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鉱物資源開発のパプア州、農水業も盛ん(インドネシア)
地方経済を見る(1)

2019年3月26日

インドネシア東端に位置するニューギニア島は、グリーンランドに次いで世界で2番目に大きい島(約79万平方キロメートル/日本の総面積の2倍強)で、おおむね東経141度線の西側がインドネシア領(西パプア州、パプア州)、東側がパプア・ニューギニアとなっている。豊かな森と海に恵まれたパプア(ニューギニア島インドシア領の総称)は「地上に落ちた小さな天国」と呼ばれてきた。インドネシアでは、政治・経済・産業の中心であるジャワ島に対して、他の島々は資源の供給地という色彩が強い。しかし、2014年にジョコ・ウィドド政権が誕生し、優先政策課題として地方開発が掲げられる中で、地方においてインフラ整備が進展するとともに、民間レベルでも新たなビジネスチャンスを探る動きが加速してきた。本稿では、次稿の西パプア州(2019年3月26日記事参照)に先立ち、鉱物資源開発で注目を集めるパプア州の経済概況を見ていきたい。

パプア州の概要

パプア州はインドネシア最大の州だ。面積はおよそ32万平方キロメートル(日本の総面積の約84%)で、インドネシアの総面積の約17%である。島の中央部をマオケ山脈が東西に走り、万年雪に覆われたインドネシア最高峰プンチャック・ジャヤ(標高4,884メートル)がそびえる。陸地の大部分は熱帯雨林で、南岸に低湿地が広がる。ちょうど日本の真南に位置し、日本との時差はない。人口は326万5,202人(2017年、インドネシア中央統計庁パプア州事務所予測値)で、うち52%がパプア系住民、残りが他の島々からの移住者である。宗教はプロテスタントが59%、カトリックが23%、イスラームが17%となっており(2017年、インドネシア中央統計庁パプア事務所)、西パプア州と同様に、キリスト教徒がマジョリティーだ。2017年の1人当たりの名目GDPは5,868万ルピア(約47万円、1ルピア=約0.008円)で、首位のジャカルタ特別州の4分の1程度だが、全34州の中で第7位の水準である。また、2018年のGDP成長率は7.33%と、インドネシア全体の5.17%を大きく上回り、全34州の中で第2位となっている(インドネシア中央統計庁)。


州都ジャヤプラの郊外にあるセンタニ湖(ジェトロ撮影)

パプアでは1960年代以降、自由パプア運動(OPM)による独立運動が繰り広げられてきたが、近年、州都ジャヤプラでは治安が安定している。10年前との比較では、ジャヤプラの街は澄んだ青空の下、明るく活気にあふれ、おしゃれなカフェやレストランが立地している。街の南では新たなランドマークとしてホルテカンプ(Holtekamp)橋の建設が進み、完成するとパプア・ニューギニアとの国境までの所要時間(車)が現在の2.5時間から1時間に短縮されるという。ジョコ・ウィドド大統領も何度も視察に訪れており、パプア重視の姿勢を見せている。他方、内陸部のプンチャック・ジャヤ県や南岸のミミカ県については、外務省の危険情報において「レベル2」(不要不急の渡航はやめる」)となっているほか、2018年12月上旬、内陸部のンドゥガ県においてトランス・パプア道路の工事関係者が武装集団に襲撃され、多数の死者が出るなど治安も不安定だ。


ジャヤプラの街並み(ジェトロ撮影)

豊富な鉱物資源を主とした輸出構造

パプア州の輸出統計を見てみると、表1の通り、輸出産品はほぼ100%、鉱石と木材が占める。輸出先として大きい国は、表2の通り、日本、インド、中国、フィリピン、韓国だ。鉱石は、インドネシア最高峰のプンチャック・ジャヤ付近には世界最大級の銅・金鉱山であるグラスベルグ鉱山から採掘されるものだ。同鉱山は、米フリーポート・マクモラン社が運営しているが、採掘された銅鉱石は三菱マテリアルなどが出資するスメルティング社の精錬所(東ジャワ州グレシック)に運ばれ、電気銅に加工されるほか、海外に輸出されている。グラスベルグ鉱山を巡っては、フリーポート・マクモランの現地法人であるフリーポート・インドネシア社の株式をより多くインドネシア側に配分すべきと議論されてきたが、2018年7月に国営資源会社イナルム(Inalum)が同社株式の過半を握ることで基本合意し、12月21日に最終合意に至った。イナルムは、フリーポート・マクモランが所有していた株式や鉱業・資源分野の多国籍企業グループであるリオ・ティントが所有していた権益を総額38億5,000万米ドルで買い取り、フリーポート・インドネシアにおけるイナルムの持ち株比率が9.36%から51.23%に拡大した。うち10%分は追ってパプア州側に移譲され、パプア州の住民にも恩恵が及ぶこととなる。この合意により、フリーポート・インドネシア社が「インドネシア化」する一方、同社は2041年までの採掘権の延長が認められ、また、5年以内に銅の製錬所を建設する計画だ(Inalumプレスリリース、2019年1月4日)。

