外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用

最終更新日:2024年04月05日

外国人就業規制

経営者、特殊技能者などを除き、外国人労働者数は全従業員の20%以下、給与額は全従業員総額の30%以下。

  1. 外国人労働者の規制
    外国人労働者の比率は1法人につき全従業員数の20%以下、給与額は1法人につき労務契約提出の前月の給与台帳記載額の30%以下とする。ただし、特殊技能者、経営者、教職員は対象外のため、進出企業には駐在員を経営者や特殊技能者として登録している場合が多い。また、在留資格を「定住者」に切り替えている場合、当人に一親等のペルー国籍者がいる場合は、同規制は適用されない。

    根拠法:政令689「外国人労働者法」(1991年11月5日公布)、同施行細則・大統領令014-92-TR(1992年12月23日公布)、同改正法・大統領令023-2001-TR(2001年7月18日公布)、同改正法・大統領令008-2018-TR(2018年9月13日公布)

  2. 出国時の源泉徴収証明書の提出義務
    ペルー国内の源泉所得のある外国人は、出国時に源泉徴収証明書の提出が義務付けられている。
    なお、書式は税務監督庁(SUNAT)のウェブサイトから入手可能。
    Formulario no.1492 - Certificado de Rentas y RetencionesPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(12KB)

    根拠法:大統領令179-2004-EF「所得税法統一規則」(2004年12月8日公布)、税務監督庁決議125-2005-SUNAT(2005年7月14日公布)

在留許可

外国人登録証(CE)の取得義務あり。査証の発給を受け、入国後に国家移民監督庁(MIGRACIONES)で発行申請を行う。

一般に、就労目的でペルーに入国する外国人は、在外ペルー公館で「一時滞在」査証の発給を受け、入国後に国家移民監督庁で「労働者」の在留資格を取得し、査証を「在住」に切り替える。
起業あるいは既存の内国企業への投資・経営参画を目的に入国する場合は、入国後に「在住」査証の発給を受けたうえ、在留資格「投資家」を取得する。また、一定の条件が整えば、任意に在留資格「定住者」を選択することも可能である。
在留資格が「観光」または「商用」の場合、就労は認められない。
また、就労目的でペルーに在住または長期滞在する外国人には、外国人登録証(CE)の取得が義務付けられている。

在留許可、外国人登録等の手続きは、次のとおり。

  1. 駐在員として入国する場合
    渡航前に、在外ペルー公館で「一時滞在」査証の発給を受け、在留資格「労働者」を取得し、入国後、査証を「在住」に切り替える。
  2. 会社設立を目的に入国する場合
    1. 支店等を設立するケース
      渡航前に、在外ペルー公館で「一時滞在」査証の発給を受け、在留資格「商用」を取得し、入国後、会社設立手続きを行う。会社の登記完了後に、国家移民監督庁で在留資格を「労働者」に変更後、一度出国し、在外ペルー公館で「在住」査証の発給を受けて再入国する。
    2. 起業するケース
      渡航前に、在外ペルー公館で「一時滞在」査証の発給を受け、在留資格「商用」を取得し、入国後、会社設立手続きと平行して国家移民監督庁で在留資格を「投資家」に変更後、一度出国し、在外ペルー公館で「在住」査証の発給を受けて、再入国する。

    査証を「在住」にした後は、ICPOの審査を経て、国家移民監督庁でCEの発行を申請する。
    なお、「在住」ビザの期限は原則1年、CEは4年と有効期限が設けられているため、有効期限が切れる前に、更新手続きを行う必要がある。また、「在住」の場合、許可なくペルー国内での不在日数が365日間のうち連続183日(「定住者」は2年間のうち365日)を超えると、在留資格を失効する。

    在留資格「労働者」または「投資家」を取得後、在留期間が3年を超えた場合、任意申請で「定住者」に切り替えれば、在留資格更新の必要はない。

官報:

