EU、米国製工業製品の関税引き下げ法案に合意、セーフガード条項など条件修正で妥結

(EU、米国)

ブリュッセル発

2026年05月27日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は5月20日、米国製工業製品に対する関税撤廃と米国産農水産品に対する特恵的な市場アクセスを認める2つの法案(2025年9月1日記事参照)に関し、政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。法案は、2025年8月の米国との共同声明(2025年8月22日記事参照)に盛り込まれた合意を具体化するものだ。

両機関の交渉では、欧州議会の求める条件をどこまで反映させるかが主な争点となった。米国との通商関係の安定化を最優先とし、法案の早期採択を目指すEU理事会は2025年11月に、欧州委員会案に対する修正を最小限にとどめた交渉上の立場(修正案)を採択していた。一方で欧州議会は、米国のドナルド・トランプ大統領によるデンマーク自治領グリーンランドの領有に向けた発言(2026年1月27日記事参照)などを受け、審議をたびたび延期。2026年3月に立場を採択したものの(2026年4月3日記事参照)、停止条項やセーフガード措置の強化、サンライズ条項とサンセット条項の追加などを求めていた。こうしたEU側の立法の遅れに対し、トランプ大統領は、7月4日までに対米関税の引き下げが実施されない場合、対EU関税を引き上げる可能性を示唆していた(2026年5月14日記事参照)。

今回の発表によると、欧州議会が求めていたサンライズ条項の追加は見送られたものの、2026年末までに米国が鉄鋼などへの関税を15%以下に引き下げない場合、欧州委は関税優遇措置を停止できるとする修正で合意した。また、サンセット条項は導入されるが、規則の失効期限は欧州議会案の2028年3月31日ではなく、トランプ大統領の任期終了後である2029年12月31日とされた。

このほか、セーフガード条項に関しては、欧州委が提案していた具体的な発動要件を設定し欧州委の裁量を限定する案ではなく、一定程度の裁量を維持する内容となった。また、停止条項については、欧州議会案で盛り込まれた加盟国の領土保全など重大な安全保障上の利益が脅かされる場合を発動条件に追加する修正は採用されなかった。

政治合意案は、EU理事会と欧州議会が正式に採択すれば施行される。政治専門紙「ポリティコ」によれば、一部の中道や左派の欧州議会議員は合意案に反対する可能性があるとしており、6月15~18日に開催予定の本会議で可決されるかどうかが今後の焦点となる。

(吉沼啓介)

(EU、米国)

ビジネス短信 61bc0717fa905fd3