2019年は輸出が若干増、輸入横ばい(イタリア)
輸出入とも医薬品が増加

2020年8月17日

イタリアの2019年の輸出は、前年比2.3%増の4,758億4,800万ユーロとなった。特に、医薬品が全体を大きく牽引した。輸入は4,229億1,400万ユーロと、前年比横ばいの0.7%減だった。鉱物・石油・天然ガスが7.2%減、化学品が3.4%減となった。一方、医薬品は9.1%増と伸長した。

医薬品、食品などで輸出増

輸出を品目別にみると(表1参照)、前年比マイナスの項目が多く見られる。もっとも、医薬品(構成比6.8%)が前年比25.6%増。全体を大きく牽引した。イタリア医薬品協会(FARMINDUSTRIA)によると、イタリアでは外資系企業、特に米国やドイツ資本の医薬品企業の存在が大きい。また、これらが輸出で重要な役割を果たしているという。そのほか、食品・飲料・たばこ(7.9%)が6.6%増と顕著な増加を示した。中でも、蒸留酒・混成酒など(0.3%)が26.5%増の12億3,600万ユーロ、たばこ(0.3%)が約2倍の12億9,100万ユーロだった。

表1:イタリアの品目別輸出入(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2018年 2019年 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
機械 82,280 81,829 17.2 △ 0.5 31,300 31,102 7.4 △ 0.6
繊維・衣料品・皮革製品 53,189 56,484 11.9 6.2 32,500 32,955 7.8 1.4
金属製品 50,088 50,937 10.7 1.7 45,148 44,516 10.5 △ 1.4
輸送機器 51,573 50,008 10.5 △ 3.0 49,977 49,745 11.8 △ 0.5
食品・飲料・たばこ 35,474 37,810 7.9 6.6 30,322 30,371 7.2 0.2
医薬品 25,923 32,570 6.8 25.6 26,539 28,960 6.8 9.1
化学品 31,282 30,551 6.4 △ 2.3 39,454 38,109 9.0 △ 3.4
その他製造業の製品 26,456 27,277 5.7 3.1 14,307 14,677 3.5 2.6
ゴム・プラスチック・非金属鉱物製品 27,277 27,106 5.7 △ 0.6 14,821 15,051 3.6 1.6
電気機器 24,249 23,600 5.0 △ 2.7 18,012 18,211 4.3 1.1
コンピュータ・電子・光学機器 15,597 15,447 3.2 △ 1.0 28,062 27,799 6.6 △ 0.9
燃料・石油精製品 14,659 13,103 2.8 △ 10.6 9,899 8,868 2.1 △ 10.4
木材・木工品・紙製品・印刷物 8,966 8,714 1.8 △ 2.8 11,374 10,839 2.6 △ 4.7
農林水産物 6,876 6,769 1.4 △ 1.6 14,495 15,087 3.6 4.1
鉱物・石油・天然ガス 1,174 943 0.2 △ 19.7 46,728 43,361 10.3 △ 7.2
合計(その他を含む) 465,325 475,848 100.0 2.3 426,046 422,914 100.0 △ 0.7

注: EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所:イタリア国家統計局(ISTAT)

国・地域別に見ると、まずEU全体(構成比55.9%)向けは、前年比1.1%増となった(表2参照)。うちユーロ圏では、ドイツ(12.2%、国として最大の輸出先)が0.1%減と、前年並みだった。医薬品が27.2%増と伸びた。ただし、金属部品が5.1%減、電気機器が5.7%減となり、医薬品の増加を相殺した。フランス(10.5%)は2.4%増。燃料・石油精製品、医薬品などが増えた。構成比率の大きい輸送機器は、4.2%減だった。二輪・三輪車が15.6%増と伸びたが、自動車が1.8%減とマイナスに転じたことによる。EUの非ユーロ圏では、英国(5.2%)は医薬品や繊維・衣料品・皮革製品、金属部品の増加が牽引し、全体で4.7%増となった。輸出額が最も大きい輸送機器が2.1%増、自動車は0.3%増と伸び悩んだ。一方で、航空機・宇宙船および関連装置が、9.3%増だった。

