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タイ政府、現政権下でのCPTTP参加は見送るも、一貫して強い関心
参加影響調査では革製品・食品関連の輸出拡大に期待

2019年1月7日

タイ政府は10月31日に妥結した「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」への参加に高い意欲を示し、関係省庁を横断する委員会の設置や調査活動を行ってきた。12月に入り、商務相は現政権下でのCPTPP参加を見送ると発表したが、参加への関心は一貫して高いままだ。同委員会が実施したCPTPP参加影響調査の中間報告会が12月20日に行われ、タイ地場企業が多い食品業や製靴業、縫製業の貿易機会が増大することが示された。

加盟に向けた準備進むも、現政権下での参加は困難

CPTPPに対して、タイでは3月にはソムキット副首相が初めて公に参加意欲を表明(2018年4月5日ビジネス短信参照)するなど、これまで一貫して強い関心を示してきた。その後、商務相が委員長を務める形で30の関係省庁・団体で構成される「CPTPP委員会」を組織してCPTPP参加影響調査を行うなど準備を進めてきた。12月3日に開催された第3回作業部会後の記者会見で、ソンティラット商務相は2019年2月に予定されている総選挙の前に交渉参加入りすることが重要として、作業を加速する意思を示した。

タイが交渉入りを急ぐ理由は、ASEAN域内で製造拠点として競合する国に対し、輸出条件が劣後する状態を避けるためだ。批准手続きを終えたベトナムや原交渉国のマレーシア、さらにタイ同様に参加意思を表明しているインドネシアなどが競合国として想定される。2017年のHSコード6桁で見た各国の輸出上位30品目(注)のうち、タイはマレーシアと電気・電子部品を中心に9品目で直接競合する割合が高い。他方、ベトナムとの間で同様の比較を行うと、輸出上位30品目の中で合致しているのは4品目にとどまるものの、ベトナムはタイでも多くの地場企業が従事する履物や衣料品、食品などに強く、また後述のとおり、それら品目はタイのCPTPP加盟により貿易額の増加が見込まれるため、それら企業への配慮という観点からも、やはり競争環境の維持が求められている。

9月には商務省通商交渉局のオーラモン局長が「The Nation」紙に対し、他の関心国であるインドネシア、コロンビア、英国などを引き合いに出しつつ、交渉参加のタイミングが遅れることはより不利な交渉を強いられるとし、いち早く交渉入りすることが重要であるとの認識を示した。

他方、足元では交渉参加まで一定の時間が必要だとの認識が強まっている。12月11日、ソンティラット商務相のコメントとして、現地報道は一斉に、現政権下においてタイはCPTPPに参加しない、と報じた。また、ジェトロがオーラモン局長にヒアリングしたところ、「2019年1月下旬に開催が予定されているTPP委員会までに参加意思を示すためには閣議決定が必要になる」とした一方で、「新規加盟国の交渉要件が不明確であることから、閣議で議論する状態にない」と、参加表明の議論にも至っていない現状に言及した。また、総選挙が2月下旬、組閣が5月ごろに予定されているため、「1月のTPP委員会から組閣までの間に参加表明を正式に行うことも困難」ということも参加できない理由だとした。一方、「タイがCPTPPの加盟に強い関心を有していることは一貫しており、全く変化がない」とも強調した。

皮革製品や食品に貿易機会をさらに生かす期待

先述のCPTPP参加影響調査については、12月20日にタイ商務省主催の説明会が開催され、当初年内に最終報告書を作成するとしていたスケジュールからはやや遅れているものの、1月後半から2月上旬までにはタイ政府の承認を得るべく提出予定であることが説明された。

