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多様化する若者の消費動向、新たなトレンドも(中国)
美容男子を表す「精猪男」など新語が誕生

2018年10月29日

世界一人口の多い中国だが、人口の半数超は40歳未満で構成されている。その中でも、「90後」と呼ばれる1990年代生まれの世代は、19~28歳を迎え、中国の消費を支える存在となりつつある。本稿では、「90後」を中心に消費意欲が旺盛な中国の若者世代の消費動向に着目し、中国経済に与える影響やビジネスチャンスを考察する。

消費意欲の旺盛なデジタルネイティブな世代

中国の人口は2016年に13億8,271万人に達し、うち52.4%が40歳未満で構成されている(注1)。中国では生まれた年代に「後」をつけ、1970年代生まれを「70後」、1980年代生まれを「80後」、1990年代生まれを「90後」などと呼ぶ。2018年現在、19~28歳を迎えた「90後」は、中国の消費を支える存在となりつつある。2017年の年間1人当たりの消費金額は、「80後」が最も多く6万1,974元(約99万円、1元=約16円)、次いで「70後」が5万6,676元、「90後」が3万5,107元だったが、2015年と比べると「90後」が最も高い伸びを示し2.7倍となり、「80後」は2.2倍、「70後」は1.9倍だった(注2)。

また、「90後」を中心とする若者世代は、パソコンやスマートフォン(スマホ)などのデジタル機器になじみがある人が多い、デジタルネイティブな世代だ。実際に、中国国内のインターネット利用者の中で若者世代はひときわ存在感がある。2018年6月時点で8億166万人に達した中国のネット利用者を年齢別でみると、40歳未満が全体の74.4%を占めそのうち、「90後」に多い20代が最も多く27.9%に達した(注3)。

中国におけるネットの利用には特徴がある。スマホなど携帯端末からのネット利用者が7億8,774万人に上り、ネット利用者全体の98.3%も占めているのだ。特に若者世代は携帯端末からの利用が多い。携帯端末からのネット利用は比較的容易に行えるため、その利用時間に影響を及ぼし、中国の検索エンジン大手の捜狗(Sogou)などによると、利用時間が最も長いのは「90後」で1日平均6.5時間、次に長かったのは「80後」で6.2時間だという。

利用頻度が高く、EC市場拡大を牽引

ネットの普及に伴い、中国国内の電子商取引(EC)市場は拡大を続けている。2017年の中国におけるBtoCのEC市場規模は、前年比35.1%増の1兆1,153億ドルで世界最大だった(注4)。

ネットショッピングの販促日として知られる11月11日の「独身の日」セールについても、中国のEC大手アリババのプラットフォーム「天猫(Tモール)」の取引額は年々拡大している。2017年は過去最高額の1,682億元を突破し、前年から39.0%(475億元)増加した。

2016年の天猫の「独身の日」セールの購入額を年齢別でみると、25歳以下が25%、26~35歳が49%、36~40歳が11%、41歳以上が15%だった。当時27~36歳の「80後」、17~26歳の「90後」がネットショッピングの中心で、特に「80後」が活発な消費をしていたことが分かる。

この傾向は中国のEC市場全体にも当てはまる。第一財経商業データセンターが発表した「2017年中国インターネット消費生態ビッグデータ報告」によると、ネットショッピングは「90後」と「80後」が中心で、購入額では「80後」が最大だが、利用頻度では「90後」が最も多いという。「90後」には就労していない層が含まれるため、購入額では上の世代を下回るものの、今後就労して「90後」全体が一定の収入を得るようになれば、頻繁に利用する習慣が身に付いていることからEC市場の消費を牽引することだろう。

美容男子が増加、約5人に1人がBBクリーム購入

中国のネット上で「精猪男」や「精緻男孩」という言葉が話題となっている。いずれも美容に気を遣う男性を意味し、若者世代の中でも特に1995年以降に生まれた「95後」の男性が外見に気を配るようになっているという。

中国のEC大手の唯品会などが発表した「『95後』ファッション消費報告」によると、2017年の「95後」の男性による美容関連商品の消費額は、2015年と比べ60%増となった。フェイスパック、スキンケア関連商品、洗顔用品の人気が高いほか、化粧品の購入も目立った。唯品会の会員の「95後」の男性のうち、18.8%がBBクリームを、18.6%がリップクリーム、リップスティック、アイライナーペンシルを、8.8%がアイブロウペンシルをそれぞれ購入したことがあったという(注5)。

アリババの天猫(Tモール)においても男性向けのフェイスパックが人気を集め、2018年FIFAワールドカップ(W杯)開催前には200万枚販売されたという。スポーツ観戦で徹夜するに当たり、肌への負担を気にするのは女性だけではないということだろう。化粧品やフェイスパックはもはや女性だけが使うものではなくなっているようだ。

