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中国市場で販売シェアを落とす米国車の現状

2019年1月28日

中国の自動車販売台数は、2004年には約500万台だったが、2006年に日本を、2009年に米国を、2010年にはEUを超え、2017年には約2,900万台を記録した。中国は世界最大の自動車市場である。米国は金融危機、EUは債務危機で落ち込んだ販売台数がようやく回復したのと対照的に、中国の自動車販売台数は右肩上がりの成長となっていた(図1参照)。

図1:自動車販売台数の推移2004年から2017年の推移について、日本はずっと500万台前後と横ばいで推移し、米国は2004年に1,730万台、2009年に1,060万台と落ち込んだがその後回復し、2017年には1,758万台となった。欧州は2004年に1,738万台、2013年に1,414万台と落ち込んだがその後回復し、2017年は1,815万台となった。中国は2004年に507万台で、その後右肩上がりで成長し、2017年に2,912万台に達した。

出所:OICA(国際自動車工業連合会)の統計を基にジェトロ作成

しかし、2018年に入り、その自動車販売台数の成長に変化が見え始めた。2018年の自動車販売台数は、6月までは前年同月比でプラスだったが、7月から12月まで6カ月連続で前年同月比マイナスとなり、販売台数の伸びに陰りが見られた。ついに10月には累計の前年同期比でもマイナスとなった。中国の自動車業界団体である中国汽車工業協会(CAAM)の発表によれば、2018年の自動車販売台数は2,808万台と前年比2.8%減少した。

こうした状況に対し、自動車産業を所管する、工業と信息化部の辛国斌副部長は「生産台数、販売台数ともすでに相当膨らみ、比較対象が大きくなりすぎている。中国の自動車産業の高度成長はすでに終わった可能性があり、将来はおそらく低成長が常態になる」と述べた(「毎日経済新聞」電子版2018年10月23日)。またCAAMの許海東秘書長助理は、2019年の乗用車販売台数は前年と同水準の2,360万台(図2参照)、商用車は440万台で合計2,800万台との見通しを述べた(「潇湘晨報」2018年12月14日)。

図2:中国の乗用車販売台数(月次推移)
2016年から2018年の月次推移をみると、春節のある2月に落ち込んだ後、3月は回復するが、夏場の7月に再度低下し、その後は年末に向けて販売台数が増加する傾向にある。

出所:中国汽車工業協会の統計データを基にジェトロ作成

2018年の販売台数減少には複数の要因

このような市場の状況には、考えられる要因がいくつかある。習近平政権の下で行われている経済構造改革による、成長鈍化を見越した経済の不透明感や、石炭や鉄鋼などの過剰生産能力の淘汰(とうた)に加え、環境規制の執行強化に伴う工場操業への影響による地方都市住民の収入の伸びの鈍化が挙げられる。さらに二級、三級都市では住宅価格が上昇し、自動車よりも住宅購入への志向が強まった可能性もある。乗用車の販売台数を省市別にみると、北部や東北部において前年よりも大きく自動車販売台数が減少している(図3参照)。

図3:2018年1~11月の省市別乗用車販売台数の前年同期比
多くの省で自動車販売台数が前年比で減少しているが、北部、東北部の省における販売台数の減少幅は大きい。

出所:DaaS-Autoのデータよりジェトロ作成

これらに加え、米中貿易摩擦による先行き不透明感や株価下落で資産が目減りしたことによる(2台目以降の)自動車への需要減などがある。2018年上半期までは2017年を上回る販売が続いていたことから、実際に米中間で関税引き上げが実施された7月以降にこうした影響が表面化してきたのではないか、と推測される。

また、中古車市場が拡大していることは確かで、新車販売台数を抑制する原因となっているとの見方もある。CAAMの統計によれば、2017年の中古車販売台数は前年比19.3%増の1,240万台だったが、2018年1~10月も引き続き14%増の1,133万台と伸びている。前述のCAAMの許秘書長助理は、2017年末で終了した小型車(排気量1.6リッター以下)減税の駆け込み需要との差や、2019年1月から一部都市で導入される排ガス規制(「国6」規制)対応車販売までの買い控え、なども自動車販売台数が減少した理由として挙げている。

2018年に入り、シェアが急低下する米国メーカー車

こうした中、中国市場における各国地域のメーカーのシェアを見てみると、日本とドイツメーカーの販売シェアが上昇している一方、米国と中国メーカーのシェアが低下している。中国メーカーは2018年8月に底を打って以降は盛り返しているが、米国メーカーのシェアは改善傾向が見られない(図4~7参照)。省市レベルでみると、販売台数が100万台を超える江蘇省、河南省、四川省で、日本車のシェアが米国車を逆転している。

