外資に関する奨励

最終更新日:2024年02月01日

奨励業種

特定の業種はないが、研究開発が奨励されている。

台湾産業全体の多元的発展とイノベーションを推進するため、2010年5月12日に〔産業創新条例〕が公布・施行された。ただし、2019年7月24日に改正された同条例第12-1、12-2、19-1条の施行期間は2020年1月1日から2029年12月31日まで、第23-3条の施行期間は2019年7月24日から2029年12月31日までとされている。2023年1月19日に新たに追加された同条例第10-2条の施行期間は2023年1月1日から2029年12月31日までとされている。2023年6月28日に新たに公布された同条例第66-1条、第66-2条の罰則規定は、同日に施行されている。

同条例では、研究開発の奨励や中小企業の雇用促進、今までの工業区の概念を拡大させた「産業園区」の設置推進など、今後の産業振興政策の枠組みを規定している。

全国法規資料庫:産業創新条例(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

各種優遇措置

租税優遇、研究開発経費の助成、科学工業園区・自由貿易港区等の優遇、政府の出資、各地方政府による優遇措置。

租税優遇

  1. 産業創新条例
    施行期間満了により廃止された〔産業高度化促進条例〕は新興重要策略性産業向けなど計24の租税優遇措置があったが、現行の〔産業創新条例〕では研究開発および研究開発物の流通に対してのみ、租税優遇措置が設けられている。具体的には、以下の「一般研究開発への投資支出に関する税額控除」または「知的財産収益に関する税額控除」のいずれかの制度を選択できる。また、「スマートテクノロジー・5G事業への投資支出に関する税額控除」は、控除総額を原則として当該年度の法人税額の50%を上限に、前述の制度と併用できる。
    2023年1月19日の産業創新条例の改正で追加された「グローバルサプライチェーンで重要な地位にある企業の先端技術事業への投資支出」に定める「研究開発への投資支出」および「機械設備への投資支出」に支出した投資額について、控除総額を原則として当該年度の法人税額の50%を上限に、同条例に定める条件に従いほかの税制優遇措置と併用できる。
    1. 一般研究開発への投資支出に関する税額控除〔産業創新条例第10条〕
      直近3年に環境等法令の重大違反がない会社または有限責任組合は、研究開発に投資した支出額について、次の租税優遇措置のいずれかを選択できる。
      ただし、いずれの控除額も当年度の法人税額の30%を超えてはならない。施行期間は2029年12月31日までとされている〔産業創新条例第10、72条、会社または有限責任組合の研究開発支出投資減税適用弁法〕。
      1. 投資支出額の15%を上限に、当該年度の法人税(営利事業所得税)から控除する。
      2. 投資支出額の10%を上限に、当該年度より3年以内の各年度の法人税から控除する。
    2. スマートテクノロジー・5G事業への投資支出に関する税額控除〔産業創新条例第10-1条〕
      直近3年に環境等法令の重大違反がない会社または有限責任組合は、2019年1月1日から2024年12月31日までにスマートテクノロジー機械設備または第5世代移動通信システム(5G)に投資した支出額、または2022年1月1日から2024年12月31日までに情報通信セキュリティ製品またはサービスに関するハードウエア、ソフトウエア、技術または技術関連サービスに投資した支出額について、1課税年度内で合計100万~10億台湾元を限度に、次の租税優遇措置のいずれかを選択できる。ただし、いずれの控除額も当年度の法人税額の30%を超えてはならない。
      1. 投資支出額の5%を上限に、当該年度の法人税から控除する。
      2. 投資支出額の3%を上限に、当該年度より3年以内の各年度の法人税から控除する。
    3. グローバルサプライチェーンで重要な地位にある企業の先端技術事業への投資支出に関する税額控除〔産業創新条例第10-2条〕
      台湾域内で先端技術事業に従事し、グローバルサプライチェーンで重要な地位にある企業が、以下の条件すべてを満たした場合、先端技術の研究開発に投資した支出額の25%、主管機関の定める一定規模に達した先端製造プロセスに使用する機械設備に投資した支出額の5%をそれぞれ当該年度の法人税から控除することができる。ただし、いずれの控除額も当該年度の法人税額の30%を超えてはならない。
      1. 当該年度の研究開発の投資支出額および売上高に占める研究開発費の割合が主管機関の定める基準に達している。
      2. 法人税の実効税率が一定比率に達している(一定比率とは、2023年度は12%、2024年度以降は15%とされているが、主管機関は別途検討の上、2024年度の比率を12%に引き下げることができる)。
      3. 直近3年に環境等法令の重大違反がない。