現地人の雇用義務

現地人の雇用義務あり(前述の外国人就業規制も参照)。

  1. 雇用契約
    1. 雇用に際しては、3カ月の試用期間を設ける。期間中の雇用打ち切りは自由。この期間を経過後に正当な理由なく解雇する場合、使用者は、勤続1年につき1.5カ月分給与相当(最高12カ月分まで)の解雇手当を支給しなければならない。正当な理由がある場合は不要。
    2. 雇用契約は、原則無期限。ただし、70歳の誕生日を定年として、退職手続きを取る必要がある。業務拡張・季節労働などの場合、労働雇用促進省に届け出れば、臨時雇用も可能。解散などの特殊事情があれば、集団解雇も可能で、解雇手当の支給は不要。
      根拠法:大統領令003-97-TR「労働生産性・競争法統一規則」(1997年3月27日公布)34条など
  2. 労働条件
    1. 法定最低賃金
      2022年5月より、月額1,025ソル。
      根拠法:大統領令003-2022-TR(2022年4月3日公布)
    2. 法定労働時間
      休憩時間を除き、1日上限8時間、週48時間を超えてはならない。食事休憩は最低45分。休日は最低週1回。就労時間の適正管理のため、使用者は労働者の始業・終業時刻を確認・記録する義務あり。
    3. 時間外労働
      2時間以内が定額賃金の時間割賃金の25%、2時間以上または深夜労働には35%の割増賃金を適用。また、休日および祝祭日の労働には、100%の割増賃金を適用。

      根拠法:政令854「労働時間法」(1996年10月1日公布)、同改正・法律27671(2002年2月21日)、大統領令007-2002-TR「労働時間法統一規則」(2002年7月4日公布)、同施行細則・大統領令008-2002-TR(2002年7月4日公布)、大統領令004-2006-TR「労働時間の記録・管理に関する規則」(2006年4月6日公布、同6月1日発効)、大統領令007-2006-TR(2006年5月5日公布)、大統領令011-2006-TR(2006年6月6日公布)

    4. 年次有給休暇
      • 正規従業員には、勤続2年目から年30日の年次有給休暇を付与。30日(土日・祝祭日を含む)連続の取得が原則だが、2019年2月の法改正より、労使合意および書面にて申請を行えば、一定の分割取得が可能となった。ただし、15日以上は連続で取得するか、7日間と8日間に二分割して取得することが定められている。残りの日数は、1日単位で取得することが可能。一方で、労使合意があれば、給与15日分補償と引き換えに、年次有給休暇を15日に短縮できる。罹病やけがによる欠勤は、年間60日まで就労日として算定。ストライキ期間についても、違法と認定されない限り就労日扱いとなる。
      • 一親等の親族の病気およびケガが重篤の場合、医師の診断書を添えて申請すれば、最大7日の特別休暇が取得可能。また、忌引きは、配偶者・父母・子・兄弟姉妹の場合に5日間取得することが可能。

      根拠法:政令713「民間労働者の有給休暇に関する法律」(1991年11月8日公布)、同施行細則・大統領令012-92-TR(1992年12月3日公布)、法律30012「一親等の親族の病気やケガが重篤である場合に休暇を付与する法律」(2013年4月26日公布)、同施行細則・大統領令008-2017-TR(2017年5月31日)、政令1405(2018年9月12日公布)、大統領令002-2019-TR(2019年2月5日公布)、法律31602(2022年11月5日公布)

    5. 賞与
      毎年7月と12月の月前半に、直近6カ月の平均給与額(残業代・諸手当を含む)を賞与として支給。支払い時点で雇用契約が消滅していても、前6カ月の労働について月割り計算で支給。

      根拠法:法律27735「民間労働者の賞与支給に関する法律」(2002年5月28日施行)、同施行細則・大統領令005-2002-TR(2002年7月4日施行)

    6. 産休・育児休業制度
      正規労働者の妊産婦は、産前産後に各49日間(計98日)の育児休業を取得する権利がある。産前休業期間は、産後に繰り越し可能。多胎妊娠の場合、産後休業期間が30日延長される。生後1歳未満児の育児中は、1日1時間の育児時間を取得できる。多胎出産の場合、育児時間が1時間延長される。
      一方で、父親の育児休業は10日間とされ、早産や多胎妊娠の場合は、20日間の取得が可能。

      根拠法:法律26644「妊産婦の産前産後休業の権利に関する法律」(1996年6月27日公布)、法律27606(2001年12月23日公布、同31日施行)、法律27240「育児休業付与法」(1999年12月23日公布)、同改正・法律27403(2001年1月20日公布)、法律27591(2001年12月13日公布、同31日施行)、法律28731(2006年5月13日公布)、法律29409「パタニティ休業の権利に関する法律」(2009年9月19日公布)、同改正・法律30807(2018年6月20日公布)、法律30367(2015年11月25日公布)、同施行細則・大統領令002-2016-TR(2016年3月9日公布)

    7. 勤労時間補償(CTS)
      毎年5月と11月の月前半に、直近6カ月の平均給与額(残業代・諸手当を含む)に賞与(上期、下期の該当するいずれか)の6分の1を上乗せした額の半額を労働者指定のCTS用特設銀行口座に積み立てる。本来は退職金積立が目的だが、景気対策として勤続中であっても条件付きの引き出しが認められており、2015年からは、4カ月分の給与額を残した余剰額を引き出すことが可能となった。

