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インドネシアへの輸出事業を行う上での事業形態と留意点

2019年5月7日

自社製品をインドネシアに輸出することで市場参入する場合、自社で現地に輸入会社を設立する方法と、現地の販売代理店を活用する方法に大別される。前者の場合、輸入業および大規模商業(卸売業)などの事業資格で現地法人を設立することになるが、この場合、内資企業との合弁比率(ネガティブリスト)と、最低投資金などの外資規制に留意する必要がある。後者の場合は、販売代理店との契約に注意が必要だ。

卸売業で現地法人設立には、外資規制の壁

2016年5月に発表された大統領規程第44号によると、外資企業が卸売業を営む場合、株式の出資上限は67%に限定されており、ローカルパートナーとの合弁企業しか設立することができない。また、中小零細企業に関する法律2008年第20号により、外資系企業は、インドネシア国内の企業分類における大企業[事業地の土地・建物を含まない純資産が100億ルピア(約8,000万円、1ルピア=約0.008円)超、年間売り上げが500億ルピア超]であることが原則とされており、インドネシア投資調整庁(BKPM)は運用規程で、外資企業の最低投資金額を100億ルピア超(土地建物を除く)、そのうち、払込資本金25億ルピア以上としている。

また、インドネシアでは輸入事業を行う上で、輸入ライセンスを保有する必要がある。輸入ライセンスは、自社の製造工程に必要な原材料を輸入する製造輸入事業者ライセンス(API-P)、もしくは輸入品をそのまま他社に転売する場合の一般輸入事業者ライセンス(API-U)の2通りに分けられている。このライセンスは1社で1種類しか保有できないため、現地に工場を有する製造業者が、他社に転売するためにAPI-Uライセンスを保有することはできない(2019年3月15日記事参照)。インドネシアで製造していない場合、補完品・テストマーケティング品などは輸入可能だが、輸入元との関係や輸入できる品目などが限定的となる。つまり、一部をインドネシアで製造しながら、日本で製造している製品も幅広く卸売したい場合、販売会社を別途造る必要が出てくる。こうした点を勘案すると、投資計画の時点で、相当の規模の取引が見込めないと、日本の中小企業は現地法人設立には踏み切りにくいと言える。

販売代理店を活用した市場参入は現地法令に留意した契約書を

インドネシア市場に参入するもう1つの方法が、現地の販売代理店の活用だ。

販売代理店を活用する場合、外資規制による制限はないものの、現地の法令に則した適切な販売代理店契約を結ぶことが、さまざまなリスク要因を管理する上で肝要だ。一般的にインドネシア企業との契約においては、言語法、民法1266条の除外、紛争解決の設定などが留意点とされている。

インドネシアでは言語法により、契約書はインドネシア語でなければならない。2010年の最高裁判所判決により、この言語法に基づいて、米国企業がインドネシア企業と取り交わした英語のローン契約が無効とされたことから、契約書はインドネシア語と英語または日本語の併記で作成するほうが、裁判で無効とされるリスクが減るため望ましいとされている。次に、民法1266条により、契約上の債務不履行の場合、裁判所に対して契約解除の申し立てを経ることが定められている。そのため、契約書に民法1266条の除外規定を設けることで、債務不履行が発生した場合に、裁判所への申し立てを経ずに契約解除できるようにすることが一般的だ。最後に、紛争解決方法の設定においては、不透明性の高い裁判を避けたい場合、仲裁を選択することも実務上の方法とされている。仲裁とする場合は、インドネシア仲裁委員会(BANI)かシンガポール仲裁センター(SIAC)などの機関を指定できる。

販売代理店契約は登録義務化

インドネシアには、販売代理店を保護する制度も存在している。インドネシア商業大臣規程2006年第11号では、代理店・販売店となっている現地の企業は、契約書を添えて商業省に申請し、登録証(Surat Tanda Pendaftaran :STP)を取得する義務がある。この背景は、メーカー(供給者)側が支配的立場で販売代理店は従属的立場という考えが前提にあると考えられる。例えば、外国企業がある販売代理店を利用して市場参入し、数年たって売り上げが拡大すると、現地に拠点を設けて自社生産・販売を始める。そうすると、販売代理店側は契約を途中解除される可能性が高くなる。

