電子商取引における留意点:シンガポール

質問

シンガポール向けにインターネットを通して物品を輸出・販売することを検討しています。留意点を教えてください

回答

シンガポールでは、個人向けの小口の貿易取引であっても輸入が禁止されているものは輸入できません。輸入禁止品目には、チューインガムなどのように日本では一般的に問題ないと思われる物品もあります。Eコマースやネット通販、オークションサイト等による小口の国際取引についても、シンガポールの各種規制について事前によく確認してから輸出・販売等を行うことが重要です。

I. 小口貨物の通関制度

シンガポールで物品等の輸入を行うためには、会計企業規制庁(Accounting and Corporate Regulatory Authority: ACRA)または関連する個別企業登録番号(Unique Entity Number: UEN)発行機関に登録して、UENを取得します。続いて、シンガポール税関(Singapore Customs)にてアカウントを登録し、現地貨物運送業者(Freight Forwarders)や申告代理人(Declaring Agents)などシンガポール税関に登録された通関士を利用して通関手続きを行う必要があります[シンガポール税関法(Customs Act)第31条および第 32 条]。しかし、国際郵便(民間の国際宅配便を含む)による輸入の場合、以下の「輸入管理品目」に該当しない郵便物であれば、荷受人が通関許可を取得する必要はありません(詳細は下記「II. 国際郵便による輸入手続き」を参照)。

  1. 輸入禁止品目
    「チューインガム」や「噛みタバコ・タバコ類似品」のような物品はシンガポールへの輸入が禁止されています。

    輸入規制品目(シンガポール)」をご参照ください。

  2. 輸入管理品目
    「コンパクトディスク(CD)」や「化粧品」のような物品は、シンガポールの所管当局の輸入ライセンスが必要です。

    輸入規制品目(シンガポール)」をご参照ください。

II. 国際郵便による輸入手続き

国際郵便または民間の国際宅配便による輸入品は、すべて入国管理局(Immigration and Checkpoints Authority: ICA)で管理され、シンガポール・ポスト(SingPost)で保管されます(シンガポール税関ではないことに注意してください)。
ICAでは、輸入品が、関税等の課税対象品目か、または、前述の管理品目かどうかを確認し、内容に応じて以下の1~4にある手順で輸入を許可します。なお、関税等の課税対象品目は、(1) 酒類、(2) タバコ製品、(3) 自動車、(4) 石油製品とバイオディーゼル混合燃料の4分野のみです。課税品目の詳細は、「課税品目一覧外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(シンガポール税関)をご参照ください。

  1. 非課税品目・非管理品目
    課税品目にも管理品目にも該当せず、CIF価格が400シンガポールドルを超えない国際郵便はGST(Goods and Services Tax, 消費税)納付が免除されます。コマーシャルインボイスが添付されている場合、SingPostにより荷受人に配送されます。コマーシャルインボイスが添付されていない場合、ICAにより保管され、SingPostから荷受人に対して、本人か正式な代理人がSingPostのICAカウンターにて郵便を受け取るよう通知書が送付されます。受け取り時には、通知書とインボイスの提出が必要で、ICAの担当者の確認後、荷受人に渡されます。通知書とインボイスをICAにファックス(ファックス番号:6842 7606)して、有償でSingPostに配送してもらうことも可能です。
    課税品目にも管理品目にも該当しないものの、CIF価格が400シンガポールドルを超える国際郵便貨物はGSTの課税対象です。コマーシャルインボイスが添付されている場合、SingPostにより荷受人に配送され、受け取り時にGSTを納付したうえで荷物を受け取ります。コマーシャルインボイスが添付されていない場合、ICAにより保管され、SingPostから荷受人に対して、本人か正式な代理人がSingPostのICAカウンターにて郵便を受け取るよう通知書が送付されます。受け取り時には、通知書とインボイスの提出が必要で、ICAの担当者の確認と荷受人によるGSTの納付後、荷受人に渡されます。通知書とインボイスをICAにファックス(ファックス番号:6842 7606)して、有償でSingPostに配送してもらうことも可能です。
  2. 非課税品目・管理品目
    国際郵便貨物に管理品目が含まれている場合、課税品目に該当するかどうかにかかわりなく、ICAにより保管され、その品目の担当部局による検査の対象になります。SingPostから輸入者に対して、担当部局からの承認を得るためのオンライン申請をするよう電子メールが送付されます。担当部局によっては、輸入者に対して、通関許可の手続きを開始し、その管理品目の重要性を説明するよう求める場合があります。その場合、担当部局は輸入者にその旨通知し、その後、輸入者は通関許可を申請しなければなりません。通関許可を取得(求められた場合のみ)し、担当部局からの承認が得られた後、郵便貨物はICAによる保管は解除され、SingPostにより輸入者の住所に配達されます。
    CIF価格が400シンガポールドルを超えない場合はGSTが免除されます。CIF価格が400シンガポールドルを超える場合はGSTの課税対象です。受け取り時にGSTを納付したうえで荷物を受け取ります。
  3. 課税品目・非管理品目
    課税品目に該当するものの、管理品目には該当しない場合、国際郵便貨物はICAにより保管され、SingPostから荷受人に対して、本人か正式な代理人がSingPostのICAカウンターにて郵便を受け取るよう通知書が送付されます。受け取り時には、通知書とインボイスの提出が必要で、ICAの担当者の確認とICAへの荷受人によるGSTおよび関税の納付または通関支払許可(該当する場合)の提示の後、荷受人に渡されます。なお、CIF価格が400シンガポールドル以下であってもGSTの課税対象です。
  4. 課税品目・管理品目
    国際郵便貨物に管理品目が含まれている場合、それが課税品目に該当するかどうかにかかわりなく、ICAにより保管され、その品目の担当部局による検査の対象になります。SingPostから輸入者に対して、担当部局からの承認を得るためのオンライン申請をするよう電子メールが送付されます。担当部局によっては、輸入者に対して、通関許可の手続きを開始し、その管理品目の重要性を説明するよう求める場合があります。その場合、担当部局は輸入者にその旨通知し、その後、輸入者は通関許可を申請しなければなりません。通関許可を取得(求められた場合のみ)し、担当部局からの承認が得られた後、郵便貨物はICAによる保管は解除され、SingPostにより輸入者の住所に配達されます。なお、CIF価格が400シンガポールドル以下であってもGSTの課税対象です。
  5. GSTと関税
    国際郵便貨物が非課税品目の場合、CIF価格が400シンガポールドルを超えると、GSTのみが課税されます。GTSの課税率は7%で、課税価格または最終販売価格にこの課税率をかけてGSTの課税額が計算されます。課税品目の場合、CIF価格に関係なく、GSTと関税が課税されます。
    課税品目と課税額については文末のシンガポール税関サイト「課税品目リスト」をご参照ください。

