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米国市場で日本茶の販路拡大を目指す日本企業
サンフランシスコで「国際ティー・フェスティバル」開催

2019年1月29日

サンフランシスコで2018年11月に、「SF 国際ティー・フェスティバル」(以下、SFITF)が開催された。このイベントに、米国市場で日本茶の販路拡大を目指す伊藤園、鶴の丸、杉本製茶、鹿児島製茶の4社が出展した。

サンフランシスコ・ベイエリア(以下、ベイエリア)は、米国でお茶の文化が浸透しつつある地域の1つだ。街中に、お茶を提供する多くのカフェを見つけることができるほか、ペットボトルや瓶などに入ったお茶が売られているスーパーも多い。SFITFでは、来場者が各国の多種多様なお茶を試飲できるほか、お茶に関するセミナーも受講できる。7回目となった今回は、2018年11月3~4日の日程で、出展企業は35社、3,500人の来場者を集めた。

ローカライズで現地市場の開拓を目指す

杉本製茶(本社:静岡県)は、SFITFに3回目の出展である。同社は2004年、シアトルに現地法人(Sugimoto Tea Company International Office)を設立した。売り上げの半分以上が海外向けで、その多くが米国向けである。現地法人の杉本恭平社長は、創業者の3代目。杉本製茶の北米でのビジネスを担う。杉本社長は「当初、日系・アジア系の小売店向けに販売を行ってきたが、今後は非日系・アジア系市場の開拓に力を入れたい。そのために、SFITFをはじめ、展示会への出展を通じて知名度を上げていきたい」と語る。SFITFでも出品された主力商品は、米国向けに製造した抹茶「Organic Ceremonial Matcha」である。同商品は「Non GMO外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (注1)」や「USDAORGANIC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます (注2)」といった米国内の認証マークを取得し、現地での浸透を図る。「中国茶が広く流通しているが、差別化を図りながら、日本茶の市場の中で、日本茶イコール杉本というイメージを米国で浸透させたい。他方、米国で日本茶の市場を拡大させるのは、1社ではなかなか難しい。日本茶メーカーが一体となって市場拡大に取り組みたい」と、杉本社長は今後の見通しを語る。

鹿児島製茶(本社:鹿児島県)は、初めてのSFITF出展である。2011年から海外ビジネスを開始し、海外売り上げを少しずつ拡大してきた。現在は、米国、カナダ、シンガポール、オーストラリアなどへ輸出している。米国でのビジネス展開に際し、当初はディストリビューターを通じて、日本で販売している商品を日系スーパー向けなどに販売していた。その後、試行錯誤しながら、海外向け商品「Smile Tea」を開発した。同社営業部の富山友貴課長代理は「Smile Teaは日本で売られているお茶のパッケージと同じではなく、現地で売られているパッケージを参考に、現地の消費者が使いやすく、かつ緑茶の持つヘルシーさを意識して商品を開発した。このお茶を通じて、人々が笑顔でつながってほしい、という思いからSmile Teaとネーミングした」と語る。2018年6月には、ラスベガスで開催された「World Tea Expo」にも出展した。富山課長代理は「サンフランシスコをはじめ、米国西海岸では身体だけでなく、精神的健康志向も強く、日本茶を受け入れていただきやすい環境にあると考えている。現地市場の開拓に向けて、今後も海外ビジネスを拡大させていきたい」と今後の見通しを話す。

スポンサーも務める伊藤園

伊藤園(本社:東京都)は、SFITFのスポンサーでもあり、初回から継続して出展している。「世界のティーカンパニー」を目指す同社は、米国、中国、オーストラリアなど海外に12拠点を持つ(2018年12月現在)。特に、海外売り上げの主力を担う米国では、「おーいお茶」や、SFITFでも出品された海外向けブランド「matcha LOVE」など数々のドリンクやリーフ(茶葉)、ティーバッグ商品がスーパーマーケットや食品専門店、総菜販売店などで取り扱われている。また、ベイエリアでは、同地域に拠点を置くハイテク企業などへ販路開拓を行い、現在では多くのオフィスのカフェテリアで取り扱われている。同社の広報部は「ベイエリアの特色の1つは、多様性と先進性に満ちていることだ。オーガニック食品を取り扱うスーパーマーケットでは、多種多様で革新的なドリンクやお茶の商品を取り扱っている。消費者は多様性に寛容なので、本格的で健康に良いものであれば、国際色豊かな食品も好んで試すことを好むようである」とし、販売拡大に期待する。2018年4月期の海外売上高比率は8.2%。4年後に10%とすることを目標に、米国を含めた海外ビジネスに力を入れる。また、鶴の丸(本社:山口県)は、前年に続きSFITFに出展した。SFITFではオンラインでも販売する出雲産の3種類の上質茶葉を使用した煎茶などを来場者に販売。多くの人を集めた。

