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成長するスリランカの美容関連市場、消費者の意識も向上

2018年5月22日

好調な民間消費を背景に成長を続けるスリランカの美容関連市場。一方で、行政による品質検査体制や各種規制は整っていない。このような状況の中、コスメティック商品(化粧品)の製造販売を行うネイチャーズ・ビューティー・クリエーションズは、消費者への積極的な啓発活動を行う。ジェトロは2018年2月、スリランカの規制や同社の取り組みについて、同社のシャミンディ・クマラシンハ輸出部長に話を聞いた。

身近になったコスメティック商品、中には粗悪品も

この2~3年4%台の経済成長を続けるスリランカでは、中間層の台頭により日用品の個人消費が伸びている。国内総生産(GDP)に占める民間消費の割合は近年7割前後で推移しており(表)、中でも美容関係のマーケットは消費の伸びが顕著だ。スキンケアやヘアケア、コスメティック関連の市場規模は年率10%程度で成長していると言われ、大型スーパーマーケットでは輸入品、国産品双方ともに品ぞろえが充実している。ジェトロが2017年に行ったアンケート調査では、コロンボに在住する女性の実に97%が毎日、あるいは特別な日に化粧品を利用すると回答した(注)。

表:スリランカにおける消費、投資、貯蓄(市場価格ベース)(単位:100万スリランカ・ルピー、%)
項目 金額 上昇率 GDPに占める割合
2015年 2016年 2015年 2016年 2015年 2016年
GDP(市場価格ベース) 10,951,695 11,838,975 5.7 8.1 100% 100%
消費支出 8,661,886 9,018,895 10.3 4.1 79.1% 76.2%
階層レベル2の項目 民間支出 7,677,131 8,003,789 10.0 4.3 70.1% 67.6%
階層レベル2の項目 政府支出 984,755 1,015,107 13.4 3.1 9.0% 8.6%
投資 3,114,674 3,723,875 -7.0 19.6 28.4% 31.5%
国内貯蓄 2,289,809 2,820,080 -8.8 23.2 20.9% 23.8%
階層レベル2の項目 民間貯蓄 2,536,588 2,891,799 -3.9 14.0 23.2% 24.4%
階層レベル2の項目 政府貯蓄 -246,779 -71,719 -93.3 70.9 -2.3% -0.6%
注:
1スリランカ・ルピー=約0.7円。
出所:
スリランカ中央銀行

コロンボ市内の大型スーパーにはコスメティック、スキンケア、
ヘアケア商品が豊富にそろっている。(ジェトロ撮影)

一方で、スリランカのコスメティック関連商品市場には安全面を考慮した適正な規制が欠如しており、粗悪品も多く出回っているのが現状だ。スリランカで薬用植物由来のスキンケア、ベビーケア用品などを製造販売するリーディングカンパニーであるネイチャーズ・ビューティー・クリエーションズ(NBC)のシャミンディ・クマラシンハ輸出部長は、「スリランカ美容市場におけるリスクは、適正な規制に基づく行政による監視体制の欠如と、消費者の知識不足だ」と強調する。行政機関による品質審査が十分に行われないため、有害物質を含む商品が規制されることなく市場に流通し、実際にアレルギー反応による死亡事例も報告されている。

近年、スリランカ政府もようやく重い腰を上げつつある。医薬品規制当局(NMRA)のカマル・ジャヤシンハ長官は2018年3月、「全ての輸入、国産コスメティック関連商品はNMRAの承認を得る必要がある」と発言し、必要な対策を講じていくとした(MTV Channel、3月10日付)。しかし実際に行政審査が機能し始めるまでには一定の時間を要することが予想される。

民間企業の啓発活動が消費者を守る

粗悪品から消費者を守るため、スリランカ民間企業は自主的な取り組みを行っている。例えばNBCは、独自にセミナーを実施したり注意喚起のパンフレットを配布したりするなどして、消費者への啓発活動を行っている。適切な知識を持たない消費者が有害性に気付かないまま即効性をうたう商品を購入し、肌の炎症などが引き起こされてしまうといったトラブル事例が多いためだ。

筆者が同社を訪れた日にも、地元の女子学生が工場見学に訪れており、スキンケア商品についての基礎知識を学んでいた。NBCでは、「スリランカ政府の比較的緩やかな医薬品基準に甘んじることなく、製造工程において欧州および国際的な基準(EU GMP、ISO 9001 & 14001)を採用して品質管理に努めている」という。安全という付加価値を消費者に正しく理解してもらい、自社の高品質な商品を浸透させるためにも、消費者の啓発は欠かせない活動なのだ。


NBCの工場見学に訪れていた女子学生たち。
(ジェトロ撮影)

NBCのサミラ・フォンセカ社長(右)とシャミンディ・クマラシンハ輸出部長(左)(ジェトロ撮影)

消費者意識の向上は日系企業の商機

スリランカでは伝統医療であるアーユルべーダ文化の影響も色濃く、消費者は植物性由来のオーガニック商品を好む傾向がある。NBCは「ネイチャーズ・シークレッツ」のブランドで知られているが、そのブランド力の根源は植物への徹底した研究姿勢と、原料へのこだわりだ。同社の工場には広大な植物園が併設され、約800種類に及ぶ植物を栽培し、独自に研究を行っている。また、商品製造にあたり利用する原料については自社栽培あるいは直接契約の農家から仕入れており、トレーサビリティーを確保することで品質管理につなげている。同社はこのような経験を生かし、完成商品のみならず原料としての薬用植物の輸出にも乗り出している。NBCの製品が広く受け入れられていることからも分かるように、消費者の求めるレベルも上昇しつつある。適正な規制が整備、運用され、消費者の知識レベルも一層引き上げられれば、日系企業が得意とする高品質商品にとっての商機も拡大するだろう。

NBCでは植物の薬用性について独自の研究に取り組み、これにもとづいた商品開発を行う(ジェトロ撮影)


注:
アンケート調査はコロンボに住む女性57人を対象としたもの。詳細結果やその他関連情報は、コロンボのマーケット情報誌「コロンボスタイル」(ジェトロ・コロンボ事務所発行)の49ページを参照。
執筆者紹介
ジェトロ・コロンボ事務所
山本 春奈(やまもと はるな)
2015年、ジェトロ入構。対日投資部(2015~2017年)を経て現職。
執筆者紹介
ジェトロ・コロンボ事務所
ラクナ―・ワーサラゲ―
2017年よりジェトロ・コロンボ事務所に勤務。

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