日本からの輸出に関する制度 水産加工品の輸入規制、輸入手続き

米国の輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2017年11月

東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、米国政府は、日本で出荷制限措置がとられた品目について、県単位で輸入停止措置を講じるとともに、その他の品目については、米国の食品安全基準に違反していないことの証明または米国側でのサンプル検査などを課しています。輸入警告(インポートアラート)は米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)のウェブサイトで公開されていますが、その内容は頻繁にアップデートされているため、注意が必要です。

2. 動植物検疫の有無

調査時点:2017年11月

米国に輸入される水産加工品については、FDAが管轄し、米国連邦規則集第21巻パート123(21CFR123)およびバイオテロ法などの法律が適用されます。そのため輸入通関地において、FDAによる食品検査が行われます。さらに当該検査を効率的、より確実にすることを目的として、貨物が米国に到着する前の一定期間内に、FDAに対し貨物の重要情報を輸出ごとに通告する義務が課されます。

米国への水産加工品の輸入には、米国農務省・動植物検疫局(APHIS)からの輸入許可取得は課されていませんが、水産物としての規制に加え加工食品としての規制も適用されますので注意が必要です。また、品目ごとに要件が異なる場合があるため、FDAのウェブサイトなどで詳細の確認が必要です。

関連リンク

関係省庁
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
バイオテロ法(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(410KB)
米国連邦規則集
その他参考情報
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
ジェトロから入手できる主な情報
公益社団法人日本水産資源保護協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

3. 残留農薬規制

調査時点:2017年11月

残留農薬に関する規制は該当しませんが、残留動物用医薬品規制の対象になります。

米国に輸入される水産加工品には、FDAが承認した動物用医薬品に限り使用することができます。ただしFDAは、特定の使用方法に限定して薬品を承認しているので、養殖などで薬品を使用する場合には、FDAが承認している動物医薬品を、指定の目的、対象、条件で使用しなければなりません。

さらに、FDAが水産物中の医薬品成分の残留許容量を設定している場合には、それに従う必要があります。動物用医薬品の残留許容量は、医薬品ごとに各可食部の残留許容量が規定されています。FDAが承認している水産物向け動物医薬品とその使用方法および残留許容量の詳細については、FDAの動物医薬品データベースを参照してください。水産加工品の原材料の供給者(サプライヤー)が、以上のようなFDAの水産物適用規制を準拠していることが要件となります。

4. 重金属および汚染物質(最大残留基準値/禁止)

調査時点:2017年11月

食品に含まれる有毒および有害な物質の許容量は、食品医薬品化粧品法第406条に基づく規則で定められています。現在、FDAが規則で食品に関して暫定残留許容濃度を定めている物質は、ポリ塩化ビフェニール類(PCB類)のみで(21CFR Part109.30)、ヒ素および有害重金属などの汚染に関する規制については、総括的な法的水準は決められていないのが現状です。それぞれの有毒・有害物質が長期的に健康に与える影響は不明確とし、有害な物質の含有量はなるべく避けることが望ましいとされています。

(1)有毒・有害物質の欠陥対策レベル
FDAは、有毒・有害物質に関する欠陥対策レベルをガイダンス「ヒト向け食品および動物飼料に含まれる有毒・有害物質に関する対策レベル」として2000年に発行しています。同ガイダンスでは、19種類の有毒・有害物質について、食品と飼料の品目別に対策レベルの値(ppmなど)が設定されています。各物質の欠陥対策レベルの値は食品によって異なりますが、同ガイダンスでは、生鮮・冷凍・加工の魚介類と甲殻類などにおいては、水銀について可食部で1ppmと設定しています。
なお、これらガイダンスには規則のような法的拘束力はありませんが、FDAが法的措置を発動するかどうかを決定する際の基準と位置付けられています。従って、有毒・有害物質の含有量が欠陥対策レベルを下回っている必要があります。
(2)トータルダイエットスタディに基づく参考指標
米国では、1991年よりさまざまな食品に含まれる物質(ヒ素および有害重金属などを含む)のトータルダイエットスタディ(Total Diet Study:TDS)が実施されており、FDAのウェブサイト上で結果が公開されています。これは法的に設定された許容量や基準値ではありませんが、米国で消費されているさまざまな食品中におけるヒ素や有害重金属などの含有量について、最小値、最大値、平均値などを知ることができるため、参考指標として有効利用することができます。2006年から2013年に行ったサンプリングでは以下のような結果となっています。
ここでは一例として、まぐろ缶詰について取り上げます。
前述(1)のとおり、水産物についてはFDAの有害物質のアクションレベルが設定されており、水銀については1ppmとされています。1ppm=1mg/kgであるため、次の水銀の含有量は最大値でもアクションレベルを下回っています。
まぐろ缶詰に含まれるヒ素および有害重金属などの参考指標(mg/kg)
名称 最小値 最大値 平均値
ヒ素 0.349 1.900 0.999
水銀 0.035 0.509 0.136
カドミウム 0.009 0.028 0.015
0.000 0.600 0.300
0.000 0.019 0.001
マンガン 0.000 0.370 0.020
亜鉛 3.300 7.300 4.900
(3)その他
米国では連邦レベルより州レベルでさらに厳しい規制を設けている場合がありますので、詳しくは、州、地方自治体のウェブサイトにて確認してください。
一般的に、カリフォルニア州は、全米で最も食品に対する規制が厳しいとされています。具体的には、カリフォルニア州法プロポジション65(安全飲料水および有害物質施行法:Prop.65)の警告表示に係る改正への対応が、2018年8月30日までに必要になっています。それ以降は、改正された新規則に従って警告表示を行う必要があります。なお、生殖毒性があるとされるビスフェノールA(BPA)に関しては、当該容器に所定のラベル表示を行うことで消費者などに警告するよう求めています。BPAに関しては、緊急法に基づく暫定措置(全体警告を認め、個々の商品もしくは商品棚への警告の義務は免れていた)が取られていましたが、その期限は2017年12月30日までで終了しているため、2017年12月31日以降は個々の商品もしくは商品棚への警告表示が必要となります(全体警告は認められません)。