日本茶の知識普及を目指す

米国茶業協会によると、米国のお茶(紅茶などを含む)の市場は、1990年に約18億ドルだったが、2017年には約125億ドルに拡大した(注3)。米国では、現在1億5,900万人以上がお茶を飲んでいるという。2017年の日本茶(緑茶)の輸出額は、前年比20.2%増の約1億2,800万ドルで、米国はその41.1%を占め、最大の輸出先となっている(図参照)。米国のなかでも、西海岸エリアの緑茶市場は大きい。2017年米国の緑茶輸入額1億4,397万ドルのうち、多い順からカリフォルニア州(5,010万ドル)が全体の3分の1を占め、ニュージャージー州(1,501万ドル)、イリノイ州(1,325万ドル)と続き、西海岸エリアに入る緑茶が多いことが分かる。

日本企業にとってチャンスが広がる一方で、中国産の緑茶などの競合品と差別化する必要もある。緑茶に絞って見ると、カリフォルニア州の2017年海上貨物の緑茶輸入量553万kgのうち、中国産46.9%、日本産16.6%と中国茶の西海岸エリアでの存在感の強さが伺える。ジェトロは、日本茶の知識普及を目的にSFITFにおいて、日本茶インストラクターの資格を持つスウェーデン人のオスカル・ブレケル氏を日本から招聘(しょうへい)した。ブースを構えて、試飲を通じた日本茶のプロモーションを行ったほか、ブレケル氏を講師に日本茶のセミナーを開催した。ブレケル氏は日本茶の浸透に向けて、「中国やベトナムなどでは、安価な緑茶の生産量が急激に増えている。その中で、(米国の消費者の)日本茶の独特な香味への評価や品質に対しての理解を高める必要があるように思う。そのためには、日本茶の知識が豊富で言語能力も高い専門家の育成が必要になる」と語る。現地市場の開拓のためには、上述した個々の企業活動に加え、日本茶に対する理解を高め、ファンの拡大に向けて、現地での知識普及、さらには、そのための専門人材の育成を進めていく必要があるだろう。

図:日本の緑茶輸出額
2001年以降伸び続けている。2001年と2017年の輸出額を比較すると、約13倍となっている。日本から米国向けの緑茶輸出額も2007年に一時的に減少したことを除けば、2001年以降増加を続けており、2001年と2017年の輸出額を比較すると、約21倍になっている。米国が最大の輸出先である。

注:HSコード090210および090220。
出所:財務省統計より作成

杉本製茶の米国向け商品「Organic Ceremonial Matcha」(ジェトロ撮影)
鹿児島製茶の海外向け商品「Smile Tea」
(ジェトロ撮影)
伊藤園の海外向け商品「matcha LOVE」
(伊藤園提供)
SFITFでの日本茶セミナーの様子(ジェトロ撮影)

注1:
米国の非営利団体Non GMO projectが非遺伝子組み換え食品と認定した商品に表示できるラベル。
注2:
USDA(米国農務省)の基準を満たしたオーガニック商品に表示できるラベル。
注3:
米国茶業協会によると、2017年の米国の茶消費量のうち、86%が紅茶、13%が緑茶で、その他を中国茶(ウーロン茶、白茶など)が占める。
執筆者紹介
ジェトロ・サンフランシスコ事務所
石橋 裕貴(いしばし ゆうき)
2011年、ジェトロ入構。海外調査部(2011年~2016年)、ジェトロ沖縄(2016年~2018年)を経て、2018年7月より現職。

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