コンドミニアム条項を追加、リース・コンセッション期限も長期化へ(ラオス)
2019年改正土地法が施行(後編)

2020年9月4日

2020年8月末から、16年ぶりの改正となる新土地法が施行された。外国人や外資による開発や投資・投機が進む中、その推進と規制のバランスが求められる。

前編では、土地所有権の規定および新たに導入された外国人・外資企業による期限付き購入の容認について説明した。後編では、新たに導入されたコンドミニアムの規定における注意点や、借地・リース・コンセッションの主な変更点について説明する。

コンドミニアムの建設・販売について明文化

今回改正の大きなポイントの1つは、コンドミニアムに関する条項が初めて規定された点だ。

ラオスでは2010年ごろから、主に外国人投資家向けにコンドミニアムの建設が開始された。さまざまな建設や投機的購入が進む一方で、法的根拠がない状態が長らく続いていた。このため、その整備が求められてきた。

まず2019年土地法では、コンドミニアムの定義が示された。すなわち、法人により合法的に建設された多層・多室で構成される建物で、各部屋は国内外の個人・法人・組織が所有することができるものだ(第4条)。コンドミニアムを建設するための要件としては、法人が合法的に登記されライセンスを取得した後に、県や郡の天然資源環境局に、予定地をコンドミニアム建設用地として登録する必要がある(第106条)。予定地が借地であっても同様だ。ただし、土地利用権保有主の名義で登録する必要がある(第108条)。


建設が進むコンドミニアムと商業ビル(ジェトロ撮影)

コンドミニアムの部屋を購入した場合、ラオス国籍者には、原則として、購入した部屋の全床面積に対する割合に応じて、建設用地の土地利用権が付与される。一方で外国人は、建物が現存する期間に限って部屋の所有権だけが付与される。換言すれば、土地利用権は元の法人が保持する。ただし、経済特区内のコンドミニアムなど政府保有の土地に所在する場合、ラオス国籍者か外国人かを問わず、期限付きの土地の共同利用権だけが与えられるとした(第132条)。

このように、購入者の国籍と土地利用権の保有主により、実際に購入できる権利が異なる点に注意を要する。既にさまざまな形で、コンドミニアムの販売が行われている。その実情を反映するため、条文化に相当の苦慮があったものとみられる。とはいえ、さらなる細則の整備が必要だろう。なお、コンドミニアムの部屋の購入者は、天然資源環境局へ所有権を登録しなければならない(第132条)。この点にも留意が必要だ。

借地期間やリース・コンセッション期間の上限を引き上げ

ラオスで外国人が生活する場合や外国企業がビジネスを行う場合には、(1)ラオス国籍者から借地する、(2)国有地のリースまたはコンセッション(注)を受ける、または(3)期限付きで国有地を購入する(当記事前編参照)、いずれかの対応を取ることになる。

ラオス国籍者からの土地の借地は、従来通り、借り手との合意で実施できる。契約期間は、30年間が上限とされた(従来の20年間から引き上げ)。一方で、その期間の延長には、地方政府の許可が必要になった。また、借地契約書は従来定められてきた村役場や公証人への登録に加えて、新たに郡の天然資源環境事務所における土地利用権活動登録が必要となった(第117条)。これは、外国人が借家を契約する際にも適用されるとみられる。

国有地のリースやコンセッションについても、契約期間の上限が50年間に引き上げられた(従来は30年間)。契約の延長には、政府または国会・地方議会の合意が必要とされた(第120条)。このように、今回の改正では、契約期間延長時の監督が強化されたことになる。これまではリースやコンセッションにあたって、延長分を予め含めた契約とし、事実上、上限の30年を超えた長期契約が横行していたと言われる。その対策として、国会や地方議会による歯止めをかけたとみられる。

さらに、リースやコンセッションには入札を行うこと(第119条)が新たに追加された。詳細な手続きは今後、規定されるとみられる。しかし、リースやコンセッションの認可手続きは、既に複雑なものとなっている。そうした中で、透明性と迅速性を確保した入札が実施できるかが課題だろう。

また、農業・植林、鉱山開発、ダム開発、経済特区開発などを目的としたリースやコンセッションに伴い、ラオス国籍者が利用権を所有する土地を、政府が収用するケースがしばしば見られる。その際には、政府がその補償を行わなければならない。そのため今回、新たに財産・地価評価委員会を設置すること(第154条)、補償額は地方議会の承認を受けて決定し、土地の収用前に支払いを実施すること(第155条)が明記された。これは、地権者保護の観点からは前進したと評価される。

何らかの土地利用権が既に付与されている場合など、旧法との抵触に注意

これまで述べてきたように、2019年土地法は、いくつかの点で2003年土地法から大きな変更された。このため、2003年法下の規定との抵触にも留意しておく必要がある。

第188条では、2003年土地法の下で中央政府や地方政府と契約した投資家またはデベロッパーは、その契約が終了するまでは契約が保持されることが明記されている。これは、特に国有地に関連するリースやコンセッションの契約を対象としたものとみられる。

一方で、2003年土地法の下で契約した土地に2019年土地法を適用したい場合、120日以内に申請することができる、とも規定された。

とくに注意が必要なのは、外国人や外資企業が何らかの理由で土地利用権を保有している場合だ。この場合には、3年以内に2019年土地法の条文に適合させる必要がある。その期限を超えた場合には、政府が特別に認めた場合を除いて土地利用権が失効してしまうことになる。


注:
国有地のリースとコンセッションは、いずれも国土の借地を意味する。しかし、この両者を厳密に区別することは難しい。
リースと言う場合には、土地利用を目的とし、小面積で、観光を含むサービス・工業利用・農業において用いられることが多い。これに対し、コンセッションは、土地開発などを目的にし、大面積で、水力発電・鉱物開発・植林にしばしば用いられる。しかし、厳密には区別されていないケースが多い。

2019年改正土地法が施行

  1. 外資による土地利用権の購入を一部容認へ(ラオス)
  2. コンドミニアム条項を追加、リース・コンセッション期限も長期化へ(ラオス)
執筆者紹介
ジェトロ・ビエンチャン事務所
山田 健一郎(やまだ けんいちろう)
2015年より、ジェトロ・ビエンチャン事務所員