5. 食品添加物規制

調査時点:2017年11月

米国に輸入される水産加工品に含まれる食品添加物に関する規制は、合衆国法典第21巻348条(21U.S.C.348)Food Additivesに基づいて行われています。食品添加物の定義は、合衆国法典第21巻321条(21U.S.C.321)により規定されており、食品への直接または間接に使用が認められている食品添加物は、米国連邦規則集第21巻パート172 から180(21CFR172~180)に列挙されています。

米国において新規の食品添加物を使用する場合には、GRAS通知、食品添加物申請(Food Additive Petition(FAP))をFDAに申請し、事前許可を得る必要があります。

なお、製造/加工、梱包、保管または輸送に用いられる材料を構成している物質であって、食品の性質に技術的な影響を与えないものを食品接触物質と呼び、食品添加物として定義しています。食品接触物質に関する情報は、後述の「食品包装規制」の項目を参照してください。

着色料に関する規制は、合衆国法典第21巻379条(21U.S.C.379)に基づいて行われています。使用することができる着色料は、日本で許可されているものとは異なるので、FDAウェブサイト上の「使用が許可されている着色料一覧(Color Additive Status List)」と「米国連邦規則集第21巻パート70~82(21CFR70~82)」を事前に確認してください。

6. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)

調査時点:2017年11月

製造/加工、梱包、保管または輸送に用いられる資材を構成している物質であって、食品の性質に技術的な影響を与えないものを食品接触物質(Food Contact Substances:FCS)といいます(食品医薬品化粧品法第 409 条(h)(6)、合衆国法典 21U.S.C.348(h)(6))。FDAは、食品接触物質を間接添加物(Indirect additive)として、食品添加物として定義しています。なお、梱包などの資材を構成している成分が溶出し食品に移るかどうかの判断は、資材の製造者にゆだねられています。

食品接触物質は、FDA 規則に合致している物質(以下(1)参照)でない場合は、FDA への食品接触物質通知(以下(2)参照)が必要です。

(1)食品接触物質の規制の適合確認
以下の規則に当てはまらない食品接触物質は、FDAへの食品接触物質通知をしなければなりません。
  • 間接添加物(連邦規則集 21CFR Part174~179)
  • GRAS (連邦規則集 21CFR Part182,184,186)
  • 1958 年以前に容認されている物質(Prior Sanctioned Material, 連邦規則集 21CFR Part181)
  • 規制の適用除外になる物質(Threshold of Regulation Exemption, 連邦規則集 21 CFR Part170.39)
(2)FDAへの食品接触物質通知(Food Contact Substance Notification
食品接触物質の製造業者あるいは供給業者は、市販の 120日以上前にその物質の情報をFDA に通知しなければなりません(連邦規則集 21CFR Part70.100)。通知から120日の間に FDA から異議申し出がない場合はその通知が有効となり、食品接触物質の使用が合法となります(連邦規則集 21CFR Part170.104)。ただし、食品接触物質通知は、申請した製造者に対して有効となるものであるため、同じ物質であっても申請した製造者以外の製造者には、通知の効果は及びません。提出方法および提出先については次の申請フォーム FDA3480 を参照してください。
なお、カリフォルニア州におけるビスフェノールA(BPA)の警告表示については、「米国の輸入規制」「4. 重金属および汚染物質(最大残留基準値/禁止)」を参照ください。

関連リンク

関係省庁
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根拠法等
米国保健福祉省・食品医薬品局(FDA)から入手できる主な情報
その他参考情報
FDA / Packaging & Food Contact Substances(FCS)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
申請フォーム FDA3480(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(95KB)
間接的食品添物データベース(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
食品接触物質 データベース(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロから入手できる主な情報

7. その他

なし