外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用
最終更新日:2023年09月19日
- 最近の制度変更
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2024年6月5日
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外国人就業規制
モザンビークでの就労を希望する外国人は、労働雇用社会保険省(以下、MITESS)が発行する就労許可を取得する必要がある。外国人労働者の長期雇用は、[1]クォータ制度(Quota:割当数)内での就労許可、[2]クォータ制度を超える就労許可、[3]投資輸出促進庁(APIEX)が認可するプロジェクトに対する就労許可、のいずれかで雇用する必要がある。
外国人労働者の雇用は、労働法(法律第23/2007号)および法令第37/2016号にて規定されている。クォータ制度内での就労許可およびAPIEXが認可するプロジェクトに対する就労許可はMITESSによる承認は不要である。しかし、雇用者は管轄当局へ申請書を提出し、外国人労働者が入国後15日以内にMITESSに外国人労働者の雇用を報告する必要がある。なお、外国人労働者が自国で就労査証を取得するために、雇用者は就労許可を事前にモザンビークにて取得する必要があるため、当該報告は実務上不要。
外国人労働者の雇用期間は最大2年に設定されており、その後は何度でも更新が可能となっている。
法令第37/2016号第3条にて、次のとおリ、外国人労働者雇用の原則が規定されている。
- 外国人労働者は、必要とされる学歴か専門的資格を有していなければならず、またその資格を有するモザンビーク人がいないか、またはその数が必要数を下回っていれば、雇用することができる。
- 雇用者は、モザンビーク人労働者を技術的により高度なポストや管理職に登用するための条件を作るよう最善の努力を払うべきである。
- 外国人労働者を雇用する必要がある場合、雇用者は、研修計画と段階的なモザンビーク人労働者の雇用という原則に基づいて、科学的・技術的な専門知識を移転するようにしなければならない。
クォータ制度内での就労許可
労働法第31条によると、雇用者は次の割当数(Quota:クォータ)で認可された外国人労働者数を雇用することができる。
- 大企業(労働者数101人以上)の総労働者数の5%
- 中企業(労働者数11~100人)の総労働者数の8%
- 小企業(労働者数10人以下)の総労働者数の10%
小企業の場合、労働者数が10人以下であっても1人の外国人労働者を雇用することができる。クォータ制度で外国人労働者を雇用する場合、外国人労働者がモザンビークに入国してから15日以内にMITESSに通達する必要があり、次の書類を提出しなければならない。なお、すべての書類はポルトガル語に翻訳し、翻訳証明を取得する必要がある。
- 2通の申請レター(申請レターの雛形あり)
- 労働契約書のコピー3部。労働契約の期間は24カ月を超えてはならない。
- 学歴証明書もしくは専門資格、その等価証明書(Certificado de equivalência)(当該証明書は教育省により証明・公認される必要がある)、会社のライセンス(法令では必ずしも必須ではないが、申請時に提出が求められることがある)
- 税務署が発行する税務証明書(Certidão Quitação、有効期間は90日以内)
- 労働者の名目関係リスト(Relação nominal de trabalhadores)
- 認証されたパスポートもしくはDIRE(居住許可書)のコピー
- 会社の経済活動に該当するセクターの最低賃金5カ月分の支払い証明
- 社会保険庁(INSS)が発行する社会保険費用支払いの証明書(法令では必ずしも必須ではないが、申請時に提出が求められることがある)
