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新エネルギー車で追いかける中国企業、電池分野でも急成長

2019年5月21日

自動車業界の変革期を象徴する電気自動車(EV)市場で、中国メーカーの存在感が高まっている。調査ブログサイト「EV Sales」が2019年1月31日付で発表した世界のEV(プラグイン電気自動車を含む)販売状況によると、2018年のEV販売量は200万台を突破し、前年比58%増となった。とりわけ、中国ブランドの市場シェアは前年比4ポイント増の49%に上昇し、2位の米国勢(16%)、3位のドイツ勢(12%)との差が広がった。販売量上位20ブランドのうち、中国勢は吉利汽車に買収されたボルボを含めると、半分の10ブランドを占めた(表1参照)。

表1:世界主要電気自動車(EV)ブランドの販売台数(2018年)(単位:台、%)
順位 ブランド名 本拠地 出荷量 市場シェア
1 テスラ 米国 245,240 12.2
2 比亜迪(BYD) 中国広東省 227,364 11.3
3 北京汽車(BAIC) 中国北京市 164,958 8.2
4 BMW ドイツ 129,398 6.4
5 日産 日本 96,949 4.8
6 栄威(Roewe) 中国上海市 92,790 4.6
7 奇瑞(Chery) 中国安徽省 65,798 3.3
8 現代(Hyundai) 韓国 53,114 2.6
9 ルノー フランス 53,091 2.6
10 フォルクスワーゲン(VW) ドイツ 51,774 2.6
11 華泰(Hawtai) 中国北京市 51,736 2.6
12 シボレー 米国 50,682 2.5
13 江淮(JAC) 中国安徽省 49,883 2.5
14 吉利(Geely) 中国浙江省 49,816 2.5
15 江鈴(JMC) 中国江西省 49,312 2.4
16 トヨタ 日本 45,686 2.3
17 三菱 日本 42,671 2.1
18 東風(Dongfeng) 中国湖北省 39,945 2.0
19 Kia 韓国 37,746 1.9
20 ボルボ スウェーデン 35,994 1.8
世界 計 2,018,247 100

注:EVにはプラグイン電気自動車(PEV)も含まれる。
出所:調査ブログサイト「EV Sales」の発表を基にジェトロ作成

中国は、ガソリンなど従来のエンジン車で日米欧勢などに追いつくのが難しいとみて、政策的にEVシフトを推進し、国を挙げて企業育成に力を入れている。蔚来汽車(NIO)や小鵬汽車(Xpeng Motors)など新興EVメーカーが続出する一方、上海汽車や北京汽車など既存メーカーのEV分野進出も加速している。

民営自動車メーカーで中国2位の長城汽車は2019年2月23日、110億元(約1,760億円、1元=約16円)を投じ、浙江省嘉興市に自動車基地を整備すると発表した。研究開発センターや完成車工場などが建設される見通しだが、完成すれば、EVなどの新エネルギー車が年間5万台生産できる。同社はスポーツ用目的車(SUV)を主力としており、輸出を含む自動車出荷台数は2016年から3年連続で100万台を突破した。

CATLの電池出荷量は2年連続で世界一

中国は、EVの普及・拡大でコア部品となる電池産業においても、主力商品のリチウムイオン電池(LIB)を中心に急成長ぶりをみせている。

車載電池の世界大手、寧徳時代新能源科技(CATL)は2019年2月5日、ホンダとLIB分野の戦略的なパートナーシップを締結したと発表した。CATLは2027年までにホンダ向けに約56ギガワット時(1ギガワット=100万キロワット)分の電池を供給し、ホンダが中国を含む世界で発売するEVに協力する。テスラ「モデル3」の1台当たりの電池容量が50~75キロワット時ということを考えれば、CATLのホンダ向け総供給量は約100万台分のEVに搭載できるものとなっている。