      施行期間は2023年1月1日から2029年12月31日までとされている〔産業創新条例第10-2条、72条〕。

    4. 知的財産収益に関する税額控除〔産業創新条例第12-1条〕

      直近3年に環境等法令の重大違反がない台湾の会社または有限責任組合は、自ら研究開発し取得した知的財産権を譲渡または実施許諾したことにより、取得した収益の範囲内において、当年度の研究開発支出額の200%を上限に、当該年度の課税所得額から控除できる。施行期間は2029年12月31日までとされている〔産業創新条例第12-1条1項、72条、台湾の個人・会社または有限責任組合の研究開発支出2倍額控除適用弁法〕。

      台湾の会社または有限責任組合は、自ら研究開発し取得した知的財産権をほかの会社に譲渡または実施許諾したことにより、取得した同社の株式について、当年度の課税所得額から控除し、その後株式を譲渡したときに、譲渡価格から費用等を控除したうえで当該年度の所得税を納税することを選択できる。施行期間は2029年12月31日までとされている〔産業創新条例第12-1条2項、72条、産業創新条例に基づく所得税延期課税適用弁法〕。

    5. 未配当利益の実質投資投入に対する税額控除〔産業創新条例第23-3条第4項〕
      会社または有限責任組合は、事業または事業に付随する業務のために、利益が発生した年度の翌年度から3年以内に、その利益をもって以下の自社製造・営業用建物、ソフトウエア・ハードウエア設備または技術を建設・購入した場合、その支出金額が100万台湾元に達した場合、その支出額は当該年度の納税対象である未配当利益から控除できる。この条件を満たした会社または有限責任組合は、当該年度の法人税を納税した後に投資を完了した場合、投資完了後1年以内に税務当局に対し所定書類を提出の上、税金の還付を申請できる〔産業創新条例第23-3条第4項、会社または有限責任組合の未配当利益による実質投資への投入に関する税額控除及び税金還付申請弁法2条、3条〕。
      1. 自社製造または営業用の建物の建設または購入:オフィス、管理事務所、支店、工場、作業場、倉庫等
      2. 自社製造または営業用のソフトウエア・ハードウエア設備の購入:機械、設備、道具、計量器、車両、船舶、飛行機、情報通信設備等
      3. 自社製造または営業用の技術の購入:営業権、著作権、特許権、商標権、デザインまたは模型、営業秘密等
  2. 中小企業発展条例
    中小企業について、直近3年に環境等法令の重大違反がない会社の研究開発への投資支出は、〔産業創新条例〕の「一般研究開発への投資支出に関する税額控除」制度と同様、「15%を上限に、当該年度の法人税から控除」または「10%を上限に、3年以内の各年度の法人税から控除」のいずれかの租税優遇措置を選択できる。ただし、いずれの控除額も当年度の法人税額の30%を超えてはならない。施行期間は2024年5月19日までとされている〔中小企業発展条例第35、40条、中小企業研究開発支出投資減税適用弁法第4、9、17条〕。
  3. 所得税法
    1. 法人税率
      2010年6月15日に改正された〔所得税法〕では、法人税の税率が17%に引き下げられたが、2018年2月7日の同法改正により、2018年度より同税率が20%まで引き上げられた〔所得税法第5条5項2号〕。
      ただし、課税所得が12万超~50万台湾元以下の営利事業に対しては、2018年度18%、2019年度19%、2020年度以降20%の税率が適用される〔所得税法第5条5項3号〕。
      この点、台湾で恒久的施設(PE)を通じて事業を行うことのない日本企業は、日台租税協定により、日本の法人税のみが課税され、台湾の法人税は課税されない。
    2. キーテクノロジー導入に係るロイヤルティーに関する税額控除
      新製造技術もしくは製品の導入、製品の品質改良または製造コストの低減のために、外国企業の特許権、商標権その他特許権利を使用する場合、台湾政府の個別許可を得た場合、当該外国企業に支払うロイヤルティーは法人税から控除される。台湾政府が個別に認定した重要な製造事業が工場建設のために外国企業に支払う技術サービスの報酬も同様である〔所得税法第4条1項21号〕。
  4. 関税
    台湾で製造されていない機械または計測器設備等は経済部の許可を得たうえで、輸入関税が免除され得る〔税関輸入税則第84章増注13、第85章増注7、第90章増注3〕。

このほか、次の租税優遇措置も設けられている。

  1. 自由貿易港/空港園区
  2. 会社組織調整
  3. 華僑投資
  4. 民間の公共建設参加
  5. バイオテクノロジー医薬産業
  6. 運営、生産関連技術の導入
  7. 保税/免税区

