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デンマークで進むプラスチック使用削減の取り組み

2018年10月26日

デンマークでは、以前から環境保護に向けた政策に積極的に取り組んでおり、プラスチック商材を扱う企業も環境に優しい製品作りに取り組んできた。欧州委員会のプラスチック製品を規制する指令案発表を受けて、この流れは加速しそうだ。

プラスチック使用削減に積極的に取り組む政府

欧州委員会は5月28日、循環型経済への移行を促すことを目的とし、使い捨てプラスチック製品を規制する指令案を発表した(2018年6月5日ビジネス短信記事参照)。10品目の使い捨てプラスチック製品・素材およびプラスチックを使用した釣り具を対象とし、上市(市販)禁止や消費量の抑制を促すための製品要件やデザイン、ラベルの義務付け、などが提案されている。この法案が施行されれば、340万トンの二酸化炭素(CO2)排出量の削減に加え、2030年までに220億ユーロ(約2兆8,600億円、1ユーロ=約130円)規模相当の環境破壊が阻止できるほか、消費者全体で65億ユーロの支出削減につながるという試算もある。

デンマークは、このプラスチック規制に積極的な姿勢を見せる。2016年にはEUに対して化粧品へのマイクロプラスチック(注1)の使用禁止を提言するなど、かねて海洋生物保護や環境問題解決に向けた政策に取り組んできた。

国内の取り組みとしては、デンマークは1980年代からプラスチックボトルや缶のデポジット制度を始めている。店舗で購入した各ペットボトル飲料や缶飲料にデポジットマーク(注2)がついており、専用マシンに回収させると金額が払い戻される仕組みだ。

また近年、デンマーク政府は環境問題へ取り組む企業を支援しており、スタートアップの育成も行っている。リサイクルの促進や環境問題へ取り組むビジネスサポートを対象とした2億デンマーク・クローネ(約34億円、1クローネ=約17円)規模の出資ファンドを設立し、ビジネスのためのコンサルティングも行う。

企業も新しい取り組みに積極的

政府の後押しもあり、デンマーク国内においてプラスチック商材を使う企業も、環境問題へ向けた新しい取り組みを積極的に推進している。

1934年に設立されたデンマークの玩具大手レゴも、新しい取り組みを積極的に展開する企業の1つだ。レゴブロックは素材がプラスチックであるがゆえに、常に環境問題の課題に直面している。毎年約100万トンの二酸化炭素を排出し、そのうちの約4分の3が商品製造にかかる原材料に由来しているという。同社は2015から2016年にかけて、持続可能な原材料を開発する研究所を設置した。10億デンマーク・クローネを投資し、2030年までに主要商品とパーケージの原材料を既存のプラスチックから持続可能な代替材料に変換することを目標としている。現在、環境への負荷が小さいサトウキビなどの植物のからプラスチックを製造する試みが行われている。


サトウキビ由来のプラスチックで作られたレゴブロック(レゴ提供)

1981年に創業したネットーは、デンマーク国内に約500店舗、スウェーデン、ドイツ、ポーランドで合わせて約800店舗を構えるデンマークの大手ディスカウントスーパーマーケットチェーンだ。同社は世界自然保護基金(WWF)と提携し、2023年までに自社商標の商品のプラスチックのパッケージを、リサイクル可能にすることを目指している。2018年4月には、デンマーク中部に位置するフュン島の42店舗で、自社のプラスチックバッグにデポジット制を試験的に導入している。

デンマークにおけるプラスチックリサイクルの歴史は長く、素材メーカーもプラスチック規制に対する対策を進めている。レトベックプラストは、1973年に設立されたプラスチックのリサイクルのパイオニア企業だ。リサイクルプラスチックをベースとした製品開発から完成まで、プロセス全体を請け負う。現在、EUの掲げる目標である、プラスチックのリサイクル率70%以上を目指している。

プラスチック使用の削減については、ショッピングバッグなどの例が挙げられることが多いが、デンマーク企業の取り組みは幅広い。2013年設立のリマッチ(Re-Match)は、サッカーの競技場などで使用される人工芝のリサイクル企業だ。人工芝は平均寿命が8-10年ほどで、消費期限をすぎれば焼却、または埋め立てて廃棄されていた。この方法は、環境に負荷がかかるだけでなく、所有者は廃棄する際に料金を支払うためコストとなっている。リマッチは使用済み人工芝を回収し、高度な分離技術を使用して、新たな人工芝へ再生し製品化を行っている。同社は2018年2月、環境に大きく貢献するとして、国際サッカー連盟(FIFA)が同連盟の持つサッカー場に同社の再生人工芝を導入したと発表している。

日本においても、プラスチック削減が注目されている中、デンマークの先進事例が参考になるだろう。


人工芝を再活用するリマッチ(同社提供)

注1:
大きさが5mmより小さなプラスチック片。1次マイクロプラスチックは角質や汚れを落とすため洗顔料、歯磨き粉,ボディーシャンプーなどのケア商品に含まれる。2次マイクロプラスチックは、波や岩、砂にすり減らされたり,物理的な摩耗によって削られて小さくなったもの。
注2:
デポジットシールにより、払戻金額は異なる(DKKはデンマーク・クローネの略)。
シールA = DKK 1.00(ガラス瓶およびアルミニウム缶は1リットル未満)
シールB = DKK1.50(プラスチックボトル1リットル未満)
シールC = DKK 3.00(すべてのボトルと1〜20リットルの缶)
執筆者紹介
ジェトロ・デュッセルドルフ事務所
安岡 美佳(やすおか みか)(在デンマーク)
京都大学大学院情報学研究科修士、東京大学工学系先端学際工学専攻を経て、2009年にコペンハーゲンIT大学でコンピュータサイエンス博士取得。2006年よりジェトロ・コペンハーゲン事務所で調査業務に従事、現在コレスポンデント。

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