EU域外では、米国(9.6%)が7.5%増。医薬品が57.1%増と大きく伸びたほか、その他食品・飲料・たばこも11.1%増だった。一方、輸出額で最大の輸送機器は、5.1%減と振るわなかった。アジア大洋州向け(10.5%)は、3.8%増と伸びた。しかし、中国(2.7%、この地域で最大の輸出先)が1.0%減と、引き続き減少した。金額の大きい繊維・衣料品・皮革製品が3.4%増、医薬品も19.8%増と上向いた。しかし、中国の自動車市場の減速を受け、輸送機器が20.3%減と全体を押し下げた(2020年1月17日付ビジネス短信参照)。金額こそ小さいが、農林水産品は55.2%と大きく伸びた。インド(0.8%、依然として実額では小さい)は、1.1%増だった。インド向けも農林水産物は約3.2倍と、大きく増加した。スイス(5.5%)は、16.6%増だった。輸出金額の約3割を占める繊維・衣料品・皮革製品が55.4%増、中でも旅行用品が89.3%増と大きく増加。その他、貴金属の世界的な価格高騰を受け、貴金属・半加工金属も2倍を超える大幅な伸びを見せた。ロシア(1.7%)も、4.6%増と伸びた。医薬品が2.2倍と大きく増えたほか、最も金額の大きい機械で8.1%増だ。イラン向け(0.2%)は、51.1%減と大幅に減少した。

表2:イタリアの主要国・地域別輸出入 (単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2018年 2019年 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
EU 263,081 266,007 55.9 1.1 250,718 250,677 59.3 △ 0.0
階層レベル2の項目ユーロ圏 191,674 193,283 40.6 0.8 198,917 199,698 47.2 0.4
階層レベル3の項目ドイツ 58,179 58,113 12.2 △ 0.1 70,193 69,611 16.5 △ 0.8
階層レベル3の項目フランス 48,655 49,824 10.5 2.4 36,626 36,629 8.7 0.0
階層レベル3の項目スペイン 24,200 24,027 5.0 △ 0.7 20,759 21,443 5.1 3.3
階層レベル3の項目オランダ 11,661 11,840 2.5 1.5 22,693 23,009 5.4 1.4
階層レベル3の項目ベルギー 13,304 14,062 3.0 5.7 19,289 19,479 4.6 1.0
階層レベル2の項目非ユーロ圏 70,064 71,064 14.9 1.4 51,588 50,569 12.0 △ 2.0
階層レベル3の項目英国 23,798 24,915 5.2 4.7 11,265 10,653 2.5 △ 5.4
階層レベル3の項目ポーランド 13,617 13,286 2.8 △ 2.4 9,787 9,997 2.4 2.2
階層レベル3の項目ルーマニア 7,762 7,546 1.6 △ 2.8 7,264 7,210 1.7 △ 0.8
階層レベル3の項目チェコ 6,452 6,470 1.4 0.3 6,741 6,804 1.6 0.9
階層レベル3の項目ハンガリー 4,954 4,821 1.0 △ 2.7 5,261 5,004 1.2 △ 4.9
階層レベル3の項目スウェーデン 4,881 4,998 1.1 2.4 4,460 4,327 1.0 △ 3.0
階層レベル3の項目デンマーク 2,945 2,907 0.6 △ 1.3 2,568 2,582 0.6 0.5
階層レベル3の項目ブルガリア 2,442 2,434 0.5 △ 0.3 2,424 2,143 0.5 △ 11.6
階層レベル3の項目クロアチア 3,215 3,686 0.8 14.7 1,818 1,848 0.4 1.7
スイス 22,328 26,028 5.5 16.6 10,961 10,943 2.6 △ 0.2
トルコ 8,780 8,334 1.8 △ 5.1 9,039 9,459 2.2 4.6
ロシア 7,567 7,918 1.7 4.6 14,970 14,324 3.4 △ 4.3
アジア大洋州 48,089 49,937 10.5 3.8 55,782 56,802 13.4 1.8
階層レベル2の項目中国 13,127 12,993 2.7 △ 1.0 30,889 31,665 7.5 2.5
階層レベル2の項目ASEAN 8,032 8,550 1.8 6.4 8,318 9,100 2.2 9.4
階層レベル2の項目日本 6,465 7,740 1.6 19.7 3,764 4,116 1.0 9.4
階層レベル2の項目香港 5,970 5,757 1.2 △ 3.6 304 333 0.1 9.5
階層レベル2の項目韓国 4,560 4,869 1.0 6.8 4,058 3,734 0.9 △ 8.0
階層レベル2の項目オーストラリア 4,004 4,010 0.8 0.1 590 508 0.1 △ 13.8
階層レベル2の項目インド 3,957 4,001 0.8 1.1 5,536 5,155 1.2 △ 6.9
階層レベル2の項目台湾 1,423 1,449 0.3 1.8 2,097 1,989 0.5 △ 5.1
階層レベル2の項目ニュージーランド 552 571 0.1 3.5 227 202 0.0 △ 11.2
北米 50,811 53,984 11.3 6.2 18,397 19,830 4.7 7.8
階層レベル2の項目米国 42,406 45,584 9.6 7.5 15,958 16,999 4.0 6.5
階層レベル2の項目カナダ 4,111 4,500 0.9 9.5 1,510 1,748 0.4 15.8
中東 18,139 17,527 3.7 △ 3.4 21,885 17,161 4.1 △ 21.6
階層レベル2の項目アラブ首長国連邦 4,579 4,577 1.0 △ 0.0 1,143 908 0.2 △ 20.6
階層レベル2の項目サウジアラビア 3,092 3,279 0.7 6.0 5,139 3,796 0.9 △ 26.1
階層レベル2の項目イラン 1,684 824 0.2 △ 51.1 2,925 152 0.0 △ 94.8
アフリカ 18,012 17,315 3.6 △ 3.9 22,017 21,450 5.1 △ 2.6
階層レベル2の項目アルジェリア 3,089 2,921 0.6 △ 5.4 5,717 4,341 1.0 △ 24.1
中南米 14,340 13,929 2.9 △ 2.9 9,185 9,566 2.3 4.1
合計(その他を含む) 465,325 475,848 100.0 2.3 426,046 422,914 100.0 △ 0.7