図4:米国車のシェア(月次推移)
2016年から2018年におけるシェア推移。

注:2018年5月以降、例年のシェアから乖離し、年末にかけてさらにシェアを落としている。
出所:中国汽車工業協会のデータを基にジェトロ作成

図5:中国車のシェア(月次推移)
2016年から2018年におけるシェア推移。中国車のシェアは2018年8月以降、例年のシェアから乖離し、年末にかけてシェアを回復しつつあるが、2018年12月時点で例年のシェアには届いていない。

出所:中国汽車工業協会のデータを基にジェトロ作成

図6:日本車のシェア(月次推移)
2016年から2018年におけるシェア推移。

注:日本車のシェアは例年8月以降に20%台から15%前後に低下するが、2018年は8~11月は20%前後のシェアを維持している。
出所:中国汽車工業協会のデータを基にジェトロ作成

図7:ドイツ車のシェア(月次推移)
2016年から2018年におけるシェア推移。ドイツ車は例年10月から12月にかけて、シェアが20%から15%台に低下するが、2018年は7月~11月も20%台のシェアを維持している伸ばし、年末にかけても例年より高いシェアを維持している。

出所:中国汽車工業協会のデータを基にジェトロ作成

米国メーカーのシェア落ち込みについては、2017年秋以降の原油価格上昇に伴う中国国内ガソリン価格の上昇が関係あると思われる。世界的な原油価格指標であるWTIの価格は2017年6月の1バレル45ドルから2018年10月には70ドルまで上昇した。中国のガソリン価格は世界的な原油価格を反映して決められるため、2017年7月の1トン当たり6,600元(約10万5,600円、1元=約16円)から、2018年10月には9,500元まで値上がりした(図8参照)。このため、比較的燃費が悪い米国メーカー車が敬遠されたものと思われる。

図8:中国市場のガソリン価格の推移
2017年はほぼ横ばいで推移したが、2018年に入って上昇し、10月第2週にピーク値である1トン当たり9,561元となった。その後、価格は下落し、2018年12月第4週に1トン当たり7,460元となった。

出所:国家発展改革委員会の発表を基にジェトロ作成

個別メーカーをみると、フォードに関しては、2017年までは月次で増減を繰り返しながらも、販売台数を維持していたが、2017年秋以降は前年同月比で毎月マイナスに落ち込み、マイナス幅が拡大した(図9参照)。中国市場への新モデル投入が遅れたとの指摘もあるが、2017年8月に就任した中国担当CEO(最高経営責任者)が2018年1月に突然退任し、その後CEO不在が続くなど混乱も続いていた。2018年10月にようやく後任のCEOが着任し、体制の立て直しを目指すとしたが、11月と12月の販売台数は前年同月比で半減し、2018年通年の販売台数は前年比4割近く減少した。GMは、2018年初めまで販売は好調だったが、2月以降に伸びが鈍化し、第2四半期は横ばい、第3四半期は前年同期比でマイナス15%、第4四半期はマイナス26%と大幅に減少し、結果的に2018年通年の販売台数は前年比1割減となった。さらにGMについては、2018年9月に330万台を対象とするリコールを実施しており、販売へのさらなるダメージが懸念されている。

図9:フォードの販売状況(前年同月比)
2017年と2018年の前年同月比をみると、2017年は月によって前年同月比で増減を繰り返していたが、2018年に入って前年同月比で2桁の減少が続き、12月には前年比59%の大幅な減少となった。

出所:フォードの発表を基にジェトロ作成

2018年7月に、中国政府は自動車の輸入関税率を25%から15%へ引き下げたが、米国からの輸入車に対しては、7月6日に実施した米国への対抗措置で輸入関税率を40%に引き上げた。米国からの輸入車については、BMW、ダイムラーなどドイツ系メーカーの自動車が多いものの、米国車についても、テスラが関税引き上げの影響を受けて2018年10月の販売台数が前年同月比7割減となるなど、販売に影響が出ている(2018年12月4日ビジネス短信「テスラ、10月の中国販売台数は7割減、関税引き上げなど響く」)。原油価格は、一時の高値から足元では50ドルを下回るような状況になり、中国国内のガソリン価格も低下傾向だが、米中摩擦の激化による米国車敬遠の動きが出れば、より一層、米国車の販売が低迷することも考えられる。

執筆者紹介
ジェトロ・上海事務所 経済信息・機械環境産業部長
高橋 大輔(たかはし だいすけ)
1997年経済産業省入省、国際関係、エネルギー・環境関係部署、製造産業局自動車課(2016~2018年)を経て、2018年6月よりジェトロに出向し現職。

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