      根拠法:大統領令001-97-TR「CTS法統一規則」(1997年3月2日発効)、同施行細則・大統領令004-97-TR(1997年4月15日施行)、法律30334「2015年における経済活性化対策の法律」(2015年6月18日公布)

    8. 利益分配制度
      正規労働者20人以上を雇用する使用者は、納税前の年間法人所得を、業種ごとに定められた比率に従って、労働者(産休・育児休業取得者も含める)に分配する。配分率は、製造業、漁業、電気通信業(10%)、鉱業、商業、飲食業(8%)、その他の業種(5%)。

      根拠法:政令892「労働者に対する法人所得分配に関する規則」(1996年11月11日公布)、同施行細則・大統領令009-98-TR(2001年7月22日公布)、法律30792「産休・育児休暇中の女性労働者に対する利益分配の法律」(2018年6月14日公布)、大統領令007-2018-TR(2018年8月17日公布)

    9. 食事提供
      雇用者は被雇用者に対し、直営・委託の給食施設で食事を提供するか、または契約した食堂などで利用可能な食券を発給することができる。提供される食事代は、月給の20%または法定最低賃金の2カ月分以下とする。

      根拠法:法律28051(2003年8月2日公布)、同施行細則・大統領令013-2003-TR(2003年10月28日施行)、大統領令006-2006-TR(2006年4月9日公布)

    10. 健康診断の義務
      企業は、雇用する正規従業員を対象に、最低2年に1回の健康診断を実施する義務がある。

      根拠法:法律29783「労働安全保健法」(2011年8月20日公布)、同施行細則・大統領令005-2012-TR(2012年4月25日公布)、同改正・大統領令006-2014-TR(2014年8月9日公布)、同改正・大統領令016-2016-TR(2016年12月23日)

  3. 各種保険・年金等
    1. 法定生命保険
      雇用主は、すべての労働者を、勤務開始日より生命保険に加入させる義務がある。料率は、事務職で月額本俸の0.53%、技能職で同0.71%、危険業務従事者で同1.46%。死亡または全身不随の場合には、親族等に給与額の16~32カ月分が、国から給付される。また、2021年1月1日から、自然死の場合でも保険金が給付される。

      根拠法:政令688「社会給付強化法」(1991年11月5日施行)、同施行細則・大統領令024-2001-TR(2001年7月22日公布)、同改正法・法律29549(2010年7月3日公布)、同施行細則・大統領令003-2011-TR(2011年3月18日公布)、同改正・緊急令044−2019(2019年12月30日公布)、同施行細則・大統領令009-2020-TR(2020年2月10日公布)

    2. 社会保険・年金
      社会保険庁(ESSALUD)所轄の健康保険として、毎月、総給与額(各手当等を含めた額)の9%を雇用主が納付。また、年金制度としては、公的年金(ONP・給与の13%)と民間年金(AFP・給与の10%前後)があり、労働者がいずれかの加入制度を選択し、費用も負担する。いずれも、年金の受給資格は65歳以上と規定されているが、一定条件を満たせば、50歳から受給資格を得られる。

      根拠法:法律27056「社会保険設立法」(1999年1月30日公布)、同施行細則・大統領令002-99-TR(1999年4月27日公布)、法律26790「社会保障近代化法」(1997年5月18日施行)、同施行細則・大統領令009-97-SA(1997年9月9日公布)、同改正法・法律28791(2006年7月21日公布)、同施行細則・大統領令020-2006-TR(2006年12月28日公布)、法律19990「公的年金制度法」(1973年4月30日公布)、法律25897「民間年金制度法」(1992年12月6日)、法律30082(2013年9月22日公布)、法律31301(2021年7月22日公布)、大統領令282-2021-EF(2021年10月16日公布)、法律31332(2021年8月6日公布)

    3. 危険業務補償保険
      業務内容に応じて、給与の0.53~1.55%を納付。労働者数に応じて、5~35%の割引あり。

      根拠法:法律26790「社会保障近代化法」(1997年5月18日施行)、同施行細則・大統領令009-97-SA(1997年9月9日公布)、大統領令003-98-SA(1998年4月13日公布)

    4. 職業訓練所(SENATI)負担金
      国際標準産業分類(ISIC)改訂第3版D分類に該当する製造業者は、従業員1人当たり給与の0.75%を負担。従業員20人以下の場合、支払い義務はない。

      根拠法:法律26272「SENATI法」(1994年1月1日施行)

  4. 労働組合
    労組結成、加入の自由が保証されている。また、2022年7月の改正法により労働者による企業財務情報の開示請求権や雇用主との合意なきストライキ決行権が規定された。