販売代理店の一方的な途中解除を防ぐため、商業大臣規程2006年第11号では、STPを取得した会社との契約を途中解除したい場合、両者の合意書面を商業省に届けることを定めている。この合意による契約解除をクリーンブレークと言う。これにより、販売代理側が不本意であれば合意が取れないこととなり、契約の途中解除が認められず、STPの削除ができないことになる。そのまま具体的な売買なく契約が継続すると、損害賠償の請求に発展したり、次の新しい代理店選びに支障が出たりすることも考えられる。そのため、販売代理店側が既にSTPの届け出をしている場合は、契約解除に当たって十分な準備期間を持って対応し、心証の悪化を少なくして、いかに合意に持っていくかが重要となる。商業大臣規定2006年第11号で規定されている販売代理店契約に記載すべき事項は、以下のとおりだ(表参照)。通常の契約書と同じような項目だが、販売代理店側に一方的な解釈をされないよう、できるだけ明確にしておくことが望ましい。

トラブルになる典型例は、日本側は販売代理店が全然売ってくれないと思い、インドネシア側は販売に注力しているにもかかわらず、日本側は支援してくれないという行き違いである。この場合、互いに理解し合う姿勢が大事であり、その過程で言語の違いによるコミュニケーション不足にならないよう気を付けたい。また、覚書など補助契約などの取り決めによって、契約解除の際のリスクを低減することも可能だ。特に、成果目標の設定と年度末のレビューを行うよう取り決めておくと、日本側・インドネシア側のトップ同士が直接的に意思疎通し、改善点を確認でき、互いの立ち位置がはっきりしてくるなどの効果が見込める。その他にも、実行可能なものを少しでも取り入れていくことが良いと思われる(表参照)。

表:販売代理店との契約にあたる留意点

契約書面で留意すべき点
留意すべき点 内容
言語法 契約言語がインドネシア語・日本語あるいは英語併記になっているか。あるいはインドネシア語版を作成しているか。
民法1266条の除外 民法1266条(債務不履行の場合、契約解除に裁判所への申請を経る)の除外を規定しているか。
紛争解決方法の設定 根拠法(日本法、インドネシア法など)と紛争解決地(裁判所)の設定。裁判を避ける場合は、仲裁を選択することもできる。
商業大臣規程2006年第11号 販売代理店は商業省に届け出することを定めている。代理店側が届け出る場合は、契約の途中解除に際して両者の合意文書が必要となる。以下の点は、契約書に記載すべき事項とされているため、明確にしておくほうが良い。
  1. 契約者のフルネーム、住所
  2. 契約書の目的
  3. 販売代理店側の立場
  4. 商品またはサービスの内容
  5. 販売地域
  6. 両者の権利と義務
  7. 権限
  8. 契約書の継続期間
  9. 契約解除の手順
  10. 紛争解決の手順
  11. 準拠法
覚書などの取り決めで明確にしておくと良い点
明確にしておくと良い点 内容
在庫リスクの明確化 在庫の金利負担、長期在庫の減損リスクはどちらが持つのか
売り先与信リスク分担の明確化 滞留売掛金が発生した場合のリスクはどちらが持つのか
人材の育成 営業・サービスの育成、販売拡大のための努力への評価方法
競合品の取り扱い 競争法(インドネシアの独占禁止法)の観点に十分な注意が必要だが、同種製品の取扱いに制限項目を設けるなど
成果目標とレビュー 成果目標(年間の最低売上目標額の設定)と年度末の成果評価の実施

出所:言語法、民法、インドネシア商業大臣規程2006年第11号、ヒアリング等を基にジェトロ作成

輸入事業者ダイレクトリーにより販売代理店候補を検索可能

最後に、インドネシア統計庁(BPS)は、輸入事業者ダイレクトリーである『Direktori Importir Indonesia外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます 』をウェブサイト上に毎年公表している。このダイレクトリーは、HSコードごとに代表的な輸入者の名称・住所・連絡先を記載しており、自社製品の輸入代理店候補を探したり、競合品の流通状況を調べたりするうえで、簡単に実行できる方法の1つなので活用をお勧めしたい。

執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所 経済連携促進アドバイザー
中沢 稔(なかざわ みのる)
1982年、総合商社に入社。1998年ジャカルタ駐在、2013年韓国駐在、2016年にインドネシアのプルワカルタの自動車部品メーカーへの出向を経て、2018年から現職。
執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
山城 武伸(やましろ たけのぶ)
2007年、ジェトロ入構。ジェトロ愛媛(2009~2012年)、インドネシア語研修(2012~2013年)、ジェトロ展示部展示事業課(2013~2015年)などを経て現職。

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