CATLは2011年に設立した新興電池メーカーだが、EVの普及を背景に急成長している。調査会社「起点研究諮訊」によると、CATLの車載電池出荷量は2017年から2年連続で世界一となった。同社は、北京汽車や吉利汽車など中国メーカーのほか、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、日産、英国のジャガーランドローバー(JLR)など世界の自動車大手とも電池供給契約を結んでいる。

また、CATLは2018年7月、ドイツのBMWと約40億ユーロにのぼる電池納入契約を結んだ。調達契約は中国国内のみならず、ドイツからの約15億ユーロ分も含まれているため、ドイツ国内に電池の生産基地を整備することも計画されている。生産基地は2021年に稼働し、年間生産能力が最大14ギガワット時に達する見通し。BMWのほか、VW、フランスのグループPSAなどの欧米企業にも供給するという。

起点研究諮訊が発表した2018年世界の車載電池出荷量ランキングでは、中国勢はエンビジョングループ(遠景能源)傘下のAESCを入れると、上位12社のうち7社を占めた(表2参照)。急速に進んでいるEVの実用化を背景に、各社が大規模な投資と価格戦略で短期間に市場シェアを高めた結果だ。自動車業界団体の中国汽車工業協会(CAAM)によると、2019年1~2月に国内出荷実績のある電池メーカー52社のうち、CATL、BYD、合肥国軒高科動力能源の上位3社の出荷量シェアが全体の72.4%を占め、寡占化の進行も明らかである。

表2:世界車載電池メーカー上位12社の出荷量(2018年)(単位:MWh、%)(△はマイナス値)
順位 企業名 本拠地 出荷量 前年比
1 寧徳時代新能源科技(CATL) 中国福建省 23,540 96.2
2 パナソニック 日本 23,300 133.0
3 恵州比亜迪電池(BYD) 中国広東省 11,600 61.1
4 LG化学 韓国 7,500 66.7
5 オートモーティブエナジーサプライ(AESC) 日本 3,700 108.3
6 サムスンSDI 韓国 3,500 25.0
7 合肥国軒高科動力能源 中国安徽省 3,000 △ 6.0
8 天津力神電池 中国天津市 2,100 131.0
9 孚能科技 中国江西省 2,000 53.8
10 深セン比克動力電池 中国広東省 1,800 12.5
12 SKイノベーション 韓国 900 n.a.
世界 計 92,500 45.8

注:メガワット時(MWh)=1,000キロワット時(kWh)。
出所:調査会社「起点研究諮訊」の発表を基にジェトロ作成

電池の基幹材料でも急成長

LIBの性能を決める正極材、負極材、電解質、セパレータの主要4部材においても、中国企業は需要増を追い風に急成長している。従来は輸入に頼っていた一部の部材においても国産化率が既に9割を上回った。4部材で国産化が一番遅れていたセパレータでも、深セン星源材質科技や上海恩捷新材料科技など有力メーカーに牽引され、輸入代替を実現した。

深セン星源材質科技は2019年4月9日、車載電池第7位の合肥国軒高科動力能源と、2019年末までにセパレータ約1億平方メートルの納入契約を結んだ。これは2019年に入ってから、1月に車載電池第9位の孚能科技との提携協定に次ぐ2件目の大型案件だ。一方、同社は2020年までに製品の輸出比率を現在の5割から7割以上に引き上げるとしており、海外進出にも積極的だ。ちなみに、2018年7月には村田製作所と戦略提携を契約した。

セパレータの業界団体「中国膜工業協会」によると、2018年の中国LIB用セパレータの出荷量は前年比39.7%増の20億2,000万平方メートルで、前年に次いで世界最大規模となっている。このうち、深セン星源材質科技を筆頭に上位5社の市場シェア合計は前年比4.3ポイント増の54.3%に上がり、市場の寡占化が一段と高まった。