関連法規は、全国法規資料庫(Laws and Regulations Database of the Rep. of China)で入手できる。

  • 会社または有限責任組合の研究開発支出投資減税適用弁法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 会社または有限責任組合の未配当利益による実質投資への投入に関する税額控除および税金還付申請弁法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 台湾の個人・会社または有限責任組合の研究開発支出2倍額控除適用弁法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 中小企業発展条例(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 中小企業研究開発支出投資減税適用弁法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 自由貿易港区設置管理条例(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 農業サイエンスパーク設置管理条例(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 国際空港園区発展条例(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 企業M&A法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 華僑の認定済台湾域内投資額に係る遺産税の優遇弁法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 民間事業者による公共工事促進法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • バイオテクノロジー医薬産業発展条例(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • 所得税法(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
科学産業園区等の優遇

場所に応じて、それぞれ優遇措置が設けられている。

  1. 一般工業区
  2. 科学産業園区(テクノロジーパーク)
  3. 科学園区(サイエンスパーク)
自由貿易港区、農業サイエンスパーク

グローバルな経営管理、貿易自由化および国際化の推進、人・モノ・金融および技術の交流、国家競争力および経済発展の促進などを目的に、2012年に〔自由貿易港区設置管理条例〕が制定され、2023年12月現在、同法に基づき現在7港区(うち6区が海港、1区が空港)が設置されている。
設置完了の7港区は次のとおり。

  1. 台北港自由貿易港区
  2. 台中港自由貿易港区
  3. 安平港自由貿易港区
  4. 高雄港自由貿易港区
  5. 基隆港自由貿易港区
  6. 蘇澳港自由貿易港区
  7. 桃園空港自由貿易港区

台湾自由貿易港区(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

また、農業科学技術および農業人材の確保のために、農業科学技術産業が集積する地域を構築するために、2004年4月7日に〔農業サイエンスパーク設置管理条例〕が制定された。
2023年12月現在、同条例に基づき設立された農業サイエンスパークは、屏東に位置する台湾グリーンバイオパークである。

その他
  1. 研究開発経費の助成
    指定分野の研究開発プロジェクトに対し、台湾政府がプロジェクトの性質に基づき助成金を支給する。
  2. 政府による投資
    産業イノベーションなど指定分野について、一定条件を満たした企業に対し、台湾政府が持株比率49%を超えないことを原則に出資を行う。
  3. 各地方政府による優遇措置
    各地方政府は、それぞれの経済・産業条件、重点産業、投資誘致対象である企業の属性などに基づき、個別の投資奨励措置を提供する。

各種投資促進機関は「投資促進機関」参照。

台日産業連携架け橋プロジェクト

台湾は、2011年12月16日に「台日産業合作搭橋方案(台日産業連携架け橋プロジェクト)」を策定し、2012年~2022年の間、日台間企業の提携を推進するため、次の事業を含め具体的な取り組みがなされている。
最近では、東京、関西、東北、九州各地ならびに対面またはオンラインでのセミナー&商談会が台湾で開催され、さまざまな事業で台湾企業とのマッチングが図られている。

日台ファンド(Golden Asian Fund

日本、台湾間でビジネス連携を志向するベンチャー企業への投資を行うファンドとして、三菱UFJキャピタル株式会社および創新工業技術移転股份有限公司(Industrial Technology Investment Corporation:ITIC)との共同で「日台ファンド」が設立された。

三菱UFJキャピタル株式会社:日台ファンド(日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

台日産業連携推進オフィス(中国語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

台日産業連携推進オフィスは日本産業との交流・提携作業の統合、日台間産業提携戦略の策定・推進などを行う窓口として、2012年3月21日に正式に設立され、その推進戦略は次のとおり。

  1. 中央政府との対談:公的交流プラットフォームの強化
  2. 地方連携:日本の地方に対する連携拡大
  3. 組織連携:重点産業組織との交流ネットワーク拡大および深化
  4. 企業マッチング:多方面の日台パートナーシップ構築
  5. 台湾における日系企業の発展:日台の多様な連携機会

なお、当該オフィスは3部門に分けられ、それぞれの担当は次のとおり。

  1. サービス課:日台公的機関の交流窓口、日本地方自治体と産業推進組織の連携窓口、政府政策の幕僚、対日産業連携チャネルの統合サポート、日台産業連携戦略の立案。
  2. プロジェクト課:単一サービス窓口の設置、日台産業連携案件の開拓、連携案件へのプロジェクト追跡サービスの提供、日台産業連携の交流イベント開催。
  3. Japan Window:現地相談サービス窓口の設置、日台産業連携案件の連絡業務サポート、日台産業連携の交流イベント開催のサポート。

2023年9月現在、当該オフィスは台湾の産業紹介、投資環境、日本企業進出支援などの日台企業間交流活動と商談促進を積極的に取組んでいる。また、当該オフィスは11の地方(三重県、和歌山県、秋田県、高知県、愛媛県、香川県、鹿児島県、大阪府、熊本県、徳島県、兵庫県神戸市)とMOUを締結し、少なくとも40の地方自治体と交流チャネルを構築し、日台産業間の交流・連携を推進している。

その他

特になし。