    根拠法:政令25593「労働集団関係法」(1992年7月2日公布)、施行細則・大統領令011-1992-TR(1992年10月14日公布)、同改正・大統領令014-2022-TR(2022年7月24日公布)

  5. 電子賃金台帳
    税務監督庁(SUNAT)との労務情報共有などを目的に、法人はSUNAT指定の電子フォームの労務情報登記(T-REGISTRO)と月次給与台帳(PLAME)に、従業員データを毎月記帳する義務がある。詳細情報は、次のウェブサイトで入手できる。

    SUNATウェブサイト "Planilla Electrónica外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます"

    根拠法:大統領令018-2007-TR「電子賃金台帳の利用に関する規則」(2007年8月28日公布)、大統領令015-2010-TR(2010年12月18日公布)、大統領令008-2011-TR「労務情報登記と月次給与台帳規則」(2011年6月5日公布)、税務監督庁決議183-2011/SUNAT(2011年7月5日公布)

  6. 人材派遣・業務請負
    1. 人材派遣
      派遣労働者数の比率は、全従業員数の20%以下、業務は補完的なものや専門性のある労働に限定される。派遣会社は、派遣労働者に、労働法上の義務を負う。派遣先は、派遣労働者に指揮命令できるが、派遣先の権利侵害や契約違反について、派遣労働者は、労働当局または裁判所に告発できる。

      根拠法:法律27626「人材派遣業法」(2002年1月9日公布、同2月9日発効)、施行細則・大統領令003-2002-TR(2002年4月28日施行)、大統領令008-2007-TR(2007年4月27日公布)、大統領令020-2007-TR(2007年9月20日公布)

    2. 業務請負
      労働雇用促進省は、外部委託先における労働者の基本的権利と平等な賃金の権利保護のほか、安定的かつ安全な雇用条件を守ることを目的に、2022年2月にアウトソーシング改正法を公布。これにより企業の中核業務の外部委託は禁止された。また、関連の罰則規定も同年8月に公布。

      根拠法:法律29245「下請規制法」(2008年6月24日施行)、同改正法・政令1038(2008年6月25日施行)、同施行細則・大統領令006-2008-TR(2008年9月12日)、同改正法・大統領令001-2022-TR(2022年2月23日公布・8月22日施行)、大統領令015-2022-TR(2022年8月17日公布)

  7. 職業訓練制度
    労働者需給適正化、雇用創出、生産性向上、実務経験の機会提供を目的に、協約を締結して労働者を受け入れる制度。労使関係は発生しない。
    1. 青年職業訓練協約
      16~25歳で、義務教育課程未修了または修了後未進学の者が対象。全従業員または部署総員の20%まで受入可。
    2. 職場復帰協約
      45~65歳で、失業が1年以上に及ぶ者が対象。全従業員の10%、部署総員の20%まで受入可。

      *以上a、bとも、障害者については10%の増員可能。

    3. 専門職見習協約
      専門職を志望する専門学校生または大学生が対象。期間・人数に制限なし。
    4. 専門職実習協約
      専門学校・大学卒業後、未就職が1年以上に及ぶ者が対象。期間・人数に制限なし。

      根拠法:法律28518「労働実習形態法」(2005年5月24日公布)、同施行細則・大統領令007-2005-TR(2005年9月19日公布)

  8. 労働監査
    労働雇用促進省の外局である労働監督庁(SUNAFIL)が、労働監査業務を行う。労働監査官は、抜き打ちで事業所の立ち入り検査を実施できる。監査官は、労働法違反が認められる場合、助言、勧告、業務改善命令、業務停止、罰則適用などの処分権限を持つ。
    2011年に、労働安全衛生法が制度化されたのに伴い、違反者に対する厳罰化が進み、違反の度合いと企業の規模に応じて0.1UITから100UITの罰則金を賦課。ただし、所定期限内に問題を解決すれば、最大50%軽減されるが、重犯には、最大200UITが科される。
    注)UIT(課税単位):2024年1月より1UIT=5,150ソル〔大統領令309-2023-EF(2023年12月28日公布)規定〕

    根拠法:法律28806「労働監査一般法」(2006年7月22日公布)、同施行細則・大統領令019-2006-TR(2006年10月29日公布)、大統領令019-2007-TR(2007年9月1日公布)、大統領令004-2011-TR(2011年4月7日公布)、法律29981「労働安全衛生法」(2011年8月20日公布)、法律29783「労働監督庁設置法」(2013年1月15日公布)、大統領令012-2013-TR(2013年12月7日公布)、法律30222(2014年7月9日公布)

    労働監督庁(SUNAFIL)ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

その他

特になし。