以上の書類を提出後、5営業日以内に発行手数料が通知され、手数料支払い後5営業日以内に「雇用証明書(atestado de admissão)」が発行される。雇用証明書が、一般に就労許可証(Work Permission)と呼ばれるものに該当する。外国人労働者の場合、雇用証明書と労働契約書を1セットにしたものがモザンビーク国内での正式な労働契約書となる。雇用証明書の有効期間は労働契約書に準じるため最長24カ月となる。クォータ制度での雇用には、等価証明書の提出が要件上必要。等価証明書とは、海外の大学で取得した学歴証明書をモザンビーク教育省(もしくは教育大学)が等価であると証明するものである。労働者の名目関係リストに必要な書類であり、MITESSのウェブサイトにて登録することができ、入力方法に関する資料「名義変更シート管理システム ユーザーガイド(4.64MB)」もダウンロードすることができる。
APIEXが認可したプロジェクトに対する就労許可
投資輸出促進庁(APIEX)が認可した投資プロジェクトについては、割当数に限らず、必要とされる外国人労働者数を定めることができる。投資認可でのクォータ制度では、「クォータ制度」と同じ必要書類をMITESSに提出することが義務付けられており、政府が認可した投資事業のコピーを添付する必要がある。
クォータ制度を超える就労許可
クォータ制度以外で外国人労働者を雇用する場合、MITESS大臣による就労許可/就労権限を取得する必要がある。就労許可制度では、次の条件を満たすことが必要であり、ケース・バイ・ケースで就労許可が下りる。
- 特定の業務を行う資格のあるモザンビーク人がいない
- 資格のあるモザンビーク人の数が必要数を下回っている
就労許可制度では、クォータ制度で必要とされる書類に加えて、次の書類を提出する必要がある。
- 労働組合代表の同意・意見、もしくは労働組合委員会の意見
- 会社の経済活動に該当するセクターの10カ月分の最低賃金の支払い証明
短期雇用
年間90日以内の短期雇用の外国人労働者の場合、雇用者はMITESSの就労許可を取得する必要がある。鉱物資源と石油・ガスセクターの外国人雇用においては、短期雇用の外国人労働者の雇用が180日まで可能となっている。
当該就労許可は基本的に外国人労働者が適時かつ予見ができないサービスを提供し、当該サービスには科学的な知見や専門的な技能が必要とする場合のみ適用される。この要件を満たさない場合、法規により雇用契約は認められない。
以下の書類が必要となる。
- 適切に記入された申請書
- 会社のライセンス
- 外国人労働者の本人確認書類(Identity Document)
- 会社の経済活動に該当するセクターの10カ月分の最低賃金の支払い証明
その他
非政府団体(NGO)、科学的調査、その他の専門的技術支援で雇用される外国人労働者の雇用は、該当セクターの管轄機関からの意見に基づいて、MITESS大臣の決裁により決定される。
在留許可
モザンビークで就労する外国人は、就労査証を取得するか、既存の居住許可書(DIRE)を更新する必要がある。
法令第108/2014号にて、外国人が取得できる就労査証が規定されている。同法令は、2017年10月に施行され、これまで就労査証の取得後に居住許可書(Documento de Identificação e Residência para Estrangeiro:DIRE)を取得する必要があったが、就労査証の更新で外国人がモザンビークに滞在することができるようになった。DIREを所持している外国人労働者は、引き続きDIREを更新して在留することができる。
滞在/就労査証
雇用証明書もしくは就労許可を取得した後、在外モザンビーク大使館にて就労査証を申請する。法令第108/2014号によると、就労査証は、発行から60日以内にモザンビークに入国しなければならず、雇用契約の終了期間まで有効となっている。実際には、改定前の就労査証の規定どおり、依然として就労査証の有効期間を30日とする在外公館が多い。2017年10月、入国管理局は、法令第108/2014号に基づいて、初めて入国する外国人労働者に対して就労査証所有者のDIRE発行を取り止め、代わりに1年延期可能な滞在/就労査証を発行することとなった。
入国管理局によると、次の書類が就労査証の申請/延長に必要である。
- 適切に記入された申請書
- 雇用者からのレター
- MITESSが発行する雇用証明書もしくは就労権限(許可)
- 雇用契約書
- 商業ライセンス
