米国・台湾のスタートアップ招聘、京都の新たなエコシステム形成に期待
(日本、米国、台湾)
京都発
2025年07月10日
ジェトロは6月23~27日、シェアスペース事業を手掛けるワットエバーと京都市と連携し、米国のバイオテック分野や台湾のメドテック分野のスタートアップ企業複数社を招聘(しょうへい)した(注1)。期間中、ショーケースイベントの実施や「Osaka Biotech & Pharma Networking Event 2025」での商談、京都大学・インキュベーション施設、島津製作所の視察などを行った。
京都では、優れた技術と知的資産を有する大学や企業、産業支援機関などが連携し、医療・健康、環境・エネルギーなど社会課題解決型の成長産業分野で、付加価値の高い産業を創出している。特にライフサイエンス分野では、iPS細胞などの再生医療研究をはじめ、創薬・医療機器などの研究開発や社会実装を目指す研究者が多く、これらの研究シーズを基にした大学発スタートアップが数多く存在する。一方、研究シーズを社会実装するためのクラスターを形成するには、さらなる研究シーズが必要なほか、シーズ実用化に向けた製薬企業、医薬品受託開発製造企業(CDMO)・開発業務受託機関(CRO)などの協業先の存在が不可欠だ。今回の招聘は、高い技術力を持つ研究者やスタートアップなどの外国・外資系企業を誘致し、地元企業やアカデミアとのマッチングを通して共同研究や開発につなげることで、ライフサイエンスクラスターとしての京都の世界的存在感を向上させ、ライフサイエンス産業を活性化することを目的に実施した。
23日のショーケースイベントでは、京都や関西の行政や支援機関、製薬企業、大学関係者など約40人が来場し、関西・京都のエコシステムや投資環境、外国企業の支援策を紹介した。招聘企業によるピッチセッションでは、有識者から日本進出に関するビジネス計画、事業内容についてコメントがあった。イベント後のネットワーキングでは、招聘企業と参加者間で京都が強みを持つ研究シーズについて意見交換をした。
ショーケースでのピッチセッション(ジェトロ撮影)
招聘者と参加者によるネットワーキング(ジェトロ撮影)
24日には、国内外のライフサイエンス分野の関係者(スタートアップ、大企業など)が一堂に会する「Osaka Biotech & Pharma Networking Event 2025」で、関西を中心とする製薬企業などとの商談の場やピッチセッションを実施した。商談では招聘企業との製造開発の協力の可能性などについて継続協議を希望する声もあり、将来的に海外展開や協業連携を視野に入れている日本企業にとって、可能性を模索する機会となった。
Osaka Biotech & Pharma Networking Event 2025での商談会(ジェトロ撮影)
25日以降は日本への進出に向けた具体的なイメージを醸成するため、専門家による法務・税務や京都の生活慣習に関するレクチャーセッション、京都大学医学研究科のウェットラボ(注2)、京都市内のインキュベーション施設などを視察した。島津製作所の視察では同社のコーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)の取り組みや、計測器に使われる技術や開発環境についての紹介を受けた。
京都大学でのウェットラボ視察ツアー(ジェトロ撮影)
京都には、ライフサイエンス分野をはじめとするディープテック分野で優れた研究実績を持つ研究者や、スタートアップ企業などのプレーヤーが集積している。今回の招聘を機に、これらのプレーヤーと海外をつなぐ新たな京都のエコシステム形成が期待される。
(注1)ジェトロの「地域エコシステムへの海外誘致プログラム」の一環として実施した。同プログラムは、地域のエコシステム関係者と連携し、外国・外資系企業の国内地域への誘致や国際協業連携を推進するもの。
(注2)特定の装置や薬品を用いて、物理・科学の実験を行うための研究施設。
(宮崎裕子、安藤琢朗)
(日本、米国、台湾)
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