外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2023年11月10日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

1. 資本金、2. 投資の実行額認定、3. 支店・子会社の設立、4. 取締役と支配人、5. 登記の各項目について、規則がある。

  1. 資本金
    商法の適用を受ける法人として資本金の限度が定められているのは、有限会社(Sociedad de Responsabilidad Limitada:S.R.L.)のみ。合名会社(Sociedad en Nombre Colectivo:S.N.C.)、合資会社(Sociedad en Comandita:S.C.)、株式会社(Sociedad Anonima:S.A.)には、資本金の限度額が設けられていない。
    1. 資本構成
      2017年12月29日付官報第41310号で公示された、生産的な外国投資に関する法律により、外国投資における資本構成は、設備、中間財、またはその他の財、および生産プロセスの開始に必要なその他の有形資産から成る、100%国内資本でなければならないと規定された。
    2. 最低払込み金額
      現在、金額は米ドルではなく、ユーロおよび人民元で表示されている。最低払込み金額は80万ユーロまたは650万人民元、または、同等の他の外国通貨とされている。これらの金額は、以前定められていた100万米ドルに近い。
    3. 投資額の決定
      外国投資の実質価格の決定においては、その登録のために、外国人投資家の各会計年度に実際に支出された企業の資本を構成する項目が計算される。
    4. 期間の短縮
      新たな法律は、初期投資額の外国送金を実施するために、外国投資が国内に留まるべき期間を5年から2年に短縮した。
    5. 利益または配当金の送金
      会計年度1年目以降の本社への利益または配当金の送金額を、80%から100%に増額した。ただし、不可抗力や厳しい経済状況の場合のみ、内閣府は60%から80%の間で減額可能としている。
    6. 外貨による納税
      新たな法律は、企業が収入の70%以上を伝統産品の輸出または鉱業活動により得ている場合、税金の支払いを外貨で行わなければならないと定めている。
    7. 制裁
      制裁金はUST(制裁のための課税単位)でもUT(課税単位)でもなく、投資の割合を基に計算される。同様に、違反により生じる被害の深刻さに応じて、最大で投資額全額の2%までの制裁金を科すと定めている。
    8. 構成要素
      制憲議会が承認した法律によると、外国企業は、国内生産構造の発展に貢献することを目指して、国産品、特に公共生産部門および社会的・協同的財産の調達を優先させることが奨励される。外国企業の社会的責任行動は、外国企業に付与されるインセンティブを調整する規制を策定する際に考慮される。
    9. 優遇措置
      外国投資には、以前の法律にはない10の優遇措置がある。税控除、加速減価償却、公的機関による商品の購入、税還付、関税免除、免税、特別与信条件、公共サービスの特別料金、国によって管理されている中間財または原料への優先的アクセス、税安定の継続期間、および大統領が手配するその他のものを含む。
  2. 投資の実行(登録)額認定
    1. 投資が通貨の提供で行われる場合、それが現地通貨ボリバルで実行される必要があったとしても、投資額は外貨で登録され、銀行や金融機関の発行する為替取引計算書で明らかにされる。
    2. 投資が商品や物理的出資で行われる場合、輸入品の商業送り状と独立営業の公認会計士によって監査された正当な価格評価によって、投資額が明らかにされる。
    3. 内国人投資家または混合企業が所有する株を買う場合は、外国人投資家が購入する株の代金支払に充てるために必要とされ外貨の金額が投資額である。
    4. 証券取引所を通じて上場株を購入する場合、投資額は、株取引が行われた日付に証券取引所が発行する証明書または受領書に、通貨ボリバルで表示されている価格を外貨に換算したものである。また投資家は、各年末まで保有した投資を登録し、毎年その登録を更新しなければならない。
    5. その他、再投資、債権の資本繰入れなど、外国人投資家が利用できる権利に基づいて、通貨ボリバルで行われる投資は、投資が実行されるときの実勢為替相場を適用して登録される。
  3. 子会社・支店の設立
    1. 母体となる外国企業本社(Matriz)が企業における決定権を事実上掌握し、総資本金の50%以上を本社が所有している会社は、子会社(FilialまたはSubsidiaria)と認定される。外国企業は、ベネズエラ国内に子会社を作る権利を有し、管轄当局に対する直接投資額の登録額変更を行うことなく、単純に資産を分割することで子会社を設けることができる。
    2. 「商法(Codigo de Comercio)」第354条は、外国企業による支店の開設を認めている。子会社の場合は、国内企業と同じく、商法に定められた規定に基づいて法人が設立される。支店の場合は、支店開設所在地の登記所に登録した後、本国の法律に従った会社設立関係書類(会社定款を含む)をもって管轄当局に手続きをする。
  4. 取締役と経営支配人
    理事、取締役、その他の管理職ポストに外国生まれの投資家を指名する権利は、内国投資家が持ち、常に憲法の趣旨に従って行使するとともに、任命と解任についても、内国投資家の役割とされている。
  5. 外国投資の登記
    経済財務貿易省が国内における外国投資の管理を行う。同省は、すべての外国投資登記を取りまとめる役割を担い、関係機関に対して、法律に従って登記がなされるよう要請することができる。国内企業および外国企業は、最初の投資登記以降に実施されるいかなる追加投資についても、管轄当局への届け出が必要である。

