日本政府、米関税措置に関する日米協議の合意内容の概要資料発表
(米国、日本)
ニューヨーク発
2025年07月28日
日本政府は7月25日、米国の関税措置に関する日米協議の合意内容の概要資料を発表した。石破茂首相は23日に合意に至ったと明らかにしていたが(2025年7月24日記事参照)、日本政府から資料が発表されるのはこれが初となる(注1)。
日本政府が発表した主な合意内容は次のとおり。
- 相互関税率は、一般税率(MFN税率)を含めて、15%(注2)。MFN税率が15%以上の品目には相互関税は課されず、MFN税率のみ課される。
- 1962年通商拡大法232条に基づいて25%の追加関税が課されている自動車・同部品に対する追加関税率は、MFN税率を含めて15%。
- 232条に基づいて調査が進められている半導体・医薬品については(2025年4月15日記事参照)、仮に追加関税が課される場合、日本を他国に劣後するかたちで扱わない。
- 日本企業による米国への投資を通じて、経済安全保障上重要な半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、人工知能(AI)・量子の9分野で強靱(きょうじん)なサプライチェーンを米国内に構築するために連携。
- 日本の政府系金融機関が最大5,500億ドル規模の出資・融資・融資保証を提供(注3)。
- 日本はバイオエタノール、大豆、トウモロコシ、肥料などを含む米国農産品、半導体、航空機などの購入拡大。
- ミニマムアクセス(MA)制度の枠内で、必要な米国産コメの調達を確保。
- 液化天然ガス(LNG)など米国産エネルギーの安定的、長期的な購入や、アラスカLNGプロジェクトの検討。
- 農産品を含め、日本側の関税は引き下げない。
- 日本の交通環境においても安全な米国メーカー製乗用車を追加試験なく輸入可能とする。また、クリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進補助金の運用を見直す。
なお、今回の発表では、自動車・同部品に対する追加関税を除き、4月に発表された大統領令に記載された例外措置(注4)が引き続き適用されるかはっきりしていない。また、2020年1月に発効した日米貿易協定との関係も現時点では不明のままで、同協定を活用することによってMFN税率が削減されるかも不明だ。そのほか、他国との合意にも含まれている迂回輸出を防止するための「積み替え品」への対策も、日米合意に含まれる可能性があるとの指摘がある。日本に8月1日以降、25%の追加関税を課すとの書簡にも、積み替え品に対する記載が含まれていた(注5)。
詳細がいまだ不明な点や、今後も交渉が継続する内容もあり、首都ワシントンの日米関係に詳しい有識者から「今回の合意は、終わりではなく、出発点」との指摘もみられる(2025年7月24日記事参照)。今後の発表を引き続き注視する必要がある。
(注1)なお、米国政府は23日にファクトシートを発表している(2025年7月24日記事参照)。
(注2)従って、MFN税率が15%未満の品目に対する関税率は一律15%となる。
(注3)出資で日米の利益配分の割合は、双方が負担する貢献やリスクの度合いを踏まえ、1対9とする。
(注4)相互関税は、(1)個人手荷物など合衆国法典第50編第1702条(b)の対象品目、(2)232条に基づいて追加関税の対象となっている鉄鋼・アルミニウム製品、自動車・同部品、(3)銅、医薬品、半導体、木材製品、(4)将来的に232条関税の対象となる可能性のある全ての品目、(5)地金、(6)米国で入手できないエネルギー・特定鉱物が対象外になると発表されていた(2025年4月3日記事参照)。
(注5)他国の交渉例として、米国とインドネシアとの関税措置に関する共同声明によると、迂回輸出防止を念頭に置いたとみられる新たな原産地規則の交渉がうたわれている(2025年7月23日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、日本)
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