この説明会では、現時点の分析結果として、CPTPPへの参加によってタイの輸出では革製品や靴類、輸入では米・同調整品が最も貿易額が増加することが報告された(表1)。他方、米・同調製品(輸出4位、輸入1位)、魚介・同製品(輸出2位、輸入2位)、動物性生産品(輸出3位、輸入8位)、果物・野菜類(輸出5位、輸入4位)などは輸出入ともに影響が大きいとの分析結果が示された。物品貿易については特定の輸出品目の市場アクセスが改善する一方、輸入品との競争激化がリスクとして挙げられている。

表1:CPTPP加盟による貿易増加品目
順位 輸出 輸入
1 革製品・靴 米・同調整品
2 魚介・同製品 魚介・同製品
3 動物性生産品 乳飲料
4 米・同調整品 果物・野菜類
5 果物・野菜類 コーヒー・茶類
6 飲料・タバコ類 採油用種子
7 衣料品 衣料品
8 砂糖・砂糖菓子 動物性生産品
9 採油用種子 飲料・タバコ類
10 乳飲料 砂糖・砂糖菓子
出所:
商務省資料よりジェトロ作成

現在のタイのCPTPP諸国との貿易関係を見ると、大まかにASEAN諸国、日本、メキシコとの間では工業製品が相互に取り引きされ、大洋州、米州諸国からは一次産品や食品などが輸入される構造となっている。表1の品目については一部を除き、主要貿易品目とはなっていない(表2)。表1に含まれる農水産業や製靴、縫製業には、地場企業が多く、今後輸入品と競合しつつ輸出機会を生かすためには、一層の競争力強化に向けた取り組みが求められるといえよう。

表2:タイとCPTPP参国との貿易関係(2017年)

輸出(単位:100万ドル、%)(―は値なし)
国・地域 輸出額・割合 主要品目
CPTPP参国向け計 69,884
日本 31.6% 鶏肉、電話機器、自動車部品
ベトナム 16.6% 石油類、果物、エアコン
豪州 15.0% 乗用車、トラック、エアコン
マレーシア 14.8% 天然ゴム、パソコン周辺機器、自動車部品
シンガポール 11.7% 石油類、作業船、集積回路
メキシコ 4.3% 乗用車、HDD、自動車部品
NZ 2.3% トラック、乗用車、ポリエチレン
カナダ 2.0% 魚介類保存品、米、甲殻類
チリ 1.1% トラック、乗用車、魚介類保存品
ペルー 0.5% 乗用車、魚介類保存品、洗濯機
ブルネイ 0.1% 乗用車、米、セメント類
輸入(単位:100万ドル、%)(―は値なし)
国・地域 輸入額・割合 主要品目
CPTPP参国計 64,830
日本 50.0% 自動車部品、集積回路、熱延鋼板
マレーシア 18.2% 原油、HDD、集積回路
シンガポール 12.3% 石油類、記憶装置類、集積回路
ベトナム 7.7% 電話機器、原油、受像機器
豪州 6.9% 地金、原油、石炭
ブルネイ 1.0% 原油、天然ガス、メタノール
NZ 1.0% 濃縮ミルク、バター、麦芽エキス類
カナダ 1.2% カリ肥料、溶解性パルプ、非溶解性パルプ
メキシコ 0.9% 自動車部品、電話機器、医療機器
チリ 0.6% 精製銅、冷凍魚、非溶解性パルプ
ペルー 0.2% 亜鉛、貝類、ぶどう
注:
主要品目はHSコード4桁で見た上位3品目を抜粋。
出所:
グローバルトレードアトラスよりジェトロ作成

注:
ベトナムのみ利用可能な最新年である2016年のデータで比較。
執筆者紹介
ジェトロ・バンコク事務所
蒲田 亮平(がまだ りょうへい)
2005年、ジェトロ入構。2010年より2014年まで日ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)事務局次席代表を務めた後、海外調査部アジア大洋州課リサーチマネージャー。2017年よりアジア地域の広域調査員としてバンコク事務所で勤務。ASEANの各種政策提言活動を軸に、EPA利活用の促進業務や各種調査を実施している。

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