- 税務および社会保障の納付証明書(Quitação)
- 申請者の国が発行する無犯罪証明書
- パスポートのコピーとオリジナル
- パスポート用の写真3部
居住許可書(DIRE)
これまでにDIREを所持している外国人労働者は、DIREを更新することでモザンビークに在留することができる。DIREは、1年間有効であり、更新が可能である。10年以上滞在の外国人は、5年までの永住許可を取得することができる。DIREの更新には、次の書類が必要である。
- 正しく記入された申請書
- 雇用者からのレター
- MITESSが発行する雇用証明書もしくは就労許可
- 雇用契約書
- 商業ライセンス
- 税務および社会保障の納付証明書(Quitação)
- パスポートのコピーとオリジナル
- DIREのコピーとオリジナル
DIREの発行には、次の手数料が発生する。
- 申請費用3万3,760Mt(メティカル)
- 永住申請費用6万2,520Mt
法令第108/2014号および法令第3/2017号では、モザンビークで50万ドル以上の投資を実施する投資家に対して、投資査証を発行することが規定されているが、現時点では、投資査証は発行されていない。
現地人の雇用義務
モザンビーク人の雇用が原則であり、クォータ制度において、一定割合のモザンビーク人の雇用が義務付けられている。投資プロジェクトについては、クォータ制度で割当られた外国人労働者数以上を雇用することができる。
クォータ制度にて、モザンビーク人の労働者を一定割合以上雇用することが義務付けられている。
投資プロジェクトにおいては、外国人労働者の雇用が必要であると認められる場合、モザンビーク政府に認められればクォータ制度で割当られた外国人労働者数以上を雇用することができる。また、特定業務を行う資格のあるモザンビーク人がいない場合もしくは必要数を下回っている場合、クォータ制度を超える就労許可(就労権限)を取得して、外国人労働者を雇用することができる。
法令第37/2016号第3条のとおり、外国人労働者を雇用する場合、雇用者は、モザンビーク人労働者への研修計画と段階的なモザンビーク人労働者の雇用が奨励されている。政府調達においては、モザンビーク人への研修計画が技術提案書の評価項目の一つとして挙げられている。
その他
MITESSは、定期的に企業を訪問して検査を行っており、従業員に関するすべての労働、出入国に関する書類を常時アップデートし提出できるようにする必要がある。
モザンビークで設立した現地法人は、商業活動の開始に伴い、次の書類を提出する義務がある。
- 労働の開始の通知(Communication of commencement of work)
この通知は、商業活動の開始前にMITESSに提出する必要がある。 - 国家社会保険庁(INSS)への会社の登録
INSSへの会社登録は、税務当局にて登録する「初期活動の宣言」の開始から15日以内に行う必要がある。 - INSSにおける労働者の登録
INSSにおける労働者の登録は、雇用契約の日付から30日以内に行わなければならない。 - 就業時間の承認
モザンビークにおける就業時間は、労働法にて制定されている。各企業は、職場での就業時間を作成しなければならない。就業時間は、労働省の承認を得なければならず、職場にて、提示しておかなければならない。 - 名目関係の提出(Nominal Relation)
雇用者は、労働省のウェブサイトを通して労働者との名目関係を登録しなければならない。この名目関係の登録書は、毎年4月30日までに提出する必要がある。
労働者の健康に大きなリスクを伴う活動を行う企業は、職場での健康および保全の遵守を監督するため、雇用者と労働者の代表を含む安全委員会を設置しなければならない。大企業では、職場で恒久的な医療支援設備を設置する必要がある。雇用者は、すべての労災や労働者の職業病を保証する労働災害保険に加入する必要がある。
MITESSの検査では、有効な雇用契約、外国人労働者の雇用証明書もしくは就労許可、労働の開始の通知、就業時間などが検査対象となる。
これらの要求事項に違反した場合、雇用者に対して罰金が科せられる。罰金の金額は違反の程度により異なるが多額になるケースもあり、企業の評判に影響を与える可能性がある。