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技能実習制度が整い、優秀なミャンマー人材の活用ニーズ高まる
よくあるトラブルを事前準備で回避

2019年6月26日

東南アジア諸国連合(ASEAN)の中でも、人件費が安いミャンマー。人口は5,000万人を超え、平均年齢も若く、親日国といった背景もあり、日本でのミャンマー人の活用は、将来の拡大が期待される分野の1つである。本稿では、日本で就労可能な在留資格の中でも特に注目されている、「留学」、「技能実習」、「特定技能」の3つについて、ミャンマー国内の関係企業にヒアリングした結果を踏まえつつ、まとめてみた。

在留しているミャンマー人の全体像

在留外国人統計によれば、2018年6月時点で日本に在留しているミャンマー人は約2万5,000人である。内訳は「技術・人文・国際」といった高度人材および「企業内転勤」といった、いわゆる正社員ステータスが約3,000人で、「技能実習」と「留学」がそれぞれ6,000人超となり、ベトナムやフィリピンよりは少ないが、タイとはほぼ並ぶ規模である(表1参照)。

表1:ASEAN主要国の在留外国人数
項目 ミャンマー ベトナム タイ フィリピン アジア 合計
技術・人文・国際 2,778 28,772 2,047 6,642 184,418 212,403
企業内転勤 144 951 971 1,606 14,381 17,176
介護 5 70 0 18 176 177
技能実習1号 3,186 61,406 3,978 12,580 126,752 126,991
技能実習2号 3,618 71,918 4,619 16,079 157,143 157,199
技能実習3号 10 815 47 162 1,586 1,586
留学 6,444 80,683 4,375 2,603 304,541 324,245
合計(その他を含む) 24,471 291,494 51,003 266,803 2,196,100 2,637,251

注:「技術・人文・国際」は専門的な知識や技術を必要とする仕事に従事する外国人従業員向けで、農・漁業や建設、機械・金属関係などの技能を習得する目的の技能実習とは異なる。技能実習1号は、入国後1年目の技能などを修得する活動。技能実習2号は、2年目・3年目の技能などに習熟するための活動。技能実習3号は、4年目・5年目の技能などに熟達する活動。
出所:法務省「在留外国人統計」(2018年6月末)

在留外国人統計から、日本に在留しているミャンマー人の推移をみると、2014年から2018年にかけて約2.5倍に増えていることが見て取れる(図参照)。「技術・人文・国際」の在留資格を持つミャンマー人も増えているが、特に技能実習1号・2号、留学を目的に来日するミャンマー人が大幅に増加している。

図:日本在留ミャンマー人の推移
2014年から2018年にかけて約2.5倍に増えている事が見て取れる。「技術・人文・国際」の在留資格を持つミャンマー人も増えているが、特に技能実習1号・2号、留学を目的に来日するミャンマー人が大幅に増加している。

注:各年12月末の数値。2018年のみ6月末。
出所:法務省「在留外国人統計」

国内の日本語人気を支える留学

ミャンマーでは、日本語学習の人気は近年上がってきており、最新の日本語能力試験の受験者数は、タイを抜いてASEAN第2位の水準になっている(表2参照)。こうした背景もあり、ミャンマー国内には一時期100を超える日本語学校があると言われていた。

表2:日本語能力試験(JLPT)の受験者数
レベル ミャンマー ベトナム タイ インドネシア 東南アジア 合計
N1 524 2,712 1,348 687 6,147 132,230
N2 1,569 9,408 2,759 1,992 17,637 182,273
N3 3,096 12,416 3,490 3,585 25310 147,371
N4 7,110 10,540 4,613 3,717 33,422 89,410
N5 9,351 6,929 5,384 4,103 30,321 72,527
合計 21,650 42,005 17,594 14,084 112,837 623,811

出所:日本語能力試験(2018年第2回(12月)データ)

「留学」用ビザを取得して日本へ行くミャンマー人は、ミャンマーの日本語学校から日本の日本語学校に留学する人が多いようだ。この「留学」用のビザは、勉学に従事する者のために付与されるが、週28時間以内のアルバイトが認められている。そのため、ミャンマーから日本への留学生は、日中は語学学校で勉強しながら、夜はアルバイトに従事する留学生が多い。人材派遣業界の関係者によれば、ミャンマー人に限らず、居酒屋などの飲食店やコンビニエンスストアで働いている外国人には、このような留学生が多いという。