中国企業は、電池原材料の安定供給確保にかかる投資も活発に行っている。自動車情報サイト「蓋世汽車網」がまとめた2018年中国の車載電池出荷量をみると、三元系LIBの構成比は2016年の23.0%から、59.8%に拡大している(表3参照)。そのため、電池に使うリチウムとともに、正極材料となるコバルト、ニッケル、マンガンに対する需要が大幅に増えている。中国企業は原材料を獲得するため、鉱物資源の生産大国であるオーストラリアやアフリカ、中南米などへの進出を急いでいる。

表3:中国の車載電池種類別出荷量(単位:MWh、%)
種類 2016年 2017年 2018年
出荷量 構成比 出荷量 構成比 出荷量 構成比
三元系LIB 6,500 23.0 16,000 44.0 34,250 59.8
リン酸鉄系LIB 20,300 71.7 18,000 49.5 21,500 37.5
マンガン系LIB 1,000 3.5 1,500 4.1 1,000 1.7
チタン酸系LIB 300 1.1 600 1.6 500 0.9
その他 200 0.7 300 0.8 30 0.1
合計 28,300 100 36,400 100 57,280 100

出所:自動車情報サイト「蓋世汽車網」の発表を基にジェトロ作成

LIB用電解液の有力メーカーで、正極材なども積極的に手掛けている広州天賜高新材料は2019年4月上旬、オーストラリアの鉱山会社カッシーニ・リソース(CZI)に出資すると発表した。CZIの第三者割当増資を引き受け、250万オーストラリア・ドル(約1億9,250万円、1オーストラリア・ドル=約77円)で株式6.0%を取得して大株主になる見通し。CZIがオーストラリア最大の未開発ニッケル・銅プロジェクトの探査権を有しており、出資することでLIB用ニッケル材料の獲得に有利に動くとみられる。

電池業界再編の流れは加速

ここ数年、EVに対する大きな補助金などにより、中国は世界最大のEV市場に成長し、車載電池産業においても規模効果で中国勢の躍進が目立った。しかし今後、補助金の削減とともに、過剰な生産力や外資系有力企業の進出などを受け、中国の電池企業の生存環境は厳しくなると考えられる。

財政部が2019年3月26日に出した2019年度EV販売の補助措置によると、EVに対する1台当たりの平均補助額は2018年に比べて約半減となったほか、中央と別に実施されてきた地方政府の補助金もなくなった。また、補助金対象となる純粋なEV(プラグイン電気自動車を含まず)の航続距離の下限ラインは150キロから250キロに引き上げられた。政府の狙いは、電池企業がR&D(研究開発)を通じてエネルギー密度の向上を推進することだ。

一方で、世界大手電池メーカーの中国進出は本格化している。韓国大手3社のLG化学、サムスンSDI、SKイノベーションは、2018年の中国への投資額が合計300億元を超えた。2019年に入っても、LG化学は2020年までに1兆2,000億ウォンを投じて南京市に車載電池2工場を新設し、SKイノベーションは新たに約4,000億ウォンを投資してセパレータ工場を整備する計画を相次いで発表した。

また、車載電池の生産能力の過剰も顕在化している。電池業界団体の中国化学と物理電源産業協会は、LIBの生産能力が2018年末に中国EVの年間実需の約4倍に達したと発表し、2019年も大幅な増産に踏み切った企業が相次いでいるため、業界内で不安視する声も出ている。

LIBは、高エネルギー密度、高電圧作動、長寿命などのメリットを有するためEV用主力商品となっているが、短い航続距離や長い充電時間、安全性など問題は存在する。そのため、LIBの性能を大きく上回る、次世代電池として期待されている全固体電池、クリーンなエネルギーとされる燃料電池に対する開発は、世界各国で推進されている。中国企業はLIB分野で先発優位性を築いたものの、競争が激化していく電池業界において今後は淘汰(とうた)される企業も増えていくだろう。

執筆者紹介
ジェトロ・上海事務所
劉 元森(りゅう げんしん)
2003年、ジェトロ・上海事務所入所、現在に至る。

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