EUとフィリピン、FTA交渉で実質合意、インド太平洋でEUのFTA網拡充進む
(EU、フィリピン)
ブリュッセル発
2026年10月06日
欧州委員会は9月22日、EUとフィリピンが自由貿易協定(FTA)交渉で実質合意に達したと発表した(プレスリリース
)。両者は今後、技術的な詳細などの最終調整を進める。協定の発効にはEUおよびフィリピン双方での承認手続きが必要となる。
欧州委によると、今回の合意では双方の関税品目の94%超を自由化し、2国間の物品貿易の97%超を対象とする。EUは機械類や輸送機器、農産食品などの市場アクセス改善を見込む。また、フィリピン政府の公共調達にEU企業が参加するための透明で予見可能なルールを整備するほか、知的財産権およびEUの地理的表示(GI)の保護を強化する。協定にはこのほか、エネルギー・原材料分野において、公平な競争条件を確保するとともに、再生可能エネルギー分野などへの持続可能な投資を促進するための規定も含まれた。欧州委は、同協定により半導体などのサプライチェーンの強靱(きょうじん)化に加え、フィリピンが拡大を目指す再生可能エネルギー分野での新たな投資機会にも期待を寄せている。
一方、フィリピン側にとっては、現在、GSPプラス(EUによる一般特恵関税の優遇制度)(2020年2月13日記事参照)の下で物品貿易におけるEU市場への特恵アクセスを既に享受していることから、FTAの主なメリットは、更新の有無に左右されない、より安定的なFTAの枠組みに移行できることにあるとみられる。
EU、経済安保を背景に重要原材料・サプライチェーン確保急ぐ
EUは近年、経済安全保障や戦略的自律性の強化を念頭に、インド太平洋地域とのFTA網の拡大を進めている。背景には、中国への過度な依存の低減に向けた重要原材料の安定供給やサプライチェーンの強靱化への取り組みがある。近年では、重要原材料を有するインドネシア(2025年10月1日記事参照)やオーストラリア(2026年3月27日記事参照)、巨大な消費市場を持つインド(2026年2月2日記事参照)とのFTA交渉で相次いで実質合意に達した。
また、東南アジアでは既にシンガポールおよびベトナムとのFTAが発効しているほか、タイ(2026年7月27日記事参照)およびマレーシア(2025年1月23日記事参照)とも交渉を進めている。今回のフィリピンとの実質合意は、EUが進める東南アジア、ひいてはインド太平洋地域との経済関係強化をさらに前進させるものとなる。
(吉沼啓介)
(EU、フィリピン)
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