外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2024年03月11日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

企業の形態によって、設立手続きや要件が異なる。
法人格を持つ企業(株式会社、有限会社)の設立には、設立証書、定款、登記申請書を商業登記所に提出するほか、事前に一定の金額を資本として指定銀行に預けておくこと、事前に会社名について承認を得ておくことなどが必要。
スイス国籍者が法人格を持たない企業を設立する場合、政府のオンライン会社設立デスク「スタートビズ」を利用し、簡易に設立することも可能。
スイス国籍を持たない者が設立、もしくは代表者として企業の運営に当たる場合は、事前に適切な滞在許可と就労許可の取得が必要。

スイスの会社法にあたる「連邦債務法」では、企業を大きく2つに分類している。法人格を持つ企業(株式会社AG/SA、有限責任会社GmbH、支店など)、および法人格を持たない企業(パートナーシップなど)である。スイス憲法は、外国人を含むすべての個人および法人に、スイスにおける事業の設立と活動に関する権利を認めている。しかし、スイス国籍を持たない者が企業の設立者になる場合や、代表者として企業の運営にあたるなどの場合には、当該人物は事前に適切な滞在許可と就労許可を取得しておく必要がある。

企業形態

会社設立の手続き、設立要件、利用できる優遇税制などについては、企業の形態によって異なる。スイスで設立可能な会社の形態としては、法人格を持つ株式会社(ジョイント・ストック・カンパニー:AG)、有限責任会社(GmbH)、支店と法人格を持たないパートナーシップ、合名会社、個人事業主などがある。それぞれの概要については、スイス政府発行資料「事業展開ハンドブック」参照。

スイス・グローバル・エンタープライズ:事業展開ハンドブック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます第5章(会社の設立と運営)参照。

企業の設立手続き

  1. 手続き

    発起人、会社名などを記載した設立証書(公証人の前で作成)と定款を作成し、登記申請書とともに、会社の所在地にある商業登記所に提出する。その際、払込資本金を所定の預託金融機関(銀行)に事前に預けておくことが必要。最低資本金の額は企業の形態によって異なり、AGの場合は10万スイス・フラン以上、GmbHの場合は2万スイス・フラン以上必要。
    企業名や商号については、企業形態によって必要な条件を満たしていれば自由に選択できるが、過去の同一企業名での登録の有無を、連邦登記所で事前に確認しておく必要がある。連邦登記所には、商号確認用データベース「Zefix」も用意されている。

  2. スタートビズ(StartBiz)とイージィガブ(Easygov

    2010年4月15日に経済省経済事務局(SECO)が導入したオンラインでの会社設立デスク「スタートビズ(StartBiz)」により、オンラインで企業設立が可能となった。
    さらに、2017年11月「StartBiz」の拡張版として、「イージィガブ(Easygov外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」の運用が開始された。従来は、10以上ある関連当局に必要書類をそれぞれ提出する必要があったが、「Easygov」上で必要な情報を登録すれば、登記簿、VAT、保険等の申請に必要な書類を、PDF形式で自動生成することが可能となった。

  3. スイスでの事業展開における留意事項

    スイスでの事業展開で留意すべき点としては、州政府の権限が強いため、設立した企業の税務・労務、駐在員の労働・滞在許可など様々な面で、州政府が関与することである。多くの州政府が投資誘致に積極的であり、それぞれ独自のパンフレットや資料を用意して投資誘致担当者を置いたり、弁護士の紹介や労働許可取得手続きなどのワンストップ・サービスを実施したりしている。進出先の州が決まっている場合は、当該州の投資誘致部局、決まっていない場合はスイス外国企業誘致局などに相談することで、手続きが円滑に進むことも多い。その際には、明確で具体的な「ビジネスプラン(事業の方針や戦略)」を提示することが望ましい。

    なお、スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語で、登記等の手続きは進出先の州の公用語で行わなければならない。

関連機関、関連ウェブサイト

スイス外国企業誘致局外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
所在地:〒106-8589 東京都港区南麻布5-9-12 スイス大使館内
Tel:03-5449-8408

スイス政府中小企業向けポータルサイト "SME Portal外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

スイス連邦商業登記所:

外国企業の会社清算手続き・必要書類

外国企業の清算手続きについては、企業の法的形態によって異なる。個人企業であれば商業登記簿から削除すれば済むが、法人格を持つ企業(株式会社、有限会社、協同組合など)では、段階的な手続きが必要。

個人企業の場合

商業登記簿に登録されている個人企業が清算する場合は、登録を削除するだけでよい。ただし、起業家は登録を削除するにあたり、所管の登記所に事情説明を伴う削除要請書を提出しなければならない。

