欧州産業連盟、次期EU議長国アイルランドに提言、「実行」を求める
(EU、アイルランド)
ブリュッセル発
2026年06月04日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は5月22日、2026年下半期のEU理事会(閣僚理事会)議長国のアイルランドへの提言書
を発表した(プレスリリース
)。欧州はロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー価格の高騰や深刻化する地政学的な分断の影響に直面していると指摘。経済回復には実効性ある政策の展開が必要で、同国の議長国期間は競争力強化策を実行に移す重要な時期であるとした。
具体的には、欧州委員会の規制簡素化の取り組みをさらに進め、審議保留中の環境訴求に関する共通基準を設定する指令案(2023年3月30日記事参照)や支払い遅延防止規則案(2023年9月27日記事参照)の撤回も求めた。
エネルギーや脱炭素化分野では、域内の電力市場の統合推進や、産業加速法案(2026年3月13日記事参照)によって、許認可の迅速化や低炭素技術・製品の需要喚起を確実に実現するよう提言。EU排出量取引制度(EU ETS、2026年5月18日記事参照)については、競争力をそぐことなく気候目標との両立を図る観点での見直しを要請。無償排出枠の段階的廃止の見直しや市場安定化リザーブ(MSR、2026年4月9日記事参照)のさらなる改定が必要と述べた。
対外関係では、EU・米国は関係安定に向け、2025年8月の合意内容を双方履行し(2026年5月27日記事参照)、通商および地政学的課題へ互恵的に対処すべきとした。中国とは、同国の過剰生産に起因する市場歪曲(わいきょく)に効果的に対処し、リスク低減策を講じる一方で、重要原材料の供給や公共調達市場への参入など、重要分野で協力すべきと述べた。
投資やイノベーション分野では、EUの資本市場を統合する貯蓄・投資同盟(2025年3月28日記事参照)の早期実現や、合併ガイドラインの見直し(2025年5月15日記事参照)では、より柔軟で将来志向のアプローチを採るよう提言。また、議長国期間中に、EUの次期中期予算計画(MFF、2025年9月9日記事参照)に合意し、欧州競争力基金や研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」など競争力強化やイノベーション創出に十分な財源を確保するよう要請した。
雇用分野では、賃金透明化指令(2022年12月22日記事参照)の国内法化の一時停止を含め、EUレベルの社会関連法令を簡素化し、企業や加盟国の事情に応じた政策を展開するよう提言した。また、安全保障・防衛・強靭(きょうじん)化戦略の策定を通じ、防衛産業の生産能力強化や軍民両用技術を含む供給網の整備、さらに危機発生時の重要インフラなどの機能維持における官民連携の強化を提言した。
(滝澤祥子)
(EU、アイルランド)
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