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プロモーションイベントにより日本産酒類の認知度向上(ドイツ)
アルコール飲料専門見本市「プロワイン」開催

2019年5月21日

ドイツ・デュッセルドルフで25回目となる世界最大級のワイン・アルコール飲料の専門見本市「プロワイン(ProWein)」が3月17日~19日に開催され、同見本市に合わせて開催された複数のイベントでも日本産酒類がPRされた。ジェトロも日本産酒類試飲商談会を実施し、日本酒や焼酎の浸透に資する活動を行った。

プロワイン内で高まる日本産酒類の存在感

今回のプロワインには世界64カ国から6,900社が出展、世界の142カ国・地域から6万1,500人が訪れ、来場者は過去最高となった。主催者によると、来場者のうち80%以上が購買決定権限を持っているなど、商談が結果につながりやすい見本市だ。今年のプロワインでは前年と同様に、クラフト系アルコール飲料(注)や有機ワインが注目を集め、特別展示エリアでは100社以上がクラフトスピリッツ、ビール、サイダーを展示、有機ワインエリアでは約300社が出展した。

また、今年は日本産酒類関係の出展企業が前年と比べて大きく増加し、25社から42社となった(2018年4月23日記事参照、ジェトロ・メンバーズ限定)。日本酒造組合中央会は日本産酒類プロモーションブースを設置し、日本各地から出展した36社が日本酒・焼酎などを来場者にPRした。メッセ・デュッセルドルフ・ジャパン(MDJ)もブースを設置し、6社が出展した。日本酒造組合中央会のブースでは、日本酒のフードペアリングや焼酎の基本知識および焼酎の地理的表示についてのセミナーなどが行われ、来場者は日本産酒類についての知識を深めていた。

日本産酒類を見本市関連イベントでアピール

日本産酒類の認知度向上ため、プロワインの併催イベントでも日本産酒類がPRされた。BtoBの専門見本市であるプロワインには入場できない一般消費者向けには、地域経済振興協会「デスティネーション・デュッセルドルフ(DD)」が3月14日~19日に、「プロワイン・ゴーズ・シティ(ProWein goes city)」と名付けてデュッセルドルフ市内のレストランやホテル、専門店などの55カ所で100件のプロモーションイベントを実施した。「ワインと旅行」をテーマに、市内ホテルで行われた皮切りとなるイベントでは、370人の来場者に、日本を始めとする世界中の旅行先についてのレクチャーや6カ国のワイン、そして日本酒および日本産ジン、アジアのフュージョン料理などが提供され、日本の存在感が強く感じられるイベントとなった。

プロワイン期間中の3月18日の夕方には、見本市会場内において、ドイツソムリエ協会がワインなどの試飲イベント「アペロ(APERO)」を主催し、約1,000人が来場した。ジェトロは国税庁からの委託によりアペロ内で、日本酒酒蔵10社および焼酎酒蔵・リキュールメーカー3社の日本産酒類プロモーションブースを設置した。ソムリエやレストラン関係者らが多数訪問し、日本産酒類に大きな関心を示していた。

なお、次回のプロワインは2020年3月15日から17日まで開催される予定。


アペロにおける日本産酒類プロモーションブースの様子(ジェトロ撮影)

試飲商談会では日本酒と欧州料理のペアリングを実施

プロワインに合わせて、国税庁から委託したもう1つの事業として、ジェトロは会期前の3月15日に「ワインに代わるご提案『日本酒』」をテーマに、日本産酒類試飲商談会を開催した。日本から13の酒蔵が参加した。ドイツでは、いまだに日本産酒類に対する認知度が低いことから、日本産酒類に対する知識・認知度向上を目的とした日本産酒類セミナーと、商流構築・販路拡大を目的とした試飲商談会をセットで実施し、輸入・卸売業者、レストラン、小売業者、メディアなどが来場した。

イベントの前半では、WSET(注2)認定日本酒講師のダグマー・マース氏が日本産酒類について講演した。ドイツでは日本酒を「Sake」または「Reiswein(ライス・ワイン)」と訳すのが一般的だが、日本酒をワインとして説明してしまうと、ワインの味を想像して飲んでしまい、実際の味とワインという既存のイメージにギャップが生じてしまうため、日本酒をPRする際には「ワイン」という言葉を使用しない方が適切と指摘した。また、テイスティングでは5種類の日本酒(スパークリング、大吟醸、吟醸、純米酒、にごり)が提供された。ドイツ国内テレビ番組で長年にわたり料理番組の司会を務め、ミシュランガイド一つ星のレストランを経営するスターシェフのビョルン・フライターク氏による、日本酒と欧州料理のペアリングも実施し、日本酒が現地料理にも合うことを紹介した。イベント後半の試飲商談会では、焼酎を使用したカクテルを楽しみながら、来場者と出展した各酒蔵が商談とネットワーキングを行った。