株式会社、有限会社、協同組合が廃業する場合

株式会社、有限会社、協同組合が廃業するためには、段階的な手続きを踏み、最後に商業登記簿から削除されて完了する。廃業する場合の手順は次のとおり。

  1. 公署形式により認められた廃業決議
    公証人の立会いの下で廃業を決議し、公証人が公正証書を作成する。
  2. 清算人を選任
    清算人は、解散登録申請書を商業登記所に提出する。
  3. 債権者への清算の通知
    清算人は、会社を清算する旨、スイス商業官報(SOGC)に3日間連載する。
  4. 財産目録、決算書の作成
    清算人は、会社の財産目録を作成し、決算書をまとめる。会社が保有する財産が、負債の弁済には十分でない場合、清算人はその旨を裁判所に通知し、裁判所は当該企業の破産を宣言する。
  5. 負債の弁済後に残った余剰金
    清算人は、会社への出資額ならびに会社での地位・貢献度等に応じ、共同出資者に配当する。協同組合の場合、定款で余剰資産の出資者間での配当について定められていなければ、同余剰金を協同組合、もしくはその他の公益目的に充てなければならない。
  6. 商業登録簿からの削除
    債権者への3回目の公告から少なくとも1年を経過した時点で、会社の清算が完了している限りにおいて、清算人は商業登記所に対し、商業登録簿から当該会社の削除を申立てることができる。

債務超過による破産の手続き

会社が破産手続きをとるか否かについては、裁判官が決定し、破産が決定すれば、破産執行局と裁判官が緊密に連携して破産手続きが進められる。破産には自己破産、および債権者による債権回収訴訟によって、裁判所から破産宣告を受ける場合の2通りがある。

  1. 自己破産の場合
    会社が債務過多であることを認めるに足る深刻な事由がある場合、当該会社の取締役会は中間決算を行い、監査機関に提出して審査を受けなければならない。債権への弁済不能が明らかになった場合、取締役会の代表は管轄権のある裁判所に出頭し、支払不能を宣言して破産手続きを行う義務がある(破産判決を回避するため、債務者は、場合によっては債権者と和解することができる)。
  2. 債権者が債権回収の訴訟を起こす場合
    債権者が債権回収の訴追手続きを開始するにあたり、債権者は、訴追執行局にある所定の訴追申立書に必要事項を記入して同局に提出する。訴追執行局は本申し立てを受理後、直ちに支払い命令を作成して、債務者宛に送達する。この支払命令を受け取った債務者は、[1]20日以内に支払う、[2]負債に異議を唱える、[3]何もしない、のいずれかの方法を取ることができる。債務者が支払い命令に異議を申し立てない場合は、債権取り立ての第2段階、すなわち破産の手続きに入る。同手続きは、まず裁判官の手に委ねられ、その後は会社が自己破産宣言をした時と同じ経緯をたどる。
    なお、債権回収の訴訟によって、会社に破産宣告判決が下された場合、その時点で、会社は自己資産の管理権を失う。破産人は、破産執行局の要請に応じて会社の資産を明らかにし、所管の破産執行局に破産手続きを委ねる。

通常清算手続きと略式清算手続き

差押え資産が清算費用(5,000~1万スイス・フラン)に満たない場合、破産執行局は破産による会社の廃止を決定し、官報で公告する(訴追法230条)。10日以内に債権者からの清算手続きの申立てがなく、かつ破産手続きにかかった費用を債権者が保証する場合、破産手続きによって会社は廃止となり、商業登録簿から削除される。

破産によって廃止とならない場合の清算手続きには、通常と略式の2種類が存在する。重大な破産の場合は、通常の清算手続きがとられるが、多くの場合は、略式の清算手続きがとられる。略式清算は、破産による廃止ではない場合に、最も頻繁に使われる破産形態である。裁判所に略式清算手続きを提案するのは、破産執行局である。
なお、通常清算と略式清算の大きな違いは、前者では債権者集会が間隔をあけずに2度開かれ、債権者清算手続きが監視・確認されるのに対し、後者では債権者集会は行われない(関連法:負債・破産に関する訴追法221条と後続条項)。

略式清算手続き
  1. 目録の作成、差押え資産の保全。
  2. 債権者に通知。
  3. 順位決定一覧書(会社が背負う負債のすべてを網羅した確定債権リスト)の作成。
  4. 清算の執行者は、会社の資産を競売にかけるか、話し合いにより売却する。
  5. 執行者は、会社の清算から得られた金銭の配当表を作成し、最終的な清算書を策定する。第一に弁済されるのは破産手続き費用であり、次に各債権者が売却金の一部を受け取る。配当は、優先順位に従って行われる。全額弁済されなかった債権者には、その差額に対する弁済欠如金証が交付される。
  6. 裁判所が当該会社の破産終結を宣言して官報にその旨を公告する。会社は商業登録簿から削除される。

出所:チューリッヒ州公証人業務監督官(連邦経済省SECO中小企業ポータルサイト資料)

中小企業向けポータルサイト:企業廃業について "End of the company : Is it time to shut down?外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

その他

特になし。