外国企業の会社清算手続き・必要書類

1. 解散、2. 清算、3. 登録削除、4. 労働者解雇、5. 配当金の送金の各項目について、規則がある。

  1. 解散
    1. 総会での承認
      解散を決議するための総会の開催については、ベネズエラ国内に流通している現地新聞に公告しなければならない。総会の開催は、公告での告知から少なくとも5日以上の期間を空けなければならず、解散を議題としていることを明記しなければならない(商法第277条)。なお、定例総会、臨時総会といった総会の種類は問わない。
      定足数に関して特別な取り決めが設けられていない場合、解散決議を有効とするためには、資本金の所有比率4分の3以上に相当する参加者の出席が必要である。また、資本金の所有比率2分の1以上に相当する参加者が賛成する必要がある(商法280条)。
    2. 解散手続き
      総会で解散が承認された後、商法登記に解散登録を行い、現地新聞に公告しなければならない。解散登録を行うために必要となる書類は、次のとおり。
      1. 総会要綱の写し
      2. 総会議事録
      3. 代表者の身分証明書、外国人の場合はパスポートの写し
      4. 清算人が第三者の場合は清算人の身分証明書写し
      5. 外国企業の場合、管轄当局が発効した投資証明書

      なお、正式に解散の効力が発生するのは、現地新聞公告から30日経過した後となる。

  2. 清算
    組織が清算する資産を有する場合、清算手続きを行う。清算人は出資者に対し、資産を分けるための最終収支報告書を提出する。代表者は、これら清算にかかる支払いの責任を負う。
  3. 登録の削除
    1. 国家税関徴税統合庁(SENIAT)の登録削除
      清算手続き完了後、1カ月以内にSENIATに「会社活動停止通知」を申請する(「商法」第35条)。本申請は、内国税の地域統括局に行う。
      必要な書類は次のとおり。
      1. SENIATの定める用紙に記載された解散説明書類
      2. 直近の法人税支払書
      3. 納税者登録(Registro Unico de Información Fiscal:RIF)の写し
      4. 法的代表者の身分証明書写し
      5. 解散を承認した総会議事録の写し

      最後に、解散までの企業活動による法人税支払書を提出する。

    2. 地方政府の登録削除
      「経済活動ライセンス停止(Retiro o Cese de la licencia de Actividades Economicas)」を、市役所に申請する。市によって必要書類は異なる。
    3. 社会保険庁(IVSS)、住宅基金(BANAVIH)等における労働者登録削除
      労働者を解雇するにあたり、事業主が支払う社会保障費や住宅積立金などの支払い先へ、労働者登録の削除を申請する。被雇用者数に応じ、国家社会主義養成教育組織(INCES)などに対する労働者登録も削除する。
  4. 労働者の解雇
    2012年4月に施行された「労働および労働者組織法(LOTTT)」により、労働者を解雇する際は、労働基準監督局(Inspectoria del Trabajo)の許可を必要とする。解雇の理由は同法に定められているが、解雇理由に該当することを証明するための証拠を雇用者が揃える必要があり、かつ、それらの証拠を提示しても労働基準監督局が解雇を認めることは珍しいとされる。労使合意による辞職は認められており、実際には退職金を積み増すなど辞職時の条件を調整したり、次の就職先を斡旋するなど、可能な限り、労働者が訴訟を起こす可能性が低くなるような対応を雇用者サイドが取ることが多い。いずれにせよ、対応はケースバイケースのため、労務担当弁護士と相談の上、辞職条件を検討することとなる。

    参考:「労働および労働者組織法(LOTTT)」第79条「労働者の正当な解雇理由」

    1. 誠実性がなく、倫理に反する行動を取った場合。
    2. 犯罪行為を行った場合。
    3. 雇用者、代表またはその家族への悪口により、彼らへの敬意を大きく欠く行為を行った場合。
    4. 故意や不注意により、健全な労働もしくは安全を著しく損ねた場合。
    5. 過失や怠慢により、安全や労働環境を著しく損ねた場合。
    6. 最初の不当欠勤日から数えて、1カ月間で合計3日間の不当欠勤があった場合。病気は正当な理由とみなされるが、労働者は雇用者に対して、その旨の説明を行わなければならない。
    7. 故意に会社に損害を与えたり、重大な怠慢によって、会社の設備に損害を与えた場合。
    8. 生産方法等の企業秘密を暴露した場合。
    9. 深刻な労働義務の不履行があった場合。
    10. 仕事を放棄した場合。
    11. パワハラやセクハラ行為があった場合。

    なお、次の場合、仕事の放棄があったとみなす。

    • 労働時間中に、雇用者もしくは責任者の許可なく職場を離れた場合。
    • 安全が脅かされた場合を除き、労働者が契約や法律に定められた業務を拒否した場合。
    • 担当する業務を不当に欠勤することにより、生産過程やサービス提供に混乱や錯乱を生じせしめた場合。

「外国投資法」発効後、1年以内に細則を公布することが記されていたが、現在のところ外国投資法の細則は公布されておらず、同法の運用には不透明な部分が多い。

その他

特になし。