表1:パプア州における主要産品の輸出金額(FOB) (単位:1,000米ドル、%)
輸出商品 2015年 2016年
金額 シェア 金額 シェア
鉱石および精鉱 1,831,814 91.2 1,907,955 95.0
木材およびその製品 125,337 6.2 96,181 4.8
動物性または植物性の油脂 20 0.0 80 0.0
魚およびその他の水棲生物 1 0.0 59 0.0
その他 52,345 2.6 3,802 0.2
合計 2,009,517 100.0 2,008,078 100.0

出所:インドネシア中央統計庁パプア州事務所資料を基にジェトロ作成。

表2:パプア州の主要輸出相手国(FOB) (単位:1,000米ドル、%)
地域 2015年 2016年
金額 シェア 金額 シェア
日本 403,158 20.1 489,139 24.4
インド 778,149 38.8 482,927 24.0
中国 310,706 15.5 460,425 22.9
フィリピン 183,317 9.1 258,885 12.9
韓国 109,404 5.4 181,977 9.1
スペイン 56,565 2.8 54,221 2.7
サウジアラビア 77,206 3.8 29,588 1.5
その他 89,013 4.4 50,916 2.5
合計 2,007,517 100.0 2,008,078 100.0

注:2015年の合計が表1と異なるが、インドネシア中央統計庁パプア州事務所資料のままである。
出所:インドネシア中央統計庁パプア州事務所資料を基にジェトロ作成。

漁業と農業も重要

パプア州の主要産業は、前述の鉱業のほか、農業、プランテーション、漁業、観光、畜産といったものだ。農業については、サツマイモ(ヤフキモ県など)、キャッサバ(ヤペン諸島など)、バナナ、トウモロコシ(ナビレ県など)、大豆(ジャヤプラ県など)などがある。プランテーションについては、ココナツ(メラウケ県など)、アブラヤシ(メラウケ県など)、カカオ(ジャヤプラ県など)、サゴヤシ(ケエロム県など)、コーヒー(ジャヤウィジャヤ県など)、ゴム(マッピ県など)などが生産されている〔インドネシア投資調整庁(BKPM)資料〕。アブラヤシについては、韓国も投資しているという。また、コーヒーについては、中央高地に位置するワメナ(ジャヤウィジャヤ県)が産地として有名で、アチェ・ガヨ、スマトラ・マンデリン、バリ・キンタマニ、トラジャ、フローレスなどと並び、インドネシアを代表するコーヒー豆の産地として評価が高まっている。

農業分野では、日本の山形県と、自治体間の姉妹都市交流が活発に行われている。第二次世界大戦中にパプアで亡くなった日本兵の遺骨収集団の受け入れを契機として、1990年代初頭に友好関係が構築された。


ジャヤプラ市内の市場(ジェトロ撮影)

漁業についてはマグロの水揚げも多く、衛生管理や品質管理等をしっかりと行えば、輸出産品として有力だ。ジャヤプラのハマディ漁港を訪れたところ、沿岸部に水上家屋が立ち並び、小型・中型の木造漁船が多数係留されていた。そこで出会ったパプア人漁師のひとりに話を聞いたところ、ジャヤプラの漁民はマカッサル人(南スラウェシ州)、ブトン人(東南スラウェシ州)、パプア人からなるが、4人のマカッサル出身者が漁民組織を率いているそうだ。漁民組織は独自に地元漁師のトレーニングを行っており、幼魚を捕獲しないことや、魚体を傷つけずに捕獲する方法などを教えている。マグロをおろして「ロイン」(注)に加工する施設も4~5カ所ほどあるという。


ハマディ漁港の様子(ジェトロ撮影)

投資申請にワンストップ窓口

鉱物資源を通じた日本との関係は深いが、投資という観点では現状、日本企業からの接触はないようだ。パプア州における投資の一元的な窓口となるのが、パプア州投資・ワンストップ統合サービス局だ。投資に関する許認可の申請はウェブサイトにおいてオンラインで行うことが可能で、書類に不備がなければ1日で投資許可が出るという。州内の土地の利用計画も土地計画管理情報システム(SIMTARU)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます で詳細な情報が公開されており、行政におけるITの活用に積極的な印象を受けた。

  • 名称:Dinas Penanaman Modal dan Pelayanan Terpadu Satu Pintu (DPMPTSP) Provinsi Papua(パプア州投資・ワンストップ統合サービス局)
  • 住所:Jl. Dr. Sam Ratulangi No. 32, Jayapura, Papua
  • ウェブサイト:https://perizinan.papua.go.id/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

パプア州投資・ワンストップ統合サービス局の庁舎(ジェトロ撮影)

また、ジャカルタにも、パプア州政府の出張所(パプア州連絡事務所)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますがあり、情報収集に活用できる。

  • 名称:Badan Penghubung Daerah Provinsi Papua(パプア州連絡事務所)
  • 住所:Jl. Suryo No. 60 Kebayoran Baru, Jakarta Selatan, DKI Jakarta
  • ウェブサイト:https://penghubung.papua.go.id/外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

注:
マグロを三枚におろした後、腹と背に割って、合計4つに分割された状態。

執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
吉田 雄(よしだ ゆう)
2005年、ジェトロ入構。貿易開発部でインドネシアの一村一品支援やASEAN地域・インドの物流環境調査などを担当。2008年からジェトロ徳島で徳島県企業の海外ビジネスを支援。2011年からものづくり産業部でインフラ・プラント分野の海外展開支援に従事。2014年4月から現職。主に機械・環境分野の情報提供やビジネスマッチングを行っている。

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