美白志向は男性にも見られるようになった。海水浴での日焼け対策に、日焼け止めクリームを塗るのではなく、「フェイスキニ」を着用する人も出てきている。フェイスキニとは、目、鼻、口以外の顔もしくは全身を覆う伸縮性の高いマスクで(写真1)、最近は絵柄の入ったデザイン性の高いものも販売されている。アリババのプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」では、2018年夏のフェイスキニの売上額が前年同期の2.2倍と、爆発的な人気となり、そのうち半数を超える55%の購入者が男性だったという(注6)。中国の若者世代の男性は、美容市場の拡大の一翼を担う存在でもあるようだ。


フェイスキニの一例(出所:ジェトロ撮影)

孤独感からバーチャル猫購入のケースも

「80後」「90後」には、就学や就職のために故郷を離れ、北京や上海、深センなどの大都市で一人暮らしをする人も多い。こうした人々は中国語で「空巣青年」と呼ばれる。中国青年報が2017年に実施したアンケート調査では、「空巣青年」の抱える問題として「心のよりどころがないこと」(回答率57.9%)などが挙げられた。また、「『空巣青年』という表現は生活だけでなく、心の状態も表している」と感じる人が回答者の55.1%に上った。

寂しさや孤独感を紛らわすためか、中国では近年、猫を「飼う」若者が増加している。「飼う」といっても、実際に猫を飼育するだけではない。ネットやSNSを通じて猫の写真や動画を見たり、猫の育成シミュレーションゲームを通じてバーチャル猫を飼育する「雲養猫」も流行したりしており、2017年末までに7万匹以上のバーチャル猫が販売されたというゲームもあった。そのほか、猫と戯れることができる猫カフェに足を運ぶ人も多い。SNSに映える写真や動画の撮影もできるよう内装やメニューにこだわる猫カフェもある(写真2)。


北京市以内の猫カフェ(出所:ジェトロ撮影)

「独身の日」セールや「お一人様経済」にも影響

ところで、中国に独身者はどれぐらいいるのか。「中国統計年鑑2017」によると、2016年の15歳以上の未婚者数は2億1,812万人、離婚者数は2,199万人に達した。独身者はおよそ2億4,000万人に上り、うち20代が2割を占めた(注7)。中国の若者世代の恋愛観は「仏系」と称されるほど、必ずしも恋愛に積極的ではない。「空巣青年」に限らず、中国では寂しさや孤独感を抱く若者世代が少なくないようだ。

中国では単身者を連想させる「1」が並ぶ11月11日を「独身の日」としているが、前述のとおり、近年ではネットショッピングの販促日として知られるようになり、「独身の日」セールの経済効果は年々拡大している。そもそも独身の日にセールが行われるようになったことについて、天津社会科学院社会学研究所の張宝義所長は「若者の孤独感から生まれたものだ。若者が消費を通して自分の気持ちを紛らわしている」と指摘する(注8)。

また、若者世代の孤独感は「お一人様経済」の発展も促進させ得る。中国青年報社社会調査センターが18~35歳を対象に実施したアンケート調査によると、全体の67.6%が「外食する際に気まずさを感じている」という。1人で外食をするときには「手早く済ませたい」(回答率48.5%)、「目立たない席を選んで座る」(37.1%)、「注文量に戸惑う」(36.0%)という声が上がった。他にも、「お一人様のためにレストランの内装を変更する必要があると思う」と回答した人は71.5%に上り、そのうち21.5%は「非常に必要だ」と考えている。今後の中国では、大人数で円卓を囲み、大皿に盛られた中華料理と白酒を酌み交わすことのできる飲食店だけではなく、1人で気楽に食事をすることのできる飲食店も人気を集めるかもしれない。

若者世代の消費動向をつかみビジネスチャンスに

このように、若者世代のライフスタイルや心理状況、趣味、嗜好(しこう)は、中国経済やビジネスモデルに影響を与える。本稿では「90後」を中心とした中国の若者世代の消費動向に着目したが、2018年9月からは2000年代生まれの「00後」の第1陣が大学生活をスタートさせ、新世代の動向も注目される。「00後」を含めた若者世代のライフスタイルについては、ジェトロの調査レポートでも情報収集することができる。時代の流れとともに移り変わる若者世代の特性や流行を把握し、ビジネスチャンスとしていただきたい。


注1:
中華人民共和国国家統計局「中国統計年鑑2017」
注2:
優鋪「2018消費動向報告」
注3:
中国インターネット情報センター「第42回中国インターネット発展状況統計報告」
注4:
経済産業省「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」
注5:
北京青年報網2018年7月26日
注6:
東方財富網2018年7月17日
注7:
智研咨訊「2018‐2024年中国独身経済市場発展モデル調査研究及び投資動向分析報告」
注8:
中国青年網2017年11月30日
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
清水 絵里子(しみず えりこ)
2016年4月、ジェトロ入構。海外調査部海外調査計画課を経て、2017年6月より現職。

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