今後も派遣の中心となる技能実習制度

ミャンマーからの技能実習生の送り出しは、2013年に解禁された。現在、ミャンマーから送り出されている技能実習生は約6,700人であり、技能実習生全体の約28万5,000人に対する割合としては、小規模にとどまっている。

技能実習生の活用については、ミャンマー人技能実習生が日本に行った時の状況をしっかり理解できるよう、事前の説明を十分に行うことが重要だ。例えば、送り出し機関の日系大手A社は「仲介業者を介さない自社の直接募集を徹底することが重要」と話す。応募者の中には、仲介業者に紹介されるがまま訪日し、実際の報酬や日本での生活環境などを知らない者も多く、トラブルになることも多いという。そうした状況を回避するため、「応募段階できちんと説明することで、トラブルを未然に防ぐことが重要だ」という。

また、日本の派遣先との事前面接を強化するなどで、日本入国後のギャップ解消に力を注ぐ企業もある。日系送り出し機関B社は「勤務環境や職場の人間関係が悪いとトラブルになりがちだ」と話す。SNSが発達した現在では、悪評はすぐに広まるため、候補者を集められない企業もあり、受け入れ側の日系企業も選ばれる時代になってきている点は注意が必要だろう。

「特定技能」の先行きは不透明だが、動き出す企業も

2019年4月から新設された「特定技能」(注)の在留資格に関しては、まだ不透明な部分が多い。「特定技能」の在留資格を得るためには、派遣元の国で日本語と技能に関する評価試験を受ける必要があるが、ミャンマー国内では試験実施のめどは立っていない。技能実習2号修了者に対しては日本語や技能試験は免除されるが、「特定技能」の対象14業種のうち、先行して試験実施が開始すると言われる「介護」「宿泊」「外食」の3業種には技能実習2号の修了者がおらず(宿泊と外食は技能実習制度の対象外なので修了者が存在せず、介護はミャンマー国内に該当者がいない)、当座の派遣は考えにくい。しかし、技能実習2号の終了者がいる業種においては「すでに自社が派遣した技能実習修了者にアプローチして囲い込んでいる仲介業者がいる」(日系A社、B社)とも言われており、留意が必要である。

技能実習制度との類似点も多いため、先述の日系B社は「特定技能での派遣は、技能実習制度の対象業種ではなかった外食や宿泊といった一部の分野にとどまるのではないか」という見方をしている。「送り出し機関の立場からすれば、(技能実習2号が終了して)帰国した技能実習生が同じ会社に行く場合には技能実習3号という選択肢もあるので、今すぐ特定技能で派遣ということにはならない」(日系B社)という。

先行き不透明な状況で、一部に注意を要する仲介業者の存在も指摘される中、来るべき派遣開始に向けて、無償で講座を開講して人材を集めようと取り組む事業者もある。日本国内で飲食業など幅広い事業を営む日系C社は「技能実習生の送り出しなどにはこれまで関わっていなかったが、特定技能の制度創設を契機に事業を開始した。現在、派遣に向けての研修中であり、この研修が終わっている頃までに、派遣のめどが立っていれば理想的」と、早期のスタートに期待を寄せている。

ミャンマーにおいては、長期にわたる軍事政権の鎖国的政策のため、雇用創出できる国内企業が少なく、大学を卒業しても、タイやマレーシアなど近隣国に出稼ぎに出る若者が多い。そのため、海外で働くことに抵抗は少ない。加えて、ミャンマー人の親日的な気質もあり、今後ともミャンマーから日本へいくミャンマー人材には期待できそうだ。


注:
日本の深刻な人手不足の状況に対応するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れる制度。介護や清掃、建設、農業など特定14分野に属する相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格。在留期間は通算で上限5年まで。技能実習2号を良好に終了した者は、技能水準試験、日本語能力水準試験を免除される。
執筆者紹介
ジェトロ・ヤンゴン事務所
下田 聡(しもだ さとし)
2008年経済産業省入省。2016年よりジェトロ・ヤンゴン事務所勤務(出向)

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