来場者に対して実施したアンケートによると、特にドイツ人参加者から日本産酒類について学ぶよい機会になった、との回答が多く得られた。また、出展者からはドイツ人の嗜好(しこう)およびドイツでのお酒に対するイメージの調査に役立った、との声もあがった。地元紙や国内有名ブロガーなどのメディア関係者も多く来場し、日本産酒類の認知度向上にもつながった。


日本産酒類試飲会の様子(ジェトロ撮影)

商談会の様子(ジェトロ撮影)

ドイツ人にとって身近なアルコールであるワイン

ドイツで日本産酒類を売り込む上で、ドイツ人にとって身近なアルコールであるワインの存在を無視することはできない。ドイツワイン研究所(DWI)が公表している市場調査結果によれば、2017年の1人当たりの年間アルコール消費量はビール101.2リットル、ワイン20.9リットル、スパークリングワイン3.5リットル、スピリッツ5.4リットルで(表1参照)、スパークリングワインも含めればアルコール消費量の約19%をワインが占め、ドイツにおいてワインはビールに次いで身近なアルコール飲料になっている。

表1:2017年の1人当たりの年間アルコール消費量(単位:リットル)
ビール 101.2
ワイン 20.9
スパークリングワイン 3.5
スピリッツ 5.4
合計 131.0

出所:ドイツワイン研究所(DWI)

一方、金額ベースでみると、ワインとビールはその順位が逆転する。2017年の一般世帯の年間アルコール消費支出額では、ビールが全体の25.6%に対し、ワインが34.0%を占める(表2参照)。

表2:2017年の一般世帯の年間アルコール消費支出額
ワイン 34.0%
ビール 25.6%
スピリッツ、スピリッツベース飲料 24.2%
スパークリングワイン、シャンパン 7.60%
ビールベース飲料 2.5%
その他 6.1%
合計 132億ユーロ

出所:ドイツワイン研究所(DWI)

また、同研究所の3月8日付プレスリリースによれば、2017年はワインの原料となるブドウの収穫量が非常に少なかったため、ワインの価格が上昇しているという。1リットル当たりの平均価格は、小売りで3.09ユーロ(2017年:2.92ユーロ)、うち、専門店やオンラインショップで6.80ユーロ(2017年:6.75ユーロ)となっている。流通構造を見ると、全ワインのうち78%を小売店での販売が占める。そのうち、ディスカウントスーパーが50%、スーパーマーケットが17%、ハイパーマーケットが11%を占める。

ドイツの消費者が好んで飲むワインを地域別にみると、ドイツ(全売り上げの51%)やイタリア(15%)、フランス(12%)、スペインのワイン(8%)の4カ国が全売り上げの86%に達した。また、同研究所の3月15日付プレスリリースによれば、近年、拡大傾向にある白ワインのシェア(46%)は2018年に、1999年以降初めて赤ワインのシェア(44%)を上回った。

ジェトロでは、試飲商談会の来場者にアンケートを実施し、来場者の考える日本産酒類の強みと弱みについても聞き取りを行った。日本産酒類の強みとしては、豊富なバラエティーやワインとは異なったアロマ、高品質で洗練されていることが挙げられた。弱みとしては、日本産酒類の知名度の低さや720ミリリットルの小売価格で20ユーロ以上となる価格の高さが指摘された。

価格の高さは、倹約的であるドイツの一般的な家庭で日本産酒類が普及するのに高い障壁となる可能性がある。一方で、強みに挙げられたように、ワインとは異なる特徴をもち、かつ高品質で洗練されたイメージをもたれていることを生かした、日本産酒類のPRと日本産酒類に関する正しい知識の普及を継続することで、今後、さらなる日本産酒類の普及拡大が期待される。


注1:
クラフトビールに代表される小規模な醸造所で作られる飲料を指す。
注2:
ロンドンに本部を置く、ワインなどアルコール飲料の教育機関。ワインに関する講座や検定試験を実施している。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
ベアナデット・マイヤー
2017年よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所で調査および農水事業を担当。
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
矢舘 実典(やだて みつのり)
2013年福島県庁入庁。2017年4月よりジェトロへ出向。企画部地方創生推進課を経て2017年10月よりジェトロ・デュッセルドルフ事務所にてドイツへの食品輸出支援等に従事。

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