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【中国・潮流】上海にも引けを取らない大連

2019年8月30日

大連にいると、「ここは日本との関係が突出した街」であることを日々実感する。大連は、中国の中では「親日」という言葉を使う人も少なくない。大連で暮らす外国人の中で日本人は、2013年のピーク時から減少したとはいえ、圧倒的な存在感がある。私自身、上海にも7年駐在していたが、「日本との関係」という点では、大連は上海を上回っているといっても過言ではない。

日系企業(拠点)数は、上海の1万43社(世界1位)に対し、大連は1,550社(世界3位)と数では大差をつけられているが、世界の第3位も立派なものである。1,550社のうち、半分に相当する約750社は現在、大連日本商工会の会員企業であり、この約750社に約14万人に及ぶ中国人社員が働いている。商工会の会員ではない日系企業も合わせると、さらに多くの中国人が大連の日系企業で働いていることになる。大連ほどの規模の中国の都市で、日系企業で働く中国人の数がこれほど多い都市はほかにないだろう。

2018年末の常住人口が2,400万人を超える上海に対し、約700万人の大連ではその経済規模などでは到底かなわないが、日本との関係を「割合」という視点で見てみると、大連は上海を上回っている項目が少なくないことに気付く(表1参照)。

表1:大連VS上海
項目 大連 上海 出所
日系企業(拠点)数(2017年10月1日時点) 1,550社
(世界3位)
10,043社
(世界1位)
外務省「海外在留邦人数調査統計(平成30年版)」
人口100万人あたりの日本語能力テスト1級受験者数(2018年) 889人
(中国1位)
371人
(中国5位)
「日本語能力試験」ウェブサイト、大連統計局、上海統計局
貿易額全体に占める日本との貿易額の割合(2017年) 19% 11% 大連統計年鑑2018、上海統計年鑑2018
投資受入れ累計額に占める日本からの投資額の割合 17%
(2018年末までの数値)
9%
(2017年末までの数値)
大連市商務局ウェブサイト、上海統計年鑑2018
国際線に占める日本路線の割合(2018年度) 54.7% 23.5% 国際航空運送協会(IATA)
日本の地方自治体事務所の数(2019年4月時点) 7
(香港の9に次いで中国3位)
24
(中国1位)
自治体国際化協会(CLAIR)北京事務所資料など
日本との姉妹都市の数(2019年8月時点) 10 18 「日中間の姉妹(友好)都市数(CLAIR東京本部調べ)」
日系介護サービス企業(現地で施設を開設している企業数) 4社
(中国1位)
2社
(中国2位)
各社ウェブサイト、プレスリリースおよび新聞報道など

例えば、「人口100万人あたりの日本語能力テスト1級受験者数」では、上海の371人に対し、大連は889人と2倍以上になっており、中国の中で第1位である。この数字では、大連は統計がさかのぼれる2009年以降、第1位の座を譲ったことがない。

最近、こんな話を聞いた。大連に来て間もない日本人留学生が、バスに乗った際、運転手から何かを言われたそうだ。中国語が分からなかったこの日本人留学生は、機転を利かせて、「すみません、私は日本人です。中国語が分かりません。この中で日本語が分かる方は手を挙げてください。」と乗客に向かって言ったところ、3人が手を挙げたとのことであった。何とも、大連らしいエピソードである。大連の中心部にいて、言葉が分からず困ったことがあったら、勇気を出して、「日本語の分かる方はいますか?」と声をかければ、おそらく100%の確率で助けてくれると思う。

地方都市の割に、日本路線が充実していることも大連の特徴と言えるだろう。表2のとおり、2018年度の国際線に占める日本線の便数の割合は、上海の23.5%に対し、大連は54.7%と半分以上を占めている。また、2018年度の日本線の便数で前年度と比較して増加した都市は、大連、武漢、成都、広州であるが、中でも大連が大幅に増加したことが分かる。2019年度に入ってからも、4月に大連‐札幌便、8月17日に大連‐北九州便が復活したこともあり、日本路線の割合はさらに拡大するであろう(2019年3月27日付8月15日付ビジネス短信参照)。

表2:中国の主要都市における国際線に占める日本路線の割合
都市名 2017年度 2018年度
国際線便数
(一週間)
日本線便数
(一週間)
割合
(%)
国際線便数
(一週間)
日本線便数
(一週間)
割合
(%)
大連 461 244 53.0 500 273 54.7
上海 8,128 1,978 24.3 8,361 1,968 23.5
青島 855 167 19.6 930 167 18.0
北京 5,001 589 11.8 5,143 585 11.4
武漢 597 47 7.9 645 54 8.4
成都 1,181 77 6.5 1,263 82 6.5
広州 3,667 195 5.3 3,950 201 5.1

出所:国際航空運送協会(IATA)

経済規模やイノベーション企業の数などでは、上海、北京、深センとは大きく水をあけられている大連ではあるが、「日本との関係」を「割合」という視点で見てみると、一躍、上海に引けを取らなくなる。

昨今の良好な日中関係もあって、特に2019年の4月以降、ジェトロは大連市政府関係者との意見交換の場が増えており、多い月には1カ月に3回ほど対話の機会がある。大連市が日本との関係を重視している表れである。ただ、大連の日系企業を取り巻くビジネス環境が、大幅に改善されたというわけではなく、今後はイノベーションなどを通じて、特に、すでに大連に進出している日系企業のビジネスが拡大し、そのことを通じて大連の経済が成長していくことが望ましい。

また、2019年中には、「大連市駐日経済貿易事務所」が東京・新宿で再開するとのことである(2019年7月16日付ビジネス短信参照)。2012年に同事務所は閉鎖されたが、最近の日中関係の好転や、大連市が今後、日本とのさらなる経済交流の拡大を目指していることが再開の理由である。同事務所が果たすべき役割も大きいだろう。

今、大連市に期待することは、1.大連のスタートアップなど民営企業の育成、2.中国の他の都市とは違った魅力の日本企業へのアピールの強化、3.そして、これまで以上に大連の日系企業の事業環境に耳を傾け、日系企業を大切にしてほしい、ということである。

執筆者紹介
ジェトロ・大連事務所長
水田 賢治(みずた けんじ)
1992年、ジェトロ入構。中国語研修、ジェトロ・上海事務所勤務などを経て、2017年6月から現職。

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