欧州委、環境訴求で科学的根拠に基づく立証と外部検証を義務付ける法案発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月30日

欧州委員会は3月22日、環境訴求に関する共通基準を設定する指令案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委の調査によると、EU域内の環境訴求製品の半数以上が曖昧、誤解を招く、根拠のない内容だったとし、このようなグリーンウォッシング(実質を伴わない環境訴求)は消費者の環境訴求に対する不信を招いていると指摘。そこで指令案は、科学的根拠に基づく訴求内容の立証や、外部機関による検証、消費者への詳細な内容の開示など、企業が満たすべき環境訴求の最低要件を導入することで、グリーンウォッシングの防止を目指す。指令案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

指令案の対象となるのは、文言あるいは環境ラベルで、製品あるいは企業が環境に良い、環境への影響がない、あるいは他の製品や企業より悪影響が少ないなどの趣旨を明確に含む消費者向けの環境訴求だ。エコラベル、有機食品、エネルギー効率性に関するエコデザインなど既にEU法で規定している分野は対象外となる。また、EU域内の企業だけでなく、域外の企業でも域内の消費者に向けて環境訴求をする場合、指令案が規定する共通基準を順守する必要がある。

企業が環境訴求を行う場合、訴求内容を立証することや、外部の第三者機関による検証を受けること、QRコードなど利用して立証内容や第三者機関が発行した適合証明を消費者に開示することが求められる。訴求内容を立証する上で、訴求対象が製品・企業活動の全体あるいは一部であるかを明確にすること、訴求内容が広く認められた科学的根拠に基づくこと、原材料から廃棄までのライフサイクルで環境への有意義な影響が認められること、気候変動や循環性、海洋資源、生物多様性などへの悪影響の有無を特定することなどの要件を満たす評価を実施する必要がある。

環境ラベルに関しても、上記の立証、外部検証、情報開示の要件を満たすとともに、環境ラベルの実施スキームの所有権の所在と意思決定プロセスの透明性などが求められる。環境ラベルの乱立を防ぐため、指令案が加盟国法に置き換えられた後にEU域内外で新設された民間の環境ラベルや、域内で新たに使用される域外の公的機関が設定する環境ラベルは、域内の既存の公的な環境ラベルへの付加価値が認められる場合にのみ承認される。EU法に基づくものを除き、スコア表示による環境ラベルは認められない。

カーボン・オフセットによる環境訴求は引き続き有効

企業の経済活動で温室効果ガス(GHG)排出削減をむしろ妨げるとして、環境団体などが禁止を求めていたカーボン・オフセット(注)による環境訴求は引き続き認められる。ただし、訴求内容を立証する際に、環境への影響の透明性を高めるべく、自らの経済活動あるいは製品ごとのGHG排出量とオフセットした量を分けた上で、全体の排出量に占めるオフセット量の割合や、計算方法などの情報を開示する必要がある。

(注)企業が他の場所で実現したGHG排出削減や吸収量などをクレジットとして購入することで、自らの経済活動でGHG排出量の全部あるいは一部を埋め合わせること。

(吉沼啓介)

(EU)

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