,892 8.7 303,499 8.8 365,121 10.1
その他 857,223 28.2 854,153 26.7 863,903 25.7 893,627 25.9 856,433 24.9 870,294 24.0

注1:セグメントの分け方は連邦自動車庁(KBA)による。
注2:「その他」は、軽自動車(ミニ)、上位ミドルクラス、高級車、スポーツカー、ミニ・大型バン、商用車(ユーティリティ)、キャンピングカー。
出所:KBA

新型コロナウイルスの影響を懸念

ドイツ自動車産業連合会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長は2020年2月27日、「2020年、世界の乗用車市場の滑り出しは悪いものになった」と述べた。特に春節(旧正月)休暇が2020年は1月になった結果、営業日が減少した影響により、1月が前年同月比18.0%減と大幅な減少を記録した中国市場について(2020年2月25日付ビジネス短信参照)、「コロナウイルスによる市場へのネガティブな影響が見えはじめている」とコメントした。2019年の新車出荷台数ベースでみても、VWは38.6%、ダイムラーが29.6%、BMWが28.7%を中国市場に依存しており、今後の影響が懸念される。さらに、「感染拡大の早期の終息は現時点では見通せない」とした上で、サプライチェーンへのさらなる影響拡大に危機感を示した。VDAでは、新型コロナウイルス対策のタスクフォースを立ち上げており、新型コロナウイルスに関する情報や自動車業界への影響について会員企業が入手できるようにしているほか、政府や関係当局、一般からの問い合わせへ対応している。

3月以降になってドイツ自動車大手やサプライヤーの一部では、新型コロナウイルスによる影響で生産を一時停止する動きが出ており、日系企業への影響も心配される(2020年03月19日付ビジネス短信記事参照)。

執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所 ディレクター
森 悠介(もり ゆうすけ)
2011年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課(2011年4月~2012年8月)、対日投資部誘致プロモーション課(2012年9月~2015年11月)を経て現職。

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