注1:アジア大洋州はASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港および台湾を加えた合計値。北米は米国、カナダ、メキシコの3カ国の合計値。
注2:ユーロ圏と非ユーロ圏の合計がEUと合致しないのは統計上どの国にも分類できない誤差脱漏が含まれていないため。
注3:EU域外貿易は通関ベース、EU域内貿易は各企業のインボイス報告などに基づく。
出所:イタリア国家統計局(ISTAT)

輸入は前年並み、主要国で大きな変化なし

輸入額は4,229億1,400万ユーロ。前年比0.7%減の横ばいだった。品目別には、鉱物・石油・天然ガス(構成比10.3%)が7.2%減、化学品(9.0%)が3.4%減となった。一方、医薬品(6.8%)は9.1%増と伸長した。

国・地域別に見ると(表2参照)、EU全体(構成比59.3%)で前年比横ばいだった。ドイツ(16.5%、国として最大)からは0.8%減と、前年並みだった。うち輸入額最大の輸送機器も0.7%減と、大きな変化がなかった。スペイン(5.1%)は3.3%増、最大輸入品目の輸送機器が4.6%減となった。船舶用の金属・非金属構造物が15倍と大きく伸びたものの、自動車の3.1%減が響いた。その一方、金属製品の12.3%増がスペインからの輸入を牽引し、輸送機器の減少を打ち消した。EUの非ユーロ圏からは、英国(2.5%)からの輸入の5.4%減少が目立った。主な要因としては、医薬品の44.2%減、輸送機器の5.9%減などが挙げられる。

EU域外からは、中国(7.5%)が2.5%増。機械が5.1%伸びた。また、主要品目の繊維・衣料品・皮革製品が1.9%増だった。米国(4.0%)からは、6.5%増だった。医薬品が15.7%増えたほか、金属製品、特に、価格高騰が目立った貴金属・半加工金属が81.5%増と大きく寄与した。カナダ(0.4%)は15.8%増。穀物(コメを除く)が2.2倍、航空機・宇宙船および関連装置が15.2%増などと伸びた。EUカナダ包括的経済貿易協定(CETA)は、2017年9月の暫定適用開始から3年目を迎えている。CETAによる関税率の撤廃・低減が、輸入増を後押ししたものとみられる。イラン(0.04%)からは94.8%減と大幅に減少した。2018年に輸入の9割近くを占めていた鉱物・石油・天然ガスが99.7%減と大きく落ち込んだ。中でも原油は、ゼロとなった。

なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各種制限措置により、2020年の輸出入は既に大きな打撃を受けている。イタリア国内および主要貿易相手国でのヒトの移動制限や、国内の生産活動の一部停止などの影響を受け、3月~5月はその前の3カ月(2019年12月~2020年2月)と比較して、輸出は31.5%減、輸入は26.9%減となっている。

対日貿易ではワインなど食品輸出が拡大

2019年の対日貿易は、輸出が前年比19.7%増の77億4,000万ユーロ、輸入が9.4%増の41億1,600万ユーロとなった(表3参照)。貿易収支は、36億2,400万ユーロの黒字だ。黒字は8年連続で計上したことになる。また黒字幅は、前年比で9億2,300万ユーロ増加した。

輸出を品目別にみると(表3参照)、食品・飲料・たばこ(23.9%)が66.5%増と大幅な伸びを記録、全体を押し上げた。特にたばこは、3倍と飛躍的に増加。日本が最大の輸出先となっている。また、このカテゴリーの中で大きな金額を占めるワイン類(1.7%)も、10.4%増。数量でも16.5%増加している。2019年2月に発効した日EU経済連携協定(EPA)による関税撤廃の影響が表れたものとみられる。そのほか、繊維・衣料品・皮革製品(24.7%)が8.8%増、輸送機器(構成比15.6%)が14.9%増、医薬品(7.8%)が21.1%増と大きく伸びた。

輸入では、機械(27.2%)と輸送機器(30.4%)が、それぞれ8.0%増、5.3%増となった。機械の中では、その他内燃機関(3.9%)が19.2%増、輸送機器では、自動車(18.4%)が20.5%増と牽引した。また、医薬品(4.0%)が94.5%増と大きく伸びた。医薬品原料(0.6%)は前年比マイナスだったものの、医薬品・中間体(3.5%)は2.5倍となった。食品・飲料・たばこ(0.4%)については、11.6%増と2桁増。中でも、肉(鳥類以外)・各種畜産製品(0.04%)が82.1%増などと伸長した。輸出と同様に輸入も、日EU・EPAの関税撤廃・低減が増加の一助になったとみられる。

表3:イタリアの対日主要品目別輸出入(通関ベース)(単位:100万ユーロ、%)(△はマイナス値)
品目 輸出 輸入
2018年 2019年 2018年 2019年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
繊維・衣料品・皮革製品 1,757 1,912 24.7% 8.8 170 192 4.7% 13.0
食品・飲料・たばこ 1,111 1,849 23.9% 66.5 13 15 0.4% 11.6
輸送機器 1,054 1,211 15.6% 14.9 1,188 1,251 30.4% 5.3
機械 720 706 9.1% △ 2.0 1,038 1,121 27.2% 8.0
医薬品 497 602 7.8% 21.1 86 167 4.0% 94.5
化学品 393 419 5.4% 6.7 411 407 9.9% △ 0.9
その他製造業の製品 296 347 4.5% 17.2 158 184 4.5% 16.7
コンピュータ・電子・光学機器 228 210 2.7% △ 8.1 206 246 6.0% 19.0
ゴム・プラスチック・非金属鉱物製品 139 142 1.8% 2.5 166 170 4.1% 2.1
電気機器 89 117 1.5% 31.8 145 132 3.2% △ 9.1
金属製品 90 110 1.4% 22.6 150 186 4.5% 23.7
木材・木工品・紙製品・印刷物 23 46 0.6% 99.3 16 19 0.5% 18.8
農林水産物 30 33 0.4% 9.3 5 6 0.1% 16.5
鉱物・石油・天然ガス 3 3 0.0% 0.9 2 1 0.0% △ 38.1
燃料・石油精製品 2 2 0.0% 14.9 0 10 0.2% 1986.0
合計(その他含む) 6,465 7,740 100% 19.7 3,764 4,116 100% 9.4

出所:イタリア国家統計局(ISTAT)

執筆者紹介
ジェトロ・ミラノ事務所
山崎 杏奈(やまざき あんな)
2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課・途上国ビジネス開発課、ジェトロ金沢を経て、2019年7月より現職。