III.Eコマースの形態に応じた注意事項

  1. 日本のネット通販サイトに商品などを登録し、シンガポールからオーダーがあるごとに日本の倉庫から国際郵便で輸出する場合

    輸入禁止品目を除き、基本的に輸出することが可能です。

  2. シンガポールのネット通販サイトに商品などを登録し、シンガポール国内からオーダーがあるごとに日本を含むシンガポール国外の倉庫から国際郵便で輸出する場合

    シンガポールの通販サイトへの出店に際しては、それぞれのサイトによって運営・出店方法が異なります。日本で会社登録している法人が商品販売できるケースもあれば、法人・個人の双方が出店できるケースもあります。詳細に関しては各モールへ直接ご確認ください。

    なお、シンガポールにあるサーバーへ情報を登録するだけでは、恒久的施設(Permanent Establishment: PE)認定はされないため、シンガポールにおける所得税(Income Tax)の課税対象にはなりません。

  3. シンガポールのネット通販サイトに商品を登録し、シンガポール在住者からサイトを通してオーダーがあるごとに、シンガポールの倉庫から発送する場合

    非居住者である日本法人が、シンガポールの物流会社等に対して、シンガポールにおける貨物の保管および発送を依頼する場合、所得税の課税対象として登録(PE認定)が必要となる可能性もありますので、十分ご注意ください。
    一般的に、貨物の保管、引き渡しのためにのみ、シンガポールにある物流会社の倉庫に商品を保管することはPE認定されないとされています(日本シンガポール租税条約第5条4項)。
    ただし、シンガポール税務当局の判断によりますので、計画段階で会計事務所やシンガポールの税務当局に確認してください。
    シンガポールには、ゼロGST倉庫制度(商品が関税の対象品目に該当しない)と、ライセンス倉庫制度(商品が関税の対象品目に該当する)があり、どちらも商品がそれらの倉庫内にある限り、GSTと関税はかかりませんが、シンガポール在住者のために倉庫から出庫するたびに、該当する税金の支払いが必要になります。

    シンガポールにおけるPE認定および所得税については、文末のジェトロウェブサイト「税制(シンガポール)」をご参照ください。

  4. シンガポールのサーバーで通販サイトなどを運営する場合
    シンガポールでは、情報通信省に属する情報通信メディア開発庁(Infocomm Media Development Authority: IMDA)がインターネット、テレビ、映画等の各種メディアを規制・監督しています。シンガポールのサーバーでサイトを運営するためにはMDAによる事前承認が必要になります。

詳細は文末のジェトロウェブサイト「外資に関する規制」および「輸出入手続き:シンガポール」をご参照ください。

IV. その他の留意点、参考情報など

  1. 中古品の取り扱いについて
    中古品の取り引きを行う場合には、中古品取扱事業者法(Second Hand Dealers Act)が適用され、警察(Singapore Police Force: SPF)から中古品販売ライセンス(Secondhand Goods Dealers License)を取得する必要があります。オークションサイトによっては中古品の販売を許可していないため(例:LAZADA)、オークションサイトに出店して中古品の販売をすることを検討している場合は、サイト運営者に事前にご確認することを推奨します。
  2. 消費者保護など
    シンガポールでは、包括的なPL法はありませんが、個別法やコモンローにて製造者責任を認めているほか、消費者保護法[Consumer Protection (Trade Descriptions and Safety Requirements) Act]や不当表示法(Misrepresentation Act)などの法令・規定があります。取り扱う品目などによって適用が変わってきますので、現地法制度などを十分ご確認ください。

関連機関

シンガポール税関外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
課税品目リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
インターネットでの購入/郵便小包外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
入国管理局(Immigration and Checkpoints Authority: ICA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
シンガポール・ポスト(SingPost)(Immigration and Checkpoints Authority: ICA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
シンガポール警察(Singapore Police Force)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
中古品販売ライセンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関連法令

参考資料・情報

ジェトロ:
輸入規制品目(シンガポール)
税制(シンガポール)」
外資に関する規制(シンガポール)
輸出入手続(シンガポール)
調査レポート
小口貨物の通関・関税制度(シンガポール)PDFファイル(541KB)
貿易・投資相談Q&A
小口貨物の通関制度:シンガポール」
オンラインによる販売について(シンガポール)
非居住者が保有する貨物の通関制度(シンガポール)

調査時点:2021年2月
最終更新:2021年3月

記事番号:W-150802

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